俺の家が女子高生の溜まり場になっている件   作:かしら

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はじめましての方ははじめまして!
BanG Dream!初挑戦です。
とは言っても本編にはかすりもしないことの方が多いので、ラフに楽しんでいってもらえたらと思います笑

かなりゆる〜い展開で進んでいくと思いますのでのんびり主人公を見守って頂ければ幸いです。


Prologue 〜春休み編〜
#1 出発


「よいしょっと...ホンマごめんな、荷造り手伝わせて。」

「なんのなんの、うちと秋哉の仲やんか!」

「おい、しれっと俺を省くなや!」

「あんたは口開けんと手ェ動かし!!」

「相変わらずのおしどり夫婦っぷりで」

「「夫婦ちゃうわッ!!!」」

 

 

いやツッコミシンクロしてるし。という一言はなんとか飲み込んだ。これ以上言ったら手伝うの放棄されそうだし。

この2人・・・吉田朝陽(よしだあさひ)長谷川真奈佳(はせがわまなか)には転校してきた時からずっと世話になった。

クラスに溶け込もうとしない俺に声をかけてくれて、今もこうして俺を手伝ってくれる。

 

2人のいつもと変わらぬやりとりに苦笑いしつつかなり物が無くなった部屋を見回す。

2年半・・・か。長いようで短かった。全てはこの日を迎えるためだったんだ。

あらかた片付けを終え2人が帰る頃にはもうすっかり日が暮れてしまっていた。

 

簡単に夕食を済ませシャワーを浴びてベットに横になる。力仕事が多かったせいか、いつもより早く眠りについた。

 

俺は夢を見ていた。

今でもハッキリ思い出せる。あの時の俺、福本秋哉(ふくもとあきや)は中学1年生で、夏休みに入ってすぐのことだった。

俺の両親はいわゆる転勤族ってやつで、当時住んでいた街に来る前も何度か引越しをしたし、単身赴任なんてこともあった。だからその時も「あぁまたか。」くらいしか思わなかった。今回は父さんの仕事らしい。

 

 

「大阪なんだ。ふーん、行ってらっしゃい」

「何行ってんのよ、あなたも一緒に行くのよ。」

「え、単身赴任じゃないの?」

「今回は長くなりそうなんだ。少しでも家族でいる時間があったほうがいいと思ってな。」

「俺が一人ここに残るって選択肢は無いワケ?」

「9月からは向こうの中学に転入すると、手続きを済ましてしまったんだ。」

「何勝手なことしてくれてんだよッ!!!」

「ちょっと秋哉!」

「夏休みの間はこっちにいられるから、その間に友達とお別れを済ませておきなさい。わかったな。」

「ちょ、まだ話は...おいっ!......くそっ」

 

父さんは話を切り上げてさっさと自室に消えて行った。

こういう時、母さんはまずほとんど俺の側にはついてくれない。

2人とも何よりのプライオリティは仕事で、俺のことなんか二の次三の次だ。いつものことだし、いつもならこんなに反発なんてしない。けど、今俺がこの街を出て行くのは・・・できれば避けたかった。

 

この街は俺が産まれてから最長の年数を過ごした。

それだけに失いたくないものもたくさん得てしまった。何より、俺の一番の理解者であり初めての幼馴染であり今では彼女のアイツだけは・・・

 

 

「...沙綾......っ?...夢か」

 

 

目がさめるとじんわりと汗ばんでいた。なんとも後味の悪いところで目が覚めたな・・・

重たい身体を起こし夢の続きを思い返す。

転校を告げられた俺は翌日沙綾に引っ越す旨を伝えることにした。なんていうか、こういうのは早いうちに言っちゃったほうがいいと思ったし。

俺の話を一通り聞いたアイツは泣きながら俺を詰った。いなくならないでと怒る沙綾に俺は謝ることしかできなかった。

それでもアイツは最後に笑って

 

 

「それじゃ、夏休みは思い残すことのないようにしなきゃね!」

「...沙綾」

 

 

それから1ヶ月は時間の許す限り沙綾と過ごした。時には他の幼馴染も混ざっていろんなところに遊びに行った。

最後にはささやかながら送別会なんかまで開いてくれて。

ふとサイドボードを振り返ると、そこにはきちんと手入れされたドラムスティックが3セット飾られている。送別会の日に沙綾達と交換したものだ。

あ、そうそう俺ドラムやってるんだ。本職はドラマーだけどギターベースピアノって一通り触れはする。

 

