ギアス世界に転生したら病弱な日本人女子だったんだが、俺はどうしたらいいだろうか   作:緑茶わいん

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白い魔女・リリィ 七

 短期決戦とは言ったものの、人や物を動かすには時間がかかる。

 物量で押しつぶすつもりなら猶更。

 防衛戦で長期に渡って粘った実績のある日本列島が相手ということも手伝い、しばらくの間、ブリタニア本国からは散発的かつ小規模な攻撃が続いた。

 

『同じ国同士で憎しみ合う必要はない』

『敵兵とて望んで戦う者ばかりではない。敵だからこそ味方に引き込め。烏合の衆の大将を向こうの者達に引きずり出させよ』

 

 こちらの戦力にはシュナイゼル、ルルーシュが「むやみに殺す必要はない」という命令を徹底。

 捕縛した敵兵はユーフェミアや神楽耶の主導によって丁重なもてなしが行われ、鹵獲したKMF(ナイトメアフレーム)についてはバラして予備パーツに回したり、損傷が軽微であれば修復して再利用した。

 向こうとこっちで同じ機体を使っているとこういう時に便利でいい。

 

 ギスギスする兵達の慰問にナナリーが周り、こっそりファンが増えまくっているとかいないとか、そんな話もあった。

 

 スザクはこの間の出撃で藤堂からこってり絞られたらしく、しばらくの間は実戦出撃を控えさせられていたが、その鬱憤を晴らすかのようにシミュレータに入り浸り。ブリタニア系、日系問わず誰の挑戦でも受ける、と宣言して間接的な教練に一役買っていた。

 で、俺は、

 

「ラクシャータさん、新しい機体や武器のアイデアです。全部で三十」

「そ。……社長、そっちで十くらいまで絞っといてくれる?」

「わかりました」

 

 なんか、ラクシャータの助手みたいなことをやっていた。

 新アイデアの紙束を持ってきた扇が呆れと苦笑の中間みたいな顔をして、

 

「社長、社員に顎で使われてますね」

「なまじ、私が機械工学をかじっているせいですね」

 

 もちろん独学なわけだが、定期的にロイドと雑談をしているせいか、そこそこの知識が頭に入っている。

 俺が無理だと思ったからってラクシャータに作れないとは限らないが、長々研究している暇もない。俺が見て「無理」と思うやつは成立させられても時間がかかるということで、プランの絞り込みを担当させられている。

 そうやって作業量を減らしたラクシャータが何をしているかと言うと、俺達の出したアイデアから新しい機体や武装を思いついては設計し、他の部署から「こういうの考えたんですが」「ここで困っていて……」と飛んでくる相談に応え、合間でBRS(ブレインレイドシステム)の開発も手伝うという離れ業をこなしている。

 予算のやりくりなんて後で考えればいいから作れるだけ作っとけ、的なノリが蔓延している今なら何をやっても許される、とばかりにノリノリである。

 

 設計してデータに落とし込まれた機体は咲世子やC.C.、アーニャがテスト。

 特派系開発チームの作った機体(乗ってるのはカレンやノネット、モニカ)と激しい争いを繰り広げている。

 

「この戦いが終わったら、使いきれないデータが溜まっているでしょうね」

「『2』や『3』を出してもまだネタがありそうな気がしますよ」

 

 エース級のパイロットを複数動員してゲームの開発を手伝わせているような感覚。

 もちろん、作った機体が実機になって戦うのだから完全遊び気分というわけにはいかないのだが、ルルーシュ達が掲げている通り、俺達は敵兵をなるべく殺さない方針だ。

 戦う前から戦意を失わせられるように強い機体はたくさんあった方がいいし、人が死なないようにしたいのなら「コクピットを狙わずに敵を無力化できる機体」や「新型の脱出装置」「堅牢なコクピット」を開発すればいい。

 

 アッシュフォード学園は非常時に避難訓練をする体制を整えつつ授業を続けているものの、俺は単位を取り終わっていることもあって仕事に追われる形になった。

 

 そして。

 

 

 

 

 

「さて、そろそろか」

「だろうね。徐々にだが、向こうの動きに変化が出てきている。そろそろ『本命』が来ると見ていい」

「狙いはどこだろうな。本命はトウキョウだが、キョウトという線もなくはない。あるいはサクラダイトの採掘プラントを押さえてくるか?」

 

 稀代の策略家(シュナイゼル)鬼謀の戦略家(ルルーシュ)優秀な指揮官(コーネリア)が揃った作戦会議の隅っこにちょこんと座った俺は、彼らの会話を紅茶片手に聞いていた。

 こういう本格的な戦略の話になると出る幕はない。

 どう考えてもルルーシュ達の方がいい作戦を出せるので、俺がここにいるのは瓢箪から駒みたいな効果を期待されているのだと理解している。なので基本的には黙っていても問題がない。

