Fate/Grand Order -AMAZON NEO REVISE- 作:古鉄の夜
――それでも……それでも俺は最後まで生きるよ――
なんだ……? 俺は確か、父さん達に殺された筈だ。なんで意識が戻ってきてるんだ?
それにこの熱さは一体なんだ? 周りで何かが燃えている様な……?
少年、千翼は瞼を開いて眼前に広がる光景に息を飲んだ。
そこには地獄があった。
破壊され、火の手が上がる瓦礫の山があちこちに存在している。その瓦礫の中には黒焦げになった人の腕らしきモノがあちこちから伸びている。
なんなんだよ。これは。これが地獄って奴なのか? 『アマゾン』である俺に相応しいのはこの様な場所だというのか……
いや、それも仕方ないのか。これが大勢の人に不幸をばら撒いた俺が受ける当然の報いなのかもしれない。
思考が暗い方向に向かい始めた千翼の耳に微かな声が響いた。
「――れか、誰か……いま、せんか……」
何処からかか細い声が響いてくる。千翼はハッとなり顔を上げ、周囲を見回した。立ち上がり声の聞こえた先に目を向けると、そこに一人の少女が倒れているのが見えた。
「大丈夫!? しっかりして!!」
それを見た千翼は弾かれた様に少女の側に駆け寄ったが、すぐさま顔を暗くする。
崩れた瓦礫がその少女の下半身を押し潰していた。
床を這う血液の量は尋常ではない。この娘が助かる見込みがない事を沢山の人の死を見てきた千翼に悟らせた。
それでも千翼は一縷の望みに賭け、瓦礫に手を掛けると持ち上げようと力を込める。
「くっ……ぐぐっ……! おあぁぁっ!!」
「あ……貴方、は……い、いいんです。も、もう……わたしは助かりませんから……」
「黙って! なんとかするからっ!!」
少女からの自分の行動を制止する声を遮り、千翼は力を振り絞って瓦礫を持ち上げようとする。何やらアナウンスがこの施設内で流れている。が、千翼は気にもくれない。だが、やはりビクともしない。
――こうなれば『ネオ』の力で――
まだ会って間もない人間の前であの姿になるのは憚られたが、状況は一刻を争う。急ぎ、自分が倒れていた付近に目を向けたが……
「えっ!? ど、どうして……」
しかし、そこにあるべきはずの物が無い。これまで片時も手放さなかった自分が頼みにしてきた『武器』が見当たらない。千翼は自分が倒れていた場所に駆け寄り、辺り一面を探し回ってみたが、どれだけ探そうと辺りの瓦礫をひっくり返しても見つからない。
「――畜生っ! こんな時に!」
「……ぱい、先輩……か、隔壁が……」
ふと、自分の耳に懸命に絞り出しているであろう声が聞こえてくる。
千翼はハッとなり、少女の元に引き返した。
「悪い! 突然離れたりして! どうかした!?」
「……に、逃げてください。隔壁が、しまっ……ちゃう」
少女が目線を向ける先、瓦礫の向こうにある大きな隔壁が閉まっていくのが見えた。
その顔が絶望に陰る。俺をもう逃がす事が出来ないと悲しんでくれているのか。見ず知らずの俺を……
「そんな顔をしないで。どっちにしろ俺にはあんたを見捨てて逃げるなんて考えられなかった。そんな後味悪い事するのはゴメンだよ……」
少女がハッと顔を上げて千翼を見る。そしてその面に弱々しくも笑顔が浮かぶ。
「先輩……お願いがあるのですが……」
「何? なんでも言って」
自分の死期を悟っているであろう少女。出来る限りのことをしてやりたいと千翼はその声に耳を傾ける。
「手を……握っていてもらえますか?」
「ああ、もちろん」
煤に塗れた少女の手を千翼は手に取る。そして包み込むように両手で優しく握りしめた。少女が安心したようにひとつ、大きく息を吐いた。
「あ、ありがとうございます……先輩。こ、れで心残りは無くなりました」
そんな事言わないでくれ、と言いたかった。でもこの少女を助けるのは自分ではどうあっても出来ない。千翼の脳裏に、最後の最後で笑顔を見せてくれた少女……『イユ』の面影がよぎる。
そうだ、せめて何もできないまでもこの子が安らかに眠れる様に『あの歌』を……
――やがて 星がふる 星がふるころ 心 ときめいて ときめいて くる――
千翼の歌に少女は目を丸くする。が、千翼が自分の為に歌ってくれている事を察して静かに目を閉じてその歌に聞き入る。少女の脳裏にこれまでの人生。懐かしい出来事がよぎり始めたその時――
『全工程完了 ファーストオーダー実証を開始します』
青白い光が周囲に広がると同時に彼らの姿は跡形もなく消え去っていた……
アマゾンネオに変身するのはもうしばらくお待ちください