[完結]FIAFormula1 WorldChampionship the new generation   作:九嶋輝

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Round12 果たす事が出来た「約束」(ベルギー)

前回は、まさに「負の連鎖」が続きまともに走れたものではなかった。今回の舞台は、自分のキャリアと人生の「ターニングポイント」になったベルギーにある、スパ・フランコルシャンサーキット。そこへ俺は3年ぶりに「ルーキー」として戻って来た。あいつと交した「約束」を果たす為に。俺は「あの一件」以降欠かさずに、ここに来ては必ずラディオンへと向かい、花を手向けている。そして手を合わせて「約束、果たしに来たぜ。」とだけ伝えその場を後にした。今回のレースに向けて2つ目のオリジナルメットをAraiに作ってもらった。ベースは普段俺が使ってる「ナスタチウム・シャイニングスター」をベースにしているが頭部に彼の名前「誠真」と彼が最期に付けていたナンバー「1」を刻んでいる。マシンにも今回限定で「71+1」というスペシャルナンバーを付けている。そして晴南のマシンにも、今回だけでもいいから、少しでも力を貸してくれという意味で「81+1」と言うスペシャルナンバーを付けている。どうしても俺にとってはこのレースだけは何がなんでも勝ちたかった。「あの日誓った約束」を果たす為に。そして天候もスパ・ウェザー。例えどっか晴れていても、全日程通して晴れとは限らない。そしてグローブとシューズも俺はあの時からあいつの形見を使っている。あの時にメットを引き取った時、ついでに、ご両親方達に「グローブとシューズも貰って良いですか?俺はどうしても自分のやつではなくてこのグローブで再来年の最終戦のレース2まで、いや、F1まで駆け抜けたいんです。」と伝えたところ、ご両親方達も、「ありがとう。ここまであの子の事を思ってくれて。きっとあの子も遠い空から喜んでくれるはずだよ。」と快諾してくれた。そして遂に「有言実行」する時が来た。俺はこのレースウィークの為に全身全霊で臨む事を決めていた。そして日本のメディアにも聞かれた時に「今回のベルギーGPは、俺の為のレースでもあり、天国にいる、誠真の為のレースでもあります。」と語った。そしてフリー走行開始の時間となり、俺は晴南に「よし、そろそろ行くぞ。」と伝えて2人揃って、マシンに乗り込んだ。そして俺は無線で、カルロに「エンジン、スタートアップ!!」と伝えてエンジンが始動。晴南も「エンジン、ファイヤーアップ!!」と、気合が入った声で無線を入れエンジンが始動。実はマシンに乗り込む前まで、2人揃って裏で集中力を高めつつ、緊張を解していた時に、ふと晴南が「先輩、今週は特別なレースウィークって言ってましたがどういう事ですか?」と俺に聞いてきて、俺は「晴南はまだ確か、GP3にいて、あまり分からなかったと思うけど、3年前のF2ベルギーGPのレース1で、俺の人生は180度変わったんだ。今でも鮮明に覚えてるよ。あの修羅場を。ラディオンで起きた修羅場をね。あの時確か、俺はあいつの2台後方にいたんだ。そして、その3秒後に全てが狂った。マシンはコックピットとエンジンが真っ二つになり、パーツは四方八方へと吹っ飛んで行った。サバイバルセルも木っ端微塵。俺は巻き込まれないようにフルブレーキングして難を逃れたけど、かなり気が動転していて無線でもかなり取り乱していた。そして前方に見えた光景は俺も信じたく無かったさ。これが現実で起こっている事だとね。夢であって欲しかったさ。だけど俺はこれ以降あいつの分まで走ると決めて今を駆け抜けてる。軽度のサバイバーズギルトやPTSDとも格闘しながらね。」と言うと晴南は「そんな事があったんですね。でもこうして天国にいる友達の分まで走ってるなんて聞いてると本当にカッコ良いです。」と素直な気持ちを口にしていた。そして俺はガレージから出て行きコースイン。そして無線で「今週は俺の為のレースでもあり、天国にいる誠真の為のレースでもあり、皆の為のレースでもある。ここまで本当に諦めないで良かった。皆本当にありがとう。今週はいつも以上に全開で行くぜ。皆見ててくれ俺の走りを!」と伝えた。そしてアタック開始。俺は全速力で青空快晴の中オールージュを駆け抜けた。他の誰よりも早い速度で。そしてその後を追うように晴南も「先輩も頑張ってるんだ!私も頑張らないと!」と言う勢いでオールージュを駆け抜けた。そしてタイムはトップタイム。