モンハン噂話   作:LeaF_Esra

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「はい、クエスト完了です。お疲れ様でした!」

 

 ローサが依頼書にクエストクリアの印を押し、報酬金を差し出す。

 

「ありがと」

 

 ゼニーの入った麻袋を受け取ると、クエストカウンターから身を乗り出して不満を漏らす。

 

「ちょっと聞いてくれよローサ。この間街に行ったときにコレ買ったんだよ。ブナハブラ狩りの役立つかと思って」

 

 ロギィは腰からぶら下げていた鉄製の円盤をカウンターに置く。

 

「なんですかこれ。シビレ罠?」

 

「いや違う。本体はこれの中身だ」

 

 円盤の中からロギィが取り出したのは、手のひらより一回り程小さい紫色の渦巻き。

 

「これ。なんだと思う?」

 

 渦巻きの正体を当てさせようとすると、ローサは明らかに面倒くさそうな顔をした。

 

「いや知りませんよ。早く教えて下さい」

 

「つれないなぁ。まあいい。これは『毒けむり線香』っていう道具だ」

 

「毒けむり線香」

 

「そう。毒けむり玉と同じような効果がある線香で、火を着けると効果を発揮するんだけど……」

 

 はあ、とため息を吐いて続ける。

 

「これが役に立たないんだ。これつけてれば近寄っただけでブナハブラが死んでくと思ったんだけどなぁ」

 

 がっくりと肩を落とすロギィに対し、ローサは一冊の図鑑を持ってきた。

 

「えっとですね。この本──あ、これ狩猟用アイテム大百科っていって、狩猟につかうアイテムについて詳しく書かれている本なんですけど。これによると毒けむり玉は、『周囲に毒素を含んだ煙をばら撒くアイテム。多少ならば人体にさして影響は無いが、大量に使用する場合は注意が必要』と書かれているんですよ」

 

「なるほど?」

 

「ということは、ブナハブラを殺せるほどの煙を出し続けると当然人間にも影響がありますよね」

 

「つまり……」

 

「これじゃあブナハブラは死にませんね」

 

 ロギィがカウンターに突っ伏した。

 

「うわーマジかー。詐欺られてんじゃん。なーにが『狩りのお供に!』だよ狩れるどころか近寄っても来なかったわ」

 

「いや、それ多分ブナハブラ狩りのお供じゃないですよね。大型モンスターと戦ってる時にブナハブラとかの虫に邪魔されないためのやつだと思いますよ」

 

 お門違いの文句に真っ当すぎる意見が下され、ロギィは悔しがるように呟く。

 

「くっ、虫を殺す道具じゃなくて虫に無視される道具だったってワケか……虫だけに」

 

 ピュウと吹く風と共に、背後でタンブルウィードが転がる。

 

「面白くないですよ」

 

「うるせぇ!」

 

 渾身のダジャレを冷たく流されロギィは悲しく叫んだ。

 

「今日はもう疲れた。帰って寝るわ」

 

 ため息を吐いてクエストカウンターを去ろうとするロギィをローサが呼び止めた。

 

「あ、ちょっと待ってください。ロギィさん宛に手紙が届いてるんですよ」

 

「手紙?俺なんかしたっけ……」

 

 ロギィに手紙を出す人物は多くない。

 ドンドルマに住む友人は滅多に手紙を寄越さないし、両親は半年に一度寄越せば多い方。後はギルドが定期的に何らかの通達を送ってくる。

 そうなると、最も届く頻度が高いのはギルドとなる。そのため今回の手紙もギルドからの物だと思ったのだ。

「差出人はギルドですけど……」

 

「いや、心当たりは無い、大丈夫なはずだ……」

 

 そう言いつつも「もしかして何かしでかしてしまったのでは……?」という疑念は拭えず、恐る恐る封を切る。

 

「二枚もある……」

 

 本文の書かれた一枚目と、紙質の違う二枚目。二枚目の紙質は何となく触り覚えがあった。

 読み進める内に、最初は不安に染まっていた表情が、だんだんと困惑へと変わって行く。

 

「これホントに俺宛だよな?」

 

 念の為に宛名を確認するが、しっかりと「イズデ村のロギィ様」と書かれているので、同名の別人という訳でも無さそうだ。

 

「なんて書いてあったんですか?」

 

「なにやら俺を指名した依頼が入ったらしい」

 

 ロギィは二枚目の紙をローサに見せる。

 

「ドスフロギィの狩猟……の、披露?」

 

 ロギィが見せたのはクエストの依頼書だった。依頼内容はドスフロギィの狩猟の披露。

 依頼人はとある国の貴族で、ドスフロギィの狩猟を見てみたい!との事だった。

 世界は広しと言えども、ロギィほどドスフロギィに精通しているハンターは少ないだろう。ロギィ自身もそこは誰にも負けないと自負しており、納得の人選である。

 

 ひとつ心配事があるとすれば、異様な報酬金の高さだ。

 

「これ、いくら貴族からの依頼とは言っても、ドスフロギィに出す金額にしては高すぎませんか?」

 

「だよなぁ……この額なら飛竜の討伐にしたって高いぐらいだし」

 

 怪しさマシマシな依頼ではあるが、破格の報酬と、何より自分を指名しての依頼だ。受けない訳にはいかない。

 

「まあどうにもならないような事は無いだろ。明日にでも出発するかな」

 

 何も無ければそれで良し。何かあったとしても、ロギィだって手練のハンターだ。何も出来ないなどということは無いだろう。

 

「ギルドを通しての依頼ですし、私も大丈夫だとは思いますが……一応気をつけてくださいね?」

 

「分かってるよ」

 

 その後ロギィはすぐに休息をとり、翌日。クエストを受注し依頼主の下へ出発した。




毒けむり線香
 毒けむり玉の派生アイテム。虫を殺す程の毒性は無いが、遠ざけることが出来る。また、毒性が低いおかげで長時間使用していても人体への影響が少なく安全。
 ブナハブラ狩りの役には立たない。
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