Fate/Grand Order -AMAZON NEO REVISE-   作:古鉄の夜

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帰ってきました。これからもなんとか投稿続けていきたいと思っております。


第四節 召喚

「あのー、千翼くん……?」

「あ、ああ。聞こえているよ。えっと、ロマニ……さんでいいんですよね?」

 

 名前を確認したのに一向に返事をもらえず、ポカンとされてしまったのでどうしたものかとロマニがもう一度確認してくる。千翼は慌てて空中のウインドに映る青年の名前を呼んだ。

 

「合っているよ。それと僕の事は出来ればDr.ロマンと呼んでもらえるかな? その方が僕としては嬉しいから……」

「へ? まぁ、構いませんけれど。じゃあロマンさん。……泉、千翼と言います、よろしく。それと、初めまして」

「うん。初めまして、千翼くん」

 

 朗らかに笑うロマニ、もといロマンにお互い軽く会釈をしあう。少し気弱だけど良い人みたいだなという印象をロマンから感じた千翼。しかし、そんなロマンにオルガマリーが噛みついた。

 

「ちょっと待ちなさいロマニ! なんで医療部門トップの貴方が通信に出ているの!? レフはどうしたの!?」

「……先の管制室で起きた原因不明の爆発によって詰めていた主要スタッフの多くが死亡してしまいました。僕が指揮を取っているのは現在、僕より役職が上のスタッフがいない為です。レフ教授は……爆発の中心地と思われる床の上に立たれていたので、残念ながら……」

「そ、そんな……レフが死んだっていうの……? い、いえ、ならば他の46人のマスター候補生は? 彼らはどうしたの!?」

「……全員危篤状態です。医師も医療機器も足りません。このままでは──」

「ふざけないで! 今すぐ冷凍睡眠処置を行いなさい!! それと──」

 

 

「なあ、マシュ。お前は、いや、お前達は一体、何をやってるんだ? ……オルガマリーの言葉から、それなりの組織だって言う事は分かるけど、俺はいきなりこの状況に放り込まれたから、何も分からないんだ。いい加減、教えてくれないか?」

「えっ? 先輩はわたし達、カルデアの事をご存知ではない、のですか……? ああ、そうでした! 先輩は一般枠で来られたマスターでしたから、カルデアの活動について説明されていないのですね。

 分かりました。ではわたくし、マシュ・キリエライトが人理保証機関“カルデア”について、解説させていただきますね!」

「ああ、頼む」

 

 えへん、と胸を張って意気込むマシュ。千翼はやや苦笑しながらロマンに指示を出すオルガマリーを横目に見つつ、マシュの説明に耳を傾けた。

 ──人理継続保証機関“フィニス・カルデア”。人類社会の未来を保証するという理念の下、魔術師の総本山。時計塔に所属する十二の『ロード』の一つ。アニムスフィア家が設立した国連承認の研究機関。

 

 そのカルデアが所有する擬似地球環境モデル・カルデアス──地球を一つの生命体として捉えた地球の縮小コピーの事である──がある時、異常を感知した。近未来観測レンズ・シバを用いてカルデアスの未来予測を行った結果、2016年以降の人類の歴史──人類史が突如として観測不可能となってしまったのだ。これは今後、人類が文明を維持出来なくなる程に衰退する事を意味している。

 事態を重く見たカルデアは原因究明に乗り出す。カルデアスの過去検索機能を用いて原因の特定を急いだ。結果、2006年、日本の地方都市冬木市で引き起こされた詳細不明の何かがその原因である事が判明。

 カルデアはその人類史の崩壊と共に現れた黒いシミともいえる時間軸。それを《特異点F》と呼称。魔術師による調査チームを編成。魔術によるタイムトラベルとも呼べる空間航法、レイシフトを行い、特異点の調査、人類史崩壊の阻止を実行しようとした、のだが……正にレイシフトが行われようとしたその直前、カルデアの管制室で謎の大爆発が発生。

 ──千翼は自分が初めて目を覚ました場所はそのカルデアの管制室だったのだな、と今更ながらに理解した──

 特異点の調査の為にレイシフトするハズだった魔術師達はレイシフトを安全に行う為のコフィンの中で生死不明となり、管制室に詰めていた大勢の職員も命を落とす結果となってしまった、というのが事の次第らしかった。

 

「……ずっと聞きたかったんだけど、俺が見た時、マシュ、お前は大怪我してたよな? あれはどうしたんだ? それに外見も変わってるし。その、レイシフトってやつの影響なのか……?」

