マジンカイザーVS真ゲッターロボ!   作:元ゴリラ

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第四話『絶闘!』Bパート

「デビルマンだと?」

 

 その場にいた誰もが、アモンに……デビルマンに注目していた。デーモンでありながら、デーモンに対立する者。その存在は、シレーヌにも、鉄也達にも想定外の事態だった。しかも、それがあのアモンだなどと。

 

「てめえ、そんなこと言って背中からこっちをやる気か!?」

 

「よせ、元気」

 

 凄む元気を鉄也が制した。鉄也はアモンと刃を交えた事がある。だからこそ、感じるものがある。今のアモンは、あの時の凶暴な悪魔ではないと。いや、悪魔としての獰猛さや残虐さは確かに残っている。しかし、それとは違うものを感じるのだ。

 そう、人間の心を。それが関係しているのかどうかはわからないが、メタルビーストとして巨大化したアモンは以前鉄也が戦った時の漆黒ではなく、緑色の装甲に守られている。

 

「アモン……いや、デビルマン。お前を、信じていいのか」

 

 何より、鉄也は今助けられたのだ。もしアモンがこちらを殺すつもりならば、とうにそうしていたはずだ。

 

「……信じてもらおうなどと、都合の良いことは言わないさ。だが、俺は人間を、その明日を守ると決めた。このデーモンの力は、そのために使うと!」

 

 アモンの、デビルマンの声には一切の澱みがない。信じられる。そう鉄也は判断してひとつ頷いた。

 

「ならば、行くぞデビルマン!」

 

「おう!」

 

 偉大な勇者グレートマジンガーが、ネーブルミサイルを斉射する。そのミサイルに隠れるようにしてデビルマンは飛び、シレーヌへと迫った。

 

「おのれ、ちょこざいな!」

 

 ミサイルの雨を避ければ、デビルマンの接近を許す。二段構えの攻撃。シレーヌはその思惑を理解し、その翼で竜巻を巻き起こす。そして、その台風の目に隠れるように飛び込むとミサイルを迎え撃った。ミサイルは爆裂し、しかしシレーヌに届かない。そして、竜巻と一体化したシレーヌはよりその勢いを上げながらグレートマジンガーとデビルマンへ迫る。

 

「なるほどな、竜巻を壁にしてネーブルミサイルを防ぎ、そして同時に反撃の体制へ移行する……やってくれるぜ。だがな!」

 

 グレートマジンガーは、光子力のエネルギーを雷へ変換していく。グレートの必殺武器サンダーブレークを、竜巻目掛けて解き放つ。

 

「そんなもので、俺を止められると思うなよ!」

 

 さらにデビルマンが吼える。その両手から放たれるデビルビームは熱光線。雷と灼熱その2つのエネルギーが、竜巻の中で混ざり合った。

 

「ウッァァァァァァァァッ!?」

 

 シレーヌの悲鳴が渦の中に木霊する。確実に、効いている。そう判断した鉄也はさらにダメ押しの一撃のため、竜巻へと迫っていく。

 

「グレートブースター、射出!」

 

 その叫びと共に、グレートのコクピットに「承認」の文字が点滅する。その直後、音を切り裂く速度でそれは、グレートの元へ駆けつけた。

 グレートブースター。飛行用のスクランブルダッシュと別に存在する、グレートマジンガー専用の背面ブースター。その速度をコントロールできる鉄也の操縦技術と、グレートマジンガーのポテンシャルがあってはじめて使用可能な質量兵器。空中でグレートブースターと合体したグレートは、竜巻の中心部に照準を合わせる。

 

「鉄也さん、行けるのか!?」

 

 相手は竜巻の中に隠れている。それを相手にグレートブースターを命中させるのは相当な技術が必要だった。何せ、見えないのだから。元気が驚くのも無理はない。しかし、剣鉄也は戦闘のプロである。無理だと判断したことはしないのだ。

 逆に、鉄也が行動を行ったということは即ち、可能であるということに他ならない。

 

「今のサンダーブレークとデビルビームの時、叫び声が反響した部分がある。そこを狙えば、外しはしない!」

 

 鉄也が叫ぶと同時、グレートマジンガーからブースターが切り離される。超速で駆け抜けるグレートブースターは、竜巻の中に飛び込みそして、それを切り裂いた。

 

「か……はっ……!」

 

 嵐が霧散し、シレーヌの白い姿が露わになる。オイルと血に塗れたその姿は、上半身と下半身を真っ二つに分けられていた。

 

「見たか、こいつがグレートの威力だぜ!」

 

 足を失ったシレーヌは、空中で落下し速度を上げる。しかし、まだ息がある。それを確認したデビルマンがシレーヌへ迫った。

 

「トドメだ!」

 

 デビルチョップ。超合金Zの剛腕から繰り出されるそのパンチ力は、虫の息であるシレーヌを間違いなく絶命させる威力を持っていた。しかし、届かない。

 

「やらせはせんぞ、アモン!」

 

 巨大な機械獣の身体と合体したメタルビースト・カイムがシレーヌを庇うように躍り出たのだ。デビルマンの拳をそのボディで受け止めながら、カイムはシレーヌの上半身を抱えて抱き締める。

 

「カイム、貴様っ!」

 

 驚くデビルマン。

 

「何を……」

 

 驚愕するシレーヌ。

 

「何をしているの、カイム!」

 

 シレーヌはもはや、虫の息だった。今更助けられたところで生き延びられる確率は薄い。そのシレーヌを庇い今、カイムは確実にダメージを受けている。

 

「……シレーヌ。俺の身体を使え」

 

 寡黙な悪魔が、そう言った。それに、シレーヌは首を横に振る。

 

「何を言うの。私はもう助からない!」

 

 その状態で合体し、万が一シレーヌの意識が主導権を握れば、まだ生きているカイムも共倒れになる。

 

「わかっている。シレーヌ」

 

 しかし、カイムは譲らない。

 

「おれは生き延びるつもりはない。シレーヌ、きみにただ勝ってほしい。勝利の喜びの中で死んでほしいだけだ。そのためならば俺は俺の命を、俺の力をきみに差し出そう」

 

 寡黙な悪魔は静かに語る。その目にはただただ、血まみれのシレーヌが映っていた。

 

「カイム、どうして……」

 

「シレーヌ、たとえ血まみれでも君は美しい」

 

 その言葉が、カイムの最後の言葉だった。シレーヌとカイムは直後、ドロドロと溶け始めていく。それはデーモンが他者の生命を取り込む力。とけてひとつになったシレーヌとカイムは、瞬く間に新たな姿を手に入れていた。

 

「これは……!」

 

「カイムの野郎!?」

 

 生まれ変わったその姿は、異様だった。機械獣を取り込みメタルビーストとなったカイムは、その姿をさらに凶暴な四足の獣へと変貌させていた。しかし、そこにカイムの顔はない。カイムの顔があった部分から、シレーヌの上半身が生えていた。まるで神話や空想の中のケンタウロス。人の姿からさらに離れた悪魔が、勇者達の前に立ち塞がっていた。

 

「デビルマン! そして人間の勇者達よ! カイムの命が、シレーヌの執念が、お前達を殺す!!」

 

 

 

…………

…………

…………

 

 

 

 カイムと一体化シレーヌの強さは、圧巻の一言だった。その肩翼の翼の一振りでブラックゲッターを薙ぎ払い、カイムから受け継がれた獣の足はデビルマンを蹴り飛ばし、そして手に持つ槍はグレートマジンガーを寄せ付けない。

