Fate/Grand Order -AMAZON NEO REVISE- 作:古鉄の夜
「これから……どうしよう……」
研究所で見つけたネオアマゾンズドライバー一式を持ち運びやすいバッグに入れ直して一旦、外のネオジャングレイダーの元まで戻ってきた千翼。
バイクのシートにもたれ掛かり、胸元に抱いたバッグを見つめながら考えを巡らせていく。
この街で何が起きているかについては結局、分からないままだ。ただ、あの手紙の内容から察するに今、この街では相当不味い事が起きているのだろう。
クリアケースの中に入っていた注射器。恐らく──いや、間違い無くアレの中身は『アマゾン』細胞だろう。
どうやら食人本能よりも闘争本能を高めるタイプのようだ。今の状況を考えれば、すぐにでもこの注射器を身体に打ち込み、ドライバーを使えるようにしておくべきなのだろうが──
──これらを使えば今までのお前ではいられなくなる。自分の意志で決めろ──
嫌だ。どんな形であれ、人間になれたんだぞ。アマゾンとなってしまえば、またあの地獄に自分と周囲の人達を引き摺り込んでしまうかもしれない。
闘争本能のみを高めるタイプだとしても絶対安全だという保証などない。自分の意思で決めろという言葉の意味。
それはそこから発生するリスクも呑み込んだ上で決めろという事なのだろう。
あの手紙の一文が千翼に二の足を踏ませてしまう。生前の記憶が次々と脳裏に浮かび上がってくる。
全ての人からお前は生きていてはいけないのだと言われた。実の父からさえも──
──お前の母さんが……送ってやってくれって言ってんだよ……お前が人で無くなったら──
──母さんが……? 母さんの、ところへ……?──
そして母からさえも。脳裏に浮かび上がる記憶に千翼はグッと目をつむり歯を食いしばって耐える。
「またあんな思いをしなきゃいけないのか……」
だが、目を塞ぎ込む千翼の心に囁きかけてくる声があった。
──それでいいのか。あれだけの事をしておきながらお前は見て見ぬ振りをしているつもりなのか。償いもせず、ただのうのうと生き続けるというのか──
──お前は、それでいいのか──
それは自分自身の声だった。目を背けるな、己の罪から。誰かを救える手段がこの手の中にあるというのにお前は我が身可愛さでそれを捨て去るのか……
「それでも……それでも、俺は……」
──キャアアアァァァァッッ!!!──
「ッ!?」
その時、千翼の耳に悲鳴らしき声が届いた。はっと顔を上げると、いつの間にか、右肩に乗っていた小動物が耳をピンと立てて声が響いてきた方角へ顔を向けている姿が目に入った。
「フォウッ! フォーウ!!」
あっちだ! と言わんばかりに鳴き声を上げる小動物。また小動物が見やる方向から微かに悲鳴が聞こえた。間違いない。
「誰か生きている人がいるのかッ!?」
千翼は急ぎ、ネオジャングレイダーのエンジンを始動させるとシートに跨った。バッグを肩に担ぎ直すと小動物に声をかけた。
「入って!」
「フォウ!」
小動物に上着の中に入る様に促す。懐に収まったのを確認した千翼は、ネオジャングレイダーを悲鳴の主がいる方角に向けて発進させた。
今は悩むのは後回しだ。
「イヤァッ! 来てッ! 助けてよレフッ! いつだって貴方だけが私を助けてくれたじゃないッ!!」
泣き喚きながら一人の少女が街中を駆けていく。伸ばした銀髪、整った顔立ち。貴族服を思わせる服装に身を包んだ少女だ。
平時であれば整った顔立ちの才女で通ったはずだが、今その顔は恐怖で歪んでいた。背後にはその元凶たる骸骨の群れが追いかけてきているのが見える。
「あうっ!」
少女は瓦礫に足を取られ、転倒してしまう。その隙を逃さず少女に手にした剣を振り上げて襲いかかろうとする骸骨。
「イヤアァァァァァッッ!」
顔を両手で庇いながら泣き叫ぶ。少女の命運が尽きたと思われたその刹那、彼方から響いてくる獣の唸り声に似た機械の駆動音。
「やめろおおぉぉぉぉぉーーーーッ!!」
間一髪、少女に飛び掛かろうとしていた骸骨は横合いから猛烈な勢いで突っ込んできたネオジャングレイダーによって粉々に砕き散らされた。
