モンハン噂話   作:LeaF_Esra

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今回は普段の倍ぐらいの文字数があります。ご注意ください。


旦那様のドスフロギィ

 イズデ村からドンドルマへ、そこから更に竜車に乗ってたどり着いたのは、火山付近に位置する国。堅牢そうな石造りの建造物が建ち並び、カン、カンという小気味良い槌の音が響いてくる。

 その国の中央には、立派な王城がそびえ立っていた。

 

「ええと、確かこっちだったかな」

 

 火山由来か、それとも鉱石を加工する際に生じた物なのか。熱い空気に満ちた街で、ロギィは地図を片手に依頼主の住む館へと向かった。

 

「ようこそおいでくださいました。旦那様がお待ちです。こちらへどうぞ」

 

 シワひとつない背広に身を纏い丁寧なお辞儀をする執事に連れられ館内を歩く。いかにも高級そうな調度品のそばを通る度、間違って傷つけてしまわないようにと慎重になった。

 

「こちらの部屋に旦那様がおられます」

 

「ありがとう」

 

 案内してくれた執事に感謝を告げると、扉に手をかける。両開きのそれを開けると、奥には恰幅の良い中年女男性が居た。

 

「よくぞ参った。私はマノトス。君が来るのを楽しみにしていたぞ」

 

 彼女はマノトス・ウォルタン。この国の有力貴族で、モンスターを愛好する貴族の中ではそれなりに有名らしい。

 

「それで、依頼の件だが」

 

「うむ、貴殿に来てもらったのは依頼の通りドスフロギィの狩猟を披露して貰う為だ。だが相手はただのドスフロギィではないぞ!」

 

 ついてこい、と言うマノトスに導かれたのは闘技場。谷を利用した形で、客席は少ないが強度は充分だ。既に待機しているらしいドスフロギィを客席から見てみると……

 

「え、いや……でか……」

 

 ロギィは目を疑った。普通、鳥竜種といえば小柄なものだ。ドスと名に着く群れの長でさえ、中型モンスターに区分される程には小柄だ。

 だが目の前の個体はどうだろう。体高は大柄な男が二人分、体長はその四か五倍程あるだろうか。グラビモスよりも大きいその体躯で闘技場内を闊歩している。

 ……きっと目の錯覚だ。蜃気楼というやつだ。砂漠のように暑い場所なので、そういう事もありえるのだろう。

 

「あのドスフロギィは私が手塩にかけて育てた

奴だ。他の貴族に負けないモンスターを!と思って育てていたら、並の飛竜を超える巨体に育ってしまったのだ」

 

 貴族がモンスターを飼育するというのはよく聞く話だが、ここまで大きくなるとは驚いた。まさか幻覚じゃないなんて。

 

「しかし良いのか?こんなに大きくなったのに狩猟してしまって」

 

 最初こそ驚いたが、ドスフロギィを愛する身としては狩猟してしまうのは勿体ないとも思うのだ。

 

「問題ない。モンスターとは狩られるもの。既に他の貴族を呼んでいる故、後は君が素晴らしい狩りを披露してくれれば完璧だ!」

 

 素晴らしい狩りなどと言う前に、そもそも狩猟できるかどうかすら怪しい。だが引き受けた以上はやるしか無いだろう。

 

 

▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

 闘技場の拠点で装備の最終確認を行う。

 現在ロギィの持っている武器は片手剣のダーティファニング。ドスフロギィの素材から作られた武器で、付与されている属性は毒。したがってドスフロギィに対して追加効果は見込めない。

 相手がドスフロギィであることはわかりきっていたのだから、別の武器を持って来ればよかったのに。と言われそうだが、生憎ロギィはドスフロギィの素材から作られる武器しか持ってない。

 つまりどの武器を持ってこようとさして変わりはないのだ。

 

 それはそうとして、ロギィは支給品ボックスの中身を漁る。

 

「さて、支給品は……おお、豪華だな」

 

 青色の箱に納められていたのは応急薬グレートと携帯食糧、解毒薬がそれぞれ十個ずつ。更に支給用大タル爆弾に支給用閃光玉。これだけあれば相当狩りが楽になるだろう。後は戦闘エリアから拠点へ戻るための支給用モドリ玉がいくつか。

 

「これで準備は良しとしよう」

 

