大人四糸乃とファンタジア!   作:エクソダス

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第3話

 十四香はまず人物の避難を優先させた。

 自分自身の能力、氷結傀儡(ザドキエル)を駆使して足に滑りを持たせ、最大限出せるスピードを用いて謎の空間の裂け目のような物体に近づいていく。

 

「こちらへ……!」

「あ、ありがとう!十四香ちゃん!」

 

 

 逃げ遅れた人物を見つけると、十四香は危険でない場所に避難させて行く。

 十四香は察していた。この裂け目は()()()()()()()()()()()()()()()()。そう思わせるほど危険だと心の中で理解していた。

 

 

「こっち…!急いで!」

「あ、ありがとうございます!十四香さん!」

 

 

 この時、初めて『顔が広くてよかった』と思った。昔は内気で顔は広くなかったが今は違う。ある程度顔が広い。

 なので、知り合いはパニックにならずにすぐに十四香のを聞いてくれる。

 

 

「っ…!こんなところまで…」

 

 

 明らかに裂け目が広がっている。

 この裂け目の中に入ってしまったらどうなるか、考えただけで鳥肌が立つ。

 

 

「はっ!」

 

 

 十四香は氷結傀儡(ザドキエル)をできるだけ威力を抑えて使い、裂け目を一時的に氷でかため、どうにか進行のが早くなるのを阻止する。

 このあたりの人はあらかた避難させることに成功した。

 

 

「これで……一安心」

 

 

 まだ完全に安心はできないものの、現状況を考えれば一呼吸おける。

 十四香はポケットに入ってあったハンカチで汗を拭く。こちらはもう大丈夫だ、あとは理乃達のところに戻って状況を確認しなければ…。

 

 

「早く…、理乃のところに────!?」

 

 

 刹那───

 十四香が移動しようとしたその瞬間、十四香の目の前に黒い影のような人型の物体に、吸い込まれるようなレッドアイ。

 

 

「■■■■■■───!!」

 

 

 化け物と呼ぶにふさわしい存在が十四香の目の前には存在していた。

 

 

「ば…けもの」

「■■■■■■■■■────!!!」

 

 

 その瞬間。

 十四香が驚いたその瞬時のスキを突き、黒い化け物はかぎ爪のようなものを振り下ろしてくる。そのスピードは恐ろしく速いわけではないが、当たったらひとたまりもないだろう。

 

 

「お……っっと」

 

 

 しかし十四香は氷結傀儡(ザドキエル)を使用し、氷を盾にして受け流す。

 十四香は精霊という事情でいつも怖いおねーさん(AST)に狙われていたため、避けるのには慣れている。しかしすごい威力だ、あの一撃だけで地面のコンクリートに爪痕がついている。

 

 

「あ…ぶない」

 

 

 さすがにきつい、この状況、一体どうすれば……。

 

 

「■■■■■■─────!」

「っ!ああああぁぁぁぁぁあああああああ───!」

 

 

 突如怪物はスピードを上げ、十四香の胸元にかぎ爪が直撃する。

 十四香は苦痛そうな声を上げる。

痛い…いたい…、イタイ…。痛みでどうにかなってしまいそう。このまま倒れてしまいそうなほど……。

 

 

「はぁ……はぁ……」

 

 

 しかし、十四香は耐えた。必死に痛みから耐えた。 

 まだやることがある。理乃、そして先程知り合ったエンデの安全確認がまだだ、ここで倒れるわけにはいかない。

 

 

「やぁ────!」

 

 

 十四香は氷で槍を作り、怪物に向けて突進する。

 その瞬間、地面が振動し、怪物のかぎ爪と重たくかち合った。

 

 

「────!」

「はあああああぁぁぁ────!!」

 

 

 どうにか十四香は化け物のバカ力に対抗し、力いっぱい槍に力をこめるが、どうしても相手の力のほうが勝ってしまう。

 

 

「■■■■■■■■■■■■────っ!!」

 