「ヒッ! な、何!?」
「アンタッ! 生きてる人間だよな!?」
助ける事が出来た少女に千翼は声を掛けながら方向転換させたネオジャングレイダーで近づいていく。
「あ、貴方はっ!! 確か、一般枠で入ってきた候補生じゃないっ! な、なんでこんな所にっ! というかその派手なバイク……? は何っ!? 説明をっ! 説明をしなさい!!」
千翼の姿を見て腰を抜かしながらも人差し指を突きつけて一気に捲し立てる少女。その姿に千翼は少しホッとする。これだけ騒げるのならば、身体は大丈夫だろう。
千翼は少女に手を差し出しながら此方に近づいてくる骸骨に目を向ける。
「説明は後だ! とにかく今は逃げるぞ! 後ろに乗れ!」
「……ああ〜〜〜ッ! もう! 後でしっかり話してもらいますからね!!」
少し思い悩みながらも今は逃げるべきだと判断した少女は千翼の手を握りしめた。千翼は腕ごと身体を引っ張り上げるとバイクの後部シートに少女を座らせた。
後ろを見やると骸骨の群れがすぐそこまで迫ってきていた。
ネオジャングレイダーのエンジンを噴かしながら千翼は少女に声を掛けた。
「行くぞっ! しっかりと掴まってろ!!」
「ヒィィィィィィッッ!!」
タイヤが空転する盛大なスキール音が周囲に響き渡る。数瞬の後、タイヤが地面を捕え、ネオジャングレイダーが急発進。背後の空気を裂く音が聞こえる。骸骨が一瞬前まで千翼達がいた場所を剣で薙いだのだろう。危なかった。
千翼はある程度距離を稼いだ所で後方をバックミラーで確認する。数えるのが面倒になる程の骸骨群が後ろから迫ってくる。
さらにヒュンヒュンという風切り音と共に骸骨達が放った矢が雨霰と千翼達に向けて飛来してくる。千翼はネオジャングレイダーを左右ジグザグに振りながらそれをなんとか回避。さらに加速していく。
「キャアアアアアアッッ!! ち、ちょっと、あ、貴方! もうちょっとマトモな運転しなさいよおッ!」
「無茶言うな! 矢に当たっちまうだろ!」
耳元から聞こえる少女の金切り声に千翼は怒鳴り返しながらハンドルを切り、矢を避けていく。しかし、骸骨達の追跡は唐突に止むこととなる。矢の嵐が急に止んだのだ。
千翼が訝しげにチラリと後方を確認すると骸骨の群れが自分達とは反対の方向へと走り去っていくのが見えた。まるでこの先から離れようとするかの様に。
「なんだ? なんであいつら急に追ってくるのを止めたんだ……?」
「ちょっと前を見なさいよ!」
少女の声にハッとした千翼は前方に目を向けた。ヘッドライトに照らされた先に人間大の大きさをした像らしき物が見える。
千翼は咄嗟にハンドルを切り、衝突を辛うじて回避する。しかしその先にはさらに多くの像のような物が点在しているのが見受けられた。千翼はネオジャングレイダーのスピードを緩めるとそれらを注視した。
……全て人間の石像だった。しかも皆、苦悶の表情を浮かべている。
余りに精巧に出来ているのでまるでついさっきまでこれらの石像は生きている人間だったのではと思える程。あまりに異様な光景に千翼はバイクを止めてしまう。
「な、なんだこの石像の大群は……なんでこんなに沢山……」
「し、知らないわよ。でもこの石像……もしかして……」
何かを察したのか手を口元に持っていきながら考え込む少女。何か心当たりがあるのかと千翼が少女に声を掛けようとしたその時──
「──おや、これは珍しいお客様ですね──」
その場に女の声が響き渡った。ぞっとするような声音。酷薄さと残忍さが滲み出した声が聞こえた方角へと千翼は首を勢いよく向けた。
距離にして500m程先に黒いローブを纏った人らしき影が此方に歩いてきている姿が見える。
ローブの顔の辺りから覗く冷たい眼光。それを見た瞬間、千翼は肌が粟立つのを感じた。
これまで幾多の死線を潜ってきた自分の本能が全力で告げているのだ。
──逃げろ──
──その女は危険だ──
千翼はネオジャングレイダーのエンジンを吹かしながら背後の少女に静かに声を掛けた。
「……逃げるぞ」