 事前情報が不足している今、これ以上ここで悩んでいても仕方がない。

 ロギィは戦闘エリアと拠点とを隔てる門の前に立ち、開閉用のレバーを引いて歩を進めた。

 

 門の開く音に反応してドスフロギィがこちらに気付く。普段与えられる食餌とは違う入場者が何者かと観察しているようだ。人の頭程もある目玉を動かしこちらを伺う姿は大変恐ろしい。

 

 相手がまだこちらを脅威であると認識していない今のうちにやるべきことがある。

 

「まずは観察だな」

 

 相手がするのと同様に、こちらも相手の隅々にまで目を凝らす。

 

 この個体は野生のものと違って表皮に傷が少なく、あっても巨体に見合わぬ小さなもののみ。戦闘経験は恐らく乏しいだろう。

 硬い鱗に覆われた脚部は、鱗のそれぞれが規格外の大きさな上、厚みも相当であると見える。その代わりに鱗同士の隙間も広いので、狙うのは簡単そうだ。

 

「サイズ以外に大きく変わった所はなさそうだな」

 

 しかし、行動パターンが変わっている可能性もあるのでまだ油断は出来ない。外見から得られる情報の収集を終え、ロギィはダーティファニングを引き抜く。

 

「まずは小手調べ!」

 

 目の前の脚部──そもそも脚部以外には武器が届かないのだが──に狙いを定め、研ぎ澄まされた刃を鱗の隙間に突き立てる。

 

「ゴアァッ!?」

 

 久々にダメージを負ったからか、ドスフロギィは大きく唸って後ずさりする。

 今の攻撃で足元でうろちょろしていた生物が自らの敵であると認識したらしい。先程とは違い明確な敵意を持ってロギィを睨みつけてくる。

 

「さあ、かかって来いよ!」

 

「グオオオオォォッッ!」

 

 発せられた振動は大気を震わせ、ロギィに襲い掛かってくる。その威力は思わず耳を塞いでしゃがみこんでしまう程。

 

「くっ、こりゃあ耳栓でもなきゃ防げなさそうだな」

 

 硬直から解放されると、すぐさま距離をとる。これだけ大きいと動きを見るのにも一苦労だ。

 

 全体が視界に入る所まで離れると、ドスフロギィが噛みつきを繰り出してきた。

 自分を丸呑みできそうな程広く開けられた口が素早く迫り来るが、その牙はロギィから離れた場所で閉じられる。

 

 あまりの体格差から上手く距離を掴めていないのだろう。自ら向かっていくような愚行を犯さなければ食らうことはなさそうだ。

 

「この調子でしばらく様子を見よう」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 一通り動きを見終わった。

 

 通常のドスフロギィと行動に大きな差はないが、尻尾を振り回す攻撃の時、尻尾を地面に擦り付けるようにするため、範囲内にいた場合問答無用で弾き飛ばされてしまう。

 

 それ以外にも、噛みつきの使用頻度が極端に低かったり、範囲が広く逃れるのが困難な毒霧ブレスを多様したりと、時間を掛ける程こちらの体格に合った攻撃を仕掛けて来るようになっている。

 

「狩猟が長引けば、より効果的な攻撃をして来るだろうな」

 

 相手がこちらの動きに完全に慣れてしまう前に、なるべく早めに決着を付けてしまいたい。

 

「だが、焦りは禁物だ。いつも通り、小さな傷の積み重ねて行けば良い」

 

 自らに言い聞かせるように呟く。

 こちらはまだまともに攻撃を加えていないのだ。そこまで気負う必要はない。

 

 深呼吸をしてからドスフロギィに接近する。

 

「セイッ!」

 

 右脚に一撃、二撃と連続で切りつける。まずは手の届く範囲に攻撃を重ねて消耗を狙う。もう三連撃加えれば、すぐさま身を翻し左脚へ移動して更に一撃。

 

 ドスフロギィも黙ってやられてはおらず、右脚にくっついていた邪魔者を蹴飛ばそうとしたがそこにロギィはもういない。

 背後に地面を蹴りあげる音を聞きながら、ロギィはダーティファニングを振るう。

 

「せああぁっ!」

 

 渾身の力を込めて一閃。

 刃は鱗を弾き、皮膚を裂き、ドスフロギィの左脚のふくらはぎに深い一筋の傷を作った。

 

「ゴアアァッ!?」

 

