マジンカイザーVS真ゲッターロボ!   作:元ゴリラ

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第一話「壮絶!」Bパート

 ゲットマシンの格納庫に一人、巴武蔵はドラゴン号の操縦桿を握る。

 

「なあ兄弟。おめえらとも長い付き合いだったな」

 

 ゲッターロボと共に若い命を真っ赤に燃やした日々。それは戦いの連続だった。しかし、娑婆に馴染めない武蔵のような人間にとってそれは、何よりも充実した日々でもあった。

 戦うことくらいしか脳のない自分が、誰かの役に立てる日々。その中に自分の居場所があった。そして、その中心にあったのは間違いなくゲッターだった。

 そのゲッタードラゴンも、本来は今日ここで役目を終えるはずだった。真ゲッターロボの起動実験に成功した後は、ドラゴンの残るゲッターエネルギーを全て真ゲッターのゲッター線増幅装置に回す手筈だったのだ。

 そうしたら、このゲッタードラゴンはロボット博物館へ寄贈され、平和を築いた象徴となるはずだった。

 しかし、その日はもう来ない。

 その日を武蔵が見ることも、もう叶わないだろう。それでも、巴武蔵はここを死に場所と決めたのだ。

 

「フフフ……」

 

 操縦桿を握る手が、汗をじんわりと感じている。熱い汗だ。血の滾りを思い出すような。

 これから飛び込む死地を思い、熱くなる。

 

「だが、もうひと働してもらうぜ。ゲッタードラゴン!」

 

 その熱のままに、武蔵は自動操縦のスイッチを入れた。そして、発射台から猛々しくドラゴン号、ライガー号、ポセイドン号の3つのメカが空を飛ぶ。

 

「チェェェェンジ、ドラゴン! スイッチ・オン!」

 

 武蔵が叫ぶ。すると3機のマシンが垂直に並び、ライガー号のフロントノズルがドラゴン号のリアに刺さった。しかし追突はせず、しっかりとはまり込む。それと同時にドラゴン号から手が生え、ライガー号とポセイドン号も同じように合わさり、足を作る。ナノ細胞のような超合金が、手足の形状に合わせて装甲を作り出しそして、頭が生えた。

 真紅の竜人。ゲッタードラゴンの誕生である。

 

「アバヨ、ダチ公! これが男・巴武蔵の最期の戦いだ!」

 

 武蔵の叫びに呼応するように、ゲッタードラゴンは空中でその勢いを増していく。そして、すぐにその姿は空の彼方へ消えていった。

 

「ゲッタードラゴン、発進しました!」

 

 早乙女研究所の所員は、飛んでいったドラゴンの姿を観測し続けていた。偉大な遺産を残すために、死地へと飛び込んでいった友のために、その観測は続いていた。早乙女博士もそれに頷く。

 

「そのまま、ドラゴンの観測を続けろ。真ゲッターはどうなっている?」

 

「ゲッター線出力が、思うように上がりません。このままでは発進にまだ30分はかかります!」

 

 しかし、その武蔵を死地に追いやったのもまた早乙女博士なら、武蔵を死なせずに済ませたいと思っているのも早乙女博士だった。30分。それでは間に合わない。 

 

「10分で終わらせろ!」

 

「やってみます!」

 

「やるんだよ!」

 

 

 無理を言っているのは早乙女博士も承知の上だ。しかし、武蔵の命がかかっている。それを所員も承知の上で頷くと、真ゲッターのモニタリングを再開する。

 

「ワシは……本当はもう誰も失いたくないんじゃ。達人……」

 

 達人。恐竜帝国の襲撃で犠牲となり、博士自らが引導を渡すしかできなかった最愛の息子の名を、早乙女博士は祈るように呟いた。

 

…………

…………

…………

 

 

 