 

「北海道を押さえ、軍事拠点を作ってくるというのはどうだ? 物資の安定供給ができるようになれば移動の問題が大きく改善されるぞ」

「だとしても北海道防衛に大規模戦力を置くのはありえないな。仮に取られたとしても日本列島の形からして、北上しながら取り返しに行けばいい」

「そもそも北海道は広い。拠点を作ったとしてもトウキョウに向かうまでに二、三箇所は中継地点を作らなければならないだろう。父上にそれを実行させるだけの求心力が残っているかな」

「リリィ様、おかわりはいかがですか?」

「いただきます」

 

 いや、しかしこれ、仕事してた方が有益だったんじゃないだろうか。

 と。

 

「リリィ」

「先輩」

「どう思う?」

 

 ああだこうだとえんえん話し合った三人がこっちを同時に振り返ってくる。

 ここで求められているのは俺が必死に考えた名案ではなく、ぱっと思い付いたような適当な案。そういうのが天才にとってのブレイクスルーに繋がったりするのだ。

 

「そうですね。私が皇帝の立場なら『どれだけ兵が死のうと構わんからC.C.を連れてこい』と言ってトウキョウに突撃させますね」

 

 まあ、まともに考えたらそんな命令、総大将が出すわけないんだが──。

 

「だろうな」

「妥当だね」

「しかし、それはそれで怖くはあるぞ。目的を果たせずに逃げ帰れば待っているのは処刑だ。敵を背水の陣に置くことは極力避けねばならん」

 

 子供達の中での皇帝の評価がストップ安である。

 

 

 

 

 

 結局、作戦会議の結果は物凄い安パイになった。

 キョウトや富士山など他の拠点にもある程度の兵を残しつつも東京を第一防衛目標とし、主力を集める。

 これまで同様、本拠が近いという利点を生かして徹底した防衛戦を行い本土を死守。相手が諦めるか戦闘継続不能になるまで戦う。

 

 明言はしなかったものの、暗に示す形で「決戦が近い」ことがみんなにも伝わり、次第に反乱軍には緊張感が満ちていき、

 

「来たな」

 

 ブリタニア本国から多数の船が出航したという情報が入ってきた。

 狙いは──途中で進路変更しない限りは東京租界。

 

「あくまでも正面から力押しか。父上らしいね」

 

 ブリタニア皇帝シャルル最大の強みは迷いのなさ。

 やる時は徹底的にやる、という姿勢が幾多の勝利を生み、兵達の闘争心をも引き上げていた。広大な国土を有するようになってからはKMFに代表される兵器開発でも他国をリードし、もはやブリタニアに勝てる者はいないのではないか、とまで言わしめた。

 だから、彼の力押しを侮りすぎると痛い目に遭いかねない。

 

 それでも。

 

「やることは変わらん。丁寧に、真摯に、やるべきことを果たすだけだ」

「ああ。ブリタニア側の指揮は私とシュナイゼルが執る。日本側の指揮はルルーシュ、お前と藤堂に任せるぞ」

「わかっている。さっさとくだらん戦いを終わらせるぞ」

 

 俺達は事前に察知した情報を基に幾重にも防衛ラインを敷き、ブリタニア本国軍を迎え撃った。

 

 

 

 

 

 KMFが戦場の華となって久しい現在だが、こと海戦においてはかの兵器の活躍が難しい。

 原作の途中から登場した飛行ユニットは技術レベルが全然足りていないので実現不可能。母艦の上から攻撃するだけなら砲台でも置いておいた方がマシであり、遠くから敵艦を攻撃するなら空母と戦闘機を利用するのが結局のところ無難となる。

 よって、双方ともに既存の海上戦力による戦闘──数年前の日本対ブリタニアをなぞるような光景から決戦は幕を開けることとなった。

 

 日の丸とブリタニアの紋章を並べたシンボルを有する戦闘機が空母から次々発艦し、ブリタニアの戦闘機と熾烈な制空権争奪戦を繰り広げる。

 長射程を誇る戦艦が砲撃戦を演じ、彼我の距離が縮まると共に主力は各種巡洋艦や駆逐艦へと移行。

 物量で劣る反乱軍だが、海戦なら旧日本軍人達は百戦錬磨。ロイドやラクシャータによって改造された戦闘機の性能も相まってかなりの善戦を成し遂げた。

 

「では、一つ目の切り札を出すとするか」

 

 反乱軍はここで、少数の生産が間に合った()()()()()()付きの『グラスゴー』を投入。

 潜水艦に比べて小回りのきくこれらの機体は敵艦に向け次々と魚雷を発射、大きな被害をもたらした。

 

 本国側も「落とされて無駄になるくらいなら」と艦の上からKMFに砲撃させるなどして応戦してきたが、ここで更に()()()K()M()F()が圧倒的な機動力を持って暴れまわった。

