勇者パーティーがうちの宿に泊まったけど、面倒なので追い出したい 作:さばっぺ
という事でオリジナルの新作です。空き時間にでもどうぞ。あ、クリスマスが近いということで初投稿です
「ありがとうございました、またのお越しをお待ちしております」
深々とカウンター越しにカランカランと音を立てる扉をくぐっていったお客様に向かってお辞儀をする。
今回の方は中々に紳士的なお客様だった。私の事の気遣いをしてくれたり、騒ぐお客様が居れば気に触れない程度にたしなめて下さったり、と。
こういう方に出会う事が出来るのも、宿を経営しているからこその楽しみだと思う。
そう、私はこの宿『穏やかな春風』の三代目のオーナーなのだ。
この宿は私の祖父母が当時の冒険者の人々の安らぎの地になれば、との思いで創った宿で、二代目の父、そして三代目である私に受け継がれてきている。
ちなみに今でもその思いは残っているかというと首を傾げざるを得ない。だって口上では綺麗事を述べていた祖父母だが、その実、ここ商売と農耕の街であるカルフェの近郊にダンジョンが発見されたと言うものだから儲かるかもしれないとの思いで来ただけのことだろう。
安らぎの地になれば、だなんて思っていたのか甚だ疑問である。どちらかというと楽して金が欲しかったから、と言われた方がまだ納得が行く。
それに穏やかな春風と言っているが別に夏風でも秋風でも冬風でもただの風でもインフルエンザでも良かったのだ。響きが良かった、とかでもなくどうせただ宿を開いた日が春風が吹いていたからという安直な理由だろう。
何故こんなことが推測出来るか。理由は簡単で私が何事も面倒臭く感じてしまう性格だからである。
物心着いた時から私は人よりも効率を求めて、何事も楽しようとしてきた。勾配の激しい見るからに大変な道となだらかな楽な道があれば迷わず後者に飛びついていた。
そしてそれはどうやら遺伝によるものらしく、父も面倒臭がりな性格だった。祖父もそうだったらしい(父曰く)
祖父母はそうでもなかったらしいのだが母も父と波長があってしまったのか、面倒臭がりな性格なのだ。
つまるところ私は面倒臭がりな父と面倒臭がりな母の間に生まれたサラブレッドという事だ。いぇい。
さて、ここらで新たなお客様が来ることを考えて今出て行かれた方が宿泊されていた部屋の掃除に取り掛かるとしよう。
「汚物は消毒1号、おいで」
手をパンパンと2回打ち合わせ、私が楽をする為に作り出したお掃除ロボ、汚物は消毒1号くんを呼ぶ。
私が居る受付カウンターの奥にある従業員スペース(尚従業員は私一人の模様)からウィィィィィンという音を立てながら出てきた消毒1号くん(名前長いからね、省略も時には大切)
「汚物は消毒1号、二階の右から2番目の部屋を掃除してきて」
『(コクリ)』
指示を出すと首を縦に振ってカウンターを抜けて2階へ上がっていく消毒1号。あとは任せられるので他のお掃除ロボが故障を起こしたりしていないかを魔導カメラで確認しながらのんびりと机に突っ伏して過ごしましょうかねぇ……
スヤァ…
ゆさゆさ
ゆさゆさ
「あのー」
揺さぶられた感覚と声をかけられた事によって眠りから覚めた私は、顔をゆっくりと上げる。
そこには、今この世界で知らない者はいないであろう戦士と、魔法使い。そして僧侶と武闘家に──
──勇者が居た。
「宿泊、5人で……えーっと取り敢えず一泊二日でお願いします……で、良いよな?」
「はい、アルの言った通りで良いと思いますよ」
僧侶の男性が声をかけてきた男性、勇者アルフェルトの言葉を肯定した。
何故? どうして? 何があった? そんな疑問よりも先に私の脳裏に浮かんだ言葉。それは──
面倒くさそうだし嫌だなぁ……
こんな時でも思考回路がぶれない自分を褒めたいくらいだ。いや、取り敢えず部屋に案内するか。ここに来た以上、お客様には変わりは無いのだから。
「いらっしゃいませ、勇者アルフェルト様とその御一行様。ごゆるりとお寛ぎ下さいませ」
さーて、どうやって追い出すかなぁ……
感想評価ブクマしてくれると嬉しいです。多分作者は空を飛べるくらい喜ぶと思うので空を飛んでいる人が居たというニュースがあれば私だと思ってください
あ、汚物は消毒1号くんの見た目はスマ〇ラに出てくるロボットを想像して頂けると良い感じだと思います。分からなかったらググって(他力本願寺建設完了)