あれから数日、羽沢珈琲店でのバイトと毎朝のランニングにも慣れてきたころ。
「あ、いっけね教材とりにいかなきゃじゃん。」
今日は始業式に先駆けて授業に必要な教材が配布される日だ。
バイトに遅れちゃまずいよな・・・今からいくか。
先日送られてきた真新しい制服を着る。なんかこう、ピシっとなるじゃん。いいね。
電車を降りて学校につくと、既に結構な新入生がいた。
駅から学校に向けて歩いていると
「あれ、お前もしかして」
「...?あ、俺?」
「そうだよ!ってあれ?俺のこと覚えてない?冬だよ、ふゆ!」
「ふゆ...ってあっ!」
「そうそう!」
「誰でしたっけ?」
「ズコーっ」
おぉ、関西人ばりのリアクション。彼結構素質あるかも?
ってそうじゃない。この人なんか俺の知り合いっぽいけど・・・
「え、マジで覚えてない?笠原冬斗!」
「えーっと...」
「ウソだろ?!一緒にバッテリー組んでたじゃん!」
「あっ...!冬ってあの冬!」
「やぁーっと思い出したか」
突然俺に話しかけてきたのは大阪に引っ越す前、こっちの中学で同じ野球部だった
ポジションはキャッチャー。当時ピッチャーだった俺とバッテリーを組んでいた。つまりは元女房役だ。
「いやぁ全然わからんかった。なんせいつもお前マスクで顔見えないじゃん?」
「お前なぁ...」
そういってガックリと肩を落とす冬。なんかごめんて。
「わりぃわりぃ。ってか冬、まさかお前清嵐...?」
「だからここにいるんじゃろがい」
「いやツッコミのクセ」
「そういうお前こそ、なんで清嵐にいんだよ。」
「よくぞ聞いてくれた相棒。」
「何だよそのキャラ」
「実は親元離れてこっちで1人暮らしすることにしてさ。」
「マジかよ。」
「マジマジ。いやまさかこんなとこで再会すっとはなぁ。」
「ホントだよ。お前ここの野球部入んの?」
「悩み中。どんな感じなんだろ?」
「悩むんだ。てっきり野球部一択だと思ったけど。」
「いやぁバイトとか忙しいかなって。」
「なるほどな。秋が行くなら俺も行こうと思ったんだけど。」
「え、行かないの?」
「軽音とかいいかなって。」
「え、お前が軽音?!」
「なんだよ、そんなに驚くことか?」
「驚くだろ!お前楽器できんのかよ?!」
「...ギターをちょっと」
「マジかよ。えぇー俺も軽音行こっかなー」
「お前こそ軽音なのって感じなんだけど。」
「俺向こうの中学軽音部なんだけど」
「え、野球やってなかったの?」
「まぁ話せば長い。」
「なんだそれ。」
なんて話しながら教材の山を受け取る。
待ってこんなあるの?! 高校生って大変だねぇ。
「重てー」
「ひゃーこりゃしんどい。」
「おいしょっと...わりぃ、俺このあとバイト入ってるから。」
「おう。じゃあ入学式で。」
「おうよ。まぁ部活は仮入部とか見ながら考えよーぜ。」
「だな。」
そういって冬と別れ帰路につく。
いかん、バイトに遅れちゃう。・・・けどこの荷物持ってくのも憚られるし。
「......しゃあないか」
必殺!全力ダッシュ!!
ー数十分後ー
「ぜぇ、はぁ、ギリセーフ、だな。」
「え、秋哉くん?!なんかあったの?!」
「さっき学校に新年度の教材受け取りにいってて、意外に時間ギリでさ。ふぅー。よし、息整った!今日も張り切ってこー!」
「すごい体力...でも無理はしないでね?」
「お互い様だろ?」
そう言ってつぐの頭にぽんっと手を置く。
つぐががんばり屋なのはみんな認めてる。ただ本人は納得いかないのかいつも無理をするクセがある。
心配なのはお互い様だ。
「ひゃあ?!ちょっと秋哉くん?!」
「あ、ごめんびっくりした?」
「そ、そんなことないけど...」
こういうとこがつぐってなんかこう、いいよね。
「お互い無理なく、な?」
「うん、そうだね!今日もがんばろ!」
「2人とも頼もしいね、じゃあ開店するよ。」
「「いらっしゃいませー!!」」
こっちに帰ってきてまだ1週間とかだけど、やっぱりここでの生活が俺は好きだって、改めて思う。
本当に帰って来れてよかった。いつか朝陽とまなさんにも来てもらわなきゃな・・・
年度の変わり目ならではな光景を取り入れてみました。
新学期直前に到来するあの教材の山々を目の当たりにすると誰だって引きますよね()
次回で春休み完結(の予定)です!
それでは。