モンハン噂話   作:LeaF_Esra

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嗚呼麗しの小玉サボテン

 砂を掻き分けながら進む砂上船の甲板で、ロギィは風に当たっていた。

 風で涼もうと考えての事だったが、強い直射日光により肌が焼かれるばかりで。

 

「あっつい……近くにテオ・テスカトルでもいるんじゃないか……?」

 

 余りの暑さにうなだれながら、炎を司ると言われている古龍の名を上げる。 水没林のようなジメジメとした暑さには慣れていても、砂漠の肌を焼く暑さへの耐性は持ち合わせていなかった。

 

 結局、甲板に出て直ぐに船室に戻った。

 

ーーーーーーーー

 

「氷結イチゴオレ1つ」

 

「はいですニャ」

 

 甲板から帰ってくると、休憩室として開放されている一室にやってきた。以前この船に搭乗したときにここの存在を知って以来、乗るたびにここを訪れている。

 

 どうぞ、と言って出されたそれは、氷結イチゴをシャーベットにしてポポミルクと混ぜ合わせた物で、熱い砂漠にはピッタリの飲み物だ。砂上船に入っている休憩スペースで売られている物でも屈指の人気を誇ると聞いた事がある。

 

「ありがとう。……やっぱりこれだよなぁ」

 

 一口飲めばイチゴの甘さと氷結晶の冷たさが口の中に広がり、熱くなった体に染みていくのが分かる。クーラードリンク程では無いにしても、体が冷えて暑さが和らいでいく気がする。

 

「お客様、此度はどのようなクエストでしたニャ?」

 

 ロギィ以外に客がおらず、暇を持て余したのか、売店の店員をしているアイルーが話しかけてきた。

 

「今回は採集ツアーだ。ウチの村の受付嬢が『観葉植物が欲しいからサボテンを取ってこい』と言うもんでな」

 

 ポーチから採取した小玉サボテンを取り出して並べる。

 彼女から幾つか理想のサボテン像を聞かされていたが、正直よく分からなかったため、それっぽい物を複数見繕って来たのだ。

 

 サボテンは食べられるらしいので、余ったものはサボテン料理の開拓に使えば良いだろう。

 

「ニャるほど。この頃、若い女性の間で多肉植物を育てるのが流行っていると聞きますので、その流れでしょうニャぁ」

 

「そういう事か。多肉植物なら水没林にも生えてそうだけどな」

 

 水没林の植生を思い出しながら氷結イチゴオレを煽る。

 

「ワタシはてっきりリオレイアを狩りに行ったのだと思っていましたニャ」

 

 リオレイア。陸の女王とも呼ばれ、空の王者たるリオレウスの番として最も有名なモンスターの一角だ。

 先日ロギィが訪れた旧砂漠でも目撃情報が上がっていたので、その個体の事だろう。

 

「アイツは奥地に潜ってるみたいで、まだ狩猟依頼が出されてないんだ。それに今はリオレイアの素材は必要じゃないしな」

 

「そうだったのですニャ。リオレイアといえば。最近またあの噂を聞くようになりましたニャ」

 

「と、言うと?」

 

「ラブ・ワイバーンの方々ですニャ」

 

「ラブ・ワイバーンねぇ」

 

 ラブ・ワイバーンとは、一昔前から活動を続けている飛竜愛護団体の名前だ。

 

 成立初期は、狩場に直接出向いて狩猟中のハンターに直談判する、などという危険極まりない行動をしていたそうだ。

 しかし現在は飛竜の狩猟依頼の際、可能な限り捕獲するように呼びかけたり、ギルドへ依頼することなどが主な活動のらしい。

 

 ハンターをしているロギィの父が駆け出しの頃には既にそれなりの規模にだったようで、何気に歴史のある団体だったりするのだとか。

 

「最近はなりを潜めているとか聞いたが、また活発になったのか?」

 

「狩場に乱入しなくなってからは噂も途絶えていたのですが、近頃はまた飛竜の討伐数が増えてきたとかで、酒場でビラを配ったり演説をしているのですニャ。あれをご覧下さいニャ」

 

 店員の指し示した先を見ると、「飛竜を救おう!」という如何にもな歌い文句と挿絵、そしてラブ・ワイバーンの名が書かれた張り紙がされていた。

 

「先日来店なさった方に頼まれて貼ったものですニャ。最近は悪評も聞きませんし、ワタシも無闇な殺生は好まニャいので、貼っていますニャ」

 

「どうなんだろうなぁ」

 

 とは言え、捕獲が必ずしも飛竜を救うとは限らない。捕獲されたモンスターの利用方法は様々で、何事もなく開放される事もあれば、実験や解剖に回される事もあるのだ。

 とは言え、捕獲すれば命を奪わずに済むというのも確かだ。

 

「まあ俺がとやかく言える事じゃ無いかも知れんがな」

 

 活動の是非はともかく、関わりのない自分にあれこれ口出しする筋合いはない。

 

「そろそろ到着のようですニャ」

 

 砂塵の向こうに浮かんできた港を眺めながら店員が言う。

 

「それじゃあ、今日も美味かったよ」

 

 空になったグラスの隣に代金を置いて席を立つ。

 

「またのご来店お待ちしておりますニャ〜」

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

「わ〜っ!ありがとうございますロギィさん!」

 

 ロギィの取ってきた小玉サボテンを嬉しそうに手に取るローサ。

 

「お気に召したようで何よりだ」

 

 自分の取ってきた物が正解だったようで、ロギィはため息をついて安堵する。

 

「これで私の家に彩が増えます!……でも、これ……どうするんですか?」

 

 不安げなローサの視線の先にあるのは、カウンターに並べられた無数のサボテン。

 

「サボテンって食えるらしいからな。サボテン料理を開拓するのに使うつもりだ」

 

「サボテンって食べられるんですね。私もやってみたいです!」

 

「よし、じゃあどっちが美味いサボテン料理を作れるか勝負だ!」

 

「受けてたちましょう!」

 

 こうしてロギィとローサの間で始まったサボテン料理対決は、村人から意見を貰いつつ完成した「丸ごとサボテンシチュー」が決め手となり、ローサの勝利で幕を閉じた。

 




氷結イチゴオレ
 氷結イチゴを砕きポポミルクと混ぜた、暑い地域で人気の飲み物。クーラードリンクを加え、狩場に持って行く者もいるという。

ラブ・ワイバーン
 飛竜の保護団体。街や都で講演を行ったりしている。モンスターハンター公式小説「狩りの掟」より設定を拝借。
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