 まあ、さっきも言った通り、飛行ユニット自体はまだまだ技術的に無理だったので「小型のKMFを飛行機がぶら下げてる」だけなのだが、意表を突くには十分。

 

 こちら側としては無理はせず、できるだけ自軍の被害を抑えつつ敵方の足を遅くすることに専念し、戦線は徐々に後退。

 

 敵艦の数があまりにも多いこともあり、空母や戦艦らの間を縫って突破してきた輸送艦を食い止めきることはできなかった。

 これでもかと設置した砲台も爆撃によって数を減らし、遂には敵方のKMFが上陸した。

 

「ほう。新型が交じっているのか」

 

 敵の指揮官機は第六世代相当とみられる新型だった。

 ならばと、こちらもKMFを投入。

 

 日本側の主力は無頼に代わる量産機『千花(せんか)』。ブリタニア側は『グラスゴー』に加えて『サザーランド』『グロースター』が中心。

 既存機も天才達によって改良されたことによって性能は大幅に向上している。

 捕獲用のネットや、威力を抑えた代わりに回転性能を向上させた関節・カメラ破壊用マシンガンなど無力化に特化した武器を各種トラップと共に駆使して更なる遅滞戦闘を実施。

 

 本国軍も後続の到着を待つ関係などから撤退を余儀なくされ、戦いは何度も仕切り直しを挟みながら続けられることになった。

 その間、こちらは指揮官も含めて交代制を徹底し、敵方が放置していった負傷兵や機体はできる限り回収した。

 

 すると、多くの兵が口にする。

 

「助かった」

 

 一緒に戦わせてくれ、と口にするものもかなりの割合に上った。

 中にはわざとやられ、捕まりに来た者もいたかもしれない。

 この報告を聞いたルルーシュはふん、と鼻を鳴らして、

 

「兵からの信頼を失った将にもはや力などない。皇帝シャルルはもはや猿山の大将だ」

 

 とはいえ、その大将に忠義を尽くす者もいる。

 

 ──事態が大きく動いたのはとある昼過ぎ。

 

 戦線が膠着状態に陥っていたある日のことだった。

 

「ぎ、ギャラハッド、トリスタン、パロミデス、パーシヴァルの出撃を確認しました! ナイトオブラウンズです!」

「……とうとう来たか」

 

 ナイトオブラウンズの到着と同時投入。

 これは、この戦い最大の正念場がやってきたことを意味していた。

 

「これより戦いは最終局面へと移行する! ここからは守り切るか押し切られるか二つに一つ、戦いが終わるまで敵の攻めは止まらないと思え! スザク!」

「ああ、僕も出る」

「私も出よう。シュナイゼル、総指揮は任せるぞ」

「任されよう。皆、くれぐれも気をつけるようにね」

 

 司令部をシュナイゼルに任せ、スザク、ルルーシュ、コーネリアもまたKMFに搭乗。戦場に身を置きながら指揮を執る体制へと移行した。

 

「私も出るわよ!」

「カレンさん、大丈夫ですか? 前回の出撃からちゃんと寝ましたか?」

「もちろん。五時間くらい眠れたから十分よ。それに、強い奴が出てくるなら私の力が必要でしょ?」

「ええ、カレンさんがいてくれれば百人力です」

「そう来なくっちゃ」

 

 にやりと笑った義妹はパイロットスーツに身を包み、自身の機体へと向かっていく。

 

「では、リリィ様」

「はい」

 

 元ナイトオブラウンズの三人も含め、こちら側も戦力を一気に投入。

 

 枢木スザク        ──グロースターカスタム『ランスロット』改良型『叢雲(むらくも)』。

 藤堂鏡志朗        ──『千花』カスタム機『八重藤(やえふじ)』。

 ルルーシュ・ランペルージ ──第六世代相当KMF『菊花(きっか)』。

 

 カレン・シュタットフェルト──第六世代相当KMF『紅蓮』改良型。

 紅月ナオト        ──量産試作型『紅蓮』。

 

 コーネリア・リ・ブリタニア──『グロースター』コーネリア仕様。

 アーニャ・アールストレイム──グロースターカスタム『モルドレッド』改良型。

 ノネット・エニアグラム  ──試作量産型ランスロット・仮称『ヴィンセント』。

 モニカ・クルシェフスキー ──第六世代相当KMF『プロト・フローレンス』。

 

 ジェレミア・ゴットバルト ──『サザーランド・カスタム』。

 ヴィレッタ・ヌゥ     ──同上。

 

 更に三機の新造KMF『翠蓮(すいれん)』『桜花(おうか)』『白百合(しらゆり)』が本陣防衛用として配備され、決戦の幕が上がった。




※オリジナルKMFの名前は作者の趣味です。
 ご了承くださいませ。
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