ギアス世界に転生したら病弱な日本人女子だったんだが、俺はどうしたらいいだろうか   作:緑茶わいん

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■if番外編:婚約者がルルーシュだったら 二

 ルルーシュ・ランペルージが倒せない。

 気がついたらキングが孤立。そしていつも「チェックメイト」。諦めずにキャスリングやプロモーションにチャレンジするけどあっさり対処されてしまう。

 腹いせに将棋で反則負けさせまくっていたらあっさり上手くなって逆襲してくるし、本当、あの男に知的遊戯で挑むのが間違っている。

 まあ、俺の場合はスポーツでも勝てないんだが。

 向こうがただのモヤシ野郎なのに対し、こっちは病弱。アルビノの問題がなくても不利なのである。

 

 負けっぱなしも悔しいのでなんとか勝ってやろうと頑張っていたら、ナナリーから「すっかり仲良くなった」と太鼓判を押された。

 微笑んで「ありがとうございます」とお礼を言ったものの、当のルルーシュの態度はぶっきらぼうなまま。ナナリーに対するのとは大違いなので、あまり仲良くなったという実感は湧かない。

 まあ、原作でのC.C.への態度に近い、と考えるとある意味心を許してくれているのだろうが。

 

「お姉様ってルルーシュのこと好きなの?」

 

 そんなある日、俺はミレイからお茶に誘われ質問を受けた。

 冗談めかしつつも真剣な義妹の視線をさらりとかわし、俺は「政略結婚ですからね」とティーカップを持ち上げる。

 

「ですが、相性は悪くないと思います。あの方でしたら私を物理的に振り回したりはできないでしょうし。お話をするのも楽しいですから」

「……むー。ルルーシュはこっちから振り回してこそ楽しいのに」

 

 これはもう、無自覚に惚れ始めてるんじゃないか?

 頬を膨らませるミレイを「ほどほどにしてあげてくださいね」と窘めつつ、どうしたものかと思う。

 婚約者の立場を利用して二人のコミュニケーションを制限することはできる。とはいえ、会えない方が燃え上がる恋というのもある。結局、人の気持ちを強引にどうこうはできないのだ。

 今の婚約が解消されてルルーシュとミレイがくっつくというのなら、まあ、それもいいだろうと結論を出した。

 

 

 

 

 

 ゲーム会社設立の準備は順調に進んでいる。

 祖父からは出資を取り付けられたし、ちょうどいい敷地も押さえられた。後は各種申請や従業員の募集、機材の発注等を行っていけばいいだけである。

 授業と生徒会長業務の合間を縫って準備を進めつつ、ランペルージ兄妹のもとへ通う日々。

 今日はチェスか、将棋か、それとも思考実験シリーズの第何弾かを繰り広げることになるか。最後のシリーズなんか、意外にナナリーが面白いアイデアを出してくれたりして侮れなかったりするし、今日も気合いを入れて臨まなければ。

 と。

 

「よく来たな、篠崎百合」

 

 なんかバレてるんですが。

 

「───」

 

 入室するなり、俺を「日本人としての名」で呼んできたルルーシュ。自動ドアなので閉鎖空間は確保されているものの、大きな声でそんなことを言わないで欲しい。機密の保守よりも俺を驚かせて反応を見る方を優先したのだろう。実際物凄く驚いた。

 それでもなんとかポーカーフェイスを保ちつつ室内に視線を巡らせる。ルルーシュにナナリー、それから俺の姉ことルルーシュ達の使用人、篠崎咲世子。その咲世子が気まずそうに視線を彷徨わせる。冷静な彼女がそうするのは珍しいが、かといって彼女からバレたわけではないだろう。

 

「お祖父さまから、ですか?」

「ああ。確認のために尋ねたら快く教えてくれたよ」

 

 裏付けを取った上で問い詰めたからシラを切られなかった、ってことですよね?

 

「リリィさん、言ってくれてもいいじゃないですか。咲世子さんと姉妹だって」

「すみません、ナナリーさん。ですが、私は篠崎の名を捨てた人間ですから」

「リリィ様の仰る通りです。ルルーシュ様とナナリー様にはお伝えしても問題ないとは思いましたが、秘密とは広がりやすいものですから」

 

 咲世子が加勢してくれたことで「やましいところがあって隠していたわけじゃない」ということはなんとか伝わっただろう。

 席についた俺はルルーシュに向けて微笑んで、

 

「もし、婚約解消を望まれるのでしたら構いません。私からもお祖父さまに口添えしましょう」

 

 するとルルーシュはふっと笑って肩を竦めた。

 