「えっ!? ちょっと待ちなさいよ! 生存者かもしれ──」
「駄目だ! あの女はヤバい!!」
バイクを止める為に地面に着けていた片足を軸にその場でUターンを決めると近寄ってくる女から少しでも離れるべく逃走を開始。後部加速ユニット、ブーストウィンガーからエネルギーを放出、機体が弾かれる様に急発進する。
──骸骨はあの女がいるからここに近寄ろうとしなかったのかもしれない。あんな骨だけになった怪物にそんな思考ができるものか分からないが、だとしたら、自分達はまんまとあの女の縄張りに入り込んでしまった事になる。
焦りながらもネオジャングレイダーのスピードを更に上げていく千翼。だが──
「──そんなに慌てて何処へ行こうというのですか? もう少しゆっくりしていったらよろしいのに……」
すぐ横から先程の女の声が響いてきた。凄まじい風切り音が邪魔をしているというのにその声は妙によく聞こえた。
背筋が泡立つ。左横に勢いよく顔を振った。
そこには加速し続けるネオジャングレイダーに平然と並走してくる黒いフード姿の女。土煙を巻き上げ、動かしている足からそのあまりの速さに残像が生じていた。
「に、人間じゃないのかッ!?」
「違うっ! コイツ、《シャドウ・サーヴァント》よ!!」
常軌を逸したその光景。驚愕する千翼に少女が何か心当たりがあるのか、確信と共に鋭い叫び声を上げた。
──シャドウ・サーヴァント?──
アマゾンとは違うのか? 初めて聞くその単語に千翼は人以外の何かを指す言葉だろうかと場違いな疑問を抱いていまう。
しかし、女の手にいつの間にか握られていた大振りの鎌が自分達を両断せんと振りかぶる姿を見て、車体を横倒し気味に傾けて回避する。鎌が上方を通過する。
そのまま走行していたら胴切りにされていただろう。ブレーキを全力でかけながら車体を進行方向から見て横に向ける。
そのままバイクが横倒しにならない様に片足を地に着け、靴底をアスファルトでガリガリ削りながら、全身全霊で制動する。
「ギャアアアァアァァアアァァァーーーーーッッッ!!!」
目前に迫るアスファルトに、とても年頃の女子が上げてはいけない絶叫が千翼の背後で炸裂した。しかし不運が起きる。カーブに突入してしまい、曲がりきれなかったバイクを段差に突っかけてしまった。一瞬の浮遊感。千翼は後ろの少女の身体を即座に抱きすくめるとバイクを乗り捨てて右肩から地面に落ちた。
「ガッ! グウゥゥゥッ!」
右肩に感じる灼熱の痛み、千翼はそのまま、地べたに少女を抱えながらゴロゴロと転がった。
「グッ……お、おい、動けるか?」
痛みを堪えながら腕の中の少女に声をかけた。涙目になりながらコクリと頷く少女の姿に千翼はホッとする。
「キュ、キューウ……」
胸元から聞こえてくるか細い鳴き声にハッとした千翼は急いで上着のジッパーを下げる。目を回しかけている小動物の顔がそこにあった。
しかし幸い怪我等は負っていないようだ。ゆっくりと此方に近づいてくる足音が聞こえてくる。
「追いかけっこは終わりです。さて、折角の獲物。どうやって料理したものか……」
上から降ってくる冷酷な声に千翼は、急いで体勢を整えようとするが右肩の激痛が邪魔をしてすぐに動けない。
痛みはしても一応、動く事から骨は折れていないと思うが、もうバイクを乗り回すのは不可能だろう。今度こそ終わりかと思いかけたその時──
「やぁぁああああーーーーっ!!」
女の頭上から掛け声と共に黒い何かが振り下ろされた。シャドウ・サーヴァントと呼ばれるその女は咄嗟に手にした鎌を頭上に構えて防ごうとするが、堪えきれず大地に叩き伏せられるとバウンドしながら遠くに吹き飛んでいった。
「今なら、印象的な自己紹介が出来ると思います──」
「問います、貴方がわたしのマスターですか?」
此方に振り返ったその人物は、千翼が知っている相手だった。あの炎熱の地獄で見た千翼が探さなければと思っていた紫髪の少女が目の前に立っていた。
身体の各所に装甲が据え付けられた黒いボディスーツ。なによりも目を引くのはその右手に握られた少女の身の丈を越す大盾。先程、サーヴァントを吹き飛ばしてみせたのはアレだろう。
