魔法少女リリカルなのは~黄昏の残滓~   作:天地翔

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序幕

~ある座にて~

「これは……おかしなことよ……」

 

ある日とても珍しいことに夜行がひどく真剣な顔で何かを考えていた。こいつがここまで悩むなんて俺の覚えてる限りほとんどない。

 

「いったいどうしたよ夜行。愛しの龍水と喧嘩でもしたか?」

 

とまあそうは話しかけたがこの二人が喧嘩するとも思えないし夜行ならそれでも笑ってそうではある。だから、この言葉が否定されるのはわかっていた。だが……

 

「覇吐、夜都賀波岐のほとんどが新世界への転生を望んだ、違いないな?」

 

いきなりこんなことを言われるとは思っていなかった。しかもここまで真剣だとはいったい何があったんだ?

 

「ああ、いったいどうしたんだよ、夜行。お前らしくないぜ?」

 

「いないのだ」

 

「は?」

 

「どの世界にも、いないのだよ。大英雄が」

 

「は?」

 

夜行の言う大英雄といえば一人しか知らない。だけどそれは、そんなまさか……

 

「夜刀の魂がどこにもないのだ。確かに転生したはずなのに彼の魂のみが存在していない」

 

「うそ……だろ?」

 

なんでだ?あの先輩が、黄昏の守護者が……どこにもいない?

 

 

 

そしてそのころある場所で一人の男の子が生まれた。その男の子は青い髪をもち青い瞳をもち、そしてこう名付けられた。

 

藤井蓮……と。

 

これは日常という刹那を愛する者の物語の幕開けである。

 

さてこれは喜劇になるのか悲劇になるのか。彼の誕生とともに一つのデバイスが彼の体に入り込む。それはものを言わず何の意思もない。だが、そのデバイスには魂が内包されている。そう、それはまさに聖遺物。それが目覚めるのははたしていつなのか。

 

そしてこの年、高町家において一人の少女が生まれる。その少女の名は高町なのは。

 

高町なのはと藤井蓮。この二人の物語は交差する。これははたして誰が仕組んだことなのだろう。座とは関係のない本当の神だろうか。それとも単なる偶然だろうか。どちらにせよ物語は始まりを告げる。この世界には既知も修羅も黄昏も天狗道も曙もいない。だが尊き刹那が、その名残がいる。たった一つの願い、それは

 

「時よ止まれ、刹那よ永遠であれ」

 

願わくば彼の刹那がよきものでありますように。魔法という非日常が存在しているわかっていてもそれを願わずにはいられない。そしてどうか彼が幸せになりますように。黄昏の女神はもういないけれど、彼自身も前世とは違うのだから。だからどうか彼に幸せが訪れますように。それこそが、女神の意思であったのだから。

 

「だから願う。来世の果てにある希望を。それはあまねくすべてに降り注ぐべき光だから」

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