 

「なんて奴だ……!」

 

 合体により、大きさも格段に巨大化している。25メートルのグレートが地上からでは見上げなければならない巨体。そこから繰り出される槍は、蹴りは、竜巻は、スーパーロボット達を圧倒していた。

 

「どうした! 人間の戦士達よ! お前達の全力はこんなものか!」

 

「人間様を、舐めるんじゃあねえ!」

 

 ブラックゲッターがトマホークを突き立てるが、ゲッタートマホークはその強靭な装甲を前に砕けてしまう。

 

「クソッ、ならこいつはどうだ!」

 

 腹部からのゲッタービーム。本来であればあらゆるメカを、生物を溶かす。恐竜帝国のメカザウルスのように生物とメカの複合であるデーモンには、過剰なゲッターエネルギーは猛毒でもあるはずだった。しかし、それを受けて尚シレーヌは動き続けている。

 

「なんでもありかよ、あいつ!」

 

「カイムの力を手に入れて、余計に強くなりやがったか……だがな!」

 

 デビルマンが空高く飛翔する。カイムの身体を手に入れたことで飛べなくなったシレーヌを、上空から攻撃しようとしたのだ。

 

「デビルマン、そんな手が通じると思ったか!」

 

 しかし、カイムから残された2本のツノから放たれた雷撃光線がデビルマンを襲う。

 

「ぐぅぁっ!?」

 

 雷撃はデビルマンのボディ全身にダメージ与え、そのショックでデビルマンは地へ落ちる。

 

「デビルマン!? クソッ……」

 

 せめてグレートブースターが残っていれば、そう鉄也は歯噛みした。あれならばまだ、シレーヌを倒せる可能性があったというのに。

 しかし、それは既に使用してしまった。一発限りの切り札なのだ。シレーヌは、残るわずかな命を燃やしながら攻め続ける。カイムという最強の鎧を身に纏ったシレーヌはもはや、防御を気にする必要もなかった。ただただ、自らの命果てるまで攻めるのみ。その足が、グレートを蹴り飛ばし大きく吹き飛んだ。ビルに激突し、瓦礫の中力なく項垂れる。

 

「クソッ……!」

 

 たしかに、本人が言ったように奴はもう時期死ぬかもしれない。しかし、今ここで自分たちが倒れたら奴が絶命するまでに一体何人の命が失われるだろう。だからこそ、鉄也は今ここで負けてはいけないのだ。しかし、指が動かない。グレートを動かすための力が出ない。

 ブラックゲッターも、同じように大きなダメージを受けていた。元々、ゲッターロボは3人のパイロットが乗ってはじめて力を発揮する。元気が一人で操縦するブラックゲッターは、本来のゲッターロボの10分の1の力しか発揮できないといっても過言ではない。

 それでもブラックゲッターが一人乗りなのは、元気の操縦についていけるパイロットがいないからだった。竜馬、隼人、弁慶が真ゲッターロボに乗っている以上、元気と連携ができる人間がいない。それは元気がスタンドプレイを好む性格であることも起因していたが、結果としてブラックゲッターは元気の戦いの才能によってのみその力を担保されていたと言っていい。その元気が立ち向かう力を失えば当然、ブラックゲッターは戦えない。

 今、シレーヌを相手に戦えるのは。

 

「ま、まだだ……!」

 

 瓦礫の中から立ち上がったデビルマン。ただ一人だった。

 

「アモン、いやデビルマン! まだ生きていたか!」

 

「当然だ! 俺の再生能力はお前も知っているだろう」

 

「フフ、そうね……。ならば今度は2度と再生できぬよう、心の臓を一突きにしてやる!」

 

 シレーヌはその槍を構え、デビルマンと対峙した。そしてしばしの間、睨み合う。

 先に動いたのは、シレーヌだった。

 

「もらった!」

 

 シレーヌの巨体がデビルマンに迫る、デビルマンは寸でのところで飛び上がり、その突進を避けた。そして、その鋭利な爪を湛えた腕を飛ばす。ロケットパンチ。光子力マシン、マジンガーシリーズの腕そのものを質量兵器にしたそれが、シレーヌの胸を貫いた。

 

「カッ…………!」

 

 しかし、それと同時にシレーヌの突き出した槍が、デビルマンの腹を大きく抉っていた。

 

「ガァッ……!」

 

 オイル混じりの血を吐いて、デビルマンの意識が遠くなっていく。その薄くなる意識の中、必死に槍を抜いて身を自由にしたデビルマンだが、そのままコンクリートに追突する。

 

「や……やられた……」

 

 シレーヌの執念に、カイムの命に。今まさにデビルマンも力尽きようとしていた。その巨大な緑の巨人は忽ち力が抜けたように倒れ込み、小さな男の姿へ戻っていく。

 

「だ、ダメだ。変身できない。デビルマンの力が、使えない……」

 

 このまま踏み潰されれば、その時こそが最期。人の、美樹の明日を守るために命を捨てる覚悟はしていた。しかしその初陣がこんなザマとはな。そう、薄い意識の中でデビルマンは自嘲していた。

 しかし、その時は来ない。

 

「な、なぜだ……どうしてトドメを刺さない……」

 

 そうして、デビルマンは……不動明は眠りについた。そして、目を覚ましたのは陽の光に照らされてのことだった。

 

「ウ……」

 

 生きている。自分の意識がある。目の前にあるのは瓦礫の山と化した都市。それは地獄のような光景だが、地獄ではないことは知っている。

 

「……目覚めたか?」

 

 明の前に、男がいた。その男は、明の生前の記憶にある。

 

「剣大佐……」

 

 剣鉄也大佐。グレートマジンガーのパイロット。

 

「まさか、不動伍長がデビルマンとはな……」

 

 渋面を作っているが、鉄也は明にその手を差し出す。

 

「立てるか?」

 

「はい……」

 

 鉄也の手を取り、明は立ち上がる。地獄と化した夜明けの街は、今尚けたたましいサイレンが響いていた。

 

「そうだ、シレーヌは?」

 

 あの時、確実にトドメを刺せたはずなのに。それでもシレーヌは来なかった。その事を思い出し、明は周囲を見回す。

 

「ああ、見ろ不動」

 

 鉄也はそう言って、陽の出の方を指刺した。

 

「ああ……」

 

 陽の光に照らされて、それはいた。

 シレーヌ。女性の身体を持ち、頭に白鳥のような美しい翼を持ったデーモンだった。シレーヌは、メタルビーストとして巨大化してもその白い羽根は美しかった。闘いと殺戮にしか興味のないデーモンですら、見惚れるほどの美貌を持ち、そしてそのデーモンであるカイムが愛してしまうほどの。

 朝焼けの中で、シレーヌは微動だにせず固まっていた。死んでいた。

 左腕は捥げ、下半身はカイムと同化し、胸は貫かれていた。しかしシレーヌは、歓喜の表情のまま死んでいたのだ。

 

「……お前を倒したと同時に、絶命したらしい」

 

「……そうか」

 

 明は、デビルマンはその姿を目に焼き付けていた。

 残忍な悪魔であるシレーヌ。強敵だったシレーヌ。しかしその死に姿は間違いなく、美しかったのだ。

 

 

 

…………

…………

…………

 

 

 

「ゼノン様、シレーヌが死にました」

 

「そうか……人間達の中にシレーヌを倒すほどの者がいたか」

 