 光子力空母・剣蔵。父の名を授かった艦のドッグの中で英雄・兜甲児は1人、押し黙っていた。

 彼は、「ゴラーゴン事件」の後、パイロットとしてはもう戦場に出るつもりはなかった。妻さやかと、これから生まれる子供……もし女の子だったなら、リサと名付けようと思っている。と、その家庭を守るために生きたいと思っていた。しかし、

 

「大介さん……」

 

 遠きフリード星の友。デューク・フリードの……宇門大介の危機にいてもたってもいられなくなってしまったのだ。今、マジンガーZは「ゴラーゴン事件」で起きた奇跡の影響で大幅なオーバーホールを余儀なくされており、新光子力研究所に預けられている。しかし、それでもデューク・フリードのために甲児は駆け付けるべく、無理を言って剣蔵への乗艦を許可してもらったのだ。

 

「アニキ!」

 

 統合軍のイチナナ式パイロットの一人である兜シロー……つまりは甲児の弟が、そんな様子を見かねてか声をかける。

 

「ああ、シロー。すまねえな、気を使わせちまった」

 

「いいや。あのグレンダイザーって、アニキの友達が乗ってるんだろ。だったら仕方ねえよ」

 

 そう言い笑って返すシロー。強くなったな、と甲児は思う。既に30歳を目前と控えている甲児と違い、シローは今が最も血気盛んかもしれない。そういう意味では危なっかしくもあり、心強くもある。

 

「グレンダイザーは、スペイザーと合体することでより万能に戦える機体なんだ。だから……」

 

「わかってる。兄貴の露払いは俺たちに任せてくれ」

 

「ああ、頼んだぜ」

 

 そう言って、笑い合う兄弟。

 今回、甲児が搭乗するのはマジンガーZでもなければイチナナ式でもない。

 ダブルスペイザー。かつて、甲児が開発に携わった地球製スペイザー。このスペイザーもグレンダイザーとの合体機能を有しており、それによりグレンダイザーはさらなる機動力を得ることができる。

 英雄・兜甲児は今回、あくまでサポートのための参戦だった。グレートマジンガーとゲッタードラゴンがグレンダイザーを解放してくれれば、その後ダブルスペイザーと合体することでグレンダイザーに力を与えることができる。

 観測された映像や写真で見る限りでも、グレンダイザーの受けているダメージは計り知れない。戦線に加わるにしても離脱するにしても、機動力が必要なのは火を見るよりも明らかだった。それ故に、甲児は宇宙科学研究所に保管されていたダブルスペイザーをこうして引っ張り出したのだ。

 だが、それが功を奏するかどうか。全ては鉄也達の戦いにかかっていると言っていい。

 

「頼んだぜ、鉄也……みんな……」

 

 今マジンガーZが使えれば。そう思わずにはいられないもどかしさを感じていた。あの時と……ドクターヘルが蘇ったあの時と同じもどかしさだった。友は今も、命を燃やして戦っている。その最前線にいる。しかし、マジンガーZのない今自分が行ってもこのままでは足手纏いになるのもわかっている。

 この焦ったさを押し殺しながら、甲児は剣蔵のドッグでその時を待ち続けていた。そんな時である。

 

「甲児!」

 

 新光子力研究所の現所長であり、甲児の妻……さやかから緊急の連絡があったのは。

 

「さやか、どうしたんだ?」

 

 さやかの表情は、明らかな焦りの色がある。それが只ならぬ事態の変化を報せる連絡であることを、甲児は言葉を聞かずともに悟ることができるほどの。

 

「早乙女研究所から連絡があったの。グレートマジンガー並びにゲッタードラゴンが、グレンダイザーの救助に成功したわ」

 

 しかしさやかの口から出たのは、事態の好転。

 

「本当か!?」

 

 思わず、甲児はガッツポーズしそうになった。しかし、さやかの表情は晴れていない。それが、まだ何かあることを甲児に伝えている。振り上げようとした腕を抑えて、甲児はさやかに続きを促す。

 

「…………まだ、何かあるんだろ?」

 