 ドスフロギィが仰け反って出来た隙を見逃さず、肉を抉り取るように一撃、二撃。三撃目は空を切る。ドスフロギィが後ろへ跳躍したためだ。

 

「避けられたか」

 

 だがそれまでの攻撃だけでも十分効いていたようで、ドスフロギィは着地と同時に膝をついた。

 

「ゴウゥ……」

 

「効いてるな」

 

 直ぐに立ち上がったため完全に使えなくなったという訳ではないようだが、痛手を与えられているという実感にロギィは小さくガッツポーズをする。

 

 移動手段である脚を負傷したからか、今度は毒霧ブレスを吐いてきた。

 ドスフロギィの吐く毒霧ブレスは吐き出された後もしばらくその場に残るので、通常サイズであっても立ち回りに気をつけなければそれを吸い込み、狩猟に支障が出てしまうのだが……。

 

「俺には効かないな」

 

 フロギィSシリーズには毒無効のスキルが着いている。

 布で口元を覆っているためにガス状の毒を吸い込まずに行動できるのだ。

 とは言え毒霧は紫色をしており、突っ込めば視界が塞がれてしまうのでなるべく立ち入りたくはない。

 

 毒霧を迂回してドスフロギィに接近するが、この時が最も気をつけなければならない。もし尻尾で攻撃されれば、地面ごと掬われるため回避が難しいのだ。

 

「尻尾はやめてくれよ」

 

 そう祈るロギィを嘲笑うようにドスフロギィは尻尾を振り回す。

 

「ゴオォッ!ゴオォッ!」

 

「間に合うか……?」

 

 尻尾に当たる前にどうにか足下まで辿り着こうと全力で脚を動かすが間に合いそうにない。

 

「くそ、こうなれば」

 

 一か八かの可能性に懸けて前方へ大きく身を投げ出す。俗に言う緊急回避というもので、うつ伏せの体勢になる上飛距離もあるので攻撃を避けやすい。

 だが薙ぎ払いに体勢など関係なく、範囲を抜けられなかった左脚に尻尾が叩き付けられる。

 

「ぐっ……」

 

 吹っ飛ばされた衝撃で地面を転がる。

 

「く……これでおあいこか」

 

 左脚は、痛みは伴うが何とか動く。ふらつきながらも立ち上がり、応急薬グレートを飲めば、その痛みすらもなくなった。

 

「これでしばらくは何とかなる」

 

 ダーティファニングを構え直す。

 

「ゴアッ!ゴアァッ!」

 

 突然、ドスフロギィがその場で飛び跳ね始めた。さながら跳狗竜が尻尾を叩きつけるように、ダンダンと地面を強く踏みつける。

 着地する度に振動がロギィを襲う。

 

「攻撃ができないどころか、近づけもしないぞ」

 

 足元に潜り込んだロギィに対して極めて有効な行動だ。この戦闘中にどうしたら対処出来るかを導き出したのだろう。

 

「小タル爆弾でも投げてみるか?」

 

 打開策を見出そうと腰に括りつけてある小タル爆弾を手に取り、投げる。

 傷ついた左脚を狙ったお陰で傷口を爆破でき、一瞬ドスフロギィの動きが止まる。

 

「今のうちにっ!」

 

 比較的傷の少ない右脚に大きな切れ目を作る。

 右脚も左脚と同様ズタズタにしてやろうとダーティファニングを振るうが、二撃目をあたえる前にロギィは攻撃を中断させられてしまう。

 

 ドスフロギィが跳躍したのだ。

 ただの跳躍ではなく飛びかかりだ。正真正銘ロギィを押し潰さんとする攻撃。

 

 足元にある物に飛びかかるなど容易な筈。ドスフロギィが外してくれる事は望めない。

 

「間に合え……ッ!」

 

 すぐさまドスフロギィから離れるように走り出す。そして緊急回避。

 闘技場の硬い地面に顔面から突っ込んだ所で激しい揺れが起こった。

 

「何とか避けられた……」

 

 安堵し立ち上がろうとした瞬間視界が回った。

 

「ぅぐっ」

 

 痛みを自覚したのは体が止まってから。訳も分からず地面に転がる体を持ち上げようとすると右腕に激痛が走る。

 仕方なく左手だけで身体を起こし周囲を見渡すと、すぐ側に着地したはずのドスフロギィが離れた場所にいた。

 