 その場所は、地獄だった。関東地方のとある都市。そこはデーモン族の攻撃で地獄と化したのだ。まるで、世界の終わりのような地震が起きた後のような瓦礫と屍の山。そこに悪魔王ゼノンとサイコジェニーはいた。

 サイコジェニーは、力の弱いデーモンだ。しかし、その念力により遠くのものを見ることができる。

 この場所にいながら、サイコジェニーはデーモンの一斉攻撃の様子を観察し魔王ゼノンに報告していたのだ。

 

「敵の中には、勇者アモンがいます」

 

 故に、デビルマンの存在もサイコジェニーは見ることができる。その報告を聞き、魔王ゼノンの右側にある顔が顔を顰めた。

 

「あのアモンが、人間に乗っ取られたと?」

 

「そういうことかと」

 

 デーモンが人間に合体する際、稀に起こる事故がある。それが、意識を人間に乗っ取られる。或いは人間の機能である心までもを合体能力により備えてしまうことで、デーモンとしての残虐性にブレーキがかかってしまう。そのレアケースに、アモンが。

 多くの場合は問題にならない。デーモンの一体などどうとでもできる。しかし、アモンとなれば話は別だ。

 シレーヌがやられたとなれば、アモンに比肩しうる存在は……。

 

「もはや、私が直接アモンを処刑せねばなるまいか」

 

 魔王ゼノンしかいない。ゼノンの貌は、それぞれにクツクツと嗤い始めた。ゼノンは魔王だ。デーモンの中のデーモンだ。

 それが強敵の存在を前に、興奮しないなどあり得ない。

 

「……よろしいのですか、ゼノン様」

 

 サイコジェニーの懸念も、理解していた。デーモン族の本命はゲッタードラゴンだ。ドラゴン奪取こそが最大の目的。しかしバードス島に派遣したデーモン軍のザン将軍も、人間の軍に倒された。

 そんな中で、自分から動くというのは。もしアモンに負けたならそれは、デーモン族の敗北を意味する。しかし、これはサイコジェニーにも秘密にしていることだが……デーモン族の勝敗など、ゼノンにとっては、いやその上にいる彼らにとっては些細なことでしかないのだ。

 ゼノンが敗れるなら、彼らは別の手段を取るだろう。ブライを蘇らせたように。しかし、彼らの手足として動くだけなのも癪なのだ。

 ゼノンは王なのだ。たとえ相手が神であったとしても、時には王として神の意思よりも優先せねばならぬものがある。

 それが、アモンの処刑だった。

 アモンの名はデーモン達の中でも広く知れ渡っている。権力に興味を示さず、ひたすら力のみを求めて闘争に明け暮れたアモンは、デーモン達の中では畏怖の対象なのだ。

 それが人間の味方になったなど、あってはならない。たとえ勇者とて、裏切り者の粛清は王自らが行わねばならぬ。

 それは、ゼノンの悪魔王としての矜持だった。それに、ゲッターの方も既に手は打っている。今頃、早乙女研究所は地獄と化しているはずだった。

 

「すぐに仕掛ける。サイコジェニー、お前はアモンの居所を常に我に知らせよ」

 

「はっ」

 

 夜闇は更け、悪魔の宴は闇の中へ消えていく。不気味な笑い声が、死の街と化した廃墟の中で木霊していた。

 

 

 

…………

…………

…………

 

 

 

 翌朝、既に早乙女研究所には各会の重鎮が集まっていた。昨日の魔王ゼノンによる宣戦布告と、悪魔軍による人類主要都市への同時多発攻撃。辛くもデーモンを退けた統合軍だが、人々の混乱もピークに達している。当然だった。今までも人類は古代からの襲撃に遭っていたが、今度の敵は悪魔。人々が知る神話の時代に伝え聞く者たちだ。何よりもあの魔王ゼノンの威容と、世界規模の被害は尋常ではなかった。特にロシアは首脳陣の全てがデーモンに操られていたらしく、ワシントンへの核攻撃を突如として開始。テキサスマックによる迎撃が叶わなければ、今頃世界中で核戦争が起きていたはずだ。

 それだけの、被害。今早乙女研究所では、今後の対策、方針が練られている。

 全ては、早乙女博士の一言から始まった。

 

『敵の狙いはゲッターである』

 

 早乙女博士は明らかに、何かを知っている風だった。恐怖と混乱になす術もない中でその堂々とした態度を取る早乙女博士に操られるかのように、政治、経済、軍事、テクノロジー、イデオロギー、あらゆる分野の専門家がこの日、早乙女研究所に集まっていた。

 彼らは今、早乙女研究所の会議室にいる。大きな円卓を囲むようにして、早乙女博士の話を待っている。

 

「…………」

 

 飛鳥了大佐も、その1人である。彼は、デーモンが現れる数日前から、悪夢にうなされるようになっていた。それは、太古の昔の記憶。人類の生まれるはるか昔、悪魔がこの星に跋扈していた記憶だった。最初は、それを自分の体調不良のせいで変な夢を見るのだと思った。しかし、夢で見た怪物が現実に現れ……親友である不動明が行方を消したことで、この件に積極的に関わるようになっていた。

 

「……眠れてないのかね?」

 

 飛鳥の隣に座るのは、弓内閣総理大臣。かつての光子力研究所所長であると同時に、弓さやかの実父でもある彼もまた、目の下に隈ができている。

 

「総理の方こそ、お顔に出ていますよ」

 

 実際、弓首相は多忙を極めていた。内政、外交、あらゆる面で今日本は危機に立たされている。その危機に日本の顔である自分が不甲斐ない姿を見せるわけにはいかない。そういう覚悟が、弓首相にはあった。

 

「……それで、話を進めてもらいたいですな」

 

 そう口に出したのは生物学に精通する科学者の雷沼教授だった。早乙女博士とも旧知の友である雷沼教授は、かつてハチュウ人類の生態系を解明するために早乙女博士の研究を手伝った経歴を持っている。

 そんな彼らが注目しているのが、円卓の向こうに腰掛ける早乙女博士。博士の傍には、長身のサングラスをした大男と、小柄な男の2人が立っている。白衣を着ており、2人とも博士の助手であることが伺えるが、早乙女と旧知の中である雷沼も弓も、その2人の顔ははじめて見た。

 

「……早乙女博士は、重大な事実をつき止めました」

 

 サングラスの男が言う。小男が、機械を操作すると、円卓の中央に映像が映し出された。

 

「これは……ゲッター?」

 

 ゲッタードラゴン。正確に言えばその、繭。その存在はトップシークレットだった。軍や政府でもごく一部の人間しか知らない異常。その光景を飛鳥了は、はじめてその目で確認した。

 その異様な進化、いや進化と呼べるのかもわからないその変化に飛鳥了は目を奪われていた。

 

「……このゲッターが、敵の狙いだというのかね?」

 

 雷沼教授が訊くと、早乙女博士は深く頷いた。

 

「ドラゴンは、成長している。そして悪魔どもはその進化に魅入られたのだ」

 

「根拠は?」

 

 雷沼がさらに追及する。すると、早乙女博士の両脇を固める2人の科学者が、口を開いた。

 

「根拠は、そう」

 

「悪魔が直々に教えたからです」

 

 2人がそう言った直後、大男の口が大きく開かれた。

 

「なっ!?」

 

 そこにいたのは、無数の蟲だった。蟲が、蠢いている。蝿の王。そんな言葉が了の脳裏を過った。そして、それは聖書に登場する蝿の悪魔を意味する言葉。その連想ゲームが即座に働いた飛鳥了は、弓の手を掴んで席を立ち、後ろへ下がった。

