蝶の少女と日の少年   作:らびっとありす

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ゆっくり気ままに駄文ですが書いていきます。まぁ会話文多めですけどね。


弐:押せばいけるんじゃないか。

「………何してんだ?」

 

「うわっ!?」

 

人々の笑い声が耐えない昼下がりの街中。2人は別々の理由で街に出ていた。

 

「何してるんですか?」

 

「今日非番だったんだよ。」

 

「いやそれは知ってますよ。街中で何をしてるんですかと聞いてるんです。」

 

「家族になんか買おうかなってな。仕送りと一緒に。」

 

炭治郎は家族と離れて暮らしている。元はと言えば家族に対する負担を少しでも軽くしようと思い、鬼殺隊に入った。今では柱という階級なため家に帰ることすら難しい。そのため、1ヶ月に1回給料の半分を仕送りとして家族に送っている。

 

「なるほど。ほんとに家族思いですね。私は薬の材料調達と毒の材料の調達です。」

 

「……毒の調達って。話だけ聞いたら物騒だな。」

 

「これでも私、毒を使える少しすごい人なんですよ?」

 

「はいはい。」

 

「軽く流しましたね!?」

 

目上の人や見知らぬ人には敬語を使うが、身近な人や仲のいい人には砕けた口調で話す。こんなやり取りもしばしば。

 

「それでどうしたんだ。こんなところで。」

 

「ん?あっ、えっと。なんでもないですよ。買ったものも買ったので街をぶらぶらしてただけですよ。」

 

「……なるほどな。」

 

目の前には雑貨が売ってあり、首飾りのようなものが売ってあった。

 

彼女は確かに鬼殺隊の中で『柱』と呼ばれる実力者ではあるが、普通の人である。それでいて一人の女性なのだから、興味が無いという訳では無い。

 

「そういえば、炭治郎はこれからどうするですか?」

 

「ん?俺か?」

 

「はい。私は本部の方に戻ろうかなと思ってるんですが。」

 

「……俺はちょっと買うもんがあるから。」

 

「そうなんですか?」

 

「あぁ。」

 

「……あの。」

 

しのぶがボソリと呟く。

 

「ん?」

 

「…鬼がいなかったらみんな夜もこんな感じだったんでしょうかね。」

 

鬼。

鬼殺隊がずっと昼夜問わずに戦い続けている敵。夜は鬼の時間だというぐらいに鬼は人々にとって恐怖の象徴になっている。

 

「分からない。もしかしたら鬼がいなかったとしても他の生物が夜を支配していたのかもしれない。でも、その夜を取り戻すために俺たちは戦っている。そうじゃないか?」

 

「……そうですね。すみません野暮でしたね。それでは私は先に戻ってますね。」

 

「……おう。」

 

しのぶはスタスタと本部の方に帰って行った。すると後ろからガシッと肩を掴まれる。何事かと後ろを振り向くと、

 

「よっ。どうしたんだそんな顔して。」

 

「宇髄さん!?」

 

『音柱』宇隨天元がいた。宇隨の嫁に料理を教えていたら何故か気に入られたらしく、その後時々相談相手になってくれるほどの仲になった。

 

「派手に驚くじゃねぇか。なんだ首飾りなんて見て。お、しのぶに買うのか?」

 

「なんでしのぶに直結するんですか。」

 

「え?違うのか?」

 

「いやまぁそうですけど。」

 

宇隨がなにか悪いことを思いついたのか、にやりと笑う。

 

「お前が誰かになんか買うってのは珍しいな。」

 

「そうですか?」

 

「それも『女性』相手。そして同期の女性に対してだ。なんか企んでんのか?」

 

「なんでそんな楽しそうに俺の事見るんですか。別に深い意味も無いですよ。……別にそんな深い意味は。」

 

『ほーん』と言いたげな表情で彼を見つめる。はぁっとため息をついて彼はぽつりぽつりと呟いた。

 

「仕事熱心でしょあいつ。だから仕事と私用を分けるんですよ。まぁそれは良いんです。まぁ頑張りすぎて何徹もして結局俺に運ばれるっていうのがオチじゃないですか。だから、少し何か買ってあげようかなって。きっと仕事に支障をきたすからって理由で買わなかったんだと思います。俺から送ればそんなこと関係ないんじゃないかなって。ただそれだけで、別に深い意味は無いんです。俺に何か出来ることって言ったらあいつの傍でずっといることくらいですし。」

 

「……炭治郎。」

 

「はい?……おっと。」

 

宇隨がひょいっとなにかを投げる。受け取ったものを見てみるときっちりその首飾りと同じ代金のお金が手の中にあった。

 

「やるよ。ま、いいもんも見れたしな。」

 

「え?あ、ありがとうございます。」

 

「たまには先輩らしいこともやらせろ。じゃあな。」

 

(いいものってなんだ………。)

 

 

 

 

 

 

