夢女子が性転換して推しを救う話 作:ギャングスタ
多分法師様、こんなに優しくないし。
『ねえねえ。何で男の子なのに陰の気が強いのー?長男だよね?』
『ねえねえ。何でコトたちの知らない神様の力を持ってるのー?人間だよね?』
「こら、ミチもコトも。分かり切ってることを聞かない」
『『はーい』』
僕の前には白い御狐様に、白髪の巫女服を着た幼女二人がいた。幼女の頭の上には狐の耳がある。幼女と言っても、今の僕よりは年上に見えるけど。
白い鳥居の前で、僕を見つめながらツンツンしてくる幼女二人。二人って換算でいいんだろうか。宇迦様の眷属なのだけど。本体は表参道にいる狐の像だったはず。
というか、神様たちって凄い。完全に僕の素性がバレている。
陰の気というのは陰陽における対立で、男性だったら陽、女性だったら陰の気が強い。兄弟であれば弟の方が陰の気が強い。
知らない神様というのはおそらく、この世界に転生させてくれた神様のことだと思う。
つまり、僕が元々女性で、違う世界から来ていることを知っているということだ。
「それで、坊。神たる妾に偽りは不敬と見做す。正直に答ぇ。道摩法師に会って、何をする気かえ?」
「はい。陰陽師として力をつけて、とある親子を助けたいと思っています!陰陽師としての実力は、法師が頭抜けています。金蘭様もいらっしゃいますが、おそらく難波にいるので長期的な指導は不可能でしょう。京都で会えて一番の実力者となれば、法師しかいません」
本当に嘘とかは見抜けるだろうから、正直に話す。原作でもゴン様が嘘発見器になってたし。でもあれってゴン様っていうフィルターを通してのものだから、どこまで信じていいものか。
「クゥも知っているのかえ?本当にまあ、奇怪なものよのう」
「あれ!?口に出していましたか!?」
『出てないよー。でもここは、宇迦様の社だよ?』
『そうそう。よくクゥちゃんのこと、ゴンだってわかったね?』
さ、さすが神様。というかここは神の御座と変わりないのか。だから考えていることも筒抜けなわけで。嘘を言わなくて良かった。
「陰陽師としての力。それならまあ、法師が適任でしょうけど。死ぬかもしれんよ?」
「覚悟の上です。それにもう、一度死んだ身ですので」
「ふむ。まあ、呼び出しくらいはええかの。説得は坊がしなさい」
宇迦様は納得してくれたのか、法師を呼び出してくれることになった。とりあえず今日の成果はこれだけ。そのまま来た時のように簡易式神に乗って戻った。夜遅くまで起きてたこと、初めてまともに陰陽術を使ったために疲れてすぐに寝てしまった。
次の日、朝方コトちゃんが家に来てくれて、今日の夜法師が会ってくれるということになった。話が早い。
また稲荷神社に行き、そこで法師と法師の式神である姫さん、外道丸、伊吹童子がいた。うわあ、法師ご一行お揃いだあ。
そこで宇迦様に説明したみたいに、全員に事情を全て打ち明けた。説明し終わったら鬼である外道丸と伊吹童子には大爆笑された。ありえない話だと思われているみたいだが、法師と姫さんは真剣に考え込んでいた。
『あはははは!おいおい、こんな頭おかしい奴の話を鵜呑みにするのか?』
「するしかないんよ、外道丸。この子、星見じゃないんや」
「ああ。この子は星見でも風水使いでも、金蘭のような力を持っているわけでもない。千里眼すらなく、どうやって明のことを知ることができたのか。可能性を潰していけば、そういうこともありえるということになる。我々の知らない異能というよりも、神の仕業と考えた方が早い」
法師と姫さんは伊達に陰陽師の頂点にいるわけじゃなかった。知識の上でもこの人たちに勝てる人はいるんだろうか。それほどこの世界では最強の敵だと思ってる。
主人公の敵であり、おそらく味方である道摩法師。一千年生きる傑物。そして安倍晴明の名前でも呼ばれる人物。
日本社会を混沌に導き、日本という世界を正しい形に戻す人物。
僕に星見の力がないことを看破されたのは、星見同士は会えばわかるのだとか。法師も姫さんも星見として過去視も未来視もできる。僕のはそういうのじゃなくて、原作知識を持ってるだけだ。
「星見でもないのに、知識として知っている事柄。しかし、歴史の全てでもなく、我々の全てというわけでもない。証拠に私の正確な正体については、確信が持てないらしいぞ?この仮面の下の真実を知るくせに」
『何でそんな歪なんだよ?それは神がつけた制限とかか?』
『いや、事実そいつはそこまでしか知識がないんだろ。神とかじゃなくて、そいつの知覚する世界はそこ止まり。……お前、オレが金蘭と玉藻の前を口説いたセリフ知ってるわけ?』
「いいえ……。妻にしたいと思っていたことは知っていますが」
そんなセリフは原作に出てこないはず。過去視の場面で冗談を言っていた気がするけど、ちゃんとした告白のセリフはなかったと思う。
全部は覚えていないけど。八章にもなる原作のセリフ全部覚えていろなんて無理な話だ。
『全知全能ってわけでもない。異なる世界から来た、この世界の観測者ねえ。生まれ変わりとは違うのか』