「ええ……。敵の宇宙要塞……百鬼帝国が、そのまま地球目掛けて加速しているの」

 

「なんだって……!」

 

 

…………

…………

…………

 

 

 

 真紅のボディにマサカリのような二振りのトマホークを持つロボット……ゲッタードラゴンの登場で、戦況に変化が訪れようとしていた。周囲の百鬼獣を蹴散らしながら、ゲッタードラゴンはグレートマジンガーの前に出て庇うようにゲッタートマホークを構える。

 

「待たせたな鉄也! 俺とゲッターが来たからには百人力よ」

 

「武蔵……。お前一人なのか?」

 

「ああ。なあに、このゲッタードラゴンは百鬼帝国にトドメを刺したんだ。ブライの野郎なんてちょちょいのよいよ!」

 

 そう、余裕綽々という風に言ってみせる武蔵。一方で、それと対峙するブライ大帝と……磔にされているデューク・フリードはゲッタードラゴンの乱入に只ならぬものを感じていた。

 

「ムサシ君……リョウ君とハヤト君は?」

 

「あいつらなら、すぐにくるぜ。それよりも待っててくれよ。今助けるからな!」

 

 そう言って、武蔵とゲッタードラゴンは超羅王鬼へと飛び込んでいく。それを待っていたとばかりに、ブライ大帝は先ほど鉄也にやったように、身体中から触手を伸ばしてゲッタードラゴンの手足を絡め取っていく。

 

「フ、フフフ……フハハハハハハハ! 待ち侘びたぞ、この時を待ち侘びたぞゲッターロボよ!」

 

「ブライ、てめえ……生きてやがったにしちゃあ随分とエグい姿になりやがったな。まあ、自慢のツノが機械とつっついちまってるじゃねえか」

 

 挑発するように、武蔵。本来、ゲッターロボはこのようなピンチに対してオープンゲットによる緊急回避ができる。しかしライガー号、ポセイドン号が自動操縦の今、分離は再合体の隙を作ることになってしまう。その一瞬の隙があれば、たとえ武蔵の乗るドラゴン号を狙わずともライガーとポセイドンを墜とすことで、ゲッタードラゴンは再合体できなくなる。それだけはなんとしても避けたい武蔵は、あえてオープンゲットせずに四肢を拘束されていた。そして、再合体の隙を作るためにとにかく挑発でもなんでもする。

 

「フフフ……ゲッターチームの武蔵君だったかな。君は私を哀れんでくれるのかね? このような姿になって」

 

 ブライもそれを理解しているのか、まるで遊ぶように武蔵と言葉を交わし合う。

 

「ああそうさ! へっ、惨めよのぉ百鬼ブライが聞いて呆れらぁ!」

 

「だが、私はこの姿に身を落とすことでこの力を手に入れたのだ!」

 

 そう言って、力強く触手でゲッタードラゴンを締め付けていくブライ。

 

「グォっ!?」

 

「フハハハハハハハ! これが我が超羅王鬼の力だ! 今こそゲッターが滅びる時なのだ!」

 

「……超羅王鬼、だと?」

 

 超羅王鬼はたしかに、武蔵が以前に戦った羅王鬼よりも遥かに強力なことがそれだけでも痛感できる。しかし、羅王鬼というその名前を聞いた瞬間、武蔵はドラゴンのゲッタービームを羅王鬼の胴体にある大きな顔目掛けて放った。しかし、サンダーブレークを受けて尚傷付かないそのボディはゲッタービームで溶けるようにはできていなかった。

 

「効かん! 効かんぞゲッター! ははは、素晴らしい! あれほど苦戦したゲッタービームがまるで痒いぞ!」

 