「はぁぁぁぁぁぁ。」

 

蝶屋敷。平和な時間に一人の大きなため息が響く。声の主は言うまでもなく彼女である。今日は散々姉にも子供にも休めと言われているために、体を休めていた。

 

「そんなに大きなため息ついて。どうしたの?炭治郎君と喧嘩した?」

 

「してないですよ。……なんか馬鹿馬鹿しくなってきて。私だけなのかなぁって。」

 

よっこらせと床に転がっていた重い体をあげる。

 

「聞いてよ姉さん。私あんなに色々言ってるのに彼、振り向くどころか私の好意に気づいてすら居ないんですよ!?どんだけ鈍感なんですか!?」

 

「まぁまぁしのぶ落ち着いて。カナヲもアオイもなんか言ってあげて?」

 

「………やっぱり仕事させとけば良かったんじゃない?」

 

「私も同意見です。」

 

「違うの。そういう意味じゃないの。あのね。確かに彼は鈍感よ。まぁそんなことあなたが一番知っているんだとは思うんだけど。」

 

「周りのことには敏感なのになんで自分のことにはこんなに疎いの。まぁ良いですけど。」

 

「………やっぱり仕事させとけば良かったのかしら。余計悪化してない?」

 

「してる。」

 

「仕事している方が活き活きしてないですか?」

 

あんなに怒っているのが珍しいのか、はたまた半分呆れているのか声をかけるタイミングを失った。当の本人はと言うと、自分の思いを素直に伝えられない自分に対してと、にぶにぶな同期に対しての愚痴と惚気をこれでもかというくらいに呟いていた。

 

すると廊下の方から足音が聞こえてきた。

 

「ただいま。……ってお前は何してんだ?」

 

「あ。お帰りなさい。」

 

「お前何事も無かったかのように進めんだな。」

 

「何も無かったですよ。ただあなたに対する不満を少々愚痴っていただけです。」

 

(((半分くらい惚気じゃ。)))

 

「あ、そういや。」

 

何やらゴソゴソと自分のポケットの中を漁り出す。そして小さな紙袋を取り出した。

 

「……これって!?」

 

「見てたろ。それ欲しいんじゃないかって思って。」

 

花の形をした首飾りがその紙袋の中に入っていた。

 

「え?なんで。どういう風の吹き回し!?いやまぁあなたがすごく優しいって言うのは知ってるんだけど。」

 

「……。あー。その。なんだ。お前、すごく頑張り屋だろ?」

 

「……はい。」

 

「そこは否定しないんだな。だからすこしでも恩返し出来たらなって思って。俺はお前みたいに頭がいいってわけでもないし、器用って訳でもない。知っての通り俺ができるのは鬼を切る。それだけ。お前は俺に色々してくれてるのに俺だけお前になにかしてないって言うのはなんか嫌だったんだ。」

 

「………。」

 

「俺がお前にできることって言ったらずっとそばにいることくらいだからな。だからえっと。それは今の俺の気持ちだって思って貰ってくれないか?」

 

しのぶはふとあの時の出来事を思い出した。

 

ーーー『お前が無事でよかった。』

ーーー『俺の大切な人に手を出した。それだけで理由は十分だ。』

 

あの時、命をかけて守ってくれた彼のぎこちない笑顔を知っていた。あの笑顔がトラウマとなって染み付いてずっとずっと離れなかった。

 

その笑顔はまるでその時と同じだった。あの時のようにぎこちないけど、心の底から落ち着く笑顔だった。

 

「……ちょっとつけてもいいですか?」

 

貰った花の首飾りを首につける。

 

(少し。からかってみましょうか。)

 

クスッと影で笑って彼の方に向かってとびっきりの笑顔で振り向いた。

 

「どうですか?似合ってますか?」

 

「………すごく似合ってる。うん。ほんとに。」

 

(……ま、やっぱり駄目ですか。………ん?)

 

彼女は一瞬の出来事も見失わなかった。彼の顔がほんの一瞬赤くなったのを見逃さなかった。

 

(………あれ?)

 

「………それじゃ俺はちょっと散歩してくる。」

 

「あ、はい。(んんん???)」

 

彼が振り向くと耳がほんのりと。じんわり赤かった。

 

「………。まさかなんだけど。」

 

彼が見えなくなった瞬間、しのぶのくすくすという笑い声が聞こえてきた。

 

「あれ?……もしかしてこれ。……押したら割といけるんじゃないですか?」

 

 

 

 

 

「あら。しのぶその首飾りの花、朝顔じゃない。」

 

「あ、これ朝顔だったんですね。それがどうかしたの?」

 

「花言葉は固い絆。あなたのことをそう思ってるってことなのかしら。」

 

「……固い絆。」

 

「まぁあと2つあるのだけどね。それはまた気が熟した時にね。」




アサガオ:花言葉『固い絆、儚い恋、愛情』
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