しかしマスター? それは自分の事なのだろうか。そして、相当の重傷を負っていた筈である少女の変わり様は一体? 分からない事だらけの中、かろうじてなんの事だ、と問いかけようとしたその刹那、左手の甲の部分から熱を感じた。目を向けてみるとそこには紅い紋様らしきものが浮かび上がっていた。少女はその紋様を見てとり、穏やかに微笑んだ。
「マスターの証、令呪を確認。やはり、貴方がわたしの……先輩は私の恩人です。あの時、わたしの心を救ってくれたご恩。今度は貴方のサーヴァントととして戦う事で返していきますね……」
「ま、待ってくれ! さっきから、一体全体なんのことを言ってるんだ!? アンタ、俺が見た時、大怪我してたよな!? それがどうして──」
「貴女、マシュ・キリエライトっ!? その姿、デミ・サーヴァントになれたのね! というか貴方! この子のマスターってどういう事!? 変な事したんじゃないでしょうね!!」
「無茶苦茶言うなよ! 俺だって何がなんだか分からないんだ!」
「……油断しました。まさか、其方にもサーヴァントがいたとは。いえ、むしろ楽しみが増えたと喜ぶべきでしょうか。一方的な蹂躙も好いモノですが、味気ないのも事実ですからね」
大声で言い合いをしていた千翼達の耳に先程、マシュと呼ばれた娘に吹き飛ばされた女の声。舌舐めずりしながら此方に近寄ってくる。
あの大盾の一撃を受けて平然としている。
耐久力もアマゾン並みだというのか? 千翼は後退りしてしまう。
「敵性体、健在。迎撃行動に移ります! 先輩、オルガマリー所長。下がっていてください!!」
背後に立つ女に向けて、大盾を構え直しながら振り返るマシュ。千翼が待ったを掛ける間もなく、女に向けて突進していく。
鎌を後ろに引いて待ち構えていた女。マシュが繰り出す大盾による上段からの一撃を横薙ぎの一閃で打ち払う。
マシュは大盾を打ち払われて若干、体制を崩しはしたものの、打ち払われた勢いそのままにその場で身体を横に一回転。遠心力を乗せた一撃を再度、女に向けて叩き込む。
女は鎌で今度は大盾を上に弾くとガラ空きになったマシュの腹部に鎌の石突きによる一撃を打ち込んだ。
「がっ! くうぅっ! まだです!」
「ほう、軽い一撃では無かった筈ですが、耐えますか。思った通り、嬲り甲斐のある獲物の様ですね……」
痛みに顔を歪めながらも気勢を保つマシュ。それを余裕の表情で観察する女。
今度は女がマシュに向けて鎌を一閃する。それを大盾で受け止めるマシュ。一撃、二撃、三撃。互いに何度も攻守を入れ替えながら攻防が続いていく。
千翼はマシュが、あんな女の子が巨大な大盾を高速で振り回す姿に驚愕を隠せなかった。
あの細腕の何処にそんな力があるのだろうか?
彼女の動きも明らかに常人のそれを逸脱している。オルガマリーという少女がデミ・サーヴァントと呼んでいたが、あのシャドウ・サーヴァントと似た人外の存在なのだろうか。
だがマシュの正体がなんであれ、千翼には自分達を守る為に戦ってくれている彼女が敵とは思えなかった。
だが、状況は芳しくない。段々とマシュが追い詰められているのだ。
恐らく、戦い慣れていないのだろう。徐々に守勢に回らされている。
「ちょっと、貴方! 何をただボーッと見てるのよ! 経緯は分からないけど、マシュは貴方をマスターとして認めて戦っているのよ! ならマスターとして出来る事をしなさい!」
「だから、マスターとか言われても俺には何も──」
また、オルガマリーとの不毛な水掛け論が始まろうとした刹那、千翼の脳裏に閃くものがあった。
自分に出来る事。あの時、少女を救いたいと思った時、手にしていなかった力を与えてくれるモノ。それが今、手元にある。
千翼は背にしたバッグを開き、中から青い内容液が封入された注射器を取り出した。ケースから注射器を取り出して腕に打ちこもうと──
「ッ!」
──これらを使えば今までのお前ではいられなくなる──