 

「総理、逃げてください!」

 

「飛鳥君!?」

 

「奴らは……奴らは既に、デーモンに取り憑かれています!」

 

 了が叫ぶ。早乙女博士はその言葉を聞き……ニヤリと笑った。

 

 

 

…………

…………

…………

 

 

 早乙女研究所と音信不通。さやかはその報せを受けて即座に緊急事態態勢を新光子力研究所に発令した。現地に向かった偵察用のコマンドドローンも全てロスト。早乙女研究所の様子は不明。父である弓首相の安否もまた。

 

「…………」

 

 それでも、さやかは気丈に立っていた。

 

「…………さやか」

 

 その隣でさやかを支えるように寄り添うミチル。ミチルも当然、父の安否が気になっている。それでも、今すべきことをしなければとしていた。シレーヌ戦でのダメージが完全に回復こそしていないが、それでもグレートマジンガーとブラックゲッター、そしてデビルマンは早乙女研究所に向けて出撃している。現在、日本にこの3体を超える戦力は存在しない。鉄也達も、ほとんど休めていないはずだ。

 それでも、今ここで早乙女研究所を失うわけにはいかなかった。

 

「……こんな時、竜馬君達は何してるのかしらね」

 

「……ミチルは、信じてるのね。竜馬君達が生きていることを」

 

 さやかも、信じている。兜甲児は死んでないと。だから、甲児が帰ってきた時のための用意もしている。それでも……既に一週間だ。生存は絶望的。そう周囲は判断し始めている。

 誰も、それを口にはしない。さやかを気遣ってのことだ。それでも……そういう空気をさやかは感じていた。

 それに加えて、父までいなくなってしまったら。そんな不安を押し殺しながら、さやかは現場に急行する鉄也達の応答を待っていた。

 そして、その時は来た。

 

「こちらグレート、早乙女研究所に到着!」

 

 鉄也からの通信をキャッチし、さやかはそれを繋ぐ。

 

「状況は!」

 

「今、回す。さやか、ミチル……目を背けるな」

 

 その鉄也の言葉と同時、映像が新光子力研究所に映し出された。

 早乙女研究所の周辺には、無数のデーモンが待ち構えている。異形の翼を持つもの、10の目を浮かべるもの。ありとあらゆるこの世の生き物の冒涜とでも言うべき悍ましき悪魔の数々が、早乙女研究所を取り囲んでいた。

 そして、その奥。

 

「そ、そんな……お父様!?」

 

 さやかの父は、十字架に掛けられて研究所に磔られている。弓首相だけではない。雷沼教授も飛鳥了大佐も同様に。

 

「フフフ、フハハハハハハハ!!」

 

 映像越しに、笑い声が木霊する。その笑い声の主は……早乙女博士。

 

「人類よ、目覚めの時が来たのだ!!」

 

 

 

…………

…………

…………

 

 

 

「ど、どういうことだよ親父!」

 

 ブラックゲッターのコクピットで、元気が叫ぶ。連日のデーモンとの戦いで、早乙女研究所に帰還する時間もなかった。そのわずかな間に様変わりした父の姿は、元気が動揺せざるを得ないものだった。

 頰は痩け、目は一層険しくなり、鬼気迫るものすらあった。しかし、何よりもその口元に浮かべている笑みは人間のそれではない。

 悪魔だ。連日、元気が倒してきた悪魔の笑みだった。

 

「早乙女博士、まさかデーモンに……」

 

 

 鉄也が、呻く。

 

「嘘だっ、親父が悪魔なんかに……負けるもんか!」

 

 ブラックゲッターが、真っ先に飛び出す。悪魔の群れに。デーモンの群れを切り裂きながら、父の下へ向かう。

 

「親父! なあおい、親父!?」

 

 親父。そう呼ばれて尚早乙女博士の顔は、狂気に満ちていた。

 

「元気よ……。人類は目覚めの時が来たのだ。審判の日が迫っている」

 

「何を、何をわけのわからねえこと言ってるんだよ!」

 

 わからない。元気は父の豹変の、その理由がわからない。デーモンに取り憑かれたなど、父に限ってあり得ないのに。

 

「世界最後の日……黙示録が始まろうとしているのだ。悪魔が現れ、人類に飛躍の時が近づこうとしている!」

 

 早乙女博士の独白は、要領を得ない。しかし、早乙女博士が何かを伝えようとしていることだけは、理解できた。だから、元気は必死にゲッターの手を伸ばす。早乙女博士へ。

 だがその直後、突如として飛び込んだ巨大な腕がゲッターの腕を掴む。

 

「ッ何だっ!?」

 

 現れたのは、人間のように見えた。サングラスをかけた巨漢。その手はブラックゲッターをゆうゆうと持ち上げ、投げ飛ばした。

 

「全く、人間は常に理解を拒む。これではゲッター線も悪魔を選ぶというもの。そうだろう、スティンガー君」

 

 スティンガー君。そう呼ばれた小柄な男が、巨漢の横に並んだ。

 

「う、うん。そうだねコーウェン君」

 

 コーウェンと呼ばれた大男が頷いて、投げ飛ばされたブラックゲッターと、空中でその様子を見守っていたグレート、そしてデビルマンを一瞥する。

 

「コーウェン……スティンガー……?」

 

 聞き慣れない名前の登場に、鉄也は眉間の皺を寄せた。

 

「あ……あいつらは、親父の研究に出資してくれていた、サポーターだ……」

 

 ゲッターを立ち上がらせ、元気。

 

「元々、得体の知れない奴で……俺はガキの頃からあいつらが嫌いだった。あいつらが……まさか!」

 

「ああ……」

 

 デビルマンは、二人の得体の知れない男を睨んでいた。そして、その向こうで磔にされている青年を。

 

『あれは、了!』

 

 不動明の親友である、飛鳥了を。

 

「明……明なのか?」

 

 了の呟きが、デビルマンの地獄耳に届く。しかし、デビルマンはそれに答えない。答えの代わりにデビルマンは、コーウェンとスティンガーの2人を睨め付ける。

 

「ククク……アモン。まさか人間の味方になったとは驚きだ。そうだろうスティンガー君」

 

「う、うん。そうだねコーウェン君。あれほど他者と群れるのを嫌っていたアモンがまさか、人間に絆されるとはね」

 

「黙れバアル、ゼブル。地獄から姿を消したかと思えばてめえら……既に人間に取り憑いてやがったのか」

 

 バアル、ゼブル。アモンの記憶の中にあるデーモンの名前だった。二柱でひとつのデーモン。狡猾で、魔王ゼノンすら持て余していた最悪の悪魔。それが今、目の前にいる。

 

「フフフ……我々はあの方より勅命を受けていたのだよ」

 

「そのために10年……我々はこの時を待っていたのさ。地球の科学者、コーウェンとスティンガーとしてね」

 

 そう言って、コーウェンとスティンガーがグニャリと融けた。周囲のデーモン達を取り込みながら、巨大化していく。そして、巨大な8本脚のバッタのような姿へと変化していった。その中央には、コーウェンとスティンガーの貌。さらにそこに飛び乗った早乙女博士は、狂気に満ちた笑みを浮かべながら宣言する。

 

「ゲッター線の意味を理解するために、ワシは悪魔と契約を交わしたのよ! 神の戦士を、ゲッタードラゴンを蘇らせるための儀式が、今日ここより始まるのだ!」

 

