チャイムが鳴り、3時間目の授業が鳴る。
教壇には織斑先生が立っていた。
「えー、授業を始める前に、再来週に行うクラス代表戦に出る代表を決める。」
教室が俄かにざわつき出す。
そりゃそうだ。
いきなり代表を決めるとか言われても、俺たちは今日初めてクラスに入ったのだ。
だからこそ、他の人がどのくらいの実力かどうか知らない。
それに、現段階で決めるとなると候補生の子達以外には希望がない。
そう考えるとかなりスケジュール詰めすぎじゃね?と思わざる負えない。
「代表って...そんな一朝一夕で決めれるもんじゃないんだよ....!」
やけに強い調子でぼそりと呟く。
勝手に内心を汲んで訳すの止めてほしいんだが。
てかさ、さっきは結構まともな事言ってたけどその分なんか雲行きが怪しい気がする。
くれぐれもこのタイミングで下手なこと言うなよ....
俺はそう願わずにはいられなかった。
なんてたって今はクラス代表を決める場面。
つまりは目の前に座っているセシリアがやらかすからである。
そしてこのイベントはセシリアが一夏を好きになるという彼女関連ではかなり大きなフラグだ。
ここでもし俺が下手な事言って俺にも矛先が向けばどうなるか分かったもんじゃない。
俺はあくまで一夏とヒロインをくっつけたい。
だからこそ、下手な事して予想不能になるのは避けたかったのだ。
無だ....何も考えるな。
まるで無縁仏のように、その場で居合わせただけ。
そういう心持で居るんだ......。
背筋を整えて呼吸を整える。
頭の中から余計な考えを追い出すように息を吐いた。
「他校でいうクラス委員長のようなものだ。ちなみに決まったら1年間変更はないと思え。」
いや、他校でも学期ごとに変更はするだろ....って駄目だ駄目だ!
何も考えるな!
「自薦他薦は問わない。誰か居ないか。」
織斑先生はクラス中に問う。
よかった...今回はセーフだったか。
...なんで心の中での独白ですらこうやってビクビクしないといけないのか。
心中もゾルタン訳に含まれているとか普通にクソゲーだと思うんだが。
ちなみに俺のISランクはSだ。
クッソ高い。
でもここで自薦するつもりはないし、ましてや目立つつもりもない。
ここはあくまで一夏とセシリアの間でフラグが立つ切っ掛け。
邪魔をするべきではないのだ。
俺が静かにしていると、女生徒の一人が手を上げた。
「ハイ!私は織斑君が良いと思います!!」
「へ!!?」
女生徒に急に推薦されて変な声を上げる一夏。
確かにISに関してはほぼ素人なのに推薦されればクッソビビるな。
でもまぁ男性操縦者でブリュンヒルデである千冬先生の弟が同じクラスに居ればノリの良い子は推薦するであろう。
強く生きて、どうぞ。
「私もそれが良いと思います!」
「せっかく男の子が居るんだもん!盛り立てなくちゃね~」
「見せてもらおうか....ブリュンヒルデの弟の実力とやらを......。」
女生徒たちがその言葉に同調する。
はえ~これもう織斑君で決まりですね!
スムーズに決まってよかったなぁ~(白目)
まぁそんなに話がうまく行くはずないんだが。
てか波乱が起きてもらわなくては困る。
セシリアには戦って、その後デレながらクソまずサンドイッチを作って一夏に振る舞う日々を送ってもらわねば困るのだ。
千冬先生は周りを見渡す。
そして口を開く。
「では候補者は織斑一夏と、他にはいないか?」
まぁ立ち上がる奴が居るだろうし、ソイツの言葉に反応しないように精神統一するか。
そう思い、さらに呼吸を整えていると、目の前でセシリアがキョロキョロとし始める。
それはまるで自分を推薦してくれる人を探しているようだった。
ちょっ...やめてくれ。
見てて笑いそうになるから。
普通に考えて誰も言われなければ誰が主席であるかなど分かるはずもないのに、そんなキョロキョロしても誰も推薦してくれるはずもないだろ。
さっきまでかっかしてた奴がそんな風に神妙にされたらこちらとしては溜まったものじゃない。
駄目だ....集中できない。
頼む、やめてくれ。
ちょっと落ち着けセシリア。
不安げにキョロキョロと周りを見回すセシリアとそれを見て笑いそうになる俺。
それを他所に千冬先生は言葉を続ける。
「では、クラス代表は織斑一夏で決まっ....」
「お待ちください!納得できませんわ!!」
千冬さんが結論を出そうとした時、目の前の少女が耐えられないと言った様子で立ち上がる。
おぉ来た来た。
この瞬間を待っていたと言っても良い。
よし、そのままフラグを立ててくれ。
そんな俺の思惑を知る由もなく、彼女は言葉を続ける。
「そのような選出は認められませんわ!クラス代表と言えばクラスの顔!当然実力トップがなるべきですわ!!」
考えるな考えるな、余計な事を考えるな!
