モンハン噂話   作:LeaF_Esra

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 お久しぶりです。


ロアルドロスを狩猟せよ!

 ネコタクはギルドと契約しているため、その場でハンターがゼニーを払う必要は無い。その代わりネコタクを利用する度に代金として報酬金が三分の一ずつ引かれてゆき、ゼロになるとクエスト失敗となる。

 ヒズミは今一度目の利用をしたから、あと二回お世話になると引き上げなければならない。

 

「ヒズミ!大丈夫ニャ!?」

 

 遅れて追いついたリーフがベースキャンプへ入ってくる。

 

「ネコタクの運転は大丈夫じゃなかったな」

「余裕そうで安心ニャ。そうだ、道すがらハチミツを採ってきたから、応急薬をグレートにして飲むと良いニャ」

「ありがとう」

 

 リーフからハチミツの入った小瓶を受け取り応急薬に混ぜて飲む。ハチミツが加わってとろみがついたそれを嚥下すると、全身を襲っていた痛みが幾分か和らぐ。続いて応急薬を飲み干せば、問題なく動ける程度には回復できた。

 

「鎧とかは大丈夫ニャ?」

 

 リーフに言われてざっと点検すると、インゴットメイルの背部が凹んでいた。先程のプレスの時だろう。さらに骨刀【豺牙】の鞘が半ばから折れている。あの時きこえた「ばきり」という音はこれだったのか。これでは鞘としての役割は果たせそうも無いが、折れたのが背骨でなかっただけ幸運だろう。

 

「そうだ、【豺牙】は?」

「そこに落ちてるニャ」

 

 プレスの衝撃で手を離してしまったため心配になったのだが、ネコタクの二匹が一緒に運んでくれたのだろう。ヒズミが落とされた辺りに転がっていた。それを拾い上げ、切れ味を取り戻すために砥石を使う。付着した血や脂を拭い、刀身を磨き上げ、それを壊れた鞘の代わりに縄で背に掛けた。

 

「しかしどうするか。このままだと、同じことの繰り返しにしかならない気がするぞ」

 

 先の二回の交戦を振り返ってみると、どちらもヒズミが遅れをとった事で区切りがついている。逆転の一手がなければ、それの繰り返しになるであろう事は想像に難くない。

 

「そうだニャぁ……あ、アレの使いどきじゃニャいか?」

 

 膝を突き合わせて悩んでいると、リーフがベースキャンプの端に放置されていたあるものに気付く。指差した方を見ると、ヒズミもその存在を思い出した。

 

「そうだ、忘れてた!確かにアレを使えば何とかなるかも知れないな。よし、早速行こう!」

 

▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 ペイントボールの臭いを辿り、ロアルドロスを発見したのはエリア6。水底の障害物に気をつけながら台車を引けば、エリア中央に鎮座する奴が目に入る。

 

「台車はここに置いていこう。戦闘に巻き込まれちゃ大変だからな」

 

 というのも、台車に乗せているものは衝撃を与えれば大爆発を引き起こす危険物。そう、大タル爆弾なのだ。

 

 大タルいっぱいに爆薬が詰められたそれは、出発前にロギィから貰った物だ。罠を持っていないために最初は置いていったが、ある程度体力を消耗させた今ならば、罠が無くとも使用する隙を作れるのではないかと踏んで持って来たのだ。

 

 ロアルドロスがこちらに気が付く。一頭残っていたはずのルドロスは離脱したのか姿が見えない。

 

「脚を狙うぞ!」

 

 狙いは転倒。リーフは左側から、ヒズミは右側から、それぞれ脚部を攻撃する。水中移動に適応しヒレのような形状となったそれを害しながらも、次の動きへ対応できるように水獣の動きからも目を離さない。

 

 水獣が上半身を捻った。この動きは確か尻尾薙ぎ払いの合図だ。このまま後ろ足の近くにいては巻き込まれてしまうため、上半身の方へ移動。同様に退避して来たリーフの姿が目に入る。

 

 直後、強靭なバネの弾かれるが如き勢いで水獣の尾が走る。両者共に退避済みだったためこちらに被害はなく、すぐに下半身へと移動しては脚部への攻撃を続けた。

 

「全く倒れる気配が無いな!」

 

 三度目の相対からしばらく攻撃を続けているが、倒れるどころか怯む様子すらない。体表に傷が目立つようにはなって来たものの衰える様子も見られず、一体いつになったら倒れるのかと気が遠くなる。

 

「……ヒズミ、ひとつ案があるニャ!」

 

 リーフが隣に来て言った。

 

「案って?」

 