 早乙女博士の叫びと同時、突如として地鳴りが起きる。まるで、黙示録の始まりを告げるラッパのように響いたそれと同時、早乙女研究所の至るところから足音が響いた。それと同時に、ブラックゲッターも異常を感知する警告音を発し、元気に知らせる。

 

「何だよ、これ……?」

 

 研究所周辺のゲッター線濃度が、異常な高まりを示していた。通常であればゲッター線は人体に無害だが、この異常な量は何が起こるわからない。まるで、ドラゴンの繭と同じ。

 それだけのゲッター線が、研究所に満ちている。

 

「鉄也さん! 速く弓首相達を助けて!」

 

 咄嗟の判断で、元気は鉄也に叫んだ。

 

「ゲッター線の量がおかしい。何かが起こってる。こんなところに生身の人間がいたら……解けて死んじまう!」

 

「!?」

 

 元気の叫びを聞くと同時、鉄也はグレートマジンガーを飛ばす。しかし、研究所と弓首相達を守るようにコーウェンとスティンガー……バアル・ゼブルがグレートの前に立ち塞がる。

 

「彼らは生贄なのだよ。世界最後の日を迎えるためのね!」

 

 巨大な昆虫のような腕が、グレートを突き飛ばす。

 

「ふざけるな! 貴様らの言う世界最後の日など、俺は認めん!」

 

 マジンガーブレードを構え、グレートはバアル・ゼブルと対峙していた。ブレストバーンやサンダーブレークのような大技は高濃度のゲッター線が充満する中で、人質の命を脅かすことになる。ゲッター線が何か、危険な化学反応を起こす可能性を憂慮すれば、グレートは自慢の必殺武器の多くも使えない。一方で、敵は昨日戦ったあのシレーヌ以上の強さがある。そう、鉄也は直感していた。

 しかし、マジンガーブレードの硬度よりも遥かに硬いバアル・ゼブルの皮膚を、グレートは何度打ち合っても突き崩せない。ブラックゲッターも加勢に入り、トマホークを叩きつける。

 それでも、無傷。

 

「どうしたのかね、君たちの実力はそんなものかな?」

 

「それでは我々は愚か、魔王ゼノンに勝つことはできないね」

 

「そう、故に人類は滅ぶのだ!」

 

 コーウェンが、スティンガーが、早乙女博士が三者三様に煽っていく。そして、巨大な口から吐き出される大百足のような蟲が、グレートマジンガーへと巻き付いた。そして、強烈な握力で締め付けていく。

 

「グッ!?」

 

「鉄也さん!?」

 

 グレートを助けようとブラックゲッターが動くが、それはバアル・ゼブルの鋼鉄の爪に防がれ、そしてそのままギリギリと押されていく。

 

「クッソォ……」

 

 鉄也も、元気も。それにグレートもブラックゲッターも。シレーヌとの戦いで受けたダメージが大きく残っていた。到底、フルパワーではない。連戦のダメージが、確実に勇者達の命を削っている。そんな中で立たされた窮地。

 

「どうして……どうしてだよ父さん!?」

 

 元気が、叫んだ。

 

「…………」

 

 しかし、早乙女博士は無言でブラックゲッターを睨め付けるのみ。

 

「どうしてだよ、答えてくれよ!」

 

 それが元気には、たまらなく悔しい。本当に、大好きな父が悪魔になってしまったのか。だとしたら、何故。そんなことばかりが浮かんでは消えていく。

 

「ブラックゲッター、お前のゲッターエネルギーも頂いていく」

 

 コーウェンの声。同時にスティンガーの口が開いた。そして、舌がべろりと伸びてブラックゲッターに迫る。

 

「チクショウ……動け、動けよゲッター!」

 

 元気は操縦桿を操作するが、ブラックゲッターは万力のようなバアル・ゼブルの力に押されて動けない。そして、グレートと鉄也も。

 その舌がゲッターを舐めた。そして次の瞬間、鋭利な刃が飛び、その舌を切り裂く。

 

「なぁっ!?」

 

 悲鳴をあげるスティンガー。誰もが、その刃を見た。それは、腕のようだった。腕から生えた刃が、デーモンの舌を切ったのだ。

 しかし、グレートは腕ごと百足に締め付けられている。ならば、誰が。誰もが、その刃の飛んできた方へ視線を向けた。

 

 そこに立っていたのは、魔神だった。

 漆黒のボディと鉄銀色の顔。そして、紅の翼を携えた魔神。

 

「待てよ化け物ども! こっから先は、マジンガーZと兜シロー様が相手だぜ!」

 

 鉄の城。マジンガーZが確かに空に、聳え立っていた。

 

 

 

…………

…………

…………

 

 

 

 昨日、魔王ゼノンの宣告の直後に話は遡る。ボスに連れられた兜シローとセーラは、隠されていたボスボロットに乗って地下の下水道を走っていた。

 そして辿り着いたのは、旧光子力研究所。既に研究所としての機能のほとんどを新光子力研究所に預け、本来は取り壊される予定だったが今でも残っているそこに、シロー達は隠れて、一夜を明かしていた。

 

「……ここは表向き廃棄された施設だが、光子力バリアも健在だからな。しばらくは安全だろ」

 

 そう言って汗を拭うボス。ヌケとムチャは何やら準備をしている。

 

「……シロー」

 

 心細そうに、セーラはシローの手を握る。

 

「大丈夫だよセーラ。きっと今頃……」

 

 今頃、シローの仲間達は戦っている。鉄也も、元気も。それなのに、何故自分は戦えないのだろう。そんな悔しさで、シローはセーラの顔を直視できなかった。

 

「……今はみんな、できることをすればいいんだよシローちゃん」

 

 そんな様子を見かねてか、ボスが呟く。

 

「でもさ、ボス……」

 

 それでも、シローの心は晴れない。

 

「シローよぉ。お前さんは戦ってんじゃねえか。その子の手を握ってさ」

 

「…………」

 

 それでも黙ったままのシロー。セーラは、不安そうにそんなシローを見つめている。ボスは、ヌケとムチャを手伝いに行ってしまった。

 外は地獄のような戦場と化しているのに、シローとセーラの間に流れている時間は、静かだった。

 

「……ねえ、シロー」

 

 そんな沈黙を破ってセーラが、口を開いた。

 

「私、シローと会えてよかったわ。だって、もしシローと会えなかったら私、ひとりぼっちだったかもしれないもの」

 

 シローを見つめるセーラの瞳は、シローが恋した青い瞳によく似ていて。どうしても、思い出してしまう。ローレライのことを。

 目の前の女の子に、別の女の子を重ねて見てしまっている。それが申し訳なくて、シローはセーラの顔を直視できなかった。

 

「俺は……君にローレライを重ねて見てる。本当は、そんなことしちゃいけないのに……情けないんだ。仲間と戦うこともできず、君に甘えてしまってる俺自身が」

 

 せめて、それだけでも吐露しなければ壊れてしまいそうだった。そしてセーラは、その言葉を受け止めてくれる。

 

「ううん、いいの。あなたがローレライのことを思い出しちゃうのも仕方のないことよ。だから……」

 

 そう言ってシローの肩を抱くセーラの優しさに、甘えたくなかった。けれど、できなかった。

 

「ごめんな、セーラ……」

 

「ううん、ありがとう……」

 

 そうして2人が抱き合っていた時だ。

 

「おいお前ら、こっち来い!」

 

 ボスが戻ってきたのは。

 

「うわぁっ!?」

「きゃっ!?」

 

