(習作)インフィニット・ストラトス ~一夏とみんなの未来~   作:小さな星*

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 評価をみなさんからいただいたおかげで、色がつきました。ありがとうございます。感想もありがとうございます。
 ゼロワン映画見てきましたが、さすが仮面ライダー


第3話 学年対抗戦

 

 

 取り調べの待機室として選ばれたのは、生徒会室でした。

 

 染み一つない絨毯、煌びやかな黒いソファ、真新しくも高級感ある机、庶民の俺には場違い感を感じさせる場所だ。いや、はみ出るくらいには駄菓子が入ったダンボールが、部屋の隅にあるけれど。

 

「「いただきます」」

 

 お湯を入れて3分。

 俺は特売の生麺を買うことが多いので、こういうインスタント食品は久しぶりに食べる。台風の時でさえ、食材を買い込んでおくくらいには、俺は食事に関しては用意周到だと自負している。

 

 赤いキツネと緑のタヌキ、というフレーズがあるが、こちらは赤い天ぷらそばだ。年末にはそば出汁をゼロから作るほどの凝り性な俺だが、湯気を立てているこのスープの香りも、十分に食欲をそそる。

 

「足りなかったら、そこのお菓子、食べていい」

「ん? まあ、そうさせてもらいそうだな」

 

 食べ始めないことを不思議に思ったのか、簪さんが声をかけてきた。

 そんな彼女は全身浴させたかき揚げを、タヌキそばになるように、箸でつついて崩している。簪さんが部屋から持ってきてくれたのだが、このカップそばが一押しなのだろう。

 

「本音は、お菓子買いすぎなくらい」

 

 あのダンボールは、やっぱり本音のものだったのか。確かに、お腹ぺこぺこなので、そう言ってもらえるとありがたい。栄養の偏りよりは、この空腹感を満たしたいと思いつつ、そばを勢いよくそそる。

 

 半身浴のかき揚げが、口の中でサクッと音を立てる。

 お互いに食べることに集中していて、久しぶりに誰かと過ごす静寂の時間が流れる。箒やセシリアと過ごす時間も多いし、最近は鈴も学園にやってきて、いい意味でますます騒がしくなった。

 

 入学して早々、外部からの侵入者が来るなんて。

 みんなを守りたい、俺は必死だった。

 

『守るって、お前の言葉には中身がないんだよ!!』

 その言葉が、声が、最近ふと思い返される。腕に常に身に着けている白式というISは、千冬姉から継承した鎧と剣のようで、なんだか嬉しくなった。

 でも、画面の向こうの仮面ライダーのように、誰かを守りたいという俺の目標は、青臭いのだと指摘された。

 

『お前の出番は無いんだよ。』

 みんなの盾になるべく、剣を構えた俺よりも、さらに前へあいつは進んでいった。無人機というAIの反応速度を超えて、その剣で相手を捻じ伏せる。攻撃は最大の防御という感じであり、まさしく俺の出番はなかった。

 

「足りた?」

「いや、八分目でもないんだな、これが」

 

 男子学生にとって少なめな量は、あっという間に食べつくしてしまった。いつもならやらないのだが、塩分補給だと思いつつ、俺は具材の浮かんだ汁を飲み干す。

 そして、お茶に手を伸ばそうとして、いつのまにか空になっていたことに気づいた。

 

「これでチャラ、だから」

 

 丁寧な所作で、急須からお茶を注いでくれる。

 簪さんが言っているのは、先程のことだろう。

 

「いや、俺は特には……」

「ううん。倒したと思って、私は油断してた」

 

 急遽動けるIS使いは、各クラスの代表の中でも専用機持ちだけで、つまり、俺と鈴、簪さんの3人だけだった。俺にはよく分からないが、システムのハッキングのせいで、セシリアは来れなかったみたいだし、ちょうど楯無さんは別アリーナにいたし。

 

「あいつがいなければヤバかったかもな」

「彼、実力は高いから」

 

 あいつはどこからともなく駆けつけてくれた。お礼を言うべきは、あいつの方だろう。俺が声をかけようとしたら『あんなの余裕だった』って言い残して、そそくさと去っていったけれど、今度お礼言っておかないとな。

 なんだかこう、クールに去るぜって感じだったけど、もっとみんなと話していけばいいのに。

 

「織斑君のおかげで、私はケガしなかったのは、事実。だから、その、か、身体は大丈夫そう?」

「ああ。絶対防御、だっけ? それがあったから大丈夫だ……いや」

 

 鈴にも言われた。

 絶対防御を過信するな、と。

 

「うん。威力の高い攻撃は防ぎきれないこともある。それに、掠る程度なら、わざと発動しないように設定することで、エネルギーを節約できたりもする。織斑君の白式も設定されている。だから気をつけて」

「な、なるほど」

 

 最高最善の王様を目指している彼のように、お世辞にも俺の成績は高くはない。それを理解している簪さんは、俺でも分かりやすいような説明をしてくれているのだろう。俺より、白式のことに詳しいと思う。

 

「一応。その、背中、見せて」

「お、おう」

 