 【豺牙】を振る手は止めずに聞き返す。

 

「”乗り”ニャ」

 

 乗り、正しくは「乗り攻防」と呼ばれるそれは、地図に載らないことで有名な街、バルバレで発展した狩りの技術だ。

 

 文字通りモンスターに乗って行う攻防で、モンスターの背で剥ぎ取りナイフや武器を振るうことによって転倒を誘発し、隙を作る事が出来る。

 

 成功すれば好機を生み出せるが、相手側とて大人しく待ってはいない。抵抗に負けて振り落とされてしまえば逆に隙を晒す事となるため、乗り攻防にはそれなりの技術が要求される。

 確かに、乗り攻防を成功させることができれば大タル爆弾を設置するだけの時間を稼ぐ事はできるが、それをヒズミができるだろうか。

 

 乗り攻防など、ロアルドロスとは体格も大きさも異なる鳥竜種相手に、それもたかだか二、三回しか経験が無いのだ。不安は拭えない。

 

「いや、やるしかない」

 

 やらなければジリ貧だ。さっき閃光玉を上手く投げられたのだから、今度だって大丈夫に違いない。そう自らを鼓舞する。

 

「リーフ、頼む!」

「任せニャっ!」

 

 身を捩り牙を剥くロアルドロス。その目の前でこちらを向くリーフへと駆け出し、体の前で組まれた手を踏み台にする。

 

「ふん、ニャーッ!」

 

 全身の力を集中させてヒズミを飛ばすと、リーフはそのまま後ろへ倒れ込んだ。

 

 リーフの助力を得て高く跳躍したヒズミは、手にした【豺牙】をタテガミへ突き立てる。スポンジ状のそれにしっかりと食い込んだ太刀を軸に体を回転させ、見事ロアルドロスに乗ることに成功した。

 

「よしっ!」

 

 片方の手で【豺牙】の柄を、もう片方の手で剥ぎ取りナイフを握り、脚でタテガミを挟んで体を水獣に固定する。

 

「落ちたら受け止めてやるけど絶対落ちるニャよ!」

 

 起き上がったリーフからの激励を聞きながら剥ぎ取りナイフを振るう。異物が背に張り付いただけでなく危害を加えてきたのだから、取り除こうとロアルドロスも体をくねらせる。

 

「ここじゃタテガミしか切れないな」

 

 幾らタテガミを切ろうと水獣が転ぶ事はないだろう。このままでは目的を果たせないと、手近でより深い傷を負わせられる場所、即ち頭部へと移動する。

 離れた柄の代わりにトサカを掴み、鱗の隙間を狙ってナイフを突き立てる。

 

「グワァッ!?」

 

 鱗の隙間を縫われるという普段あまり無い経験からか、水獣は悲鳴を上げる。振り落とそうとうねらす動きも激しくなり、ヒズミはトサカを掴む手に、より一層力を入れた。

 

「リーフ、大タル爆弾の用意を頼む!」

「ニャ!」

 

 ヒズミの頼みに短く答え、リーフは駆け出す。ヒズミはナイフを突き立てつつ、水獣の動向を伺う。

 

 変わらず体をくねらせたり、頭を地面に擦りつけたりしているがその都度ヒズミも移動しているため振り落とすには至っていない。

 いつまでも張り付いている異物についに痺れを切らしたらしい。そそり立つ壁崖の目の前まで来ると、首を振って勢いをつける。

 

「不味いっ!」

 

 危険を察知してヒズミがタテガミへと退避すると同時に、ロアルドロス渾身の頭突きが炸裂する。ドゴッ、という鈍い音がしたかと思えば、ロアルドロス悲鳴と共にはのけぞり、壁面には凹みが生まれていた。余りの威力に水獣自身も無傷ではなく。フラフラとして平衡感覚が保てていない様子だった。

 

「今なら!」

 

 ヒズミはタテガミに刺さっていた【豺牙】を引き抜く。モンスターが足を止めている今、ここで畳み掛けない理由はない。

 一撃、二擊、三擊、そしてトドメの四擊目。太刀を左右に振り回す三連撃の後に繰り出された鋭い突きは、なんとか地を踏みしめていた水獣の足を宙へ投げ出させた。

 

「グアァ……」

 

 力無く声を上げるが、感覚を取り戻せていない体は起き上がることができず、四肢はただ虚空を掻く。

 

「リーフ、準備できてるか?」

「当然!」

 

 ロアルドロスが転倒するや否や、リーフが台車と共に駆け寄ってくる。

 