 びっくりしたような声を上げて、離れるふたり。その様子をニヤニヤ眺めるボスだったが、すぐに本題を思い出す。

 

「とにかく、こっちだ。来い!」

 

 2人を促すボスに続いて、シローはセーラの手を握り、ふたりでボスに続いた。

 

 

 

「これは……!」

 

 シローが見つけたのは、鉄の城だった。

 マジンガーZ。兄の相棒であり、祖父の形見。何度も世界を救ってきた、神にも悪魔にもなれる力。新光子力研究所でオーバーホールされていたはずのそれが、ここにある。それも、あの時のダメージのほとんどが回復している完全な状態で。

 

「実はの、修理が終わった段階でこっちに移送されとったんじゃ」

 

 白衣を着た老人が2人、シローの前にやってきた。

 

「のっそり博士、せわし博士!」

 

 のんびり屋ののっそり博士と、せわしないせわし博士。今は亡きもりもり博士と共に。三博士と呼ばれていた天才科学者だ。

 

「実はな、前の戦いで起きた光子力エネルギーの集中現象。あれを解明するためにわしらはマジンガーZの再研究を行なっておったんじゃ」

 

 前回の、インフィニティとの戦い。マジンガーZは世界中の光子力を一身に受けて巨大化とでも呼ぶべき不可解な現象を起こした。それはたしかに奇跡だったが、光子力を悪用しようとする輩は必ず、あの現象に目をつける。そう考えたさやかからの、依頼だったとせわし博士は言う。

 

「それでな。マジンガーZはあの戦いの後、ブラックボックスが生まれておる。機体の中心部。光子力エネルギーが炉心のような溜まりを作っているようなんじゃ」

 

「……それって、つまりマジンガーZは前よりパワーアップしてるってこと?」

 

「うむ。しかし、その制御方法がわからん。今のままマジンガーZを動かしても問題はないだろうが、前回のような奇跡を狙って起こせるわけじゃない。それどころか、光子力が暴走すればインフィニティのような脅威になるかもしれないんじゃよ」

 

「つまりだね、要するに、単刀直入に言うと、今のマジンガーZは、光子力爆弾になるかもしれないんだよね」

 

 と、のっそり博士。

 

「……そのこと、兄貴やさやかさんは知ってるの?」

 

「いや、つい先日解析が完了したばかりだから、まだだね」

 

 マジンガーZが暴走すれば、下手したらゴラーゴンが起こるかもしれない? 嫌な汗が、シローの額を濡らす。

 

「…………あのぅ」

 

 ずっと沈黙していたセーラが、口を開いた。

 

「もしかしたら私、その光子力を制御できるかもしれません」

 

「えっ!?」

 

 驚いたと言った風に、博士達が目を丸くする。シローも、セーラの方を見た。

 

「どういうことだい、セーラ?」

 

「あのね、シロー。空中元素固定装置って知ってる?」

 

 空中元素固定装置。祖父と兄がそんな話をしていたのを聞いたことがある気がする。しかし、難しすぎて何を言ってるのか珍紛漢紛だった。

 

「私のママがアンドロイドで、私はアンドロイドと人間のハーフ。それって本来はおかしいでしょ。どうやってできたと思う?」

 

 沈黙するシローに代わり、セーラはその答えを続ける。

 

「私はね、パパの精子を空中元素固定装置が抽出し、ママの身体の中で人間の姿に作り替えられた。空中元素固定装置の申し子なの。だから、ママの機能を半分だけ、受け継いでる」

 

 そう言って、セーラは首につけているチョーカーに触れた。すると、チョーカーが輝き出す。その輝きは一瞬。一瞬の間にセーラの手元には、小さなダイアモンドが転がっていた。

 

「こんな風に、大気中の元素を別の物質に変換できるの。私がいれば、光子力エネルギーが過剰に回転するたびにそれを別の何かに変換できるわ」

 

 そう言って、セーラは寂しそうに笑ってみせた。

 

「……もしかしたら、ママはこのことを予見して、私をここに連れてきたのかもね」

 

「セーラ……」

 

 シローは、そんなセーラの手を強く握っていた。シローには、わかった。わかってしまった。セーラがその特殊な出自ゆえに、どれだけ寂しい思いをしてきたのか。

 それは、偉大な祖父と兄を前にして自分が抱いていた劣等感などよりも遥かに辛いものだったのではないかとシローは想像する。

 今、セーラの能力を見てシローは理解してしまったのだ。彼女もまた、兜甲児同様に運命を背負っているのだと。

 そして、その運命は生まれついて離さないものだと。生まれついての異能など、呪い以外の何者でもない。ならば、せめて。

 

「……お母さんのことは、好き?」

 

「うん。優しくて美人で、自慢のママよ」

 

 そう言って気丈に笑うセーラの痛みや苦しみを、分かち合いたい。そう思った。

 何より今、シローの尊敬する兄貴は……マジンガーZのパイロット・兜甲児はいない。

 

「……博士、ボス。俺がマジンガーZを操縦する。俺が、兄貴の分まで戦う」

 

 ニッ、と笑うボス。その言葉を待っていたとばかりにせわし博士とのっそり博士も頷いた。そして、その直後だった。

 

「お、おいボス、大変だ!」

 

「早乙女研究所が、デーモンに占領されたぞ!」

 

 ヌケとムチャが、絶望的な報せを持ってきたのは。

 

「……セーラ!」

 

「ええ、シロー」

 

 セーラと2人、シローは走り出す。兄が走った道を。その先にある赤い飛行機……ホバーパイルダーに乗り込み、その後部座席にセーラが座る。

 

「マジン・ゴー!」

 

 兄が叫んだその掛け声を、シローが叫ぶ。パイルダーの座席は、小さい頃に座った兄の膝の上のような感触があった。そして、貯水槽から発進するマジンガーZの頭部に、人の頭脳を加える。

 

「パイルダー・オン!」

 

 マジンガーZの瞳に、光が灯る。それは、争い絶えないこの世界を悲しむ瞳か、それとも、希望を勝ち取るための瞳か。走り出したマジンガー。さらに、滑走路から射出されたジェットスクランダーとドッキングし、マジンガーZは空を飛ぶ。

 

「兄貴……兄貴の帰ってくる場所は俺が守る。だからセーラ。力を貸してくれ」

 

「うん。シロー、あなたとならどこまでも」

 

 背後からそう囁かれて、どきりとした。そして、その熱に急かされるようにマジンガーZは、空を駆けた。

 

 

 

…………

…………

…………

 

 

「アイアンカッター!」

 

 そして今、シローはマジンガーZで戦友の前に降り立った。アイアンカッターがスティンガーの舌を両断し、ブラックゲッターは後方へ下がる。

 

「お前……シローか?」

 

「ああ、あの時助けられた借りは返したぜ元気。次は鉄也さんを!」

 

 アイアンカッターを自分の手に戻し、マジンガーZは百足のようなものに締め付けられるグレートへ向かう。

 

「フ、フフフ。愚かな……、こちらにはまだ人質がいるぞマジンガーZ!」

 

「そ、そうだぞマジンガーZ。こいつらの命は我々が握っているのだ!」

 

 コーウェンと、舌を再生させたスティンガーが吼え、研究所に磔られている弓首相達を見せつけようとした。しかし、既に十字架には誰もいない。

 

「お前ら、誰かを忘れてないか?」

 

 緑色の皮膚と赤い羽根を持つ悪魔人間が、その爪で鎖を解き3人を抱き抱えて飛んでいた。

 

「なっ、アモン!?」

 

 驚愕の声を上げるコーウェン。

 

「違うね、俺の名は……デビルマンだ!」

 

 離れた場所に3人を降ろし、再び巨大化するデビルマン。

 

「デビルマン……君は……」

 

 飛鳥了は、そのデビルマンの中に懐かしいものを見た気がしていた。彼が愛する、親友の面影を、確かに感じたのだった。しかし、デビルマンは了に何も言わず背を向ける。

 

(許してくれ、了。不動明は……死んだんだ。俺は、デビルマンだ!)