「いえ、これはわたしが契約していたサーヴァントが力を託してくれたからです。あの瀕死の状態でレイシフトを行なったわたしに元々、契約していた英霊……真名は不明のままなのですが。その方がわたしと正式に契約してくれました。

 彼はわたしに英霊としての能力と霊基を託して消滅してしまいましたが、そのお陰でわたしの身体は完治。デミ・サーヴァントとして活動が可能となりました。それで一人、この特異点に来てしまって、先輩と同じく途方に暮れていたのですが……マスターである先輩との契約は成されていましたので、先輩も絶対にこの街にいるハズだと信じて捜索していたのです。

 途中、何度かスケルトンと戦闘になりましたがなんとか退けて……その最中、先輩の乗っていたバイク……? の駆動音が聞こえてきたので、もしかしたら、と思って急行してみたらそこに先輩とオルガマリー所長がいらっしゃったのです。

 ……ようやく合流できました。二人ともご無事で本当に良かったです!」

「ああ、マシュが来てくれなかったら、俺もオルガマリーも確実に殺られていた。今更だが礼を言わせてくれ。本当にありがとう」

 

 千翼はマシュに向き直ると頭を下げた。マシュは慌てて頭を上げて下さい! とワタワタと手を振り出した。

 

「命を助けられたのはお互い様です! わたしだって先輩が加勢してくれなければシャドウ・サーヴァントにやられていたと思います。

 サーヴァント戦は初めての経験だったので怖くて堪りませんでした。だから、先輩が一緒に戦ってくれてとても心強かったんです。わたしの方こそありがとうございました」

 

お互い、頭を下げあう奇妙な状況が発生していたが、そこにロマニへの指示を一通り出し終えたオルガマリーが手を一度叩いてこちらに注目を集めた。

 

「はい、二人とも注目! ロマニを通してカルデア本部への指示はひとまず出し終わりました。想定外のアクシデントが発生してしまいましたが、我々はこれからこの特異点Fの調査、発生原因の特定を開始します。

 登録番号49番マスター候補生、泉千翼! 些か不本意ではありますが、貴方がシャドウ・サーヴァントを打倒してのけたのは事実! 暫定ではありますが我がカルデアのマスターとして認め、マシュ・キリエライトを貴方のサーヴァントとして任せます。いいですね!」

「いいですねって……マシュの意見は聞かないのか!? この子はついさっきまで戦闘すらした事のない女の子だったんだぞ!?」

 

 千翼に人差し指を突き付けながら傲然と言い放つオルガマリー。それに千翼は信じられない、と声を荒げながら返した。その千翼の剣幕にオルガマリーはウッと怯んでしまう。……無茶苦茶な命令を出しているのは自分でも薄々、理解できていたからだ。

 

「俺ならいいッ! 自分で戦うと決めた俺なら――」

「いえ、先輩。デミ・サーヴァントとしてマスターと共に戦うのはわたしの望みでもありました。それに先輩にはまだ十分、恩返しが出来ていません。共に戦わせてください。マスター」

 

 マシュの決意表明に千翼は虚を突かれた。

 何故そこまで? 命をさっきから何度も失いそうになっているというのに。本当は怖いはずだ。今も声はしっかりしているように見えるが足が若干、震えている。それでも会ったばかりの人間である自分をこの少女は信じてくれるという。

 千翼はマシュの根拠の見えない信頼になんと応えていいか分からず「しかし……」と、要領を得ない呟きを返す事しか出来なかった。そこへオルガマリーが懐からある物を取り出しながら二人に再度、話しかけてきた。

 

「落ち着きなさい、泉! それにマシュも。何も貴方達二人で戦え、とは言いません。実力を示したとはいえ、貴方達はマスターとサーヴァントとしてまだ素人に近い……いきなりこんな任務を言い渡されても無謀でしょう。だから……この呼符で新たに戦力となるサーヴァントを召喚します」

 

 『サーヴァント』人類の歴史に刻まれた偉業を成した人物ーー英雄を座と呼ばれる地球の記録された場所から、霊体として召喚する魔術……召喚術をカルデアは『システムフェイト』として確立していた。

 霊体、いや英霊はエーテル体と呼ばれる術師の魔力によって編まれた仮初の肉体を与えられており、現世での活動が可能となっている。というのがオルガマリーとマシュから長々と聞いてなんとなく理解できた千翼の認識であった。