しかもフリー走行通して全てトップタイムと言う久々に嬉しい結果になった。それに続き晴南も2位とアルファタウリがワンツーを占める形となってフリー走行を終えた。そして迎えた予選。俺は「今日と明日は笑顔で終れるように」と全てを出し切ることにした。そしてセッション開始の時間となりコースイン。そして無線でカルロが「例えタイヤウォーマー使って加熱したからと言っても、コースには注意しろよ。路面温度が下がってるからな。」とアドバイスをくれた。そして慣らしを終えてアタック開始。俺はもうアクセルがコックピットをぶち抜く位の勢いでガンガン踏んだ。オールージュもラディオンも躊躇う事無く。あの時交わした「約束」を果たす為に。そしてQ1をトップタイムで通過。迎えたQ2もこの勢いは留まる事を知らなかった。今週の為にと俺とメカニック総出でセッティングを施したのだから。もちろん晴南もQ2へと駒を進めた。ここまでホンダ勢は誰1人欠けることなく来ている。そして俺はQ2もトップタイムで通過。晴南もフェルスタッペンの後ろの3番手で通過。そして皆欠けることなく迎えた最終セッション。ここまで全てトップタイムで通過している俺にとってはまさに「絶好調」という言葉がお似合いだ。そして結果は、俺のポールポジション。俺はこの時、嬉しさのあまり「よっしゃァァァァァ!!なぁカルロ!もう1回言ってくれよ!ポールポジションだ!って。」と思わず涙を流しながら言うとカルロは「ヒカル、ポールポジション、ポールポジションだ!」と言ってくれて余計嬉しかった。そして晴南も2番手とアルファタウリがワンツーを獲得。そして迎えた決勝だけど…ここに来てスパウェザーが本気出してきた。(いや、本気出さんといて欲しかった…マジで。)もう、あまりにも酷い雨で、レースどころの騒ぎではなくて、セーフティーカー先導のもと、4周走って赤旗が振られ全車グリッドへと戻って、レース再開を待った。俺はこの時、無線でカルロに「もし今日の天気が晴れだったらまたオールージュとラディオンをフルスロットルで駆け抜けれたのにな〜。それより聞きたいけどさ、マシン降りてもいいんだよね?良いのであれば降りたいんだけど。マジで風邪ひきそうで怖ぇんだよ。特に晴南にはマシンから降りてとジュリオに伝えておいた方が良いと俺は思うんだ。俺もだけどな。」と言うと「降りていいと思うよ。このパターンで行くと、多分再開するとかいう発表が何時間待っても、果ては一日待っても出なさそうだし。ジュリオにも伝えておくよ。晴南に降りていいよと伝えてと。」と言ってくれて、俺と晴南はマシンから降りた。その前に、俺は「一日は言い過ぎだな。hahaha!じゃ、マシンから降りるよ。」と言うと、カルロが「copy」と言ってから、マシンから降りた。そして晴南は「何故、私をマシンから降ろしたんですか?」と聞くと俺は「晴南、自分でも気付いて欲しいんだけど、女性の体は冷え過ぎると良くないんだよ。嫌でしょ、冷え過ぎて体のリズム崩壊するなんて言うのは。だから俺は、母さんに教えて貰った事思い出して、カルロにマシンから降りるように伝えたの。」と完全にメット類一式を脱いでダウンジャケットを羽織ってこう言うと晴南は「体の事まで思ってなんてありがとうございます。」と感謝していた。そしてカルロの読みが見事に的中して、レースディレクターから「決勝は…残念だけど…この結果を持って終了とする。確かにまだ皆走りたいという気持ちは分かるけど、安全第一だという事も忘れないで欲しい。」というレースディレクションが発表された。この時、俺の久々の優勝が確定して、思わず涙が溢れた。その涙は、勝てたという嬉しさと、まだ走りたかったという悔しさが入り混じった涙だった。そして俺はメット類一式を装着してポディウムへと向かい、メットをポディウムへと持ち込んで、天高く掲げて頭部に刻んでいる「誠真」を指さして優勝出来たことを報告した。そして日本のメディアにも、「やりました!!!やったァァァァ!!」とありったけの感情を大爆発させた。そして「今日の決勝は4周走って、終わりだったんですけどフリー走行、予選通して、すごく調子良くて、もしかしたら今日、これはいけるぞ!と思ってました!そしてここまで本当に諦めないで良かったと思ってます!皆さん本当に、今日は4周しか俺の走る姿をお届け出来なくてごめんなさい!だけど応援ありがとうございました!!」と言って締めた。そして晴南もこれまで見た事ないような笑顔でポディウムに登りシャンパンを味わっていた。


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