頭を真っ白にして精神を統一しようとする。
変な事考えて口を挟みたくはないからだ。
それに彼女が言っていることは何気に正しいしな。
その後の論理がやばいけど。
「クラス代表には最も実力がある人物がなるべき!つまりは入学試験主席の私がなるべきですわ!!ただ珍しいという理由だけで極東の猿が....」
いや、一夏も試験官倒しているだろ。
さっき前提が揺らいだにも関わらずよく話に出せる物だ。
それにISはそもそも日本国籍の女性が生み出した物で、一時期は日本が技術を独占していた。
だからこそ旧来の西洋における優位性のようなステレオタイプは殊ISに関しては通用しない。
まぁそんなこと言わないけど。
平常心平常心.....。
「おいおい、さっき一夏も試験官倒したって言ってただろ?それにISは日本が発祥だ。アンタの論理は通じないんじゃないの?知りませんでしたとは言わないよなぁ代表候補生?」
俺の口はシニカルな笑みを浮かべて目の前の少女を挑発する。
するとセシリアや一夏だけでなく、周りの生徒も一斉に俺を見た。
コイツやったわ。
なんてことを.....。
こんなこと言ったら.....。
俺が危惧していると、やはり俺の想像は間違いではないらしくセシリアは俺を睨み付ける。
「....あなた一体何なんですの。私はあの男に対して話をしているのです。余計な口を挟まないでもらえます?」
本当それな。
俺もそう思うわ。
みんな見てるし!
余計な口挟むないい加減にしろ!
本当お前一体何なんだ!
「お前こそ一体なんなんだ?口を挟むなよ、みんな見てるんだからさぁ....。」
....おい、コイツもしかして俺の心中訳したつもりか?
違ぇよお前に言ってんだよ。
誰もセシリアに言ってないだろ!いい加減にしろ!
「~~~ッ!!私はイギリス代表候補生セシリア・オルコットですわ!!選ばれたエリィィィト!あなたとは違うエリートなのですわ!!それを....!!!」
はえ~ワイはISランクSなんやけどな。
まぁ強化人間みたいな物やし、別に誇れないんだけど。
でもまぁ、あのセシリアにもこんな時代があったと考えると感慨深くなるな....。
しみじみとした気分でセシリアの言葉を聞き流した。
早く言葉を終えて、一夏と喧嘩してどうぞ?
「アッカネンさんの言う通りだ。千冬ね...先生の話に勝手に口を挟んで。選出に文句があるなら自薦すれば良いじゃないか。本当のこと言われてアッカネンさんに当たるとか恥ずかしくないのかよ。」
セシリアが声を荒げようとした瞬間、一夏が口を開く。
いやそれは俺もそう思うわ。
でもエリートというか優れてるって思ってる人って人に推薦されたがるじゃん。
みんなワイの優秀さが分かってるんやみたいな。
まだセシリアも時期的にそういうキャラ付けなんだから大目に見てあげようよ。
...それにしても俺の言葉そういう風に取ったのか。
普通に翻訳ミスなんだが。
てかなんで織斑君ちょっと言葉にトゲがあるんだろ。
発言の内容も違うし。
君はセシリアさんにお前の国の飯ゲロまず的なこと言って喧嘩にならないといけないのでは?
なんかワイのことで怒ってんだけど....。
するとセシリアが一夏の方を見て顔を赤くする。
勿論ラブコメではなくおこな方面で。
痛い所を突かれたのだろうか。
「あ、あなたねぇっ!私を侮蔑しますの!?」
「本当のことだろ!」
一夏も引かずに応戦する。
アレ?君そんな感じだっけ?
一夏とセシリアが向かい合う。
や、やめてくれ!少なくとも喧嘩するなら原作通り食い物の話とか国の話でしてくれ!
「ッ!決闘ですわ!!!」
セシリアは目の前の少年に向かって指を突きつける。
毎回思うんだけど良いんですかね?