 興奮するままに、ブライは超羅王鬼を動かし拘束したゲッタードラゴンに近づいていく。万に一つでもオープンゲットで逃げられるようなことがないように、その胴体に爪を立てる。しかし、尚もゲッタードラゴンはゲッタービームを照射し続けていた。それを意にも介さずに爪をギリギリと強く立てていく羅王鬼。しかし、それでも武蔵はゲッタービームの出力を上げ続けていく。そして、

 

「…………鉄也今だ!」

 

「ああ!」

 

 武蔵の叫びと同時に、グレートマジンガーが動いた。超羅王鬼がゲッタードラゴンを羽交い締めにしているその隙に、グレートはグレンダイザーへと到達し、グレンダイザーの肩部に格納されていたハーケンを取り外す。

 

「行くぞ!」

 

 そのままハーケンでグレンダイザーを縛り付けていた鎖を切った。

 

「しまった……!」

 

「ありがとう鉄也君、武蔵君……!」

 

 再び自由を得たグレンダイザーは、残る僅かの力を振り絞り立ち上がりグレートマジンガーと並び立った。

 

「おのれ小癪な……!」

 

「おっと、お前の相手はこっちだぜ鬼野郎!」

 

 超羅王鬼と密接する状況でゲッタービームを放ち続ける武蔵。ドラゴンのエネルギーの殆どをゲッタービームに転換して超羅王鬼に照射し続けていた。

 

「待ってろ武蔵! 今……」

 

 そのドラゴンを助けようと、グレートとグレンダイザーが動く。しかし、「来るな!」という武蔵の声が、2人の動きを止めた。

 

「お前達は退路を確保するんだ。こいつは……百鬼帝国は俺の獲物だ!」

 

「しかし……」

 

 鉄也が食い下がる。しかし、それをデューク・フリードが制した。

 

「鉄也君、見るんだ」

 

 そう言って、グレンダイザーがゲッタードラゴンを指差す。言われて鉄也も、ゲッタードラゴンを凝視した。

 

「こ、これは……」

 

 ゲッタードラゴンは、己の放つゲッタービームの熱量で溶けはじめていた。超合金ニューZではないが、ゲッタードラゴンもまたメガトン級の爆発にすら耐えられる装甲を持つスーパーロボットだ。しかし、その装甲表面はたしかに融解をはじめており、それは既に超羅王鬼も巻き込まれはじめていた。

 

「こ、これは…………!」

 

 ブライも驚愕を隠せず、狼狽した声を上げる。

 

「は、ははは……ちったあ驚いたみたいだなブライよぉ」

 

 武蔵の声が、ソラに木霊する。

 

「これこそがゲッター最大の武器よ。驚いてもらわなくちゃ困るんだよな……フフフ……。ゲッターエネルギーをフル回転させればここまで凄い事になるとは、今まで乗り続けてた俺も思わなかったぜ」

 

「武蔵、何を!?」

 

 グレンダイザーの制しを振り切り、グレートが飛び込もうとした。しかし、ゲッタードラゴンの周辺で発生している放射線量、ゲッター線濃度の全てが危険域をすでに越えており、踏み込もうとするとブレーキがかかる。

 

「へ、へへへ……。どうやら、羅王鬼は前に戦った時同様、この百鬼帝国の心臓と繋がっているみたいだな」

 

 不敵な笑みを浮かべて、武蔵が凄む。その並々ならぬ殺気に、ブライは思わず気圧される。

 

「き、貴様……まさか!」

 

「ああ。羅王鬼なら百鬼帝国の自爆装置になってるはずだ。その自爆装置の誤作動をゲッタービームで誘発したのさ。ははは……見たかブライ。これがてめえの恐れたゲッターの真の力よ」

 

「恐れた…………だと?」

 

「そうよ、てめえはな……ゲッターを恐れるが故にゲッターに負けるのだ」

 

 武蔵の肌にも、異常が起き始めていた。皮膚がブツブツと膨張をはじめている。それが至近距離でゲッタービームの最大出力を……リミッターを外したゲッターの全力を放射した影響なのか、原因はわからない。しかし、武蔵からしたらそんなことはどうでもいい。