「まさか。別に元日本人でも構わないさ。いや、むしろ好都合かな」

「好都合、ですか?」

「ああ。俺もブリタニアにはいい印象を持っていない。……そういう意味ではお前達と同じだ」

 

 枢木ゲンブ暗殺事件の際、ゲンブ首相の護衛には前篠崎家当主──つまり、俺と咲世子の父も参加していた。

 俺とルルーシュはある意味「親をブリタニアの陰謀で殺された」同士ということになる。まあ、この時点のルルーシュは母の死の真相を知らないわけだが。

 

「……ルルーシュさん。現実の世界はチェス盤ほど思い通りにはいきませんよ」

「……わかっているさ。それでも、何もしないではいられない。リリィ、お前だってそうなんだろう?」

 

 違う、とは言いづらい。

 俺がゲーム会社を作ろうとしている理由の中には「一人でもいいから日本人を守りたい」という想いもある。

 それでも俺は首を振って、

 

「そこまで大それたことは考えていません」

「ちなみにリリィ様の会社の求人募集に元・篠崎流門下生を数名潜り込ませる手筈は整えております」

「姉さ──咲世子さん!? 私、聞いていません。というか、私、全員の顔なんて覚えていませんよ!?」

 

 すると咲世子はさらりと「むしろお知りにならない方が公平に選べるかと」と答えてくる。

 いやまあ、篠崎の人間なら間違っても「百合様」とか呼んできたりしないだろうし、実務面でも優秀だろうし、特には問題はないのだが。

 

「ゲーム会社を隠れ蓑に篠崎流を再稼働させるつもりか」

「あの、お兄様、リリィさん。あまり危ないことはしないでくださいね?」

「大丈夫さ、ナナリー。別に戦いをしようってわけじゃない。……そうだな、リリィ?」

「ですから私も今知ったのですが……まあ、そうですね」

 

 篠崎流にブリタニアを相手取って戦うような力はない。あったらとっくにブリタニアを滅ぼしている。彼らはあくまでも「人というくくりにおける」強者であり、優れた諜報員であるだけだ。なので短慮な真似は逆に身を滅ぼす。

 できるとしたら情報収集程度だろう。社屋という拠点ができることで集めた情報を整理しやすくなるので、そういう意味では助かる。

 その上で、ブリタニアに一矢報いるには別の方法論が必要。

 

「現状に不満のある人材を集めた上でキョウトに接触する、といったところが妥当ではないでしょうか」

 

 キョウトとは日本重鎮の生き残り達の集まりである。

 日本におけるやんごとなき身分の少女をトップに据えた上で今なお生きながらえており、何らかのチャンスがないかと目を光らせている。

 

「反乱を起こすつもりか?」

「反乱なんて起こす必要はありません。ブリタニア側が日本独立の可能性を認めているのですから、再興に向けた取り組みを促すだけでいいんです」

 

 原作では完膚なきまでに植民地化された日本だが、この世界では「首相死んじゃったし、とりあえず俺達が管理しとくね?」と言っているだけ。

 再度統治可能な体制さえ整えられれば権利を戻してくれるという約束なのだから、そのために努力することは何の問題もない。少なくともそう言い張ることはできるし、あまりブリタニアが勝手をするようなら諸外国の物言いを引き出すことになりかねない。

 ルルーシュが顎に手を当てて「なるほどな」と呟く。

 

「反ブリタニア勢力を集めて武装勢力でも作れば……と考えていたが、その方が穏便か」

 

 だから、お前は「まず戦う」という発想を止めろ。怖いから。

 

「日本の重要人物なら俺も一人知っている。あいつも生きていれば力を貸してくれるかもしれないな」

「枢木スザク様のことですね? 私も一度だけですが面識があります」

「ちょっと待て。お前、どこまで知っている!?」

「どこまでも何も、お二人がゲンブ首相のもとにいたことはお祖父さまから聞いています。そのことと、お二人の纏う気品から推測すれば、ただの平民ではないであろうことも推測できるかと」

 

 貴族かなんかなのはバレてるから気にしなくていいぞ、と言うと、ルルーシュはため息をついた。

 

「お前には隠し事ができなさそうだな。……というか、こちらが主導権を握るつもりが煙に巻かれている気がするぞ」

「気のせいではないでしょうか。ではルルーシュさん、一つ提案があるのですが」

「なんだ?」

「うちの会社でプログラマーをしましょう」

 

 するとルルーシュは「何!?」といい顔で驚いた。

 

 

 

   ◆    ◆    ◆

 

