さて、今回は新たな・・・というかこの子メインでまだ書いてなかったなと思い出したヒロイン候補とのお話です。結局誰と結ばれるんでしょーね、彼。(決めとけよ)
「...そんなわけで、ひとつ頼まれてくれるかい?」
いつだかのバイト終わりの一コマである。俺は今マスターに頭を下げられている。
「ちょちょちょ、頭上げてくださいって!もちろんですよマスター。俺でよければ引き受けます。あ、つぐみも連れていっていいですか?」
「ぜひ...と言いたいところなんだがつぐみも予定が入っているそうなんだ。」
「ごめんね秋哉くん...ホントは私もすっごく行きたいんだけど...」
・・・なんかすっげぇ残念そうにしてる。よっぽどあの店行きたかったのかな。しゃあない今度休みの日にでも連れていってやろう。
「え、そーなのか...わかりました、じゃあ行っときますね。」
「ありがとう、頼んだよ。」
「その代わりにぃ...じゃないんですけどぉ...」
「なんだ、娘なら
「お、お父さん?!」
「いやですから
「君に”お義父さん”と呼ばれる筋合いは今のところないぞ。」
「2人とも?!」
ちなみにこのショートコント週に一回くらいのペースで展開してる。なんならすごい時はイヴも参戦してくるからもうしっちゃかめっちゃか。
しかもやる度にマスターの反応がじわじわと受け入れる方向になりつつあるんだけどこれそのうちホントにつぐと結婚しなきゃな流れになってない?いや別に俺は嫌じゃないけどつぐがなんて言うかねぇ。俺みたいなやつじゃ嫌でしょ、きっと。(鈍)
んで、俺はマスターに何を頼まれていたかっていうとだな。
「じゃあ仕入れてもらえるよう、ばっちり交渉してきますよ。」
「あぁ、頼んだぞ。」
「秋哉くん頑張ってね!」
いつだか話したお茶の葉のお店、そこで買ってきたハーブティーと紅茶がなかなかスタッフ陣に好評だったということでお客さんに出せないかということになったのだ。そんで、うちの店にお茶の葉を卸してもらえないかっていう交渉役に大抜擢されたのが俺、ってわけ。あれ、めちゃくちゃ責任重大じゃね。
ー翌日ー
「えっと、ひとまず欲しいやつのリストはもらったし...なんか衝動的に欲しくなったらマスターに電話すりゃ...どわっ、すいません!大丈夫ですか?!」
「あ、はい...ってなんだ秋哉じゃん。」
「え、なんだ蘭かよ。心配して損した。」
「一回殴っていい?」
「うわ、暴力はよくないぞ。」
「うるさい。」
「お前そんな攻撃的だったっけ?なんか前はもっとおしとやかで泣き虫で...」
「それ以上言ったら本気で殴る。」
「おぉーこわ。」
曲がり角で偶然遭遇(というより衝突)した相手は蘭だった。会話が恐ろしくサッパリしてるがこれでも意思の疎通はちゃんとできてる。コミュ障っていうよりは単に感情表現みたいなのが絶望的に下手ってだけだから。
「今なんか失礼なこと考えなかった?」
「お前前世エスパーだったとかないよな?」
「サイテー」
あれ、ここで蘭が1人でいるってことは今日のつぐみの用事はAfterglowの方じゃないんだ。
「で、なにをぼけっと歩いてたんだよ。」
「いや、ぶつかってきたのそっちでしょ。なんか1人でぶつぶつ言ってたし。」
「悪かったよ。どこも怪我してねぇか?」
「...別に。そんな強くなかったし。」
こいつも筋金入りのツンデレなんだよなぁ。も少し”デレ”要素あってもいい気がするがそんなこと言ったらしばらく口聞いてもらえなくなりそうだ。
「蘭今暇なの?」
「...まぁ。」
「ちょっと買い物付き合ってくれない?つぐのお父さんからミッション課せられてさ。」
「つぐみ連れてくればいいじゃん。」
「それができたらやってるっつの。なんかあいつ用事あるらしいぞ。」
「ふーん」
「あれ、聞いてないの?」
「まぁいちいち全部報告し合ってる訳じゃないから。」
「そか。で、付き合ってくれんの?」
「どうしてもっていうなら考えなくもない。」
「じゃいいや。」
「そこは頼む流れでしょ!」
「ったく、来たいなら素直にそう言えばいいのに。」
「べっ、別にそんなんじゃ!」
「ちなみに目的地着いたんだけどどーする?」
「仕方ないからついてってあげる。どうせ暇だし、家帰るのもなんか嫌だし。」
「サンキュー」
数日ぶり二度目の来店だがやはりここはいいお店だなぁって思う。いろんな種類のお茶の
「これって...お茶?」
「そ。茶葉専門店。結構いい感じだったから今度うちの店で使わせてもらえないかって交渉に来たの。」
「ふーん。」
「えっと、お店の人は...あ、すいませーん!」
「はーい」
付き合ってくれ、なんて言ってきた割にはアタシのことほったらかしでお店の人と話し込み始めるし。これ、アタシ必要?
