夢女子が性転換して推しを救う話 作:ギャングスタ
神様に転生させてもらって三年。私こと涼宮満は三歳になりました。
住んでいる場所は京都府京都市。つまり「オンモフ」の舞台な訳で。色々手が出しやすい場所に産まれたわけですよ。
そんな中で見過ごせない変化が。
私、男になってるんですよ。男の子。
前世は思いっきり女だったのに、性転換ってやつをしちゃったらしくて。
私の根本の願い。祐介は天海薫ちゃんのこと好きになってほしいといういわゆるカプ厨的な思いが私は邪魔だと思われたらしくて、女じゃなくしたらしい。神様もそんなこと言ってたし。
推しは推しであって、私が付き合いたいわけじゃない。だから全く問題ないわけだけど。
祐介を女の私が助けると問題になると。心って難しい。
心の中でも男で私はおかしいと思って、できるだけ僕で通している。私が一人称の三歳児とか怖いからね。ボロを出さないように、僕にしてる。
そんな僕は、陰陽師の才能があった。それは一安心。原作でも才能があるかないかで使える人と使えない人の境があるって話だったし。天竜会に所属するような異能はなかった。天竜会は日常生活を送るのに困るような異能を持っていたり、家族を陰陽師が倒すべき敵、魑魅魍魎や妖などに殺された孤児が行く場所だ。
異能は陰陽術とは別系統の、力だと思う。霊気を用いない力じゃないかと推察するけど、どうなんだろ。陰陽術は霊気を使って、異能は霊気を使わないとか。この辺りは曖昧だ。
異能は便利なのかもわからないし、むしろ狙われる可能性もあるから持ってなくて良かったとすら思ってる。この世界の日本、割と危険が多いというか。
僕は起きていられる間にできるだけ霊気の制御と、簡易式神を使うことに力を注いできた。霊気がどういうものか感覚で掴みたかったし、まずは基礎の簡易式神くらいならできるようになっておきたかったからだ。
簡易式神は多分、便利な代物だから。ちゃんとした式神が使える主人公ですら簡易式神を使う場面は多かった。
僕の今世の両親はプロの陰陽師だった。公務員として昼夜逆転の生活をしていて、夜中に街に出る魑魅魍魎を倒している。さすがファンタジー世界。
この魑魅魍魎、陽が沈むと現れる怪物というか妖怪というか。京都だけはお昼にもいるんだけど。これを倒すのがプロの陰陽師。
両親がプロということは、夜中好き勝手動いても良いということ。なんたって家にいないんだから。だから僕は夜に簡易式神を制御する練習をして、朝昼に爆睡するという親と同じような生活をしている。これなら陰陽師として腕を磨けるから都合がいい。
僕は今こそ基礎をしっかりと固めている時期だけど、そろそろ本格的に動かないといけない。なにせ僕が平穏に生きている間に、祐介が苦しんでいるんだから。
推しである祐介とは同い年だった。なんでわかったのかと言われれば、祐介と同い年である土御門
で、そんな祐介を助けるために、だけど。ただ鍛えてたら間に合わないわけで。お父さんたちは別段凄い陰陽師ってわけでもなく、ただの三歳じゃ陰陽術の基礎しか学べない。高校に入るまで待っていたら手遅れになる。
だから、強硬手段に出るしかなくて。僕は原作という知識を用いてズルをするしかなくて。
そのために、両親が共に仕事である今夜。ちょっと遠出します。
お父さんたちが仕事に出た後、ベランダに出る。そこそこ大きなアパートのベランダから出て行くために、簡易式神が必要なわけだ。
イメージするのは空を飛べる存在。つまり鳥だ。お父さんの仕事道具から数個盗んでおいた呪符の一枚を取り出す。
「
呪符が白い烏に変わる。それにえっちらおっちら乗り込んで、空を飛んである場所へ向かう。
できるようになったからこそ思うけど、主人公って化け物だと思う。何で後三年したら「ON」の一言でほぼ全ての術式使えるようになるの?僕は無理そうなんだけど。
ちなみにお父さんに興味本位で聞いてみたら、できるけど術式が正規の威力にならないっていうことをすごく噛み砕いた言葉で教えてくれた。たまたま五神──表向きは四神の一人である青竜の戦うところを映像で見ていたから質問できたけど、短縮詠唱というのはとても高等な技術らしい。
お父さんはプロの七段。将棋の階級と同じで上から三番目なわけだけど、そんな人物でもまともに使えないんだとか。だから四神はすごいんだと教えられたけど。
十年ちょっとしたらその四神、ボコボコにされるんだけどって言いそうになって危なかった。それに祐介や主人公、ヒロインは高校一年でその短縮詠唱を使うんだよね。
そんな主人公たちも、ボコボコにされる。結構負ける。そんな存在がわんさかいる日本です。怖い。
主人公が最強じゃないっていうのも、「オンモフ」の惹かれるところだったけど。主人公も相当強いはずなのにそれ以上の強い存在に負けるんだもんなあ。
さて、そんな魔境日本で、僕が向かっている場所はどこでしょう?
