ギアス世界に転生したら病弱な日本人女子だったんだが、俺はどうしたらいいだろうか   作:緑茶わいん

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※本編に比べてTS成分多めです。
 また、夫人になるところまで行きつけなかったので続くかもしれません。


■番外編:アスプルンド伯爵夫人 リリィ

「いやあ、困ったことになったねえ」

 

 珍しく本当に困った様子のロイドに、俺も「そうですね……」と苦笑いを返した。

 特派施設内、通い慣れたロイドの部屋。

 先の戦争(というか内乱)での功績もあって権限が拡張され、施設内はほぼフリーパスになっていたりするが、基本的に俺が出入りするのはここくらいである。

 

「まさか、こんなにすぐ結婚することになるなんて……」

 

 俺は先日、アッシュフォード学園を卒業したばかり。

 花束を持ってお祝いに来てくれたロイドに「そういう甲斐性があったのか」と感動したのもあって、婚約者らしいイベントはしばらくいいかと思っていたのだが……。

 何人かの生徒から「次は結婚式に呼んでくださいね」と言われたのが現実になりかけるとは。

 

「面倒なことに、母上はこれと決めたことは曲げないんだよ」

「ああ、ロイドさまのお母様ですね」

「そうだね。よく言われるよ」

 

 きっかけは、少し前に行われたばかりのブリタニアの内乱である。

 

 内乱はエリア11側が勝利し、新皇帝オデュッセウスの即位式も執り行われた。

 ブリタニア本国、新生日本国共に慌ただしくも未来への希望に満ちたスタートを切ったというところ。

 俺達としては「バタバタしているし、しばらく結婚は無理」というつもりでいたのだが、ここに関して誤算があった。

 

 ロイドが(あとついでに俺も)戦勝の功労者の一人になったことである。

 特派の主任にしてランスロットの開発責任者となれば、KMF(ナイトメアフレーム)戦で優位に立てたのは彼のお陰と言っても過言ではない。ラクシャータらと共に皇帝直々に感謝が述べられ、幾らかの報奨金も贈られた。

 今後、ランスロット系の機体が神聖ブリタニア帝国軍の、紅蓮系の機体が日本防衛隊の主力に置き換わっていくことはほぼ間違いなく、言わばロイドは出世頭。

 となれば結婚の申し込みは前にも増して激しいものになり、中には「婚約していると言ってもまだ結婚してるわけではないんでしょう?」と直接的に乗り換えを提案してくる家まである有様。

 とはいえ、ロイドの両親としては俺というカモを逃がしたくない。

 俺の方にも日本側から「なんならスザク様のお相手に」などと冗談めかして(こっちが真に受けたら言質を取る気満々で)言ってくる奴がいたりしたので、さっさと結婚してしまわないと面倒臭くて仕方ない、という状況になってしまったのである。

 

 もちろん、実際に式を挙げるのは半年くらい先の話にはなるのだが、貴族の結婚式というのは簡単なものではない。

 招待客のリストアップに会場の確保、ドレスの注文等々やることはいくらでもあるし、招待客にもスケジュールの調整があるため、ぶっちゃけ式の日取りを確定するのは早ければ早いほどいい。

 なお、ドタキャンなんかしようものなら関係者全員から「ギルティ」されるのは間違いない。

 

「好きなだけ開発できて最近は楽しい事だらけだったのにさあ。いっそのこと戦争がもうちょっと長引けば──」

「ロイドさま。さすがにそれ以上はまずいです」

「ざーんねん。さすが、察しが良いよねえ」

 

 茶目っ気たっぷりに笑ったロイドはプリンの最後の一口を放り込むと笑顔を浮かべて、言った。

 

「じゃ、仕方ないから結婚しよっか」

「あまりにも軽い結婚の申し込みですね」

「あれ、もしかして嫌?」

 

 俺は「まさか」と微笑んで紅茶を飲み干し、頷いた。

 

「では、結婚いたしましょうか、ロイドさま」

 

 こうして、俺達の結婚準備がスタートした。

 

 

 

 

 

 

 まあ、俺達とは言ったものの、ロイドはほぼ何もしなかった。

 

「準備? いいよ、適当にやっといて」

 