そんな風にみんなに送り出されて大阪に来たわけだけど、結果だけ言えば”家族と過ごす時間”なんてものは殆ど無かった。

これなら俺一人暮らしでよかったじゃんかよって何度思ったことか。

さらに負の連鎖は続いた。

ある時から沙綾からの連絡がピタリと止んだのだ。越して来た当初は毎日のように電話をしていたのが、少しづつ間隔が開くようになり、ついに全く来なくなった。

心配になってこっちから一度かけたことがある。2年の時の秋だった。

 

 

「もしもし、沙綾?」

「秋哉?どうしたの?」

「あ、いや、特に用があるってわけじゃないんだけど、最近全然連絡ないし」

「ごめん、今忙しいんだ。急用じゃないなら切るね?」

「え、ちょっと沙綾!...切れちゃったし。」

 

 

この日以来アイツとは音信不通だ。この時俺は心に決めた。

()()()()()()()()と。

 

それから俺は勉強に一層力を入れた。もともと大阪に来た時点でこうすることも選択肢にあったから人よりも勉強はしておいたんだけど、決心がついたことでさらに勢いを増した。それはもう、朝陽と真奈佳に心配されるほどに。

 

そして3年の秋。俺は晴れて清嵐高校の推薦状を手にした。この学校はアイツらが住む街の一つ隣の駅にある学校。ちなみに結構レベル高い。

このことはギリギリまで両親にも黙っていた。担任に事情を話したら親切にも協力してくれて、面談なんかもうまいこと切り抜けた。今思うと担任めっちゃいい人だよね。子供の進路親に隠すって結構な暴挙だと思う。俺が頼んだことだからなんとも言えないけど。卒業式でめちゃくちゃお礼しといた。

 

さすがに面接は現地に行かなきゃならないから、直前になって全部話すことにした。ついでに春からは一人で部屋借りて暮らす、とも。

最初はかなり渋られたけど、学校のレベルがまぁまぁいいことと、俺も16になるってことで許してくれた。驚いたことに、学費と部屋代は払ってくれると言う。

よっぽど俺から解放されたかったんだな、この人たち。まぁ貰えるもんはいくらでももらうとしよう。仕送りもしてくれるらしい。どしたんだろ急に。向こうの部屋も片っ端から俺の要望に応えてくれるし。バストイレ別で防音。これ叶えてくれたのはかなりありがたい。

まぁとにかく、俺もこの生活からやっと解放されるわけだ、この際理由なんてどうだっていいさ。

そこからの手続きは滞りなく進み、卒業式の2日後に引っ越すことが決まった。

 

で、今日がその引越し前日だったってわけ。朝陽も真奈佳も、なにもそんな急じゃなくてもって言ってくれたんだけど、これは俺が望んだことじゃなく親の意向。あの2人もこの部屋引き払って各々の場所で働くんだと。そのことを話したら2人とも苦笑いしつつもわかってくれたし荷造りの手伝いまで快諾してくれた。

 

この2年半も案外楽しかった。3人でバンド組んでたんだ。朝陽がギターで真奈佳がベースヴォーカル、俺がドラム。珍しい構成だけど結構いい音楽鳴らしてたんじゃないかな。またセッションしたいなぁ。

 

なんて思い出に浸っていたら窓から日が差していた。あちゃ、朝んなっちゃった。今日は業者の人が来るから早めに支度しとかないと。

ちなみに両親は俺の卒業式にちらっとだけ顔を出してその日のうちに荷物を引き払った。俺より先に出てくなよ。

 

業者の人たちが来てからはとんでもなく忙しくなり、あっという間に時間が過ぎる。

向こうの家に持っていくものとここで手放すものとを仕分け、引越し業者に家具や荷物を託す。

自分で持っていく物もカバンに詰める。貴重品や自分で持っておきたいものたちを一通り入れ終えて、最後に沙綾からもらったスティックを丁寧にしまう。

いよいよこの家と最後の別れだ。もっとも、この家にはたいした思い出は無いけど。

それでもなんだか最後ってなると寂しいようなそんなことないような。

なんて思っていたら新幹線の時間が迫っていた。

 

 

「...行くか。」

 

 

そう言い残し俺は家を後にした。

 