 

「リョウ、ハヤト……」

 

 かつて、そんな愛称で呼び合った10年来の友のことを、武蔵は思った。武蔵は、ゲッターの中で走馬灯のようなものを見ていた。ゲッター線の熱に浮かされた夢だろうか。と思った。その中に、若き日のリョウとハヤトと、ムサシ自身の姿がある。それだけでない。早乙女博士や、ミチル、元気。みんなの顔が浮かんでいた。彼らが、武蔵の愛する仲間達を守るために武蔵は逝くのだ。今が、その時だ。

 そんな、幸せな夢を武蔵は見ている。

 

「ふざけるな……ふざけるなよゲッターロボ!」

 

 ゲッターのメルトダウンに巻き込まれながら、ブライが吼える。次の瞬間、次の瞬間百鬼要塞が大きく揺れた。そして、メルトダウンしたゲッター諸共に百鬼要塞は地球へ向けて加速を始めていた。

 

 

…………

…………

…………

 

 

 

 それと同じ頃、浅間山の早乙女研究所では、桁たましいサイレンの音と、所員達の慌ただしい動きの中、流竜馬と神隼人。そして車弁慶の3人はその時を待っていた。

 

「ゲッターエネルギーの充填はどうなっている?」

 

「60……70……80%にまだ、届きません!」

 

 モニタルームで早乙女博士と研究員達がそんなことを言い合っているのが、竜馬達の耳に届いていた。

 

「隼人、どう思う?」

 

「70%も引き出せるのなら、十分だ。それだけで真ゲッターはカタログスペック上ではドラゴンを遥かに上回るパワーを出せる」

 

 それだけ言って、竜馬と隼人は視線を交わす。それだけで、2人の会話は十分だった。竜馬と隼人が真ゲッターの下に駆け出し、弁慶もそれに続く。

 

「悪いな弁慶。いきなりぶっつけでこんな化け物に乗るハメになるなんてよ」

 

 そう冗談めかして言う竜馬に、車弁慶……武蔵同様の巨漢の青年はニィっと笑って返す。

 

「なあに、俺はドラゴンの操縦経験もあるんだ。武蔵先輩に負けない働きくらいしてやるさ」

 

 弁慶は、豪胆な性格の男だった。その豪胆さが、ゲッターチームに選ばれた最大の理由であるとも言えた。

 

「フッ、それだけの大口が叩けるなら十分だ」

 

 皮肉っぽく、隼人。

 

「コクピットは……今までのゲッターと同じなんだろ。それなら……行くぜ隼人、弁慶!」

 

 そう、竜馬が2人に発破をかける。それがいつもの、ゲッターチームの合図。そして、その時だった。3人はゲッターロボへと走り出す。

 

「竜馬さん、隼人さん、弁慶さん!」

 

「悪いがこれ以上は待てねえ。俺たちも出撃だ!」

 

 強靭な肉体と身体能力を有する3人を止めようと、整備班はスクラムを組むようにして竜馬達を取り押さえんとした。それが、間違いだった。

 

「邪魔するんじゃねえ!」

 

 流竜馬は、空手家・流一巌の一人息子である。一巌から厳しく空手の指導をけた竜馬は、一巌の「相手を倒す」「より強いやつをぶちのめす」という教えを実践するケンカ殺法と空手の複合総合格闘技……バリツ使いでもある。竜馬の拳を顔面にもろに受けて気絶で済むのなら運がいい。最悪の場合は死に至ってもおかしくはないパンチがお見舞いされて、顔面を破壊されたスタッフを飛び越えて竜馬がいの一番に躍り出た。

 

「目だ! 耳だ! 鼻!」

 