「蹴飛ばされたのか」

 

 着地と同時に蹴りを繰り出すとは器用な奴だ、と感心する。

 冷静さを取り戻してきた頭とは反対に、体の方はこれでもかと危険信号を発している。このままの戦闘続行は不可能だ。

 

「一度撤退だ」

 

 ロギィは携帯ポーチの中から支給用モドリ玉を取り出した。それを地面に叩きつけるとたちまち緑色の煙があがる。

 

 モドリ玉の煙には即時的且つ短期的な回復効果があり、それを吸い込むことでキャンプへ帰還するだけの体力を得られるのだ。

 ただしそれで得られる体力は無理に引き出している物であり、帰還以外の目的での使用はギルドによって固く禁じられている。

 この闘技場の場合、加えて絶たれていた退路を再び開いてもらうための合図も含まれている。

「ふう、何とか戻って来れたな」

 

 門が再び閉じられた音を聞いて安堵する。

 

 備え付けられたベッドへ移動し装備の下の怪我を見る。

 

「真っ青だな」

 

 ドスフロギィの尻尾にぶつかった左脚と蹴られた右腕は打撲で酷い青アザが出来ていた。

 右腕は特に酷く、何とか骨は折れずに済んでいるようだが、ヒビが入っていることはほぼ確実だ。

 

 拠点内にあったバリスタの矢を拝借し、鏃をとって添え木とする。

 

「とりあえずの処置しか出来ないが……無いよりはマシか」

 

 痛みは残るが、無理な動かし方をするか、もう一度同じ部位に攻撃を喰らうなどしなければこれ以上悪化はしないだろう。

 

「ガードはなるべく控えよう」

 

 ダーティファニングの刃を研ぎ、盾のベルトを締め、携帯ポーチ内のアイテムを整理し、大タル爆弾を台車に括りつける。

 大タル爆弾と支給用大タル爆弾を乗せた二台の台車と共に、ロギィは再び戦闘エリアへと足を踏み入れる。

 

ドスフロギィはロギィを探しているようで、キョロキョロと辺りを見渡していた。

 ロギィは支給用大タル爆弾の乗った台車をその場に放置し、大タル爆弾の乗った台車だけを引いて駆け出す。

 

「ゴァッ!」

 

 ドスフロギィがロギィに気付いた。

 ロギィは闘技場の中心に佇むドスフロギィに向かって走る。大タル爆弾に刺激を与えないよう注意を払いつつ、かつ可能な限り迅速に足下へ潜り込む。

 ドスフロギィも黙ってはいなかったが、足踏みしてロギィを踏み潰そうとするばかりでその場からは動いていない。お陰で大タル爆弾の設置に影響は無く、点火した小タル爆弾を添えてその場を離れる。

 

 十数歩離れた所で背後から爆風と爆音が襲う。

 

「ゴオォッ!?」

 

 振り向くと、ドスフロギィの左足の内側が吹き飛んでいた。

 ドスフロギィはどうにか体勢を保とうとしているようだが、上手く力が入らないのか、それとも痛みに耐えられないのか、膝をついてしまう。

 

「丁度いい高さだっ!」

 

 膝をつき、身を屈める形となったドスフロギィの頭部は、ロギィにも手の届く位置まで降りてきていた。その中でも特に低い位置にある喉袋に狙いを定め、ロギィはダーティファニングを振るう。

 

 研ぎ澄まされた刃は紫色の表皮を容易く切り裂く。喉袋は瞬く間にボロボロになり、中から毒霧の元となるであろう液体が漏れ出ているところもある。

 

「グオォ……」

 

 足を爆破され、喉袋も部位破壊され。さしものドスフロギィも弱った声で鳴く。

 

 ここが好機とばかりにロギィは攻撃を続ける。

 

 ふと顔を上げるとドスフロギィと目が合った。

 瞼も落ちかけ、見るからに弱っている。

 しかしその目は死を待つ者の目では無く。ロギィは思わず距離を取ってしまう。

 

 ほぼ本能からの行動だったが、それは正解だった。ロギィが下がった瞬間、ドスフロギィが立ち上がったのだ。

 

「ゴアアァァッッ!!」

 

 荒々しい雄叫びが響く。もう限界も近いであろう身体で立ち上がるのは、さしずめ火事場の馬鹿力とでも言うべきか。

 

