王は多くの人々に必要とされる。その為、王族を増やす事は安定とともに、不穏分子を身内に入れる事がある。でも、中には市井に血を分ける場合がある。所謂庶子である。
ただこれは王族に限らず、貴族の中にも庶子がたくさんいるとのことだが、認知率は王族よりも劣る。ただし、王族は国によっては一挙に断絶する可能性があるため、隠されたままの場合がままある。
そしてそんな王族の庶子の一人である、とある男は王城の離宮の傍で暇を持て余していた。
「暇なんだけど、なんかない?」
「申し訳ありません。一侍女に何を求めているのでしょうか?」
「暇つぶし」
「宮廷楽曲や遊技場なんかはどうです」
「曲が降りてこない、遊技場は姿を隠して出入りしてたけど、出禁になってもうた」
「出禁って、どんだけ荒らしたんですか」
「う~ん、うちの家計を火計から救う程度?」
「……あぁ、だから浪費できてるんですね、あの方たち」
「そうだね、尽きないと思ってるんだね、まあ僕には関係ないことだけど」
「あなたが王座に着けばと私個人としては思っているのですが」
「日陰者、陰干しされてる僕にはあんまり期待してほしくないかな」
「ぶっちゃけると?」
「血に塗れた、クソの積もった、火刑に処されそうな、とかの冠詞が付きそうな王座はノーセンキュー」
「……まあ、そうでしょうね、ですがバタバタとした動きに乗じてあなたが王座に就くことだって」
「できれば、逃げたいね、その時が来たら」
「……やる気ないですね~」
「やる気起きると思う?当人になってみたら」
「無いですね、私ももし闘争時は逃走しますね」
「巻き込まれは嫌でしょ?」
「でも、お兄様方は」
「何が魅力的に思えるんだろうね、あの王宮の人々は」
「さぁ、浅慮な私には思いもつきません」
「というか、僕を祭り上げた挙句無事王位に着いたらそいつら一掃するか、処断するよ、結構マジな話」
「貧乏籤を引かせた奴も貧乏籤をって、どっかの亡国の法律ですか」
「まあ、早々引く気はないし、表に出る気もないよ」
「……」
「今日も一日平凡に暇を謳歌する、日陰者は楽をしたい」
「……って言ったはずなんだけどね」
王座に座る弦月王家の第7代目王として即位した弦月藤士郎がそう独り言ちる。
「どうしてだよッ!!って何回言ったかな、ねえ侍女君?」
「浅慮な私に振られても、23回くらいじゃないですか?絶叫はそのうちの7回ぐらいですけど」
「……君も大概だよね、あの混乱期に逃げればいいのに」
「無駄なことは致しません、貴方が逃がすとも思えませんし」
「うん、逃げても無駄だよって言えなかったのはちょっぴり残念かなって思いながら、無駄に手数を割かなくて良かったのは僥倖かな」
「それはようございました。でもまさか祭り上げられる前に王家が全滅するとは、想像できませんでした」
「そうだね、まさか王家祝賀パーティーで出された珍味のキノコが、特定のお酒を飲んだ後だと中毒化するとは、魔女が解析してくれなかったら、原因不明で僕が暗殺したとか後世の歴史で叩かれてたんじゃないかな」
「暗愚や狂った王よりはましとか、逆に英雄扱いされてるんじゃ」
「はははっ、累積損益を押し付けられた感が強くて、国の正常化に終始して、今この王座に座ってる自分が?信じられねぇ」
「まあ、過去の英雄や偉人もそんな感想を持っているかもしれませんよ」
「もうさ、王政とかやめて、貴族による合議制とか、今度提案してみようかな」
「多分ご乱心として片づけられますよ、それ」
「だよね~」
「では私は次の謁見者ための準備に行ってきます」
そう言って侍女は王座の間を後にして、扉が閉まった瞬間ぽつりと
「中毒死の原因のお酒も珍味のキノコも、発注したのは結局誰だったんでしょうね?」
そう呟き、本来の侍女の仕事へといそいそと向かっていった。