主人公よりもヤバい存在、神様がいる場所。稲荷神社です。
正攻法なんて無理だから、神様に頼るしかないという。すごい博打だな、これ。でも稲荷神社にいらっしゃる
むしろ他に頼れる神様がいないというか。いるけど奈良だったり、僕の話を聞いてくれるかわからない存在だったり、栃木だったり。
京都で頼れる神様はこの方しかいないと確信している。呪術省にも忍び込めないし。
簡易式神に乗ってそこそこ時間をかけて到着。魑魅魍魎に遭遇したりしたけど、敵意を向けていなかったからか、襲われることはなかった。それと空の上を飛んできたからめっちゃ寒かった。できるだけの防寒着は着てきたけど。
目指すは正道ではなく、裏道にある白い鳥居。裏道の中腹の先にあるはず。そこが宇迦様がいらっしゃる神の御座の入り口なはず。主人公たちはそこから入っていったから、多分そこからいけるはず。
裏道を登って行きながら、僕は確信する。
僕には、神様が視えない。普通の目だということ。
ここ、稲荷神社は神様がいらっしゃって、相当敷居が高いことから神様が纏う力──神気が大量にあるって主人公は言っていた。けど、僕には霊気しか見えない。つまり主人公たちのような特殊な眼ではなく、ただの目だということ。
これは困った。いきなり作戦が瓦解した。
僕はこれまで神社に来た事がなかった。両親が共働きで忙しく、あまり出かける事がなかったからだ。プロの陰陽師ともなると纏まった休みがないようで、休みの日に出かけたとしても近場の公園や飲食店が精々だった。
だから、神様が見えるかどうか、という実験をしていなかった。ぶっつけ本番で実行に移して、見事にダメだったわけだ。
だから、最終手段。自力で白い鳥居を見付けて、直接お願いするしかない。
何とか中腹まで上がって、広場に出る。ここが主人公たちがコトちゃんに会ったのかな?……呼びかけてみるか。
「コトちゃーん?いませんかー?」
ダメ。ならもう一人の方。
「ミチちゃーん?いませんかー?」
宇迦様に使える子供たちを呼んでみたけどダメ。なら神様そのものを、無礼だけど呼ぼう。
「宇迦様、いらっしゃいませんかー?」
ダメ。そうなると、白い鳥居を探そう。もうそれしか手段がない。
懐中電灯で辺りを探す。朱色の中に白い鳥居があれば目立つと思うんだけど。ないかなあ、難波家が寄付した鳥居。
そうして歩くこと十分ほど。ようやく白い鳥居を見付けた。難波家寄進と彫ってある。これだこれ。
「あれ?神の御座に行けない?……手詰まり?」
「そこから妾の御座に入る事ができるのは、難波の人間だけやえ」
「あー、なるほど。……え?」
後ろから声をかけられて、思わず振り向くと白髪の大きな御狐様がいらっしゃった。妾の、御座?つまりこの方が……。
「初めましてや。おかしな人間。妾こそが
「宇迦様、ご無礼を承知でお願いいたします!僕に道摩法師を紹介してください!」
僕は即座にその場で土下座した。それでしか、神様に対する敬意の見せ方を知らなかったからだ。
しばらく静寂が続くと、御狐様から大きな溜息が聞こえた。
「妾に頼みたいことはそんなこと?全く……。他の神の感触があったから来たゆうのに、つまらぬのう」
あれ?もしかして失敗した?
大天狗様はおそらく頼れないのでダメ。
天竜会は神様の実力がわからないため除外。というか、法師と関わりあるかわからない。
奈良や難波の神様も関わりあるか不明。そもそも行けない。
となると、地道に探す以外には宇迦様しかいないという。