 マシュはサーヴァントを自分の肉体に直接、憑依させている人間とサーヴァントの合いの子、デミ・サーヴァントと呼ばれる存在らしい。……それがどの様な手段で可能となったのか。

 今生では『アマゾン』へと後天的に変異した自分には少なくともマトモな方法ではなかったのではないか? と思えて仕方ない。だが、マシュには『あの子』と違い、人間らしい感情がある様に見えるし、無理矢理、従わされているわけでもないようだ。

 ……少なくともこのカルデアという組織は前世で自分が所属していた4Cとは――野座間製薬の特殊チームとは違うのではないか? オルガマリーやロマニ――組織の重要なポジションに就いているであろう、二人の人柄を見て千翼はそう思った。いや、信じたかった。

 ……4Cに置ける自分は対『アマゾン』兵器みたいな扱いしかされなかったから。

 

「確実に英霊召喚を行うには大量の魔力が必要になるの。そこでこの冬木市で最も魔力が集中している霊脈に我々は向かいます。

 ロマニ、冬木の霊脈の位置の特定をお願い」

『はい。その地点から北西にある丘の上がベストかと思われます。マップデータを表示します』

「……ここね。泉、バイクは使えるわね?」

「ああ、故障はしていないからな。でも、二人乗りしか出来ないぞ? 誰か置いていくのか?」

「マシュはデミ・サーヴァントよ? 身体能力は生身の人間とは桁違いなの! 貴方もさっき見たでしょうが……」

「はい! わたしは自分の脚で充分ですからバイクは先輩と所長、二人で乗って下さい」

「そ、そうか……そういえばそうだったな……」

 

 腰に両手を当ててやれやれ、と溜め息を吐くオルガマリーと自信満々に言い切るマシュ。

 千翼は大盾を高速で振り回していた先程のマシュを思い出して曖昧に頷いた。

 ともあれ、千翼はネオジャングレイダーのエンジンを再び起動させるとオルガマリーとタンデムで跨った。因みにフォウはマシュの大盾の中の収納スペースに入って丸くなり眠っていた。

 

「よし、二人とも行くぞ!」

「ええ!」

「はい。索敵と周辺警戒はわたしが行いますから、先輩は安心して運転に集中して下さいね」

「頼む!」

 

 マシュに一声かけると千翼はネオジャングレイダーを目的地に向けて発進させた。

 

「……そういえば泉。貴方、身体の方は本当に大丈夫なの? その、あの戦闘能力は確かに凄かったけれど……」

「……ああ、レジスターの抑制剤が効いているから、意識もはっきりしてるし」

「一体、何者なのかしら? その手紙の主は……」

「少なくとも我々、カルデアの敵ではないと思われます。これほどの技術を殆ど無償で提供してくれたのですから。なんとか連絡を取って協力関係を築ければ良いのですが……」

「難しいかもな。これらも相当、無理して用意してくれてたみたいだし……」

「人間の肉体をあそこまで変化させられる細胞だなんて……。

 それも魔術も使わず、あくまで生体科学技術の産物として造り出したというの? 一体、どれ程の……い、いえ、とにかく泉! カルデアに帰還したら貴方は直ぐにDr.ロマニの診察を受けなさい。力を与えてくれるといってもその細胞が未知のものである事に変わりない。その抑制剤に使われている成分といい、身体にどんな影響が出ているか分からないわ。これは所長命令ですからね!」

「…………ああ、わかった」

 

 正直、自分の中のアマゾン細胞がどうなっているのか? それを知るのは怖くてたまらない。だが、それが分からなければ何に気を付ければいいのかすら不明なままだ。

 ならばいっその事、カルデアという組織の力で調べ尽くしてもらった方がいいだろう。もう周りの人達を地獄に引きずり込むのは御免だ。千翼は覚悟を決めた。

 

「それと貴方、姿を変える前に『アマゾン』と言ってたわね。機械音声で『ネオ』とコール音……? がドライバーから出ていたけど」

「ああ……なんというか、身体が叫んだ様な気がしたんだ。そうすれば力をやるって。正直、アレは口を突いて出ただけだ……」

「先輩がシャドウ・サーヴァントとの戦いで見せた戦闘形態の事ですね。アマゾン……何か由来があるのでしょうか?」

「……では、泉のあの戦闘形態についてはその、アマゾンとネオを繋げて『アマゾンネオ』とカルデアでは呼称しましょう……仮ですが」

「え……?」

「所長……?」

「な、何よ? シンプルイズベストでしょうが!?」

 