 制服をたくし上げると、背後の簪さんが、背中の上ですーっと指を動かす。触診というやつだろうか、簪さんはそういうこともできるのかと、感心するだけだ。

 

「誰かの命を救うためにも、生き抜く責任がある」

 

『ドクターじゃなくても』と、言葉を紡いだ。

 それならば、優しい王様に倣ってこう言おう。

 

「目の前の困ってる人や、友達を放っておける訳ない、だろ?」

「うん。あなたもそういう人」

 

 大丈夫だったと言わんばかりに、ポンッと手のひらで、背中を柔らかく叩かれた。

 

「でも、不養生はダメ」

「善処します……」

 

 最近の生活を思い返すと、我ながら、頑張りすぎたと思う。それに、こういうことがある度に、たぶん無茶をしてしまうのだろう。まあ、もし俺の身に何かあれば、簪さんのように泣いてくれる人がいるし、心配はかけたくない。

 

「で、本題なんだけど」

 

 空腹を満たすため、簪さんがどんどん広げ始めたお菓子を勢いよく食べながら、取り調べ内容について話し始めた。隣に、水色の上品なハンカチを置いてくれたのだが、それで指を拭くことはそれなりに抵抗がある。

 

「えーと、あれって結局、無人機なんだっけ?」

 

 尋ねながら、俺も見習って、安物のハンカチを取り出した。

 

「そう。緘口令が敷かれるから、口が滑らないようにしてね。そこだけ注意してもらえればいいから。特に織斑君は」

「りょ、りょうかいです……」

 

 それについては苦笑いしかない。先日、鈴と喧嘩して、そのことを相談した簪さんにも白い目を向けられて謝りに行かされた。口は禍の元というやつだ。鈴のコンプレックスを口に出してしまったことは、男子としては論外だったな。いわゆる、親しき中にも礼儀あり、か。

 

 でも、簪さんって、普通に大きめだと思うけれど。

 こう、なんだ、手のひらサイズというか。

 

「織斑君。女子って、結構そういう視線に、敏感」

「も、申し訳ない……」

 

 ほぼ女子高なのだから、こういうことには気をつけないといけないな。ただただ平謝りする俺だが、どうしてか彼女は満更でもない表情を浮かべていた。あまり怒っていないようなら、それはそれでいいのだけど。

 

「む、無人機ってできるものなのか?」

「ううん。私も初めて見た」

 

 簪さんですら知らない科学力ということか。

 なぜか、高笑いするあの女性が頭に浮かんだ。

 

「学園を襲ってきたことは、許せない。

 けど、開発者に会ってみたい、とは思う」

 

「そうか。簪さんらしいな」

 

 思わず口に出してしまうと、彼女は照れた様子を見せた。

 そして、縮こまって、なにか呟いた。

 

「うん……ほんとうに心が躍る」

 

 

****

 

 みんなに話すのは、無人機の襲撃のことくらいだけど。

 一夏のことを好きなのだと自覚したきっかけだけは、話すことを避けさせてもらった。大切な宝物だから。

 

「そうね、再起動するなんて、流石のあたしも予想外だったわ。間に合ったのは、今思えば、一夏の本能のおかげというかなんというか」

 

 鈴が冷静にそう言うけれども、その時は庇ってくれた一夏のことで私は頭がいっぱいだった。

 

「あのとき、かんちゃんを慰めるほうが大変だったよ~」

「だって、あれだけの熱量だったもん。普通なら大ケガ」

 

 親友な幼馴染が言うように、泣きながら謝り続ける私を、ケロっとして立ち上がった一夏も一緒になって、慰めてくれた。人前で泣くことなんてめったにないから、それなりに黒歴史だ。もっと昔は、訓練の度に泣いてばかりだった気がするけれど。

 

「この件については、うちの愚姉が申し訳ない……」

「気にしなくていいわよ、箒ちゃん。だって、あの気分屋な博士ですもの」

 

 箒のお姉さんも、以前よりは落ち着いた。まあ、今も世界を引っかき回すことは確かだけれど、ちゃんと夢に向かって、いい意味でみんなを巻き込んでいる。個人的にも、尊敬している科学者の1人だけど、たった一度あのクリスマスの時に、本気で一夏をコロそうとしたことは、私は決して赦さないだろう。たとえ一夏が許したって赦さない。

 

 でも、みんなには、お調子者のお姉さんで知っておいてほしい、かな。

 

「一夏ったら、無茶ばっかりだよねー」

「うむ。私のことも命がけで救ってくれた」

 

 一夏の無茶については、誰もが頷いた。

 そこに惹かれるけれど、とても心配させられる。

 

「学年別トーナメントの時ね」

「あの時も一夏さんと組んでいらしたの、よね?」

 

 箒、セシリア、鈴、シャルが、ゴゴゴゴとオーラを立てる。

 

「やはり、簪から聞くことになりそうじゃないか?」

「私たちは1学期いなかったもんねー?」

 

 早くきてよ、いちかぁ……

 苦し紛れに一度、オレンジジュースで喉を潤した。

 

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