 一事が万事これである。

 とはいえ、これに関してはロイドが適当というよりは男子の特性というべきだろう。俺だって前世の感覚だったら「失礼さえなければ無難な感じでいいじゃん」となる。

 だが、女子の感性で考えると、どうせなら可愛いドレス着たいし、招待客にも喜んで欲しいし、豪華な会場の方がいい。

 自然、主に動くのは俺とシュタットフェルト家の養母、それからアスプルンド家のロイド母ということになった。

 

 仕事の合間を縫って母親達と集まって相談し、計画を立てる日々。

 正直、楽しかった。

 今更ながら、俺もすっかり女子に染まったものである。そもそも性転換したんじゃなくて記憶だけ前世のものが甦っただけなのだから、時間が経てば慣れるのは当然なんだが。

 

 友人達に連絡したところ、みんな喜んで参加を承諾してくれた。

 

「先輩の結婚式に私が行かないわけないじゃないですか! ……まあ、私まで急かされそうなんで、こんなに早く結婚しなくてもーとは思いますけど」

「もちろん行きますよー! 先輩の写真いっぱい撮りますから覚悟してくださいね!」

「わ、私も、複雑だけどちゃんと行きます!」

「えーと、リリィ先輩? それって俺も行っていいんすかね?」

 

 ミレイ達に確認するのに直接生徒会室へ赴いたのが良くなかったのか、自分も自分もとわらわら生徒が湧いてきたのはまあ、笑い話である。

 シュタットフェルト家とアスプルンド家の地位を示すためにはいっそ全員招待してしまえ、と言いたいところではあったのだが、さすがにそういうわけにもいかないので、結婚式に招待するのは特に仲の良かった一部に限らせてもらうことにした。

 代わりに学園のクラブハウスを借りて結婚記念パーティをして、学園の生徒にはそっちで満足してもらう。

 

 神楽耶達はというと、

 

「もちろん、私も参加します。友人の式にも出られないで何が世のため人のためですか」

「幸い学生の身ですので、時間はたっぷりとあります。わたくし達も参加しますわ。ね、ナナリー?」

「はい、ユフィ姉様! リリィさん、私、それまでに頑張って目を治しますね?」

 

 これで、皇女二人に日本のお姫様の参加が確定。

 更に「ナナリーが行くなら」とルルーシュまで参加することになった。暇さえあればアッシュフォード学園までナナリーに会いに来て、そのたびにきゃーきゃー言われているくせにまだ足りないのか。

 

「ルルーシュさん、大丈夫なのですか?」

「大丈夫ですよ。上が休まないと下の者も休めませんし。そもそも、一人いなくなっただけで回らなくなるのなら体制構築がおかしいんです。そんな組織は遠からず破綻しますよ」

「……気のせいでしょうか。心なしか耳が痛いのですが」

 

 なお、俺に「休め」と声をかけてくれる社員達からも古参メンバーを中心に有志を招待した。

 ロイドが偏屈なせいで俺の関係者がかなり多くなりそうだが、まあ仕方ない。ロイドの知り合いってほとんど軍関係者だし、あんまり大人数を呼んだらいろいろ危ない。

 と、

 

『やあ、リリィ。結婚するそうだね。せっかくなので私も参加したいのだが──』

「恐れながらシュナイゼル殿下。ブリタニアの宰相閣下が来たら大騒ぎになると思います」

『なんだ、冷たいな。ロイドは私の直属の部下なんだ。お祝いくらいして当然だろう?』

 

 この宰相、暗に遠慮しろと言っても聞いてくれやしなかった。

 

『ロイドに聞いたら「暇ですねえ」で終わりだったんだが』

 

 あの男はこれだから……!?

 結局、シュナイゼルほどの大物にこっちから「駄目」というわけにもいかず──スケジュールの都合で行けなくなった、と聞いた時には思わずほっと胸を撫でおろした。

 代わりにお祝いとしてお高いワインが山ほど送られてきて参加者の喉を潤すことになったが……もしかして、式をイメージアップに利用されたのではなかろうか。

 

「アーニャさんも当日はおめかししましょうね?」

「うん。もう何着るかも考えてる」

 

 見せてもらったら思いっきりゴスロリだったので「もう少し普通のドレスの方が」とやんわりアドバイスした。

 そうしたら今度は背中のざっくり開いた煽情的すぎるドレスになりかけたので、かくなる上はと本格的に介入し、ユーフェミアと姉妹コーデっぽいピンクのドレスで落ち着くことになった。