 神隼人は、あらゆる才智に長けた天才だった。その頭脳を生かし学生時代は、学生運動を起こし学園や政府をきりきりまいさせていたほどである。そして、その戦略眼と体操で鍛えたというしなやかな身体から繰り出される独自の体術は、学生運動仲間すらも恐怖で支配するほどのものだった。その鋭利な爪を立てた拳は、人体の急所を的確に抉る。恐怖に竦んだその一瞬で、隼人はゲッターへと飛び込んでいく。

 

 

「俺も続くぞ! 武蔵先輩直伝の、大雪山おろしぃぃぃぃぃぃっ!」

 

 車弁慶は、柔道家ではない。学生時代は野球部所属だった。しかし、その堅強な肩を買われてスカウトされ、そして柔道家であった武蔵の技を数々を伝授されている。武蔵の奥義である大雪山おろしすら会得した弁慶は、柔道の達人でもあるのだ。根の優しい弁慶は、竜馬や隼人のように致命傷を与えかねない攻撃はしなかった。それでも、大雪山おろしを受けた所員はそこで伸びている。他の所員が怯んだ瞬間に走り出し、弁慶もゲッターへと向かった。

 

 

「は、博士! ゲッターチームが、真ゲッターロボに搭乗しました!」

 

 モニタリングしていた所員が、驚愕したように報告する。

 

「行かせてやれ」

 

「しかし、真ゲッターはまだ……!」

 

「わからんのか。今がその時なのだ!」

 

 所員を一喝し、早乙女博士は真ゲッターのコクピットに通信を入れる。

 

「竜馬、隼人、弁慶!」

 

「ジジイ、止めても無駄だぜ!」

 

 竜馬が言う。しかし早乙女博士は首を振ると、今起きている現象を真ゲッターのモニタに繋いだ。

 

「この映像は……ゲッタードラゴンと、百鬼の羅王鬼とかいう奴か!」

 

「武蔵先輩……!」

 

 隼人、弁慶もそれを見て驚愕する。

 

「百鬼帝国は要塞ごと、地球へ向けて降下をはじめている。おそらくドラゴン諸共、メルトダウンで地球を焼き尽くす算段だ」

 

「何だと!?」

 

「いいか、この危機を救うことができるのは真ゲッターしかいない。お前達ならできる!」

 

「上等だ……待ってろよブライ! 必ず息の根を止めてやるぜ!」

 

 そう、竜馬が叫んだ時だった。真ゲッターロボのカメラアイに一瞬、まるで意識があるかのように瞳が映る。

 

「ゲッター線出力、急上昇!?」

 

「これなら、いける。行け、竜馬!」

 

「おう!」

 

 真ゲッターロボの、翼が大きく翻った。そして、バサリ。と大きな羽音と共に、ゲッターは発進する。

 一瞬。その一瞬で真ゲッターロボは、遥か上空へと飛び上がっていた。

 

「なんてスピードだ……!」

 

 激しいGが、3人を襲う。

 

「隼人、弁慶! 意識を集中させろ。こいつは……!」

 

 それは竜馬も例外ではない。竜馬は、今まで感じたこともない激しいGに一瞬意識が飛びそうになる感覚を覚えた。それでも気力で操縦桿を握り続け、意識を保つ。そして……。

 

「こいつは、俺たちの精神力で操縦するマシンだ!」

 

 既に真ゲッターロボというマシンを、自分の手足にしていた。真ゲッターは、光速に迫る速さで飛び上がり、宇宙を目指す。

 

「待ってろ、死ぬな武蔵!」

 

 そして、一瞬後。竜馬の、隼人の、弁慶の視界が黒く染まる。いや、青空を突き抜けたのだ。無限の黒い闇の中。そして緑色の光を放ち燃えるゲッタードラゴンと、羅王鬼。メルトダウンを起こしながら地球へ迫るその二機が見える。瞬く間に真ゲッターロボは、百鬼要塞に飛び込んでいたのだ。

 

 

 

…………

…………

…………

 

 

 デューク・フリードは、現れた新たなゲッターロボに只ならぬものを感じていた。

 