新大阪の駅の改札に着くとアイツらが待っていた。

 

 

「おはようさん」

「てっきり寝坊するかと思ったんやけどな」

「2人とも見送りに来てくれてサンキューな。」

「...なぁスルーせんといてや」

「なーに言ってんの、うちと秋哉の仲やんか!」

「だから省くな!」

 

 

相変わらずさすがだなぁ。俺もこの2年半で相当笑いのセンス鍛えられた気がするぞ。

 

朝陽と真奈佳も入場券を買ってホームまで来てくれた。

 

 

「頑張れよ。」

「あぁ、そっちもな」

「ちゃんと食べるんやで?なんかあったら、いつでもうちんとこ来ぃや?」

「オカンか」

「ははは、まなさんもありがと。朝陽のこと頼んだよ?」

「任しとき!」

「なんでやねん!」

 

 

あぁ、やっぱりこの2人と話してるのは面白いや。いい友達に出会えたよ。いつかまた来よう、大阪。

━━━━って、そういえば・・・

 

 

「2人とも、なんで楽器背負ってるん?」

「ん?あぁこれな。よいしょっと...ほい!」

「うちも、はい!」

「え、は?」

「持ってけ。俺らの代わりや。」

「これでいつでも一緒、ってわけや!名案やろ?」

「名案って...2人はこれからどうすんのさ?大事な楽器だろ?」

「ええてええて。どのみちアキがおらんかったら俺らは一旦活動休止やからな。」

「せやさかい、ついて行けんうちらの代わりに、この子らに秋哉を見守っといてもらおっちゅーことや。」

「でも...」

「グズグズ言わんと受け取らんか!」

「わかった。じゃぁ俺からはこれ!」

「そーそー、わかっとるやないかい...って、なんで俺と真奈佳で1本ずつやねん!」

「あはは、冗談冗談。はい。」

「ありがとうな。でもこれ、大事なやつとちゃうん?」

「あぁ、さすがにそれは持ってかせて。これは練習用の予備。2人とはちょっと意味合い変わっちゃうかもやけど...」

 

 

そう言って俺は2人にドラムスティックを渡す。ドラムセットはさすがに業者に頼んだが、スティックだけは自分で持って行くことにしていた。スティックは俺の商売道具、いわば分身だ。ま、お金取るライブはしたことないけど。

 

 

「かまんかまん。大事に飾らしてもらうわ。」

「うちもそうさせてもらう。...元気でな」

「わ、ちょっとまなさん!」

「おま、公共の場で...!」

 

 

突然真奈佳に抱きつかれしどろもどろの男2人。

こういう時、どうすればいいんだっけ?

俺に至っちゃ彼女いたことあるよな?

 

しばらくして真奈佳が離れた。なんだろう、この名残惜しい感じ。朝陽なんかゴメン。

 

 

「今度そっちに遊び行くわ!」

「あぁ、いつでも来いよ。」

「おい、そろそろ出発やぞ。」

「あぁ...2人も元気で。」

「はな、またな。」

「そっちの幼馴染さんと、仲直りできるとえーな!」

「ちょ、まなさん今それ言う?!」

「ほな、またな〜」

「あ、ちょ!」

 

 

無慈悲にも新幹線のドアが閉まる。まったく、あいつららしいよ。

それでも2人は最後は笑って手を振って送り出してくれた。照れ隠しなことくらい、俺にだってわかる。

俺は新大阪のホームを過ぎても、しばらくデッキに立ったままでいた。

 

それから3時間、昼飯と昼寝をしっかり済ませて(何しろ昨夜は完全に寝不足だ)、東京駅のホームに降り立った。

在来線を乗り継ぎ、ようやく目的の駅に到着しようとしていた。

1つ手前の駅までは面接の時に来てたけど、ここに来るのはあの夏休み以来だ。なんか緊張すんな・・・

 

あと今更気づいたけどギターとベースまとめて背負って歩くのなかなかしんどいな。とんでもないお土産持たせやがったな、アイツら。

 

 

「次はー羽丘ー羽丘ーお出口は...」

 

 

さぁ、これから俺の新しい生活が始まるんだ。

 




いかがだったでしょうか?
沙綾の音信不通の理由は察しのついた方も多いのではないでしょうか?

次回からは続々ヒロイン候補が登場する予定ですのでお楽しみに!

それでは
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