 ヒズミは二つ用意された大タル爆弾を、刺激しないようにそっと喉元へ運ぶ。藻掻く水獣の体に当たらないように、しかし爆風が十分な威力を発揮出来る位置に置くと、すぐさま距離を取ってリーフに合図を送る。

 

「頼むぞ!」

「ニャぁっ!」

 

 リーフの手から放たれたのは、普段使っているものとは違う安物のブーメラン。数回使えば壊れてしまう程の耐久力しかないが、どうせ爆発に巻き込まれるのだから起爆にはそれで十分だ。

 

 ブーメランがぶつかった「ガンッ」という音から一泊遅れて、熱を孕んだ轟音がエリア6を支配する。

 

「どうだ⁉︎」

「やったニャ⁉︎」

 

 ロアルドロスを覆っていた煙が薄れるにつれて、だんだんと様子が見えて来た。

 

 タテガミは溶け、鱗は崩れ、皮は爛れ。隙間から覗く焼けた肉が痛々しい。ヒズミもリーフも、これで決着がついたと思っていた。

 

 

 

 しかしその瞳に虚は無い。

 

 

 

 腹這いの体勢に戻ったロアルドロスは、壊れた喉で咆哮する。

 

「カ゛ア゛ア゛ッ゛!」

 

「まだ生きてるのかっ⁉︎」

「来るニャッ!」

 

 助走の後の跳躍。宙から迫る巨体を左右に分かれて回避する。着地と共に散る飛沫を被りつつも、ヒズミは【豺牙】を振るう。牙はロアルドロスの横腹を捉えるが、まるで効いていない様子でこちらを睨む。

 

「ッ!」

 

 蛇に睨まれた蛙、ではないが、一瞬動きを止めてしまったヒズミの元へ水獣の尻尾が襲来する。それを横に転がって回避すれば、方向転換したロアルドロスと丁度向かい合う形となった。

 

 目が合った。

 ただひたすらに、目の前の敵を討たんとする殺意のみが煌々と輝いている。

 次の一撃で勝負が決まるであろう最終局面。命の奪い合いをしている相手だったが、この瞬間だけは何故か心が通じあったような気がした。

 

「来い……!」

 

 ヒズミはロアルドロスを迎え撃たんと構えをとった。

 半身になり、脚を大きく開いて腰を落とす。両の手で【豺牙(さいが)】の柄をしかと握り、地面と並行になるようにして顔の横へ持ってくる。

 

 ロアルドロスが首を伸ばした。対する狩人は完全に足を止め、格好の的だ。

 不揃いになった牙がヒズミへと近づく。吐息すらも感じられる程の近さ。インゴットメイル諸共食い破らんと閉じられたその口は──

 

 

 

 ヒズミを捉える事は無かった。

 

 ヒズミのとった構えは、遥かベルナの地で生み出された狩技、「鏡華の構え」と酷似していた。

 その構えは、与えられた名に違わず攻撃が触れる事を許さない。無謀にも触れようとしたならば、待っているのは手痛い反撃(カウンター)

 

 斬。

 

 いなされた牙は虚空を噛み、代わりにロアルドロスの喉が断裂する。流れ出る血がヒズミの足元を真っ赤に染めた。

 

「グァァ……」

 

 短い断末魔を最期に残し、水獣 ロアルドロスは水没林の地で永遠の眠りに落ちた。

 

「……勝った……?」

「ヒズミ!」

 

 亡骸の側で呆然と立ち尽くしていたヒズミにリーフが駆け寄ってくる。

 

「やったニャ!大勝利ニャ!」

 

 ぴょんぴょんと跳ねながら相棒は喜ぶが、ヒズミの中には異なった感情が渦巻いていた。

 

 最初にロアルドロスと交戦した時から感じていたあの”高揚感”。死を身近に感じた事も一度ではなかったが、それを遥かに超える昂りは、狩猟を終えた今でさえ震えとなって残っている。

 

「?どうしたニャ。まさか今更怖気付いたのニャ?」

 

 震えの原因を恐怖と捉えたリーフがからかうように肘で突いてくる。

 

「そんな訳ないだろ?喜びに震えてるんだ」

 

 リーフの体を掴むと、お返しとばかりに高く放る。

 

「ニャ、ニャにするニャ!」

「クエスト達成祝いの胴上げだよ!」

 

 こうして、ロアルドロスの狩猟は成功の結果を残して幕を閉じた。

 




 どうも皆様おはこんばんにちはございます。LeaFです。今話もお読みいただきありがとうございました。
 四話に渡り続いたロアルドロス狩猟、ようやく完結です。慣れない戦闘描写でしたがいかがだったでしょうか。
 次話もよろしくお願いします。
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