 

 デビルマンが飛ぶ。一瞬で戦場まで戻ったデビルマンは、その爪で大百足を貫いて、心の臓を潰す。核とも言うべきものを失った百足のデーモンは瞬く間に崩れ落ち、グレートマジンガーも拘束から解き放たれた。

 

「お前……あの時のデーモンか?」

 

 デビルマンの姿に、シローは怪訝な顔をする。あの時自分の命を奪いかけた悪魔が今、味方している。理由はわからないが。

 

「……勇者アモンは死んだ。俺は、人の心と悪魔の力を持つ、デビルマンだ」

 

「デビルマン……信用していいんだな?」

 

「ああ……。信じられないなら、背後からでも俺を撃て。だが、今はっ!」

 

 デビルマンが、走り出す。巨大なメタルビースト……バアル・ゼブルに向かい。

 

「こいつを先に、ぶっ倒そうぜ!」

 

 マジンガーZも続いた。巨大な紅の翼……ジェットスクランダーを鋭利な刃にしての突撃。さらに、スクランダーから無数のナイフが射出されバアル・ゼブルを襲う。

 

「こいつを喰らえ、サザンクロスナイフ!」

 

 サザンクロスナイフが、バアル・ゼブルの……コーウェンとスティンガーの目を潰す。早乙女博士の周囲にはバリアのようなものが浮かび、ナイフは届かなかった。だが、バアル・ゼブルは……コーウェンとスティンガーは確実に、そのダメージを受けている。

 

「小癪なり、マジンガーZ!」

 

「我らが力、受けるがいい!」

 

 八本の脚を、マジンガーZを目掛けて振りかざした。しかし、その刃はマジンガーZに届かない。

 デビルマンのその翼が、鋭利な刃となって前脚を斬り裂いたのだ。そして、デビルマンは闘争に打ち震える悪魔の形相でバアル・ゼブルを睨む。

 それはまさに、悪鬼の形相だった。

 

「……バアル・ゼブル。てめえら、デーモンじゃねえな。俺と同じ、デビルマンだろ?」

 

「ククク……その通りだ」

 

「我々は、ゲッター線を研究するうちに真理に辿り着くには無限の時間が必要だと考えるに至った。そのためには、人の身体のままでは時間が足りないと気づいたのだ」

 

 コーウェンとスティンガーが、静かに告げる。

 

「……そのためにデーモンとわざと合体し、逆に支配したか」

 

「その通り! デーモンの力は素晴らしかった。この身体ならば、ゲッター線の真実に行き着ける。そう、告げる声がしたのだよ」

 

「……声、だと?」

 

 また、得体の知れない何者かの影。鉄也は警戒する。コーウェンとスティンガーすら、ブライのように何者かに操られている可能性があるということなのだから。

 

「そう、声だ。この宇宙を、宇宙に巣食うあらゆる種を喰い殺せという神の声。それを聞いた時に我々は、悪魔人間でありながらゼノンと手を組んだのだ。そうだろう、スティンガーくん」

 

「う、うん。我々の目的とデーモンの本能は矛盾しないからねコーウェン君」

 

 2人で、正確には1人で盛り上がるコーウェンとスティンガーのクツクツとした笑い声。それを遮ったのは、「外道が!」というデビルマンの怒りの叫びだった。

 

「貴様らは……人間の心を持ちながら自ら悪魔に魂を売ったんだぞ。それがどういうことか、わかっているのか!?」

 

 しかし、その怒りを嘲笑するかのようにコーウェンとスティンガーは続ける。

 

「わかっているとも、これが祝福だと言うことがね。人間は、この宇宙で生きるにはあまりに弱く、脆い」

 

「だからこそ人類はデーモンに平伏し、そしてゲッター線の加護を受けて真理の旅に出るべきなんだよ」

 

「それが、世界最後の日だ!」

 

 早乙女博士が、高らかに叫ぶ。

 

「…………シロー、この人たちは」

 

「わかってる、セーラ。この人たちを放ってはおけない。それがたとえ、ダチの父親だったとしても」

 

 狂ったように笑う早乙女博士を睨み、シローは吐き捨てる。

 

「おしゃべりは終わりだ。そろそろ死んでもらうぞ人間どもよ!」

 

 コーウェンの口が開く。その直後、周囲のゲッター線の濃度が一気に上昇した。

 

「気をつけろシロー、ゲッタービームだ!?」

 

 元気が叫ぶ。それと同時、コーウェンの口から放たれたゲッター線を収束した粒子砲……ゲッターウェーブとでも呼ぶべきゲッター線の波が、マジンガーZを襲った。

 

「なっ!?」

 

「きゃぁっ!?」

 

 避けきれず、ゲッター線の波に押し流されるマジンガーZ。それと同時、機体の内部の光子力エネルギーが急激に上昇していくのを、計器類が正確に計測していた。

 

「っ!?」

 

 セーラが、咄嗟にチョーカーに触れてZの光子力を変換していく。

 

「シロー!」

 

「わかってる!」

 

 マジンガーZそのものを爆発させかねない光子力の渦に指向性を与えながら、セーラが制御する。そして、そのエネルギーを一点に集中させて、シローがスイッチを入れる。

 

「光子力ビーム!」

 

 マジンガーZの両眼から放たれる光子力ビーム。光子力が渦を巻き、螺旋を作りながらその光はゲッター波を押し返しバアル・ゼブルを……コーウェンとスティンガーを呑み込んだ。

 

「……あれが、光子力ビームだと?」

 

 鉄也が絶句する。自分の知らない威力。あの光子力ビームは間違いなくサンダーブレークと同等か、それ以上の出力を有している。

 

「なんだ……なんだこれは!?」

 

「我々の知るマジンガーに、こんな力は!?」

 

 光子力の光の中で、コーウェンとスティンガーが叫んだ。一方で、早乙女博士は寸での所でバアル・ゼブルから飛び降り、その光から逃げ延びる。しかし、まだバアル・ゼブルにも息がある。上級悪魔の心の臓を焼くには、まだ届かない。

 

「許さん……許さんぞ人間ども!」

 

 怒りのままに、コーウェンが吠えた。そして、八本脚のバッタのような姿からさらに変化していく。どことなくゲッタードラゴンを思わせる異形の人型。しかし、その胴体にはやはりコーウェンと、スティンガーの顔が浮かび上がっていた。その拳を巨大に膨らませ、マジンガーZへ迫る。

 

「このまま踏み潰してくれる!」

 

「させるか!」

 

 マジンガーZは飛び回り、その拳を避けると空高く飛び上がった。そして、ふたつの腕をロケットパンチ。ゲッター態となったバアル・ゼブルはしかし、その巨大な拳でそれを防ぐ。

 

「無駄だとわからんのか!」

 

「それは、どうかな?」

 

 兜シローが、ニヤリと笑う。

 

「セーラ!」

 

「うん、空中元素固定装置、フルドライブ!」

 

 次の瞬間、光子力ビームの余波で残ったエネルギーが形を作っていく。それは、拳。マジンガーZの拳と同じものが、無数に生み出されていく。

 

「なんだ……なんだこれは!?」

 

「喰らえっ、鉄拳!」

 

 シローの合図とともに、その無数の拳は一斉にバアル・ゼブル目掛けて飛んでいった。

 

「ロケットパンチ、ひゃぁぁく連発!!」

 

「バ、バカかぁっ!?」

 

 一発一発がロケットパンチ。しかし、その数は百。巨大な拳を持つバアル・ゼブルにとってその一発は蚊ほどの脅威もない。しかし、それが百ならば。

 次第にその装甲がえぐれていくのを、シローは見逃さなかった。

 

「おのれ、許さんぞ!?」

 

 激昂するスティンガー。しかし、先ほどまでいた位置にもうマジンガーはいない。

 マジンガーZは、百の拳の後ろに隠れて迫っていた。そして、傷ついたバアル・ゼブルへと飛び込んでいく。

 

「スクランダーカッターッ!」

 

 百の拳は囮。本命は、その胴体を直接真っ二つにすること!

