光の戦士の英雄譚~GEEDを為すファミリアの物語~ 作:逢奇流
火星
太陽系の中で最も地球に近いと言われるこの星は、西洋占星術では凶星に数えられる。
古くは戦いや災いを呼ぶ星として恐れられてきたこの星で、大きな閃光が走った。
『グッ……』
『はぁ、はぁっ』
緋色の大地に膝をつき、肩で息をする二人の巨人。
共に赤と銀の体色を持つウルトラマンオーブとウルトラマンジードは絶体絶命の危機にあった。
二人のウルトラマンの前に立ちふさがるのは無数の怪獣たちの群れ。
種類も世界もバラバラな無秩序な悪意の群れが、光を飲み込まんと醜悪な顎を研ぐ。
軍団と呼べるほどの規模に膨れ上がった怪獣たちは血を求めて猛り狂う。
『こんなにいたらキリがない……っ』
『まだいけるな? ジード』
『はい、ここでやれなきゃウルトラマンの名が泣きますからね』
この凶暴な怪獣軍団は自分たちを倒した後に、荒れ狂う狂気のまま地球にいる多くの人々を蹂躙するだろう。
そんなことはさせない。
罪なき人々から笑顔を奪う事は絶対に。
既にオーブが光の国に救援を求めるウルトラサインを送っている。
自分たちが踏ん張れば必ず頼れる先輩たちが来てくれるはずだ。
『ジーッとしてても……っ』
『ドーにもならねぇ!……だろ?』
既にカラータイマーは点滅を始めた。
しかし、彼らは決してあきらめなかった。
戦闘に走っていたキングクラブを二人のパンチで吹き飛ばすと、雄たけびと共に駆けだす。
ウルトラマンオーブ
惑星O-50の戦士の丘にて、光の力に選ばれし宇宙の風来坊として旅を続けるウルトラマン。
光の環より託された光輝く大剣オーブカリバーを手に迫りくる怪獣軍団を一掃する。
迫るシーゴラスの腕を斬り飛ばし、返す刃でスラン星人の首を刎ねた。
ウルトラマンジード
悪名高きウルトラマンベリアルの遺伝子を受け継ぎながら、運命を覆し、ヒーローになったウルトラマン。
凶悪な容貌に反し、正義に燃えるその心を武器に野獣めいた攻撃を繰り出す。
イカルス星人を飛び膝蹴りで吹き飛ばし、レイキュバスを叩きのめした。
数百の群れにも怯まず獅子奮迅の活躍を見せるウルトラマンたち。
既に数多の戦いを経験した彼らは、この絶望的な戦いの中でも光を発し続ける。
だが、怪獣たちはそんな彼らの力を見ても止まらない。
『この怪獣たち、変だ。凄い興奮しているよな……』
『恐らくデビルスプリンターを植え付けられている。この騒ぎの黒幕の仕業だ』
デビルスプリンターと言う言葉にジードは静かに怒りを燃やす。
これがあの人の細胞を利用して起きた事件ならば、絶対に許すわけにはいかないと。
『怪獣たちの動きもおかしい。さっきまで僕を捕まえようとする動きだったのに、急に攻撃的になった!』
『俺がジードに加勢に入ってからだな。黒幕は何を考えて……』
その時、猛烈な勢いで自分に迫る存在を感知したオーブが背後に向き直る。
『オオォォォーーブゥゥゥッッ‼』
『お前は、レイバトス!?』
蒼と鼠色の体。
骸骨のように不気味な風貌の宇宙人……レイバトスが怪獣たちを蹴散らしながらオーブに掴み掛った。
後先考えない異常な速度で飛来したレイバトスに反応しきれなかったオーブが砂ぼこりを舞い上げて火星の大地に倒れ込んだ。
『よくもっ、よくも私の邪魔をしてくれたな! お前さえいなければあああぁぁぁぁ‼』
『この力、この様子。自分にデビルスプリンターを打ち込んだのか!』
『我が大いなる目的っ! 二度も貴様に邪魔はさせんぞおおおお‼』
馬乗りになってオーブを殴りだすレイバトス。
猟奇的ともいえる執念は正に悪魔のようだ。
『オーブさん!』
『ベムスター! バラバ! ハンザキラン! ジードを足止めしろ!』
救援に向かおうとするジードの前に立ちふさがる三体の怪獣。
ジードは果敢に挑むが、光線技を吸い取ってしまうベムスターがいる以上は強引な手は打てない。
格闘戦でなぎ倒そうにも、デビルスプリンターで強化された怪獣たちは異様に頑丈だ。
『心配するな! お前は目の前の敵に集中しろ!』
『っ‼……すぐに片付けます!』
ジードは三体との戦いに専念し、それを確認したオーブはその姿を紫と赤の混じったものに変える。
『フュージョンアップっ、スペシウムゼぺリオンかっ‼』
レイバトスが忌々し気に声を上げる中、スペシウムゼぺリオンの赤い部分が輝きを放つ。
体中から力を漲らせるオーブはレイバトスの両腕を掴み、ゆっくりと押し出し始めた。
そして、レイバトスの拘束が緩んだ途端に今度は紫の部分を発酵させ、素早い動きで拘束から抜け出す。
大地を周りながら片膝立ちの体勢に移行したオーブは、光の環を発生させるとともに十字に腕を交差させた。
──スぺリオン光線‼
青と紫の美しい光線がレイバトスを貫く。
しかし、レイバトスは微動だにしない。