 しかし、結婚式だから仕方ないとはいえ、皇女二人を相手にドレスで格上演出をしないといけないとは……。

 ユーフェミア達もその辺りは弁えていて、あらかじめ予算を伝えてくれはしたのだが、こちらとしても見栄を張らないといけないところなのでドレスは結構奮発した。

 

「……あの、ところでリリィ様? あちらの準備は進んでいらっしゃるのですか?」

「? あちら、というと?」

「それは、もちろん……結婚式の夜といったら特別でしょう?」

「っ!?」

 

 あまりといえばあまりの発言に紅茶を噴き出しかけた。ナナリー付きのメイドとして控えていた咲世子も口元を押さえてふるふる震えている。

 アーニャなんか「これ、私が聞いていいの?」という顔できょろきょろしてるし。

 ユーフェミアの私室だからいいものの、これがカフェテリアだったら即行で話題を変えているところである。

 が、ナナリーは顔を真っ赤にしながら、

 

「ユフィ姉様。それって、あの、あれですよね?」

「ええ、そうですわナナリー。夫婦にとっての特別な夜。貴族の場合、婚前に『遊び』に興じる方も少なくないそうですが、リリィ様達の場合はそんなことはありませんでしょう?」

「ユーフェミアさま、神楽耶さまあたりの悪影響を受けていらっしゃいませんか?」

「だって、こういうお話は女性同士でないとなかなかできないでしょう? メイドや家庭教師に聞いても話を逸らされてしまうことが多いですし」

 

 そりゃあ、皇女様に性教育をするなんて役割、できれば負いたくはないだろうしな……。

 

「それで、リリィさん。どうなんですか?」

「ナナリーさんまで……。どうと言われても、普通にするだけなのでは?」

 

 当たり障りなく返そうとしたら、皇女二人が「きゃあ」と声を上げた。

 

「普通というと、やっぱり()()()するんですよね?」

「さすがはリリィ様、大人でいらっしゃいますのね……」

「ま、待ってください。どこまでがお二人の普通なんですか……!」

 

 冷静に考えると、それは俺にとっても重要な案件だった。

 忘れられがちだが、俺は忍者の娘である。

 戦闘技術から他のあれこれまでみっちり仕込まれた咲世子のようにはいかなかったが、俺にも可能な限りの技は教えられている。

 嫌々ながら教えられたくノ一の技に前世で「男として」得た知識を合わせると、あんなことやこんなこと、浮かんでくる知識は山ほどある。

 果たして、これらのどこまでが普通なのか。

 

「ユーフェミア様がそのあたり、一番バランス良くご存じかと思うのですが」

「わ、わたくしに振るのですか!? いえ、その、わたくしも一通りどうすればいいのかは教えられておりますが、実地に近い形での教育はまだ……」

「私は咲世子さんから教えてもらったくらいで……」

「姉さま?」

 

 ナナリーに何を教えているんだと視線を向けると、咲世子は気まずそうに視線を逸らした。

 まあ、聞かれたら答えざるをえないという話だとは思うのだが、こういうことで時々悪ノリするので油断がならない。

 

「じゅ、重要なことなのです。ここをはっきりしておかないと私が恥をかくことになりかねません」

 

 いや、ロイドの場合「疲れたね。さ、寝よっか」で本当にぐっすり眠るだけ、がありえるわけで、そこまで心配しなくていいとは思うのだが。

 逆に彼だからこそ、済ませることは早めに済ませておこう、となる可能性もある。

 その時に()()()()()しまったら大変なことになる。あのロイドにデリカシーを期待する方が間違っているわけで、後日セシルから「どうでしたか?(夫婦になった感想は)」と聞かれて、あることないことぺらぺら喋りだす可能性もある。

 

「これは由々しき事態かもしれません……」

「リリィさんが珍しく焦っています……」

「で、では咲世子さんに聞くというのはいかがでしょう?」

「それは駄目です」

「リリィ様、それはどういう意味でしょうか?」

 

 どういう意味も何も、咲世子は俺よりもっと常識がおかしい側だろうに。

 

「と、とにかく、認識をすり合わせましょう」

「そ、そうですわね」

 

 顔を突き合わせて話し合った結果、ユーフェミアが「お母様から伺った」という体験談を聞くことができた。

 正直、個人の話なのでどこまで参考にしていいかは微妙なところではあるが、ひとつだけ言うとすればこれに尽きるだろう。

 

 ……皇帝のそういう話とか別に聞きたくはなかったな。

 

 話し合いを終えてテンションの戻った俺は遠い目になりながらそう思った。

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