日本って確か決闘罪とかあったような....。
まぁそこら辺は深く考えたら負けってことか。
まぁいいや、俺には関係ないし。
決闘を申し込まれたのは一夏だ。
俺が出るわけじゃない。
はえ~こういう時女の子で良かったって思うわけ。
「決闘...!?」
流石に決闘を申し込まれるのは思いも寄らなかったのか、一夏は面食らった顔をする。
「えぇそうですわ。私と貴方、どちらがクラスを代表するに相応しいかISで決めましょう?」
まぁクラス代表戦に出る人材を選出するのだから方法としては間違っていないな。
でもそれを勝手に彼女が言い出して良いのかって所があるが。
アリーナとか貸し出さないといけないのもあるし、展開上のアレがなければ本編でも断られてそう。
「良いのか?そんな勝手に言い出して、アリーナだって貸し出さないといけないんだからさぁ。勝手に言い出しているけど、それを決める権利はお前にはあるのかよ?」
口が勝手に動く。
良かった...口振りは煽っている感じだが、なにも間違ったことは言っていない。
生徒が勝手に言ったところでアリーナの状況とかあるだろっ的な感じの物言いだ。
良いじゃん、これからもその調子で頼むぜ~。
俺がそう言うと千冬先生が口を開く。
「...確かにアッカネンの言うように勝手に言い出すのは褒められたものではない。だが、選出方法はクラス代表戦の代表者を決めるにあたっては至極まっとうだ。アリーナについては私が話を付けよう。」
はえ~だから原作でも普通に決闘出来たんですね。
「織斑先生はこうおっしゃっているし、文句はありませんわね?負けたら貴方には私の小間使いにでもなってもらいますわ!覚悟しておくことですわね!そしてあなたもですわ!!!」
するとセシリアは一夏に対して言ったように俺に対しても言い放つ。
はえ~原作で見た光景だぁ的な感じで眺めていた俺は急に振り向かれてそんなことを言われて面食らってしまった。
え?なんで俺?
こんな展開聞いてないぞ!!!
「私があなたを推薦致しますわ!国家代表候補生である私に対しての不遜な態度、後悔させてあげましてよ!」
この子態々俺の事推薦し始めたんだが。
...確かにセシリアにちょっと噛みつきすぎた感あるな。
セシリアから見れば一夏に噛み付いているのにどこぞのおかしな子に噛み付かれたら鬱陶しいからな。
これワンチャン普通に嫌われている説ありますねぇ!
てかこれ傍から見たら男だけでなく、クラスの女子にも噛み付いているやべぇ奴に見えるんじゃ....
セシリアが代表決定戦終わった後にクラスメイトに謝って受け入れてもらう。
その展開がなくなってしまうんじゃないかと心配になってしまう。
「誰彼構わず手当り次第に喧嘩売って、キリがないんじゃないの?」
それな。
俺もセシリアがそういう風に見られるのは避けたい。
けど、それを口にするのは違うだろ。
勝手に人の心を口に出すのはやめてくれよなぁ....。
セシリアはそんな俺の言葉を聞いても余裕そうに振る舞っている。
「ふんっ!今の内にそう言っていなさい。その減らず口を黙らせて差し上げますわ!」
マジか!
俺の口を黙らせてくれるなら金積んでもええわ。
やっぱセシリアちゃんっていい子だよなぁ、流石ヒロインだけあるわ。
こんな子なら小間使いになってもええわ。
寧ろして!!(ノンケ)
「嬉しいねぇ...流石代表候補生様だ。」
そんな俺の心とは裏腹に煽るような口ぶりをする俺。
どうしてお前はいつもそうなのか。
理解に苦しむね....。
ヒロインを代表候補生って訳してる時点でかなりガバガバってそれ一番言われてるぞ。
...いや、確かにこのラノベのヒロイン代表候補生が占めているけどさぁ。
傍から見れば睨み合うようにお互いを見つめている二人。
そんな二人を他所に織斑千冬は口を開く。
「...話はまとまったようだな。とにかく織斑とアッカネンとオルコットは一週間後、第三アリーナで。詳細は追って告げる。しっかりと準備しておけ。じゃあ授業を始めるぞ。」
千冬先生がこの話はここまでだと言った様子でそう言うと授業を始める。
一方俺は心の中でハラハラしていた。
本来は一夏とセシリアのタイマンで済む話だ。
それが何故か俺も巻き込まれている。
それに最初は何も考えないようにしていたが、どうしてこうなった...?
さっきまで自分が一番避けたかった主要なフラグイベントへの介入。
それを避けられなかったことへの不安が俺の心中を占めていた。
(アッカネンさんも巻き込んでしまった....。とにかく、一週間あれば何か出来るはずだ、ISは一度動かしたきりだけど、それでも....それでも勝ちは諦めたくない。あんな誰彼構わず悪く言うような偉そうな奴に、負けたくないんだ!)
(私は選ばれたんですの。ここまで来るのにどれほどかかったか。...だから誰にも軽んじられるわけにはいきませんわ。絶対に負けられませんの。)
そして他の2人もそれぞれが心中に思いを抱き、授業へと臨むのだった。
ゾルタン訳のせいで原作の展開を歪めてしまうゾル子。
そしてそんな彼女を他所に一夏は心中でそれでもと言う。
.....なんか一角獣乗ってNT-Dしそうですね、クォレハ.....。