まぁでも、3年ぶりに会えたアタシ達の”もう1人の幼馴染”の頼みだし、アイツはヘラヘラしてるようで実はいろんなこと考えてるような事もあるから・・・
にしても、なんでまた帰ってこれたんだろ。美竹家とはまた違った角度で個性的な一家だとは思うけど。
考え事をしながらなんとなくいい香りのする方に吸い寄せられてみるとそこはハーブティーのコーナーだった。
「やっぱ華道の家元のムスメさんはこーゆーの気になる?」
「びっくりした...アンタなんでそんな気配消すのうまいの?まさか幽霊?」
「わお、蘭の口から幽霊なんて単語が聞けるなんて。」
「別に、それくらいは...」
「克服した訳ちゃうんかい。」
「うるさいな。そういう秋哉は絶叫マシン乗れるようになったの?」
「ぐ。」
「お互い様じゃん。」
コイツが絶叫系苦手なことを知っている人って結構少ないんじゃないかな。なんならひまりとか巴も知らなそう。
「なんか興味引くものあったか?」
「うわっ強引」
「ハーブティーも入れようと思うんだけどさーなんか欲しいのある?今ならメニュー入れるけど。」
「秋哉の中の候補は?」
「まぁカモミールとジャスミンは硬いよな。あとは...ローズティーとかどう?」
「悪くないんじゃない?その辺は王道だし。」
「で、美竹蘭さまご指名は?」
「アタシなら...」
「あ、ちゃんと考えてくれるんだ。」
「そっちが聞いてくるから!」
まったく、どこまでもこの男は感じが悪い。でも何故か、コイツは嫌いになれないというか、一緒にいてもいいなって思ったりしなくもない。いきなり帰ってきた時は驚いたけど、ちょっと嬉しかった。
「ごめんごめん。で?」
「うーん...これかな。」
何種類か香りを比べて一番好みだったやつを指す。ってこれ
「リンデンフラワー...初めて聞いたな。」
「え、秋哉知らないの?」
「ごめん、聞いたことないと思う。」
「菩提樹って言えばわかる?」
「あ、それは聞いたことある。」
「あれリンデンの和名。」
「へぇ〜そうなのか。勉強勉強。ちなみに花言葉は?」
「そっ、それは...」
「え、なに?」
「し、知らない!」
「なんやそれ。まいいや、じゃあこれもいれておくね。今度飲みこいよ?」
「う、うん...」
なんでかわからないけどコイツにあの花の花言葉を教えるのはすっごい恥ずかしいっていうか・・・
何意識してんだろ、アタシ。
「それじゃあ、これからよろしくお願いします。後日改めて店主の方からもご挨拶に伺いますので...」
「こちらこそ、贔屓にしていただいてありがとうございます。」
交渉の結果は大勝利。紅茶とハーブティー、それぞれ何種類かずつ仕入れさせてもらえることになった。あ、リンデンの花言葉て結局何だったんだろ。
「ごめんな、無理言って付き合わせて。」
「別に。暇だから。」
「この後も暇ならさ、一足先にリンデンフラワー味見してみない?」
「悪く...ないかも。」
自分で後で味見するように少し余分にコイツだけ買っておいたんだよね。随分甘い香りだな。サッパリ目のケーキとかと合わせるといいのかな?まぁこの辺はどっちかっていうとひまりの専門分野だな。
「そういえばさ、秋哉ってなんで帰ってきたの?」
「向こうに引っ越すことが決まった時点でこうするって決めてたから。」
「どういうこと?」
「高校入ったら一人暮らししてでもこっちに帰ってやるって思ったんだ。だって、どうせついて行ったって一緒にいる時間なんてほとんどありゃしないし。それなら見知った顔がたくさんいるとこにいた方が楽しいし安心できるかなって。」
「ふーん。両親、よく許してくれたね。」
「あぁ、あの人たち俺のことそんなに大事に思ってないからね。」
苦笑いしながら話すと蘭はどこか辛そうな表情を浮かべていた。
「時々秋哉が羨ましくなる。」
「え?」
「アタシはアタシの知らないうちから父さんの後を継ぐって勝手に決められてて、アタシの気持ちなんて全然わかってくれないし。」
「蘭...」
そのあとはなんだか空気が重くなっちゃって、もともと長続きはしない会話が余計続かないまま家に着いた。