 まさかこの世界において他人であるオルガマリーから偶然とはいえ、正式名称である『アマゾンネオ』と呼ばれるとは思わなかった千翼の唖然とした声と、いくらなんでもそれは単純すぎるのでは? というマシュの疑問の声。

 それにオルガマリーは狼狽えた声を上げた。

 

「いくらなんでもそれは……単調すぎる名前なのでは? 先輩はどう思いますか?」

「…………いや、構わないよ、アマゾンネオで。確かに分かりやすいと思うし」

「ほら、泉もそう言ってるじゃない。では仮称『アマゾンネオ』で通します!」

 

 マシュはいいのだろうか? という顔をしているがマスターである千翼が了承しているのであればとやかく言う事は出来ない。曖昧に頷いた。

 一方、千翼は『アマゾン』と別人になって、なお呼ばれる事に思う所はあったが、この泉千翼(自分)は自分の意志でアマゾンになったのだ。

 もう、個人的な感情で拒絶する訳にはいかない。

 とことん自分(アマゾン)と向き合わなければならないのだと思い直し、アマゾンネオという名を受け入れた。

 

 

 マスター泉千翼が変身した姿。今後、カルデアでは『アマゾンネオ』と長く呼称されていく。

 

 ――命名者はフィニス・カルデア所長、オルガマリー・アニムスフィアであった……。

 

 

「さて、泉。これより英霊召喚を行ってもらいます。詠唱する文言は覚えたわね?」

「ああ、大丈夫だ。下手に言い間違えると召喚が出来ないばかりか最悪、イレギュラーなモノが喚びだされてしまって危険なんだろ? ……慎重にやるさ」

「よろしい。マシュは私と召喚が完了するまで周辺の索敵と警戒をするわよ! もし、敵が現れたとしてもこっちで対処するから泉は気を散らさずに召喚を確実に完了させなさい。呼符はそれ一つしかないんだからね!」

「「了解」」

 

 千翼は一つ深呼吸して、オルガマリーから教え込まれた英霊召喚の詠唱を口にする。

 

「――素に銀と鉄。祖に石と契約の大公」

 

 まさか魔術なんてゲームの中でしか知らなかったことを――かつて所属していた不良集団“TEAM X(キス)”でリーダーの長瀬裕樹、チームメンバーであった琢己と健太が携帯ゲーム機でやっていて、騒いでいたのを横目で眺めていたのだが――自分がそれを真剣にやる羽目になるとは思わなかった。

 ここは、冬木の霊脈。土地の中で最も魔力が集中している“場”の事らしい――小高い丘の上だ。

 召喚サークルとなる地面に置かれたマシュの大盾。その上には召喚の呼び水となる金色の符が置かれていた。

 千翼は令呪の浮かぶ左手のひらをサークルに向ける。

 教わったばかりの、馴染みの無い魔術回路とやらに魔力を流しながら、詠唱を続けていく。

 

 

「降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。

 閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)

 繰り返すつどに五度。

 ただ、満たされる刻を破却する

 ――――告げる。

 汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

 聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ

 誓いを此処に。

 我は常世総ての善と成る者、

 我は常世総ての悪を敷く者。

 汝三大の言霊を纏う七天、

 抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」

 

 召喚サークルから激しい光が発生する。呼符がその輝きに呑まれて消滅すると同時、サークルを中心に膨大な魔力を伴う三番線が光となって高速で回転を始めた!

 

『魔力反応増大! いいぞ、この反応ならサーヴァント召喚に問題はない筈。 っ!? こ、この魔力数値の上昇速度は……ま、まさか上級サーヴァント……ハイ・サーヴァントが来てくれたのかっ!?』

 

 白い光が突如として、虹色に輝き出した。カルデアで観測していたロマニの驚愕の叫びが辺り一体に響き渡った。

 千翼はよく分からないながらも、力を貸してくれる誰かが来てほしい、と心底から願いながらその虹の輝きを前に一心に祈っていた。果たして……

 

 

 

 

 

「――サーヴァント、セイバー。我が真名をシグルド。

 少年、貴殿がマスターか……? どうか指示を。――速やかなる遂行を約束しよう」




千翼のセカンドサーヴァントはかの竜殺し(ドラゴンスレイヤー)、シグルドとなりました。
他にも色々と理由はあったりしますが。
この人ならばきっと千翼も大丈夫でしょう……!
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