(習作)インフィニット・ストラトス ~一夏とみんなの未来~ 作:小さな星*
ついにタッグトーナメントの日がやって来た。
箒からは剣の使い方を、セシリアからは射撃の回避を、鈴からは攻守のタイミングを、シャルからは状況判断を、楯無さんからは高速戦闘を、そして簪からは連携を。
すごいと思える人、尊敬できる人、そういういろんな人たちと出会うことで強くなれる、だったよな。
VIP席からの視線をかき消すくらいに、1組や4組のみんなの声援が俺たちを勇気づけてくれた。流されるがままに入学して、右も左も分からないような状態だった俺でも、今は白式を纏って1人の生徒としてフィールドに立っている。
簪にとっては初の公式試合だが、緊張はもうないみたいだ。
「よしっ! 勝つぞ、簪!」
「うんっ! 一夏!」
「フン、雑魚が馴れあっても無駄だ。」
隣り合っている俺達に相対しているのは、ドイツの代表候補生のボーデヴィッヒさんは黒い鎧を纏っている。まるで戦車のようなレールカノンはすでに俺に向けられており、よほどヘイトを飼っているらしい。
「……なぁ、あいつはなんで後ろにいるんだ?」
「私1人で十分だからだ」
そう答えた彼女にも、ずっと奥にもう1人の男性操縦者のあいつはペアのはずだ。現状は金色の巨大な翼を折りたたんでいる鎧に表情が隠されており、珍しく第一世代寄りの全身装甲であって、コアの問題から彼にしか扱えないらしい。
ともかく、あいつが連携をしてこないってのは内心ホッとした。
俺は、唯一の剣を両手に握り込んで一歩踏み出す。
簪は、薙刀を構えて俺の背後に並ぶ。
『試合、開始!』
「うぉぉぉぉ!」
わざと大きな声を出しながら、飛び上がって俺は前へ加速する。
「馬鹿の1つ覚えか」
性能では白式のほうが速いのに、すでに見下すように上をとられていた。
手をかざす仕草、やっぱりこいつはAICを過信しているよな。まるでトラップをしかけたかのように、俺の動きを強制的に停止させてから、無防備なところへ砲撃を放つのだろう。
でもタイムジャッカーたちと違って、こいつのあれは位置指定の技だろ?
「ここだッ!」
癖で思わず声に出てしまったが、授業でもやった急降下を行う。
「フン」
やっぱりあの時と同じように俺の視線は自然と地面に向いてしまい、白式のアラートが耳に響き、砲撃が来ることを警告してくれる。
だがこれで視線を釘付けにできたぜ。
「いっけー! 簪!」
6機かける8門、48発のマルチミサイルが発射される音がした。その隙に俺は何とか体勢を整えてから地面の上で滞空し、空を見上げる。
「くっ、止めきれん!!」
それでもいくらかミサイルがAICで止まっていて、あのまま直進していたらと思うとヒヤヒヤする。
簪が開発している最中の『山嵐』って、あれでも未完成らしい。手動で設定する必要があるから俺が囮になったわけだ。もし完成すればさらに細かく狙えて、しかも目線とかでも指定できるらしい。
観客席のみんなも驚いているし、さすがのボーデヴィッヒさんもこの初公開の武装には対応できないみたいだな。
数発のミサイルが直撃して、止まっていたミサイルと共に大きな爆発を引き起こした。セシリアが放ったミサイルに俺も直撃したことあるけど、その時とは量が違いすぎる。
ISのバリアがあるとはいえ。
「だ、大丈夫なのか? 」
別に敵でもないし、クラスメイトとして心配していたが。
なんか、急に寒気が。
ガンッという衝撃の後に、白式のアラートが鳴り響く。
「ッ!?!?」
慌てて揺れた頭を振って、今自分が壁に激突していることまでは分かった。
「一夏、そこから離れて!!」
「え……」
簪の焦る声に応じて動こうにも、諦めた。
セシリアのISのレーザーなんて比じゃない。
目が焼けるかのような光が広がっている。
こんなISを相手にするの、無理だろ……
「ァァァ!!?!?」
一瞬思考が飛んでいた。
熱いという感覚、そして遅れてやってくる痛み、咄嗟に腕で防いだが特にISスーツで守れていないところがひどい。白式の装備は俺へのダメージを肩代わりしてくれたかのように損傷しており、大きな翼は欠けている。
しかしなぜか思考は、いつもより冷静でいられた。
「おいおい、さすが主人公様、タフだな」
転がっていた剣を拾い上げて弄んでいる『敵』は、何かよく分からないことを言っている。
頭に熱を感じ、ズキズキとして、しかしそれを無視して一歩一歩、敵へ向かう。こいつらを倒さないといけないと本能が告げる。
「だが好都合だな。そこで見ていろよ」
剣士の姿をした黒い泥が、水色の髪の味方を襲っている。薙刀で打ち合っているが、敗北は時間の問題だろう。
そして俺に剣は無く、戦況は不利だが。
「お前の出番はないんだ。俺があいつを助けて、今度こそ手に入れる」
別に、こいつがやってもいいかもしれない。だがどうにもこいつは高威力の武装であの泥を壊すことしかしないように思える。
本来の力を出さない剣を舌打ちして放り投げて、再びあの高出力のレーザー銃を構えた。
なぁ、お前ならできるんだろ。
「だから力を貸せよ、白式!!」
「なっ! てめぇまた横取りする気かよ!」
白式は鎧を最低限に保ちつつ、その粒子を消費して左手に爪のような武装を作り出した。剣とまではいかないが、鋭利な近接武器というのはありがたい。
「オリムライチカ、対象を...」
頭がズキズキと痛む。
「...簪! もう少しそいつを抑えててくれ!」
「わかった。信じる!」
俺は片翼のスラスターだけで飛翔する。なんともバランスが悪く、地面スレスレな飛行だが、一撃ぶん殴るだけでいいんだ。
よく見れば、千冬姉の暮桜に似ていて、まさしくアナザー暮桜というべきかもしれない。俺もお前も千冬姉に憧れてるのは一緒みたいだな。
「うっ、やっぱり私なんかじゃ...」
まずい、簪の薙刀が弾かれてしまった!