「ま、ゆっくりしてな。」
「え、なんで秋哉の部屋にギターとベースがあんの?アンタドラマーでしょ?」
「あれ、俺ドラム以外もやってるって話しなかったっけ?」
「聞いた気もしなくはない。ちょっと弾いてよ。」
「ベースでいい?」
「やっぱ殴らなきゃダメかな?」
”へいへい”という表情のままスタンドに立てかけられたギターに手を伸ばす。ちょくちょくチューニングはするもののそこまでガッツリ弾くことはなかった。何よりこれは俺の楽器ではないからな。それでもよく朝陽のギターは借りてたから勝手はわかる。標準よりちょっとクセのあるソイツは初めて触った時こそビビったけど、今じゃ朝日と同等くらいには触れるようになった。
簡単なフレーズからちょっと高度なテクニックも織り交ぜて演奏を終えると
「秋哉ってなんでそんななんでもそつなくできちゃうの?一旦殴っていい?」
「暴力反対!あ、お湯沸いた。」
「...」
なんやかんやで登場したリンデンフラワーティーは鮮やかな緑で、お茶にするとよりいっそう香りが強くなった気がする。
「ほーいできたぞー」
「ありがと」
「感想は」
「まだ飲んでないから」
相変わらず暴力的な会話をかわしながら2人で一口含んでみる。
「あ、これ美味しいかも。」
「おいし」
甘い香りの通りの風味だけどそこまでえぐみもないし意外と飲むとサッパリ。マスカットに近いかな?
「なぁ、親父さんとは結局上手くいってないの?」
「ッ!」
「なんかうまいとこ折り合いつける方法はなさそうなの?」
「父さんの方が全然取り合ってくれなくて...バンドなんてやってるなの一点張りっていうか。」
「そっか。蘭の中で華道を継ぐって選択肢は?」
「アタシにはAfterglowがあればそれでいい。」
「かっけぇ...けど捉え方によっちゃあただの意地っ張りよな。」
「そんなんじゃ!」
「悪りぃ。でもさ、なんかお互いに今のままじゃ堂々巡りだし、いっそ両取りとかできないの?」
「それは...」
「まぁゆっくり悩みなよ。」
「なんでそんな上から目線なの。」
「そうじゃねぇって。心配してんだよ。」
「...」
「悩むことは悪いことじゃないじゃん。でも蘭って悩んでること表に出してくれないからこっちもつつきにくいしさー。かと言って探り入れるとかわされちゃうし。」
「だって、アタシの都合でみんなに迷惑かけたくないし。」
「別に幼馴染に今更迷惑も何も無いっしょー」
「秋哉...」
「アイツらに話しにくいなら俺だって聞いてやるよ。ま、聞くだけで終わるかもしれないけどな。」
「馬鹿、秋哉なんか頼らなくても解決できるし。」
「いや別にそれならそれで構わないよ?それで蘭がしんどくないならね。」
「うっ...やっぱり...また来てもいいですか...」
「素直じゃないヤツめ。」
「ちょ、秋哉!」
そう言ってガシガシ蘭の頭を撫でてやった。
「いてっ!」
「調子に乗りすぎ。」
鳩尾に蘭の右手の拳が見事に炸裂した。
ー数日後ー
羽沢珈琲店の紅茶がリニューアルしたらしいという噂は瞬く間に商店街中を駆け抜けた。評判も上々でマスターも上機嫌だ。
「あ、蘭ちゃんいらっしゃい!いつものでいい?」
「あいやその...今日は...」
「アレでいいか?蘭。」
「う、うん...」
「え、あれって?」
「これこれ。」
「え、ハーブティー?」
「実はこないだのおつかい、蘭と行ってきたんだよね。」
「え、そうだったの?そっか...」
「で、これは蘭が選んでくれたやつなのよ。」
「そ、そうなんだ!さすが蘭ちゃんだね。」
「ところで蘭、結局花言葉なんだったんだよ。」
「じ、自分で調べなよ。」
「へーい」
以来美竹蘭の”いつもの”はアップデートされたとか。
結局投稿は連休明けになってしまいました。。。すみません!
本当は最終日に出そうと思っていたのですが・・・忙しいんです。えぇ。自分のペースで頑張っていこうと思いました。はい。
さあ今回のお話いかがだったでしょうか!
つぐみちゃんにはなんか悪いことしている気もしますが果たしてこれは伏線なのかはたまたテキトーなのか・・・
次回はまた新バンド登場です!