王族の急死というのはいつの世も起こり得る出来事である。それが立て続けば必然だが、稀に偶然降って湧く場合がある。
「この文章を書いた奴は未来予知能力でもあるのかね?」
歴代各国王族史という分厚い本を机の上に投げ出しながらそう独り言を呟く。
まさにそれと同じ状況になったのが鈴鹿詩子だった。父親、つまり先帝は酒を好み、それが原因で病死。母親、女帝はそれを哀しみ、衰弱死。他の兄弟たちは、それぞれ戦死、圧死、転落死、中毒死、焼死、そして一番笑えないのが
「腹上死って、お盛ん過ぎないか、私と4つも変わらないだろ、第六皇子よ」
鈴鹿詩子15歳の呟きである。
「皇太子は葬儀に向かってくる途中のがけ崩れで土石による圧死、第二皇子は武功をあげようと功を焦り矢の集中砲火による戦死、第三皇子は城の階段を踏み間違えての転落死、第四皇子は葬儀後の食事会で食材に当たり中毒死、第五皇子は住まいが全焼の上、焼死。どれも不自然なようで、調べても全く不審点が出ないという、偶然とはかくも残酷なり」
そう頭を抱えていたが、ガチャリと扉が開く音がして
「鈴鹿家第七皇子、ウタ様準備整いました」
「ああ、判った、今から向かうよ」
鈴鹿詩子、改めて、鈴鹿ウタの戴冠式が行われる。教会隣国諸侯貴族、国民の全てが自分の登場を待っている。第七皇子としての自分を。本来であれば第一皇女として15歳を迎えて近日中に発表を行う予定だったのに。バタバタとぶっ倒れになるばかりに、発表は見送り、そして直系がいないため、今まで甘い汁を吸ってきた連中が次に集る場所として私を御輿に挙げた。
「はぁ~、果たして本当に父や母、お兄様方は偶然だったのか、疑っちゃうじゃないか」
そう愚痴りながらも、ズンズンと王城のバルコニーへと出て、少しでも威厳のある様に振る舞い、全国民へと顔見せを済ませる。今日この日から仮面を被る。
「さて、それじゃあ、僕は何をすればいい?」
無能な王、傀儡国家の様に周囲に敵を作らず、蜜を吸いに来た奴らにも一定のラインであれば許容した。
そしてそんな陰で、錬金術師、魔女、医者など多くのモノを引き込んだ。表向きは呪われているのではないかと様々な分野の者達に声をかけ、臆病に王城に引きこもる王。だが裏では、あの裏取りと、自分の性別をどのように誤魔化せばいいのかを知恵を借りている状態だ。ただし王としての雑事も降ってかかってくる。お世継ぎというモノをこさえなければならない。事情を知らない諸侯貴族たちの中には、自分の家の令嬢をといったものもあったし、私の正体を知っている奴らからは、従者としての男の子ともいえる者や、護衛の名のもとに騎士として等、様々な理由を基に送られてきた。
なお、招致した各部門の専門家監修のもと、事を起こす前に、事が起きないように、愉しみながらも、節度を守って行っている。まあ、そのまま返すのも無作法というモノ、精神である。決して第六皇子の二の前になろうというわけではない。若干怒られることもあったし、専門家ならではの楽しさを教えてもらうなど、ある意味社会勉強ともいえる。
そして、9年の月日が流れ、王城に諸侯貴族の集まる機会を作った。生誕祭および重要な発表をすると公布して。
「僕は、今日ここに宣言する。第七皇子鈴鹿ウタは偽りの皇子だった。かの日の王族史における虐殺事件の首謀者たちによって、私は偽りの仮面を被ることとなった。次の標的が自分にならないように、慎重に調査を進めなければならず、9年もの歳月をかけてしまった。私を支持する基盤も盤石になり、今日この日に首謀者たちを捕らえる事にした」
その宣言が終了すると、今まで好き勝手をし、蜜を吸い続けていた諸侯貴族を素早く城の警備に当たっていた兵士たちが拘束する。
そして王冠を取っ払い長い髪を靡かせ、
「今日ここに第七皇子鈴鹿ウタは第一皇女鈴鹿詩子に戻る。偽りの仮面をはがし、真実の私としてこれからは王政を執行していく。まず第一に首謀者たちの罪状より、刑を執行する」
「んで?」
「何だ?」
「あの件に首謀者なんていたのか?」
「いや、あれは本当にほぼ偶然に起こった事故みたいなものさ」
「じゃあ首謀者って?」
「蜜を吸えていたのは皇子の生命を握っていたから、そうした方が民衆や他の貴族達に同情的になるだろ?9年間洗い出しして何の証拠もなく、甘い蜜を吸ったからだけで一掃はできないだろ?」
「裏じゃ、好色王って言われてていたのに、表じゃ粛清王として名が通っていて、良いのかね?」
「別に二度目が無ければいいさ。なんせ、偶然様々な勢力が暴走したことや本当の偶然が絡まった事件だったからな、あの王族断絶寸前まで行ったのは」
「はぁ~、偶然重なるとはあいつらも思わなかっただろうしな」
「さぁ?人の心なんて丸裸にできる方が珍しいさ、褥ですら真実を紡ぐことが少ないんだから」
「好色王のいう事は説得力がちげぇや」
のちに、王族断絶寸前から一気に復興した国の伝説の一つに面白いものがある。様々な技術者の秘術を使ったのか。嫁いできた貴族令嬢を含む、結構な女性を懐妊させ、送られてきた男の子に、騎士を含め、全員を相手にしながら、朝日を一人でベランダで迎える女帝がたびたび目撃されたとか。
それに触発されたのか、彼女が王座についている間は、国の出生率が極端に上がったという。