「これが……新しいゲッターロボ」

 

 ゲッタードラゴンにはない禍々しさすら感じられる。それだけではない。あのゲッターは、光速で地球から宇宙まで駆けつけてきたのだ。おそらく、ドラゴンやグレート、グレンダイザーよりも遥かに強力な機体だろう。

 

「待たせたなブライ! 今度こそ地獄に叩き落としてやるぜ!」

 

 真ゲッターに乗る男・流竜馬は高々とそう叫び、巨大なゲッタートマホークを掲げてゲッタードラゴンと、超羅王鬼の間に割り込んでいく。

 

「来たか……真ゲッターロボ!」

 

 ブライの声が響くと同時、生き残っていた百鬼獣達が一斉に真ゲッターロボ目掛けて襲いかかる。

 

「邪魔するんじゃねえ!」

 

 ゲッタートマホークの一振りが、百鬼獣を次々と破壊する。

 

「何という威力だ……!」

 

 それは、今までのゲッターとは桁違いの強さだった。

 

「竜馬、隼人、弁慶!」

 

 グレートマジンガーの鉄也が、真ゲッターに通信を入れる。

 

「ドラゴンと百鬼帝国は共にメルトダウンを起こしている。このままでは、地球に落下した百鬼帝国は汚染物質の詰まった質量兵器になってしまう!」

 

「だったら、ここで百鬼帝国を跡形もなく消してやるぜ!」

 

「待て、竜馬!」

 

 ゲッタービームを放とうとする竜馬を、隼人が制する。

 

「どうした、隼人!」

 

「ゲッタードラゴンと羅王鬼が、融解している……今のままゲッタービームを放てば、武蔵は……」

 

 そう。ここで超羅王鬼を倒せば、そのまま融解しひとつになっている武蔵もまた……。

 

「俺に構うな、リョウ……!」

 

 ドラゴンからの武蔵の声。それと同時に、ドラゴンのコクピットが真ゲッターや、グレートマジンガー、グレンダイザーのモニタに映し出された。

 

「ウッ……!」

 

 その姿は、悍しいものだった。

 身体中の皮膚という皮膚が腫れ上がり、所々が溶けて赤い肉が露出している。目は瞳孔が完全に開かれ、ヘルメットすら溶け始めていた。

 それでも、意思だけはある。身体も動く。今にも死ぬであろう姿でありながら、武蔵の目は生気に満ち満ちていた。その矛盾すら、恐ろしい。

 

「こ、これが……」

 

 デューク・フリードは呻く。これが、ひとをこんな姿にしてしまうものが。ゲッターの正体なのだろうか。

 だとしたら。ゲッター線を使い続ければ地球は、人類はどうなってしまうのだろうか。

 

「お、俺はどの道助からん……それなら……ここでゲッターと共に死なせてくれ」

 

 今の自分の状態を察しているのか、武蔵が続ける。

 

「そんな……武蔵先輩……」

 

 力なく、弁慶。

 

「いいか。弁慶……これからはお前がゲッターチームの3人目だ。リョウと、ハヤトを……頼んだよ……」

 

 超羅王鬼に拘束されたまま、ドラゴンが熱を上げていく。もはや人体どころか、全てを溶かすほどのゲッター線量。

 

「武蔵……お前……」

 

「…………やるぞ、竜馬」

 

 竜馬の迷いを打ち消すように、隼人が決断する。

 

「隼人、しかし……」

 

「武蔵の覚悟を、無駄にするんじゃねえ……!」

 

 それは、隼人にとっても苦渋の決断だった。そして、それができる人物だからこそ隼人は

ゲッターチームになくてはならない存在でもある。

 

「わかった……! ムサシ、許せよ!」

 

 そして、竜馬はゲッタービームのスイッチを入れた。

 直後、真ゲッターロボの腹部に収束されたゲッター線が、巨大な熱となり放出される。狙う敵は超羅王鬼。百鬼帝国そのものでもあるブライ大帝。そして……それと一つに融解した友。