『フハハッ! 寝ぼけたかオーブ‼ 亡霊魔導士は不死身……』
『ああ、お前には効かないだろうさ。お前にはな』
レイバトスを貫通した光線は、そのままベムスターに直撃する。
先にレイバトスにより威力を減衰させられていたために、そのまま撃破とはいかないが、着弾の勢いで前のめりに倒れ、光線を吸収するための腹が隠れた。
その好機を見逃すジードではない。
両腕にエネルギーをチャージし、オーブよりも歪な十字を組む。
──レッキングバースト‼
赤と青の光流に漆黒の稲妻を伴った破滅的光線がバラバ・ハンザキランを吹き飛ばし、爆散。
そのままジードクローを装備し、光線の効かないベムスターに斬りかかる。
『『ギギャアアアアア!?』』
『な、なんだと……』
レイバトスはオーブとジードの見事なコンビプレイを前に呆然と立ち尽くす。
宇宙の強豪怪獣すら二人の敵ではない。
『デビルスプリンターのせいで頭が鈍っちまったみたいだな。このまま決める!』
『貴様っ‼』
ジードとは対照的な、達人めいた戦闘スタイルでレイバトスを追い込むオーブ。
レイバトスが腕を伸ばせばそれを払いのけ、その反動のまま背後に回り込みチョップを見舞う。
背後からの一撃にたたらを踏むレイバトスが振り向くと、回し蹴りを首元に叩き込んだ。
『グッ……おのれ‼』
『!?』
しかし、レイバトスは亡霊魔導とデビルスプリンターにより得たタフネスを発揮、すぐさま体勢を立て直してオーブに絡み着いた。
オーブはレイバトスの背中を何度も殴りつけるが、レイバトスは決してオーブを離さない。
それどころか、レッドキングとダダ、そして再生したバラバ・ハンザキランに命じてより強くオーブを拘束する。
同時に、怪獣軍団たちが黒い影となって一つの怪獣に集まっていることにジードは気付く。
闇の中心にいる怪獣を確認した時、ジードはレイバトスの狙いを理解した。
その怪獣の名はぺダニウムゼットン。
キングジョーとゼットンと言う二つの怪獣を、デビルスプリンターで無理矢理結合したその怪獣は砲台だ。
押さえつけるレイバトスら諸共オーブを吹き飛ばすための。
『させない!』
既に数倍の大きさになったぺダニウムゼットンが火柱を放つ。
その時ジードは動いていた。
オーブを助けるために、正面からその破壊光線を受け止める。
──ジードバリア‼
ジードが展開したバリアーはあっさりと砕かれ、ウルトラマンを飲み込む炎がジードに直撃する。
『ぐ、ああああああああっ‼』
そのまま吹き飛ばされるジード。
攻撃の余波でレイバトスやオーブも倒れる中、煙を上げてジードが地に落ちる。
『ジード‼』
手を伸ばすオーブ。
だが、戦士の勘が冷徹に判断した。
もう助からない。人のいない火星では誰かと一体化するという方法もできない。
『あ、ぐ……っ』
カラータイマーの点滅が早い。
その命が尽きようとしていると赤い光が示す。
……だが、その瞳の青い輝きはまだ。
『諦めない……絶対に‼』
その人々を守りたいという願いは健在のまま。
ジードは震える手でジードクローのトリガーを二回引いた。
『コー…ク……スクリューッ、ジャミング!』
闇の力を身に纏い、ジードクローを切っ先に回転し、突貫する。
例え自分の命がここで散ろうとも、オーブの一助にならんと。
その足掻きが向かう先はブルトン。
無機物の塊のような怪獣が、光輪上の光線をオーブに放とうとしていたことを察知していたジードは最後の命を燃やした。
その諦めない心が可能性を繋ぐ。
『!? 何だ!?』
ブルトンと激突したコークスクリュージャミングはガラスが割れたような音を弾かせる。
そしてブルトンとジードクローの間に現れる穴。
『そうか! ブルトンは四次元怪獣……その特性がデビルスプリンターで強化されていた所に、ジードのベリアル因子が過剰反応して暴走させちまったのか……‼』
ブルトンの特性からその穴が宇宙の穴、ワームホールだと理解したオーブ。
全ての力を使い果たしたジードは徐々に回転が弱まり、纏っていた闇の力も解けていく。
そして、彼はそのままワームホールの中へ……
『不味い! ジード‼』
別世界に落ちていくジードを追ってオーブもワームホールの中に飛び込む。
仲間を失わないために。
『待てオーブ‼』
レイバトスもオーブを追おうとするが、手が入る直前でワームホールは姿を消した。
苛立たち気味にダダを殴り飛ばすと、ブルトンに命じ再びワームホールを作り出し、怪獣たちと共に飛び込んだ。
ウルトラサインを受け取り、救援に来たウルティメイトフォースゼロが火星に駆け付けた時、そこには戦いの後しか残っていなかったと言う。
ウルトラマンZとダンまち3期の最終回が同時だ!と気が付き、運命的なものを感じて作りました。
プロローグを書き終えたら、設定を煮詰めてから不定期に更新します。