 

 

「リリィ、なんだこのプログラムの出来は?」

「……いえ、その。私なりに頑張ってみたのですが」

「努力は認めてやる。しかし、この程度の腕でゲーム制作をしようなど夢のまた夢だぞ」

「だ、大丈夫です。私はあくまで社長ですから。プログラムのチェックは従業員にスペシャリストを置けばいい話ですし、私は完成品が面白いかどうかを判断するわけで」

「はあ……それで、チェック役とやらを俺がやるんだろう?」

 

 リリィ・アッシュフォードと出会ってから、彼女のエキセントリックな言動に振り回されている気がする。

 ただまあ、突然「プログラマーになれ」と言われた時は面食らったものの、話を聞いてみれば納得のいくものではあった。

 ゲーム会社という拠点を利用して情報を集めるなら、ルルーシュもそこに出入りできた方がいい。どうせなら知恵を借りたいとリリィは言うし、ルルーシュとしても口出ししないでいるのは居心地が悪い。ならば、単なる友人や婚約者ではなく従業員になる方がスマートだ。

 こうしてプログラマーになることを了承したルルーシュは、その後、具体的な相談を重ねるうちに単なるバイトではなく()()()に就任することになった。

 どうしてこうなった?

 いや、別の人間を副代表に据えられるよりはよほどいいのだ。社長の婚約者が副社長ではやっかまれることうけあいだが、悪評は実力で黙らせればいい。防音の利いた部屋で密談していても怪しまれないという利点がある。傍から見たら男女の密会にしか見えないだろうが……。

 

 ともあれ、やるからには徹底的にやる。

 手始めにリリィ自身のプログラムの腕を確認したルルーシュは、少女が「一応一通りは勉強しました」という程度の腕であるのを知ってため息をついた。

 

「お前は経営者には向いているかもしれないが、技術者にはまるで向いていないな」

「お恥ずかしながら、私は凡人ですからね。天才を集めて頑張ってもらうのがせいぜいです」

 

 お前のような凡人がいるか。

 文句を言いたいのは山々だったが、ルルーシュは適材適所に甘んじることにした。リリィの出した方針のうち甘い部分を徹底的に修正し、追加で必要な機材などは容赦なく要請した。お陰で忙しくなってしまったが、ナナリーは「お兄様が毎日楽しそうで嬉しいです」と何故かご機嫌だった。

 まあ、ルルーシュをこき使う諸悪の根源が率先してナナリーのご機嫌を取っているのだから当然といえば当然だが。次から次に美味い菓子店の情報を聞きつけてはお土産に持参してくるのはどういうからくりか。

 

「咲世子さん。何か俺の知らない諜報技術とかあるんですか?」

「ええ、まあ。リリィ様は半端にしか修めておられませんが、一般の方には絶対にバレない連絡手段がございます」

「……日本の忍者は凄いとは話に聞いていましたが」

「ルルーシュ様。篠崎流の使い手は忍者ではなくSPです」

 

 嘘をつけと言いたくなった。

 篠崎の人間が全体的におかしいのか? いや、考えてみれば枢木スザクも大概頭のおかしい体力馬鹿だった。……そういえば、枢木邸滞在中に一度出会った日本人の少女も一筋縄ではいかない口達者だったか。なるほど、日本人の中にはおかしい人間が時折生まれるということか。

 

「使いこなしてみせろ、ということか。……いいだろう。この程度の状況を乗り切れないようではブリタニア皇帝など倒せるわけがない」

 

 こうして、ルルーシュのサポートを受けたことで新会社立ち上げは一気に軌道に乗った。

 表向きの顔および人材発掘についてはリリィに一任。ルルーシュは副社長という肩書きを持ちながらも一技術者として活動することになった。

 裏向きの体制としては咲世子が篠崎流の実働を統括。リリィが情報の蓄積および分析を。そして二人に指示を出す形でルルーシュが総指揮を執る。

 

「新生篠崎流では少々不都合があります。何かコードネームのようなものが欲しいところですが」

「ふむ。ではここは『黒の騎士団』と──」

「いえ、ルルーシュさん。戦闘集団と取られかねない名前は不都合かと。あと少々、中学生の男子が好きそうな感じを抑えきれていません」

「会社名を『リリィソフトでいいですよね、わかりやすいですし』と決める女が良く言えたな」

 

 結局、コードネームは「当面は人材確保が任務だから」とのことで「スカウト」という端的なものに決定した。




とりあえずしばらく書いてみます(不定期)
なんか二人してどんどん情報開示しまくっていく不具合。
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