どうしてこうなった
私が電車に轢かれた日
いや正確には会社の人事で無能へリストラを言い渡した日、その元社員に逆恨みされて駅でホームへ突き落され私が走行中の電車に挽肉にされるだろうという瞬間
アレが現れた
忌々しい存在X!
アレは幼女の姿をした悪魔だ
ホームへ突き落され電車に轢かれる瞬間にヤツは現れた
どこぞの、そうナチ時代のドイツにも似た軍服のコスプレをした幼女が宙に浮かんでいた
ヤツは驚いた顔をしたが電車が迫ってくるのをチラリと見て慌てて私の首元を掴み向かいのホームへ投げ入れた
一瞬の空中浮遊の間スーツが伸びるだろとか猫じゃないんだぞそいう思考が巡ったがホームのコンクリートに背中から叩きつけられた。
背中が痛いのと手加減なく首元を掴まれたため気道が狭まり咳き込んだ私にソイツは話しかけてきた。あのままだと轢かれてそのまま私に生っていたと憮然とした顔で言い放った
なんだこのコスプレ幼女は一体なんだ。
空中にまだ浮いている。見た目は幼女だ。年のころは10前後、金髪に碧眼で見目は整っているがどことなく焦燥感がある。なんだコレは。
おまえは何だ
そう言ったはずだが声が出なかった。しかし幼女は私が何を言ったかわかったようでこう答えた
「わたしはおまえの来世だ」
意味がわからない
来世などあるわけがない。死んだらそこで終わりだ。今まさに死にそうであったところだが私は生きている。これは白昼夢というものだろうか。いやそんな馬鹿な。
「なぜ幼女なんだ」
彼女は少々ムッとした顔で悪魔に会って転生させられたと答えた
「本来であれば ・・・私は死んで、いや ・・」
無用な問答だ私は生きている
「おまえが私の来世と言ったが証明できるのか」
「助けただろう」
なるほど超常の現象を起こした彼女は人間以外の何かであるのだろう
この世の理を外れうるのは神か悪魔である
神がいるならば世の不条理はなし。故に神はいない
よって、目の前にいるのは悪魔である。
証明完了。ゆえに彼女は存在X
周りは皆超然とした事象に沸き返っている。ホームを突き落された男性が向かい側のホームへなぜか着地した。奇跡だ、奇跡だと誰かが喚いている。
ああ全く騒がしくて嫌になる。ある者は写真を撮り、ある者は私を指差している
いや、まてなぜ目の前にいるこの幼女へ皆々目を向けないのだ。なぜこの私を冷たく見下ろしてくる幼女は大衆の視線を集めないのか。背に嫌な汗が湧き出す。時間が止まったかのような沈黙が私と幼女、2人の間ににはあった
「大丈夫ですか」
駅員の言葉が現実へ私を引き戻した
ええ、と尻餅をつき盛大にコートとスーツを汚した私を駅員は立ち上がらせて何があったか質問をする
「突き落されたんです」
向かいのホームを見ると私を突き飛ばした男は逃げようとしたが現行犯で駅員に拘束されていた
その後が大変だった
刑事事件にはならなかったが現行犯逮捕だっため事情聴取を取られた。時間の無駄だった
その後、会社へ有給を申請し病院へ検査に向かった。
ここからだ!私の人生のすべてが狂ったのは!!
病院でこの世のものとは思えない化け物を視ることになった私はとうとう認めた
彼女はやはり悪魔だ
市の総合病院である、そこそこの敷地をそこそこの人がそこそこ忙しそうに働いている
急患でも急病でもない私は検査のため病院の待合室でくたびれたグレーの長椅子に坐って名前を呼ばれるのを待っていた
その横で幼女がふわふわと浮かんでいるが誰も気に留めず見向きもしない
存在を認められないなら無いものである。故に私も彼女を無視する。
視界にチラチラと映る人外のもの人間をこねくりまわしてさらに捻って粘土でパーツを無理やり継ぎ足したような異形が病院内を闊歩している
なんだあれは。つい先ほど存在Xと仮定した幼女も凝視しているが院内の看護士、患者、医者は視えていないように動いている。
私と幼女以外存在を認識してないどいない
これはもしや死にかけたせいで見えるようになった何かか?仮定が多すぎる。まともじゃない。
異形が杖を突きながら歩く老人を蹴飛ばした。老人は転んだが隣にいる異形は見えていないようで不思議そうにしている。看護師が慌てて患者へ駆け付け起き上がらせてけががないか確認している。
「なんだあれは」
「さて地獄の使者か、魂を取りに来た死神でもないようだがな」
関わるべきものではない
隣の幼女も同じことを思ったようだ
「帰るぞ」
私だけにしか聞こえていない音が鼓膜を震わせた
長椅子の左下、枯れ木のような腕が1本突き出して手首をぶらぶらさせている
ついぞ働かなかった私の生存本能がこれはヤバいと警鐘を鳴らしている
受付に会社から呼び出しがあって帰ることを伝え、病院を出た。
病院を出たところで電信柱の根本や交差点の真ん中、廃ビルの窓などいたるところで人間をこねくりまわして再構築したような異形が我が物顔で存在している
なんだこれは
今目の前で走行中のトラックの運転席に入り込んだ異形が運転手からハンドルを奪って交差点に突っ込んできた。
なんだこれは
建築中のビルから鉄骨が落ちてきた。上を見上げれば化け物がキィキィと笑っている。化け物がこちらへ向かってビルから落ちてきた。私を見て嗤っている。ソレが萎びたような腕を振り上げて殴りかかってきたところを躱した。運動神経はいいほうだが避けられたのはほぼ運だ。鞄を抱えて化け物から全力で逃げる。
なんだアレは!私はただ平穏で健康で文化的な生活ができれば満足なんだ。少年マンガやゲームの世界じゃないんだ。孤独なヒーローにも主人公にもなりたいなんて思わないのになんであんなものと関わるようなことになったんだ。それもこれも横でふわふわ浮いている幼女の姿をしたコイツが現れてから散々だ!
