(習作)インフィニット・ストラトス ~一夏とみんなの未来~   作:小さな星*

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 また高評価をくださって、モチベアップしました。ありがとうございます。




第2話 入学

 やらかした、と思うのは誰だって時にはあるだろう。

 

 決して望んで入ったとは言えないIS学園だが、千冬姉もいるから平穏な日々が過ごせると思っていた。良くも悪くも注目を集めることは予想していたが、初日からトラブルを引き起こしてしまった。千冬姉なんて、出席簿がミシミシと音を立てるくらいだった。迷惑かけたなぁ……

 

「シスコン」

「かんちゃんがそれ言うかな~」

 

 真顔で告げる簪さんに、ダボダボした袖をふりふりしながら本音がツッコミを入れる。簪さんとは、自分の姉を自慢し合うくらいには、仲良くなれた。お互いに、いつか隣に立ちたいのだと、目標がある。

 

「……まあ、だいたいわかった」

「悪い。助かる」

「さすがのおりむーもギブアップだったね~」

 

 箒と数年ぶりに再会できたことは心の底から嬉しかったし、それに、数少ない趣味を共有する簪さんや、異性の壁を感じさせない本音という、2人の友達を得られたことは奇跡とも言える。

 

「サンキュ」

「どーいたしましてだよ~」

「あんなに騒がしくしないなら、別にいい」

 

 こうやって会話しながらも、並行してパソコンを操作している簪さんも、お菓子をもしゃもしゃしている本音も、迷惑がっている様子はない。ゴーイングマイウェイで何よりだ。男性操縦者だから『特別』なのだと扱わないことが、今の俺には心地よかった。

 

 だって、普通の人と違うって、なんか嫌じゃん。

 あれ、なんでそう思うのだろう。

 

「どったの、おりむー」

「いや、あー、教室は今どんな感じなのかなって」

 

 どったんばったん大騒ぎな教室から、個人用の整備室まで、本音がこっそり抜けさせてくれた。楯無さんがもはや忍者なように、2人もちょっとだけ忍者みたいなことができるらしい。3人が何者かはまだよくわからない。そういえば、忍者の仮面ライダーっているのだろうか。

 

「あいつ、大丈夫かな」

「けっこーうれしそうだったけどね~」

 

 学園で学年問わず、話題の種は他にもいる。同性の俺から見ても整った容姿をしている、もう1人の男性操縦者だとか。そんなあいつは、ナントカって会社の御曹司で、すでに専用機を持っていると言っていた。それに、女子の中でも専用機持ちの代表候補性である、えーと、セシなんとかさんというのは、学年主席らしい。

 

「あいつらとも仲良くしたいんだけどなぁ。あいつにも代表候補性にもなんか嫌われたし、それで、決闘にまでなっちゃって……」

 

 セシなんとかさんから日本のことを馬鹿にされたのは、なんだか千冬姉や簪さんのことを馬鹿にされたと思って、カッとなってしまった。簪さんは代表候補性だし、本音たちも日本人なのだ。

 でも、もう1人の男性操縦者には、何か機に障ることしたかな。

 

「それ、4組まで聞こえてた」

「かっこよかったよ~ みんなおぉ~ってなってた」

 

「売り言葉に買い言葉だ。もっと冷静になるべきだったよなぁ……」

 

 昔からカッとなる癖は、良くないところだ。

 最悪、無意識に、手が出てしまいそうになる。

 

 でも、あの2人にあれだけ啖呵を切った俺なんて、まだスタートラインにも立てていない。授業にもギリギリ付いていけるくらいだ。あ、でも、青い顔をしていたあいつよりは、学力という点では勝っているのか。どんぐりの背比べってやつだけど。

 

「そうだ。あなたの専用機、見せて」

「え? 俺の?」

 

 簪さんから声をかけてくるのは、仮面ライダー関連以外では珍しい。だから、少し抜けた返事をしてしまった。

 

「うん。こうなったら参考になるところは参考にしてやるし、うちの子を負けないくらい、スペックに仕上げてみせるもん」

 

 胸の前でギュっと握り拳を作り、やる気を見せた。

 簪さんの専用機が未完成ということは知っている。

 

「いや、まだないけど」

「え? もう来ているはずだけど」

 

「どんなのかも教えられないし、たぶん、来週?」

「わぉ~ それって けっとーの日じゃん」

 

「さいあくだ……技術職として論外」

「それな~ だよ~」

 

 少し早口な簪さんの説明によれば、専用機というのは、個人に合うように、ビルド、造るものらしい。もちろん、理論実証機もあるが、それには適正が高い代表候補性が選ばれる。オルコットさん(セシなんとかさん)もそれに当てはまる。したがって、事前にマニュアルも貰えない専用機より、初心者に動かしやすい量産機のほうがまだマシ、と。

 

