炭治郎さんの過去話が出てきますが、完全に捏造というか原作と違ってかまぼこ隊と合ってないのでもし会ってなかったらこんな話もあるのかなみたいな。
炎柱【煉獄杏寿郎】が上弦の参【猗窩座】と接敵して約数ヶ月が経過した。炭治郎の救援が間に合い致命傷は免れたものの、煉獄は柱を引退せざるをえない傷を負った。
新入りの隊士の活躍があってか鬼の数は減り、と上弦の陸、伍、肆が討伐された。鬼殺隊が軌道に乗り始め、鬼殺隊の反逆が始まったかと思った。そんな時だった。
「炭治郎!?」
「おい。何があった。あの炭治郎がここまでやられるなんて。」
鬼殺隊に激震が走った。何せ【最強】と呼ばれている炭治郎が不意打ちだがやられたのだ。
「完全に………やられた。不意打ちを……食らった。」
「今は炭治郎君の保護が最優先よ。カナヲ、アオイは応急処置の準備を。」
「「はい!」」
「大丈夫。しのぶ。炭治郎君は死んでないから。死んでないから。」
「分かってる。……えぇ。分かってる。」
炭治郎は【普通の状態】であれば最低三体の上弦を相手にしたぐらいでは死なない。しかしそれはあくまで普通の状態のときだ。彼は度重なる戦闘と寝不足でコンディションが最悪だった。
そんな時に上弦三体と鬼舞辻本人が炭治郎に対して一斉に襲いかかった。何とか退くことが出来たが、その傷は浅いものではなかった。重体とまでは行かなかったものの、立ち上がれないほどにまでやられていた。
「大丈夫なんですか!?お兄ちゃん!」
「やばいよやばいよ。最強の炭治郎さんがやられたらやばいよ。」
「なぁほんとに大丈夫なんだよな!?」
「あぁ。大丈夫だ。でもこれは流石にやばいな。」
「最強格の奴がやられたってことは、敵が攻めてくる確率が高くなったってことだ。いや確実にくる。」
「でも……アイツらも重症だから。……来るのは向こうが完全に回復してから。だと思う。」
「あんまり喋らないで。今回は血が流れてるんだから。」
「………ごめん。」
平和な日々。
なんの代わりもしない平和な日々。しかしそんな日々は一瞬にして壊れた。
彼はいつも口癖のように言っていた。
『平和が壊れる時はいつも、血の匂いがする』と。
まさに今この瞬間だった。
「とりあえず、しのぶは炭治郎君の様子を見といて。炭治郎君は体を無理に動かさないように。」
「私たちは周りの警備をしてくるから。」
「うん。わかった。」
止血は終わり動けるようにはなったものの、未だに戦える程の体力は回復しておらず最低一日は休めと釘を刺された。周りは今までに無いほどの警戒モードで隊士が忙しなく警備に当たっていた。
「ねぇ。炭治郎。」
「ん?」
「……なんで。こんな無茶したの。」
「やらないとダメだったから。……やらないと「そういうことを聞いてる訳じゃないの!!!」……。」
「私は。なんでこんな無茶な戦いをしたのって聞いてるの。貴方が無謀な戦いに挑んだ理由を聞いてるの。」
静かな怒気を帯びていた。いつもからかって怒っているような怒気ではなく、本気で怒った怒気を。
「……もう。失いたくないから。」
「……失いたくない……から?」
暗い表情でぽつりぽつりと震え声で話し始めた。
「昔。まだ父親が生きていた時の話だ。俺は沢山の兄弟が居た。そんな中で俺は周りより5年早く産まれたんだ。………何も無い。本当に何も無い平和な日々だった。とても幸せだった。なんの不自由もなくただただ幸せだった日々だった。」
その瞬間、彼の瞳に歪みができたのをしのぶは感じた。彼の瞳に。綺麗な瞳に1点の歪みができたのを。
「……俺は。父親。その時、お父さんと木を切ってたんだ。そろそろ帰ろうと言った瞬間、吹雪の奥にシルクハットを被った男性が現れたんだ。」