 

 十四香は化け物に槍ごと跳ね除けられ、十四香は遠くの壁に直撃する。

 

 

「ぁ……ぅ…」

 

 

 十四香はその場に膝をつく、火照った息を荒げながら…十四香は少しだけ目をつぶる。

 

 

「やっぱり……、()()()………むずかしいな」

 

 

 そう、十四香は手加減していたのだ。

 十四香は元とはいえ精霊。本気でやってしまってはこの区域にかなりの被害をもたらす、それではこの現象とやっていることが全く同じだ。

 

 

「……ごめんなさい」

 

 

 十四香は突如、化け物に向けて頭を下げた。

 十四香はもう察したのだ。この敵は軽く受け流せる相手じゃない、ほんの少し…・。傷つけなければならない。 

 

 

「少しだけ……眠ってて下さい」

 

 

 十四香がよしのんを化け物の前に向けると、化け物の周りに冷気が漂い始める。

 

 

「───!」

 

 

 その瞬間───

 目にも止まらぬ速さ…、化け物すらも理解できない速度で化け物の足が凍っていた。化け物はもがき、氷に爪を立てるが全く来られる様子はない。

 

 

氷結傀儡(ザドキエル)…」

 

 

 十四香が呟くと、化け物は全身が凍り付き、やがて1歩も動けなくなった。

 十四香は駆け足で近づき、氷を優しくなでる

 

 

「大丈夫…、すぐに氷はとけますよ…・」

 

 

 何も十四香は化け物を殺したいわけじゃない。

 手ぬるいと思われても仕方がないが、この状況で殺そうとするのは自分の好きな人が…許しはしないだろう。

 十四香は駆け足で、二人のもとに向かった。

 

 

───

 

──

 

 

「理乃!」

「お、お姉!」

 

 

 少し戻ったところで、理乃とエンデを見つけた。

 よかった、二人ともケガはないみたいだ。

 

 

「よかった、二人とも無事で…」

「お姉、すっごい心配したんだから…」

 

 

 理乃が涙目になっている。

 相当心配させてしまったようだ、この状況で二人きりにしてしまったことで、心細くさせてしまった。

 

 

「……ごめん」

「よかった…ご無事で」

 

 

 エンデもそういって、私に向って微笑んでくれる。

 

 

「さぁ…、早く逃げ───!」

 

 

 刹那─── 

 十四香たちの目の前にまたもや黒い化け物が立ちふさがる。おそらく別の奴だ。まさか1体じゃないとは…。

 

 

「■■■■■■■■■───!!」

「うきゃああああぁぁぁ!」

 

 

 

 理乃が高い悲鳴を上げる、私は即座に理乃とエンデを後ろに下がらせる

 

 

「理乃、驚いてます」

「誰だって驚くはこんなもん!なんなのこいつ!モンスター!?妖怪!?現代にこんなんいたの!?空とか道とかこいつの仕業!?」

「理乃…!逃げて!」

 

 

 十四香は即座に突進し、氷を駆使して化け物を先ほどのように食い止めようとする…。

 

 

「お姉!そんなことあぶな────」

 

 

 その次の瞬間、理乃の目の前に化け物が出現する。

 

 

「っ!理乃っ!」

「……ぇ…?」

 

 

 十四香は全力で目の前の化け物を振り切り、すぐさま理乃を助けようとする。

 ダメ…!これじゃ間に合わない……!