 

 

「ゲッタァァァァァァァァッビィィィィィィム!!」

 

 その高熱は、超羅王鬼の身体を溶かしていく。

 

「グゥゥガアアアアアアアアッ!?」

 

 叫びを上げるブライ。

 

「こ、これが真ゲッターロボ……彼らの恐れた、ゲッターの力……素晴らしい、この力の行く末は……核だ。核以上の悲劇だ!」

 

 その身体を灼かれながら、ブライ大帝は叫んだ。

 

「核以上の、悲劇……」

 

 核。地球に存在する、デューク・フリードにとっても許し難い存在。地球の環境を汚染し、命を奪い、呪いを振り撒く悪魔の兵器。

 それ以上の脅威として、ゲッターは成長しようとしている。

 それは。

 それは。

 

 グレンダイザーが見せた、宇宙の未来と同じものだった。

 

「ほざけ、負け犬が!」

 

 ゲッタービームの出力を上げながら、竜馬が吠える。そして、ゲッタービームの熱の中で、ドラゴンが動いた。

 

「ああ……そういうことだったのか……」

 

 武蔵が呟く。そして、その直後。

 激しい爆発音が、ゲッタードラゴンを襲った。

 

「武蔵!?」

 

 ゲッターのメルトダウンが、臨界を超えたのだ。臨界を超えたまま、ゲッタードラゴンはその手を伸ばす。

 

「リョウ、ハヤト、弁慶……俺は、ドラゴンは死なんよ。見えたからな……」

 

 それは、もはや独白に近かった。手を伸ばしたまま、ゲッタードラゴンに突如、変化が訪れた。

 

「なんだ……これは……!」

 

 鉄也が叫ぶ。ゲッタードラゴンの装甲が、突如緑色に輝く繭のようなものに覆われていく。

 

「何だ、何が起きてるんだ武蔵!?」

 

 それは、未知の現象だった。早乙女博士と共にゲッター線の研究をしていた隼人ですらも、答えの出せない現象。

 

「見える……見えるぞ……」

 

 武蔵の独白は、もう独白と呼ぶのも疑わしいほどに抽象的なものになっていく。それが居た堪れず、弁慶は視線を逸らす。

 

「リョウ、ハヤト、弁慶……また会おう」

 

 それが、武蔵の最期の言葉だった。巨大な繭に包まれたゲッタードラゴンは、そのまま百鬼帝国から転がり落ち……不思議な重力で地球へと落下していく。

 

「武蔵!?」

 

「武蔵君!?」

 

 グレートマジンガーと、グレンダイザーがそのドラゴンを追った。そして、残されたのは百鬼帝国と、真ゲッターロボ。

 

「は、ははは……見える……見えるぞ! ゲッターの行く末が、世界中に広がる呪いが!」

 

 ブライの最後の言葉もまた、独白のような、あるいは白昼夢のようだった。

 

「黙れド外道が!」

 

 竜馬の叫びと同時、ついに超羅王鬼はその炉心を臨界させ、爆発する。そして、それに誘爆していくように百鬼要塞が火を吹いた。

 

「竜馬!」

 

「ああ、跡形もなく消しとばしてやる!」

 

 尚も真ゲッターはビームの出力を上げる。そして百鬼要塞全土を飲み込む爆光が起き……それが止んだ時、百鬼帝国だったものは跡形もなく消し飛んでいた。

 

 残ったものは、真ゲッターロボひとつ。

 

「……武蔵。ムサシ……」

 

 流竜馬は、かつてリョウという愛称で呼ばれていた青年は、友の名を呟いた。それを隼人、弁慶も沈痛な面持ちで押し黙り聞いている。

 

「武蔵…………武蔵ィィィィィィィィィィッ!」

 

 竜馬は、叫んだ。その叫びは、暗い闇の中に消えていった。 

 

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