「簪! 伏せなさい!」
「援護しますわ!」
鈴の龍砲、セシリアのレーザー、それぞれの射撃にアナザー暮桜は的確に剣で対処する。でも2人のおかげで隙ができた。
「単一仕様能力! 発動!」
爪に零落白夜を纏わせ、剣と打ち合えば、いわゆる偽雪片のエネルギーは霧散した。やっぱりこの黒い泥はなんらかのエネルギーでできているみたいだな。
「戻れぇぇぇ!!」
再び爪を振り下ろし、やがて元の黒い装甲に当たったとき、視界に雪のような真っ白な世界が広がっていった。
なぜか、俺はIS学園の制服を着ていて、ボーデヴィッヒさんは軍服を着ていた。たぶん現実の世界じゃなくて、夢とか精神世界とかだと思うけど。
「……教えろ」
「ん?」
どうやったら出れるのかキョロキョロしていたら、話しかけられた。
「お前がこのVTシステムに向かってくるのは見えていた。お前はなぜそこまで強い?」
「鍛えてるからって、自信持って言えるわけじゃない。やっぱり、みんながいたからだな」
それだけは自信を持って言える。
「周りに助けられてばかりだよ。俺も、千冬姉も」
千冬姉も家事とか書類整理はとことん苦手だから、山田先生によく助けてもらってるみたいだ。
「千冬姉のように誰かを護りたいって思うし、強くなりたい。まあ、国を守る仕事をするお前と比べれば狭いけど、俺もせめて手の届く範囲くらいはな」
「フッ、強いな」
「千冬姉からすれば、まだまだヒヨッ子らしいぜ」
あの時セシリアに対抗できたのも慢心していたからだし、鈴やシャルはもちろん、なんなら基本をしっかり学んで剣道の実力が高い箒にだって練習で負けることが多い。楯無さんには楽しそうにボコボコにされるし、乗りたての本音相手にも勝ちきれないし。
まあ、負けたら悔しいけど、ISスポーツってのは楽しくはある。命の取り合いとか、世界の命運がかかった決闘でもないしな。
「千冬姉に教えてもらおうぜ、いろいろと」
「そうだな。あの人は眩しいくらいに強い」
そして彼女は手を差し出してくれて、俺はその手を取った。俺の心が強いって意味なら、それは千冬姉に教えてもらったからだ。
「ラウラと呼んでくれていい、一夏」
「おう、ラウラ」
視界が光ると、俺たちはISスーツを着ていて、握手をしたままだった。お互いの健闘を称え合い、なんかもうテレビでよく見るスポーツ選手って感じだな、俺たち。
「あ~、これ試合はどうするんだ? 仕切り直しか?」
「あいつは知らんが、私としては完敗だな。次は負けんぞ」
慌ててこちらへ駆けつけてくる山田先生たちと入れ替わるように、あいつは背を向けて去っていく。その途中で、千冬と何か話してたけど。
「一夏、あんたバカァ?」
「そ、そんな怪我で戦ってましたの?」
鈴やセシリアに指摘されたが、まあ、身体中が痛いな。てかこれがあいつからの1発分のダメージとか、チートだろ。弾や数馬とやったゲームでもここまでのバランス崩壊はないぞ。
「一夏、ちょっと反省しよっか??」
「ふごっ...!?」
恐ろしく早い手刀で簪に気絶させられた。ふんわりと夢の世界へ旅立たせる威力というのが、さすが簪だぜ。めっちゃ鍛えてる。
てか、なんか事件が起こる度に、俺って医務室送りだな。