 無数のロケットパンチに動揺していたコーウェンとスティンガーは、気づかなかった。すでに、死角に飛び込まれていたことに。

 マジンガーZは、バアル・ゼブルの胴体を真っ二つに切り裂いた。

 

「グ、グォォォォォォッ!?」

 

「お、お助けくださいサタン様ァァァァッッ!?」

 

 コーウェンとスティンガーの、断末魔の悲鳴が響く。しかし、その悲鳴は熱光線と雷撃に掻き消された。

 

「…………地獄に堕ちろ!」

 

「滅びろ、外道!」

 

 デビルマンのデビルビームがコーウェンを、グレートマジンガーのサンダーブレークがスティンガーを。確実に滅ぼしたのだ。核を潰され、そのまま泥のように溶けて消滅するバアル・ゼブル。もといコーウェンとスティンガー。

 

「……早乙女博士、もう終わりだ」

 

 残されたのは、早乙女博士一人。

 

「フフフ、フフフ……まだ、終わってはおらんよ!」

 

 しかし、狂気の瞳を滾らせた早乙女博士は止まらない。そして、早乙女博士の影からそれは、現れた。

 巨大な、影。頭と両肩に3つの貌を持つ悪魔。

 

「あ、ああ……」

 

 シローとセーラは、いやこの場にいる誰もが、それを知っている。人間の原初の恐怖。その形をした悪魔の王。

 この世全ての邪悪をその身に宿した形相でそれは、彼らを一瞥した。

 

「現れたな……悪魔王ゼノン!」

 

 皆が言葉を失う中、デビルマンだけがその名を呼んだ。

 

「久しいなアモン。いや、デビルマンよ。デーモンの誇りを失い、人間の味方などに堕ちたお前をこのゼノンが直々に、処刑してやろう」

 

 その声は、まるで脳に直接響いているかのようだった。声を聞いているだけで激しい頭痛が起こる。そんな怪物。人間であるシローや鉄也たちだけでなく、デビルマンすらもそのプレッシャーを受ける怪物。

 

「……親父?」

 

 元気が気づくと、早乙女博士の姿はどこにもなかった。皆がゼノンに気圧されていた間に、何処かへ消えていた。そして、そんな余所見をした瞬間、

 

「無礼者め!」

 

 ゼノンの左肩の貌が持つ鬼のような角から、雷撃が放たれてブラックゲッターを襲った。

 

「ぐ、うわぁぁあぁっっ!?」

 

「元気!?」

 

 一撃で、漆黒のマントは襤褸切れへ変化し、黒焦げになってブラックゲッターは倒れる。

 

「元気! 元気!」

 

「…………」

 

 シローが呼びかけるも、応答はない。まさか、最悪の事態を予感し背筋が凍る。

 

「安心しろ。お前たちもすぐに後を追わせてやる」

 

 ゼノンの絶望的な宣告が木霊した、その時だった。

 

「おもしれえ、やれるもんならやってみやがれ!?」

 

 早乙女博士が起こした周囲のゲッター線濃度の上昇。そして、マジンガーZのブラックボックスが解放されたことによる光子力エネルギーの充満。それは、空に穴を開けたのだ。

 虚無の世界より通じる、救世の穴を。

 

「あれはっ!?」

 

 鉄也が叫ぶ。いの一番にとびこんできたのは、赤い体躯に青い翼。そして巨大なトマホークを構えた最凶のマシン。真ゲッターロボ!

 

「ゲッタァァァァトマホォゥゥゥゥゥクッ!!」

 

 ゲッターの手の中でトマホークがさらに巨大化し、そしてゼノンの左肩の貌へ振り下ろされる。その質量保存の法則すら無視した鈍器は、圧倒的なスケールを誇るゼノンの肩を容易く潰す。

 

「ぎゃぁぁっぁあぁっ!?」

 

 ゼノンの貌が、激痛に叫んだ。

 

「バカな……バカな!」

 

 中央の貌が、驚愕の声をあげる。

 

「ゲッター……貴様はあの世界から帰ってきたというのか!?」

 

「おっと、俺たちだけじゃねえぜ!」

 

 竜馬が不敵に笑む。その直後、天高くから魔王へと、裁きの雷が落とされる。

 

「何っ!?」

 

「スペースサンダー!」

 

 宇宙の王者、グレンダイザーだ。その雷を受けゼノンは一瞬、その光の中で視界が暗転した。その直後。

 巨大な拳が、ゼノンの右肩の顔目掛けて飛んできた。

 

「ターボスマッシャーパァァァァァンチッ!」

 

 その剛腕は、右の貌を思いっ切りぶん殴るとそのまま元の持ち主の下へ戻り、さらにその魔神は降下様にその拳を振り上げて、ゼノンの顔に鉄拳をお見舞いする。そして、スクランダーの出力を最大にしてマジンガーZへ並び立った。

 

「…………なんだよ、へっ。生きてるなら連絡くらいしろよ」

 

 見たことのない魔神だった。それでも、シローにはわかる。それに乗ってるのが、誰なのか。

 

「すまねえ、待たせたなシロー」

 

 兜甲児。シローが尊敬する、偉大な背中。

 

「シロー、マジンガーZに乗ってんのか」

 

「兄貴が帰ってこないからだぜ」

 

「へへっ、サマになってんじゃねえか。シロー、背中は任せたぞ」

 

「…………!」

 

 背中を任された。兄貴から、兜甲児から。小さい頃、大好きだった背中だ。大好きで、だけど遠くて、一生かかっても並べないと感じた背中。

 それに今、シローは並び立っている。

 

「……シロー、嬉しそう」

 

 セーラが、小さく笑った。

 

「……ああ。任せてくれ、兄貴!」

 

 力強い弟の返事に、甲児も嬉しそうに頬を綻ばせる。だが、喜んでばかりもいられない。

 

「おとう……ご主人様。敵は悪魔王ゼノン。私達の世界を滅亡に追いやった……デーモン族の首領です!」

 

 リサのナビゲートで、敵がどれだけ強大かは理解できている。しかし、負ける気は全くしない。

 

「リサは空中元素固定装置の制御に専念してくれ。この化け物はマジンカイザーと……」

 

 カイザーに並び立つ、もう一体の鬼神。この2体がいる限り、人類に負けはない。

 甲児は、確信していた。

 

「真ゲッターが相手になってやるぜ!」

 

 マジンカイザーと、真ゲッターロボ。今ここに、2つの最強が並び立ったのだ!

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