「……それってまさか。」
まるで死んだ魚の目をして彼は呟いた。
「鬼舞辻無惨だ。あいつは俺のお父さんを見つけた瞬間、どうしたと思う。………殺したんだよ。」
「!?」
「俺は岩陰に隠れることしか出来なかった。気づいた頃には遅かった。目の前にはお父さん『だった者』の死体と血が残酷に散らばっていた。」
「……そんな。」
「三日三晩泣いたよ。でも泣いてても始まらないから。その時には禰豆子も生まれてたから自分は『長男だから』って言い聞かせて耐えた。俺が鬼殺隊に入った理由。それは簡単だ。俺が人一倍『鬼舞辻無惨』に固執しているからだ。俺はあいつを殺さないといけない。俺が終わらせないとダメなんだ。……この手で終わらせないといけないんだ。この手で。」
「……だから?」
「だから?」
「なんで私たちにそれを言わなかったの?」
「……お前たちに迷惑かけたくな『バチンッ!!』」
屋敷の中にビンタの音が響き渡った。
「何すん「馬鹿じゃないの!!」」
しのぶの頬にほのかに暖かい物が流れていた。そして今までに見た事がないくらいに瞳が涙で輝いていた。
「それで私たちに何も言わずに戦い続けてたの!?本当に大馬鹿者ねあなたは!!何が迷惑かけるよ!?私たちはそんなに弱いと思ってるの!?私がそんなに信頼ないの!?」
「そこまでは「言ってるようなものじゃない!」」
何も言い出せなかった。ただ聞いているだけしか無かった。
「……知ってるわよ。貴方が優しいことなんて。私が一番近くで見てきたもの。……でも今のあなたは炭治郎じゃない。私の知ってる優しくて愛らしいあなたじゃない。今のあなたはただの復讐者。……鬼よ。」
「………。」
「……でも、きっとそんなところでさえわたしは……。好きになってしまったのかもね。」
「……え?」
まるで時が止まったような感覚がした。唇に人の暖かい体温がじんわりと伝わった。
「………聞いたわ。姉さんに。朝顔。花言葉は『愛情』なんでこんな言葉をあなたは知ってたのかしらね。」
「………しのぶ、?」
「嬉しかったんですよ。『だってそりゃ俺の大切な異性の人なんだから。当たり前だろ。』って言われたこと。あなたにそう思われてたんだって思って。」
炭治郎が恥ずかしそうににやけた。
「……好きです。私。あなたのことが。胸が張り裂けそうになるくらいに。こんな状況で言うのは場違いだとは思います。でも今言っておかないともう言えないんじゃないかって思ってしまって。」
「………。俺もだ。」
「…へ?」
「俺も。お前のことが好きみたいだ。……ずっと気持ちに気付かないふりして。ずっと隠してたけど。今やっと確信した。俺はお前のことが好きなんだ。」
「……ふふ。それじゃあ私たち、恋人……って事ですね。」
「……なんでこんな切羽詰まった時になんだよ……もうちょっと無かったのかよタイミング。」
「……あなたが気づかないからですよ。」
意地悪そうにクスクスと笑いながらしのぶは呟く。そして立ち上がって瞳を見つめながら言った。
「ここからです。もう、その命はあなただけの命じゃない。私の命でもあります。1人でできないことも2人ならできる。昔から私達はそうしてきました。だから」
「2人で無惨をぶっ倒す。そして全員で笑って過ごせる世界にする。」
「そうですね。やりましょう。今の私たちならなんでも出来るような気がします。」
「おう。俺たちで終わらせるぞ。この因縁を。」
「はい!!」
夕焼けの空で2人の拳が重なり合う。2人のぎこちない笑顔と笑い声が響き渡った。
「「2人ならできる。絶対に終わらせる。」」
「……そして。今度は伝える。絶対にーーー。」
ーーーこれは、儚き恋の鎮魂歌。
結ばれましたね。……結ばれてしまいましたね。