「この子の精神性からしても、納得できる。そないなところやない?それに、あたしたちが何かの本を読んでいてその本の世界に入るようなもんやろ?」
『この世界が物語ってか?はっ、くだらねえ。それに関係ないな。おれたちが今こうしてるのは物語に引っ張られてるだと?楽しめればいいおれたち鬼からしたら心底どうでもいいことだ』
「ああ。正直真実はどうでもいい。住吉祐介を助けることで起こりえる変化も、明に変革を促す最後の仕掛け程度。それの代用くらいはいくらでも効く。助けても、私たちの計画は大差ない。協力してやってもいいだろう」
「本当ですか!?」
法師ってこんなに話がわかる人だったのか!?ああ、いや。そういえばこの人、人間の協力者を求めていたんだっけ。だから僕にはそんな一部になってほしいんだろうか。
呪術省を潰したり、この世界を改変するならそれについていきたい気持ちはある。この人たちは犯罪者だけど、世界的に見たら正しいのはこの人たちだ。
そうじゃないと、神々もこの人たちに協力しないはず。
それに鬼たちはなんというか、うん。刹那的というか。快楽優先といえばいいのか。
神っていう存在がいることをわかっているからこそ、こんなに理解が早いんだろうか。多分そう。あとは宇迦様から聞いた話だから、かもしれない。
「しかしそうなると、土御門本家への襲撃が必要か。その程度は問題ないが、私たち任せになっても意味がない。私たちとしてもやるべきことがあるためにお前ばかりに関わってもいられない。ひとまず、十歳になるまでに成果を見せてもらおう。それで私たちが土御門を襲うかどうか決める」
「わかりました!ありがとうございます!」
「姫。まずは徹底的に基礎を教えてやれ。元麒麟として、せめてライセンスが取れるくらいには数年で仕上げろ」
「四段でええの?」
「それくらいあれば、最低限ヨシとしよう。お前ほどの成果は求めない」
「わかりました。では今夜から早速」
ライセンスの四段。つまり、プロの陰陽師として、公務員として食べていけるくらいの実力ってことだ。大人に混じれるレベルの陰陽師になれと?いや、それくらいしないとこの人たちには見放されるんだろうけど。
姫さんレベルを求められなかっただけいいか。だってこの人、九歳で当代一の実力者である称号、麒麟になった才女なんだから。小学生で当代最強に認められちゃうってどういうこと?しかも詠び出した式神も影じゃなくて本体っていう規格外。
姫さんレベルになるには、血筋と才能が噛み合ってないとダメだろう。僕はどれくらいの才能を与えられたんだろうか。星見じゃないらしいけど。
ま、やれるだけやるだけだね。祐介を助けるためなんだから、なんでもやる。
そうして僕は毎日、勉強実技実践の日々を続けた。僕の元が大人の女性ということもあって、知識の詰め込みについては容赦がなかったし、どれだけ疲れようが、傷付こうが御構い無しのスパルタだった。
そうして陰陽術による回復術って便利なんだなって思い知った。祐介もお腹に風穴開けられても、即日で塞がってたもんなあ。
あ、思い出したらそんなことをやらかした土御門光陰を思い出して腹が立ってきた。協力者のくせに、義兄弟のくせに仕事が遅いからって攻撃するとかどうなってるの?
そんな怒りもモチベーションにして、様々な術式を学んだ。時には法師にも教わり、両親が休みの日にもできるだけ陰陽術の勉強をして、鬼たちには揶揄われて。
規格外の授業を受けて三年。僕が六歳になった頃。
「マルチタスクの才能はそこそこあるみたいやし、式神と契約してみる?」
「ぜひ!」
「オンモフ」の世界に来たら欲しいと思っていたのが式神だ。作品には数々の式神が現れる。姫さんや鬼たち、主人公の式神である銀郎や瑠姫、ゴン様など。
動物だったり、それこそ妖怪だったり。いわゆるパートナーのような存在だ。いたら心強い。
「降霊を使って外道丸や伊吹のような強い存在は無理やろ?となると、生きている存在か霊狐とかの契約しやすい存在か。そんなところやな」
「天狗や狼は、難しいのでしょうか?」
「今のあんさんじゃ無理。神に近い存在やのに、精々一段のライセンスが貰える程度のひよっこじゃ契約まで辿り着かんよ」
むう。やっぱり主人公って凄いんだな。六歳時点で狼と契約していた。天狗と渡り合うような狼と。三歳でゴン様と契約していたんだから、主人公も規格外か。
そこまでの力は必要としていないんだよね。祐介とそのお母さんを助けられればいいんだから。土御門本家って強いんだろうか?祐介の胸中だと強さよりもムカつきばっかり強調されててわかんない。
でも、本家を名乗ることになった光陰ですら、プロのライセンスを取れる程度でしょう?十五歳時点で。なら本家も大したことないんじゃないかなって思うけど、油断はしちゃダメだ。
祐介を助けることが、最優先なんだから。
結局この日は何と契約するか思いつかず、後日改めて契約することになった。どんな存在が僕には合ってるんだろうか。