 

 

「お……ねぇ…ちゃん……」

 

 

 その直後、無残にも十四香の妹、理乃は裂け目に吸い込まれ、消えていった。

 

 

「あ……ぁ…」

 

 

 十四香は口を両手で抑える。

 いやだ、認めなくない……こんなこと…やだ…やだ…。

 

 

「くっ!」

 

 

 その直後、エンデが十四香を引っ張り、化け物の攻撃から守る。

 しかし十四香はうつむいたまま動けていない。

 

 

「今は十四香…あなただけでも…」

 

 

 エンデが何か言っているが、十四香には何も聞こえていなかった。

いやだ…こんな現実認めたくない。初めて私を姉と慕ってくれたあの子。

 誰よりも気にかけてくれてたあの子。

 そのこの世界に来てから初めて『家族』と呼べる少女を…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 助けることができなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

 

十四香は叫んだ、自分の愚かさ、弱さを嘆きながら────。

 

 

 

 

 

───

 

──

 

 

「───、──てください」

「ぅ……」

「おきてください、十四香」

 

 

 誰かの声が聞こえる。

 あれからどれだけの時間がたっただろうか、それはわからない。泣き叫んだあと何が起こったのかもよく覚えていない。

 でも…もう理乃はいないんだ…もう少しだけ…。

 

 

「起きてください、十四香…。おきませんね、朝感が足りないのでしょうか。…こほん、ちゅんちゅん。朝ですよ十四香、こけこっこー」

「……ん」

 

 

 十四香がとても変な声で目を覚ますと、そこにはどこかで見慣れたような場所があった。

 ベッドに寝かされており、どこかの艦内を彷彿とさせるような内装だ。

 

 

「…だ…れ?」

「おお、起きました。やはり必要なのは朝感の演出でしたか、こんな声帯模写、もしや記憶を失う前は名女優だったのでは……?」

 

 

 そんなことを言いながら、隣にいたエンデはドヤ顔をしていた。

 この子は生きていたようだ。よかった……。

 

 

「よかった…エンデは生きてて」

「はい、、十四香のおかげです」

「わたし…の?」

「…おぼえていないんですか?あの時、変な格好になって助けてくれたじゃないですか」

 

 

 変な格好。

 それを聞いて、十四香は頭を抱える。たぶんそのへんな格好というのは、『反転体』のことだ。泣いてからの記憶がすっぽり抜けているから、精霊が暴走したのは間違いない、せっかく士道さんに信頼されて、返してもらったのになんてざまだ。

 

 

「…とりあえず、おはよう」

「はい、おはようございます」

 

 

 十四香が朝の挨拶をすると、ちゃんとエンデも挨拶を返してくれる。

 

 

「……」

「おや、まだおねむでしょうか、ちゅんちゅんですよ。ちゅんちゅん」

 

 

 言葉が気に入ったのか、割と『ちゅんちゅん』を連呼するエンデ。

 

 

「ここ……どこ?」

「気持ちはわかりますが、落ち着いてください。私も先ほど目覚めたばかりで、すべてを把握しているわけではないのです」

「……そっか」

 

 

 十四香は大きく背伸びをする。

 まだ状況は全く理解できないが、『誰かに助けてもらった』と考えるのが妥当であろう。

 

 

「───まずは状況を確認しましょう。十四香、貴方は気を失う前のことをどこまでおぼえていますか?」

「えっと……なき、崩れちゃったところまでは」

「そう……ですか」

 

 

 そういって、エンデは考え込む。

 

 

「……おそらく察するに、私たちはこの艦に助けられたんでしょうね」

「…たぶん」

「少なくとも、私たちに施された治療の痕跡は、自然に起こるものではありません。明らかに、誰かが私たちの命をつなごうとしてくれたのです」

 

 

 この状況とは裏腹に、かなりエンデは落ち着いている。

 もしかしたら十四香より落ち着いているかもしれない、すごい子である。

 

 

「──あら、二人ともお目覚め?意外と早かったわね」

 

 

 突如十四香たちの目の前に現れたのは、赤髪を黒いリボンでツインテールに結び、赤い制服のようなものを肩から袖を通さずにかけている。

 

 

「あ、貴方──」

 

 

 十四香はその顔に見たことがあった。自分の知っている彼女よりは確実に幼いが、間違いなく四糸乃という少女を助けてくれたものの一人…。

 

 

「琴里……さん?」

「こんにちは、氷結傀儡(ザドキエル)を使う識別名不明の精霊さん?」

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