「あ、ロギィさん丁度良いところに」
ヒズミがイズデ村に来てから数日。水没林での狩りに慣れてもらう為、簡単なクエストへ行こうかとヒズミと共にクエストカウンターへ立ち寄ると、ローサが一通の手紙を持って声を掛けてくる。
「どうした」
先日の手紙を思い出してかロギィは身構えるが、今回はそういった要件ではない。
「ハンターランクが上がったそうですよ」
「随分と早いな。前回上がってからまだ二年くらいしか経ってないんじゃないか?」
ロギィは不思議そうに言うが、ローサはこれを否定する。
「大体そのくらいですね。でもここ最近は割と高難易度だったり緊急性の高いクエストを受けてましたから、そんなものだと思いますよ」
「確かに。こないだのドスフロギィはデカイだろうなぁ」
「マノトスさんはギルドとも親交の深い貴族ですからね」
納得するロギィにヒズミが質問を投げかける。
「そんなすぐにランクを上げられるなんて凄いな。ロギィはG級ハンターを目指したりしてるのか?」
ハンターランクは一般に、一つ上げるのに五年程かかると言われている。その為、ハンター人生を通じて上位までたどり着けない者も多い。
そんな中、まだ若い年代で上位へと昇格し、比較的早いペースでハンターランクが上がっているのなら、G級と呼ばれるハンターも目指せるのでは無いか。とヒズミは思ったのだ。
「G級か。俺も昔は憧れたけど、実際にハンターになって、こうやって上位ハンターにまでなってみると見え方も考え方も変わって来るものでな。今はもうなりたいとは思わないな」
「そうなのか?やっぱり、実力が足りないとかそういうことか?」
ロギィはカウンターの隅から椅子を二脚持ってきて、座るようヒズミに勧めた。
「理由は色々あるが……ヒズミ、ハンターランクはどうしたら上がるか知ってるか?」
「どうやってって……そりゃあ、クエストを受けて、モンスターを狩って、それを繰り返せばいいんじゃないか?」
「大体合ってるな。詳細はローサの方が明るいだろう」
ギルドが斡旋するクエストにはそれぞれハンターランクポイントが設定されており、クエストを達成する事でそのポイントを入手出来る。
通常は入手したポイントが一定数に達するとハンターランクが上がるが、例外として昇格クエストと緊急クエストというものがある。
昇格クエストはポイントは足りないが上のランクに叶う実力を持っていると思われるハンターに下されるもので、「このモンスターを倒せれば上のランクでも通用するだろう」というモンスターが選ばれる。
緊急クエストは数ある依頼の中でも比較的緊急性が高いもので、「クリアすればポイントに関わらずランクアップ」という餌を掲げる事で、早急にクエスト達成させようという目論見だろう。もちろん、危険度も高いのでクエスト受注に制限はある。
「因みに、本当に緊急のクエストは実力のあるハンターに名指しで依頼されるから緊急クエストになる事はないわね」
丁度先日ロギィが受けたクエストような感じだ。あれは緊急クエストではなかったが、ハンターランクポイントは大量に貰えた。名指しで依頼されるクエストは通常よりも多くポイントを貰えるのだ。
「こんな感じでハンターランクは上がるんだけど、ランクが高いだけじゃG級にはなれないの」
G級に区分されるクエストはどれも危険度が段違いに高く、上位のモンスターを百体狩れたとしても太刀打ちできるという保証にはならないのだ。
そのため、G級のクエストを受けるには許可証が必要となる。
「へえ、知らなかった。てっきりハンターランクを上げていけばなれるものだと思ってたな」
「G級の仕組みを知る機会なんてそうないからね。それで、その許可証を手に入れるにはG級でも通用するという事をギルドに認められる必要があるの」
「実力を示すとなると、さっき言ってた昇格クエストか?」
ヒズミはローサの説明を思い出す。
「当たり。でも、もうひとつ方法があるわ。それが古龍の撃退よ」
「古龍……」
ヒズミは感嘆の声を漏らす。
古龍、意思を持った天災と言われる程の力を持つ生物。それを撃退してようやく辿り着けるG級というランク。
これまで認識が曖昧だったが、ようやくその遠さを実感出来た気がした。
「なるほど、確かにロギィでも難しそうだ」
ロギィが強いと言えど、G級には到底及ばない。そうヒズミは理解したが、ロギィはそれだけでは無いと言う。
「情けない話だが、G級のモンスターと対峙するのが怖いんだ。上位のモンスターにだって死にかける事ばかりなんだ。G級なんてとんでもない」
一度でもモンスターと相対した事のある者ならば分かるだろう。生物としての根本的で、圧倒的な差が。
それは当然ヒズミにも分かる。情けないなどとは思わない。
「まあそういう訳で、俺はG級は目指してない」
ロギィはそう言い切った。
ヒズミは、自分ならどうだろうと考えてみる。先程G級というランクの遠さを理解はしたが、挑戦してみたいと思う気持ちはむしろ湧き上がってくる。
今はまだ下位のモンスターにも敵わぬ身だが、G級も目指すだけならば自由だ。
「俺は、G級目指してみたいな」
伝説に語り継がれるようなハンターと肩を並べられるかも知れないと考えると俄然やる気も湧いてくる。
「とびっきり厳しい訓練を用意して応援するぜ」
「座学が必要なら、みっちり仕込んであげるわ」
ロギィもローサも熱く応援してくれている。
「ああ、よろしく頼むよ!」
次の日から、イズデ村ではしばしばヒズミの悲鳴が響くようになった。
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