「まだ立つのか」

 

 ロギィの消耗も激しいが、ドスフロギィ程ではない。だが手負いの竜が思いもよらぬ力を発揮する事はハンターなら誰もが知る事だ。今回の場合、さらに怒り状態にもなっているようなので、より一層の慎重さが必要となる。

 

「グオゥッ!」

 

 噛み付き。立つのが難しい左脚は膝をついているお陰で低い位置に牙が届きやすくなっているようだ。迫り来る牙をスレスレで避ける。

 

「この高さなら!」

 

 先程使わずに取っておいた支給用大タル爆弾を見る。扉の前に放置されたそれは今も健在だった。

 本当は転倒したドスフロギィを仕留めるとどめに使おうと思っていたのだが、ダメージを与えられるのならなんでも良い。

 

「こっちだ!」

 

 大きく手を降って挑発しながら支給用大タル爆弾の元へ誘導する。

 

「ゴアッ!ゴアァッ!」

 

 足を引きずりながらも標的を追うドスフロギィ。

 

「そのままこっちだ」

 

 ロギィは支給用大タル爆弾の前で立ち止まる。

 

「ゴオオォォッッッ!」

 

 追いついたドスフロギィが大口を開く。

 数多の牙がこちらを向いている。

 

「…………今ッ!」

 

 ドスフロギィの顎が閉じられんとするその瞬間、ロギィは真横に身を投げ出す。

 その結果、ドスフロギィが噛み付いたのはロギィではなくその後ろの支給用大タル爆弾。

 

──────

 

 体が地面に着いた時、熱い風が背中を撫でた。うつ伏せになっていたため衝撃はさほどでもなかったが、鳴り響いた轟音は破れそうな程にロギィの鼓膜を叩いた。

 

「ーーーーッッッ!!」

 

 ドスフロギィの声になっていない叫びが聞こえる。口に直接爆発をくらったのだ。喉が焼けているのだろう。

 起き上がって振り向けば、虚ろな目で倒れるドスフロギィ。それが決着の時だった。

 

 

▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

「此度はよくぞ私のドスフロギィを狩ってくれた。改めて礼を言おう」

 

 闘技場に併設されている医務室の一角で、昨日までロギィは療養していた。日常生活に支障のないぐらいまで回復し、帰宅の準備をしているところに依頼主であるマノトスが訪れた。後ろには何やら布の掛かったワゴンを押す執事の姿がある。

 

「傷の方は良くなったそうだな」

 

「ああ、おかげさまでな」

 

 狩猟後直ぐに医者に掛かる事ができるのは闘技場での狩りの特権だろう。

 

「それで、なにか用か?」

 

「うむ、今回の依頼の報酬を渡そうと思ってな」

 

「報酬なら既にギルドから受け取ったぞ?」

 

「実は君の狩猟が好評でな。他の貴族から絶賛されたのだ!」

 

 マノトスが嬉しそうに言う。ロギィとしては予想外だったようで、目を丸くしている。

 

「そこでだ。君はドスフロギィを深く愛しているという事で、こんなものを用意させた」

 

 マノトスがワゴンに掛かっていた布を引き払う。

 

「こ、これは……」

 

 毒々しい橙の肌、焦げ茶色の尾に紫色に膨らんだ喉袋。小さいながらもそこにいたのはまさしく──

 

「ドスフロギィ!」

 

「そう、君が討伐したドスフロギィの素材から作った1/10ドスフロギィ模型だ!!」

 

 ロギィの腰程もある模型にロギィは大興奮。子供のように目を輝かせて色々な角度から眺めている。

 

「すごい……これをくれるのか?」

 

「そうだ」

 

「ありがとう……本っ当にありがとう……!!」

 

 荷物を纏め終えたロギィは、マノトスが一緒に持たせてくれた木箱に模型を入れ、意気揚々と帰って行った。

 

 

 帰宅中、木箱がめちゃくちゃ邪魔になったのは言うまでもない。




巨大ドスフロギィ
 マノトスが手塩にかけて育てた結果大きく育った。イベントクエストのあり得ないくらいデカイモンスターが出てくるクエストが好きでした。

1/10ドスフロギィ模型
 マノトスが特別に作らせた模型。本物のドスフロギィの素材が使われており非常にリアル。
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