「目をつけられたようだ。走る速度上げたほうがいいじゃないか」
「指図するな。存在X」
「せっかく命拾いしたのならもう少し長生きしたくないのか」
「ならアレをおまえが倒せばいいだろう!」
「先ほど触ろうとしたんだがすり抜けてしまってな。おまえ以外どうやら干渉ができんようだ」
「おまえが知ってる前世でアレと関わったのか!」
「初見だ。あんなものがこの世界にいたのも今日初めて知ったな。わたしはおまえの来世だが本来なら電車に轢かれてそのまま転生コースだから今日以降のことなど知るよしもない」
横の幼女が私が視ている幻覚だとしても私が解決手段を持たないなら頼るしかない。鞄を抱えてコートを翻しなら逃げているがいつまで逃げればいいのか
「倒せるか」
「無理だろう。わたしはこの世界に干渉できないようだしな」
「漫画でよくある特殊な力とか!」
「ああぁ・・・うぅむ」
「あるんだな!」
「あるといえばあるしないといえばないような・・・」
「デメリットがあるのか」
「考えたんだが前世はわたしでもあるのだからわたしが中に入れば」
「却下だ。なぜ信頼も信用もできない貴様に体を好きにさせねばならん」
目的は私の体だったとは存在Xはやはり悪魔だ。大方私の体を使って好き勝手するつもりだろう。頼った私が馬鹿だったな。人間、限界になると普段しないような行動をするというが私が冷静じゃないのはよくわかった。
夢中で駆けてもうすぐ家のマンションに着くというところで
「死ぬぞ」
また幼女につかまれたまま重力を無視して数十センチ移動した
化け物の攻撃で今まで走っていたアスファルトの道路に罅が入った。化け物はキィキィ喚いて悔しそうで腕を上げ抗議しているようなジェスチャーをしている。
幼女は私以外触れないと言っていたが成人男性1人の質量を片手で軽々移動させる幼女とは一体。
「おまえの腕力どうなっている」
「魔法で少々筋力を」
最後まで聞かずにたどり着いた我が家のオートロックのマンションのエントランスに入り込んだ。化け物は入口で諦めたのかここまで入ってこない。
「やっと帰ってきた」
エレベーターのボタンを押して自宅がある階を選択する。
今日は散々だった。もう寝てしまおう。明日起きたらすべて夢であったらいいのに
やっと我が家へ帰ってきた。鍵を開けて汚れたコートをハガンガーへ掛け、鞄を床へ下す。携帯の着信を確認したところで会社から3件ほど連絡があったことを知る。
後で折り返さなければ。ほうれんそうは社会人として当然。出来てあたりまえだ。
頭を壁にものすごい力で押し付けられた。
衝撃で壁が砕け、中身の石膏ボードが砕け散って間柱が間に見える。壁だった破片と家具や近くのプラモも床に落ちてバラバラになった。
脳震盪を起こしたのか力が入らずずるずると床へ崩れ落ちる。
首が痛いが米神が特に痛いな。頭蓋骨の形が変わったのかもしれない。
ぼやける視界で眼鏡も割れたのかとフレームのひしゃけた眼鏡が手に取れるくらいの場所にあった。
化け物がきぃきぃ嗤っている。
変われ
幼女の幻影が私の体へ重なった
わたしは近くに落ちたモデルガンを手にとった
かの有名なM9ベレッタ
イタリアのベレッタ社が設計した自動拳銃。
M9の名称で制式採用したアメリカ軍を筆頭に、世界中の法執行機関や軍隊で幅広く使われている。
なぜこんなものが家にあるかというと私が通販で購入したからだ。
オタクの家に模造銃の1丁や2丁無くて何卒するか
ヒューヒューと喉からの呼吸と心臓の音がうるさい
自分の身体のはずなのに私の意識を離れ指一本動かせないが指が何度も練習した自然な動きでM9ベレッタへ弾を込める。
『神の奇跡は偉大なり 主を讃えよ その誉れ高き名を』
口から意図せない言葉が漏れる
銃身を柔らかな光が包み幻想的な光景を作る。心臓に暖かな何か力の本流が流れ全身を回っていく。それは腕から手へ移り銃口の先に光の魔法陣を編む。
なんだこれは神の奇跡か?
「貫通術式 発射」
二次元でしか聞かないような銃音が響き化け物は頭部に穴を開け沈黙し前に倒れた。私に向かって。銃身でそれを跳ねのけると死体となった化け物はそれ以上部屋を汚すことなく消滅した
「威力は変わらんか。しかし・・・いささか銃口から近すぎたな」
射線上の部屋はひどいことになっている。貫通というだけあって3部屋分をブチ抜いてコンクリートの柱に弾が見えないほど深く穿っていた。
そこまでにあった家具やコレクションは軒並み倒れ、壊れ、修復は不可能だ。これだけ収集するのにどれだけ掛かったものか。
「どうしてこうなった」
いつの間にか肉体の主導権が戻っている。私は頭を抱えて呻いた。
何が来世だ。この悪魔め。おまえのせいでめちゃくちゃだ
「もういいだろう。私の中から出ていけ。存在X」
は?
戻れない??
中から出れなくなった
あ“???
ベレッタかコンテンダーか迷ったけどこっちで。
推定3級呪霊(拳銃で充分)にぶちかますターニャさん最高にオーバーキル