「な、なるほど……」

「でも。ISはデータなんかじゃ計れないこともある」

 

 簪さんは指輪に触れながら、じっと見つめた。

 我が子を愛おしく見るような瞳だ。

 

「誰かの力になりたいと思う願いが、私たちを強くする、らしいよ」

 

 そして、くしゃっとした微笑みを零した。

 

 俺は目の前で拳を握りこんだ。

 まだスタートラインに立ったばかりの俺だけれど、簪さんと本音がいて、楯無さんがいて、箒がいて、それに、千冬姉がいる。なんて贅沢なことなのだろう。IS学園に来たことは望んだわけではないけれど、高校生活は希望に満ちあふれている。

 

「ふぐっ!」

「あたま、だいじょうぶ~?」

「……なんだか、すごい音だったよ?」

 

 ようやく、頭が冴えてきた。

 

「いや、ちょっと喝を入れようかと。いつもは千冬姉が入れてくれるんだけど」

「男子、だからなのかな……?」

 

 顎に手を当てて何か悩む簪さんと、なにかごそごそしている本音を、キョロキョロと交互に見つめるしかない。

 

「そんなおりむーには~ じゃ~ん」

「本音、それ私のなんだけど」

 

 『まぁ織斑君ならいいけど』とボソッと呟いた。

 本音がヘルメットを被せてくることに、俺は従う。

 

「VRゲームとか~ シミュレータとか言うものだね~」

「織斑先生とか、鬼畜難易度」

「そうか。千冬姉相手で頼む」

 

「「シスコン」」と、2人から告げられた。

 テレビの向こうで活躍していた千冬姉を正面から見れる機会だぞ。逃すはずはない。

 

 

「みんなが力を合わせれば、不可能は可能に、絶望が希望に、敗北は勝利に変わる、から」

 

 視界と意識が仮想世界に持っていかれる感覚を味わいながら、簪さんの言葉を胸に刻んだ。

 

 

****

 

「裏で特訓してた、かな。一応」

「このわたくしにも一矢報いた一夏さんでしたが、そういうことだったのですわね」

 

 とはいえ、代表候補性に超初心者が勝てることはなかった。あの時から一夏の成長は見張るものがあったけど、今では射撃部門のトップ3の実力を持つセシリア自身も、伸び代と可能性に満ち溢れていたこともある。

 

 でも、負けてもなんだか満足そうだった。

 セシリアと仲良くなったのは、ちょっと妬いちゃった。

 

「私も剣道の腕をゼロから叩き直してやったな」

「武装の扱い方は、生身でも練習するものね」

 

 どこか誇らしげな箒に、ベルベットさんが冷静な言葉を紡ぐと、誰もが頷く。ISの稼働時間は限られているし、ISに頼っていると筋力が衰えやすいし、基礎体力をつけることにも繋がる。朝から千冬義姉さんと走り、放課後は剣道をして、終わったら仮想空間、その後勉強、今考えると、一夏の身体のことがあったとしてもすごく無茶をしていた。

 

「それに、千冬せんせの暮桜と、一夏君の白式、似ているところ多いもの。その特訓はナイスだったわよ、簪ちゃん」

「ちかい……」

 

 腕をギュっと、その大きな胸にうずめられる。

 歳を考えてよ、シスコン。嬉しいけど。

 

「だが、奴には勝てなかったな」

「あいつも、ほんっと実力だけは高かったわよね」

「その時のおりむー、けちょんけちょんだったね~」

 

 箒や鈴が言っているのは、もう1人の男性操縦者のことだろう。いわゆる天然ものの天才だった。科学が進歩した現在の大会規定からしても、機体のスペックが逸脱していたし、彼自身も生まれてすぐに訓練を始めたらしいし、そんな彼に勝つのは、暗部当主のお姉ちゃんでさえギリギリだった。すごい努力を、しかも隠れて、しているんだろうなということを感じさせた。

 

 ガチで血反吐を吐くくらいは、私や本音も経験あるけど、お姉ちゃんと虚さんはそれ以上だから。

 

「このわたくしでも、一方的でしたもの。仕方がありませんわ」

「僕も最初、彼の強さにはほんとびっくりしたよ」

 

 たしかプライベートチャンネルで何か話しながら戦っていた一夏たちだったけど、一夏はどんどん動きが乱れていったはずだ。まあ、良くも悪くも、夫はカッとしやすいところがあるから。

 

 暴力だけは絶対に振るわないけれどね。

 それは千冬義姉さんが教えてくれたこと。

 

「そのあとは、クラス対抗戦があったっけ」

「あー、あったあった。途中でおじゃんだったけど」

「みんな無事だったけど、怖かったよね」

 

 癒子や清香、さゆかがそう話しているが、人伝手にしか聞いたことのないメンバーは再びニヤニヤとしながら、こちらを向いた。

 

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