手紙に書かれた一文がフラッシュバックしたと同時、注射器を打とうとした手がピタリと止まってしまう。何を躊躇っている。このまま、あの娘が殺されるのを黙って見ているつもりか。と自分自身を叱咤してみても、注射器を持った腕は金縛りにあったように動かない。
人間の身体を手放して
千翼は思わず、今も自分達を守る為に必死で戦ってくれているマシュという少女に目を向ける。
あの時、何も出来なかった自分の行動に恩義を感じ、それを返そうとしてくれている少女。ここで彼女を死なせてしまえば……
──千翼。私、楽しい──
あの日、自分の背中でそう言って静かに息を引き取った少女──『イユ』の声が千翼の頭に響いた。その瞬間、今度こそ迷う事無く腕に注射器を打ちこんでいた。
内用液が千翼の体内に入っていく。身体の変化はすぐにやってきた。
心臓が爆発するかのごとく鼓動を刻む。自分がナニかに変わっていく。身体の中に取り込まれたアマゾン細胞が急激に増殖しているのだろう。
激変していく身体。急激に上昇していく体温。目の前が真っ赤に染まっていく。たまらず叫ぶ。
「ううううぅぅっ! うぐぁぁぁああああああああああああっっ!!」
「ち、ちょっと、アンタ!? 何やったのよ!?」
「ッ!? せ、先輩! ぐぅっ!!」
「余所見はよくありませんよ……」
マシュが後方から響いてきた千翼の叫び声に反応し、後ろを振り返ろうとしたが、それを女が鎌を振るい食い止める。大盾で防ぎながら女を睨みつけるマシュ。あの声は尋常ではなかった。一刻も早く先輩の元に戻りたいのに……! マシュは歯嚙みしながら鎌を大盾で押し返す。
千翼は異様な昂りを抑えきれなくなってきている自分を自覚し、咄嗟に地面に転がっていたあるモノに目がいった。鷹の頭部のような造形、メタリックレッドのカラーリングが特徴的な腕輪『ネオアマゾンズレジスター』。その黒いベルトの裏にはびっしりと棘が生えている。
千翼はそれを右手でひったくる様に掴み上げると左腕に押し付けながら鷹の嘴部分のスイッチを押し込んだ。同時に、鷹の眼に当たる部分が蒼く発光した。
バチンッ! とベルトが閉じると左腕を締め上げ始めた。ベルト裏の棘が肌に食い込み、棘の先端から、抑制剤が身体に流し込まれる。真っ赤になった千翼の目の前の景色が徐々に元へと戻っていく。
ネオアマゾンズレジスター内に封入された抑制剤の効果が出てきたのだろう。そして千翼は地面に転がっていた大型のベルト。『ネオアマゾンズドライバー』と注射器型ユニット『アマゾンズインジェクター』を手に取り上げた。そして迷う事無く腰にドライバーを巻き付ける。
ベルト部、『オルガバインド』──耐久性に優れた特殊硬質ゴムが千翼の身体に合わせて自在に伸縮し、最適な位置で腰を締め上げた。
そして、ドライバー左下部『インジェクタースロット』にアマゾンズインジェクターを装填、斜め上にスロットを押し上げる。インジェクターの底部を叩きながら、千翼は走り出した。
──己の意思で戻ると決めた戦場へ。再び、戦いの業火に身を投じる為に。
千翼の湖水を思わせる蒼い瞳の色が溶鉱炉で煮えたぎる鉄にも似た灼熱の赫へと変わっていく……
「おおおおおぉぉぉっ! ァァアマゾオオオォォンッ!!」
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千翼の雄叫び。そして周囲に響き渡る電子音声。ドライバー中央のコアユニット『ネオコンドラーコア』が明滅し、アマゾン細胞を刺激する特殊パルスが発せられた。そして、千翼の身体から爆炎を伴う
──千翼の身体表面から活性化したアマゾン細胞が湧き出し、肉体構造を変化させていく。
体表をメタリックブルーの『ネオワイルダースキン』が覆い、更に頭部、胸部、両椀、両脚に機械的な装甲が形成されていく。頭部を覆うヘルメット。眼部を保護する黄色のバイザー。その奥で『アマゾン・アイ』が一際強く、そして紅く輝いた。
今、ここに蒼き戦士『アマゾンネオ』が復活した。
千翼、ようやくアマゾンネオに変身。ちなみにアマゾンネオは正体不明のエネルギーを発しており、神秘を持つサーヴァントと打ち合う事が可能となっております。