閃の刃は大正の世を切り拓く   作:ロシアよ永遠に

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思い付きの小説

鬼滅アニメから入門。
あのアニメーションはヤバい。


第1話『バブみ』

人体の耐えられる限界近い圧が、彼の身体を圧し潰さんとする。

昇る

 

昇る

 

昇る

 

自身が駆る灰の騎神。

数年といえども、彼と連れ添った掛け替えのない相棒。その背部のブースターを臨界まで燃やし、成層圏を目指す。

その手には自分のクラスメイトが成り果てた剣。

そして彼らを追うように、蒼い騎神を駆るのは、1つ年上の悪友。

 

「…いよいよ、か。」

 

目を閉じる。

今から彼が行うのは、自身が住まう国。そこに蔓延した呪いからの解放だ。

彼の身体は今、その呪いの元凶たる『黒』が寄生している。『黒』の総てを身に宿す今、それを根絶する方法は1つ。

 

「結局…2人には付き合わせてしまったな。」

 

『何言ってんのさ。今更だよ、今更。』

 

『全くだ。ま、俺としちゃ、これで50ミラの利子は帳消しになるってんなら、喜んで付き合うさ。どうせ残り僅かの命だ。』

 

「■■■…■■■■……。」

 

こんな無茶に付き合ってくれる2人には感謝しか浮かばない。

だからこそ…だからこそ…!

 

『ヤメロ…ヤメロ…!』

 

「悪いが…付き合って貰うぞ…『黒のイシュメルガ』…!」

 

瞬間、

黒く広がる宇宙(そら)に閃光が爆ぜた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……終わった…終わったのか…?全部…。」

 

黒の世界。

これが死後の世界なのか。

得も知れない浮遊感が身体を包み、しかし意識は鮮明だった。

 

「…やったと信じたいな…。」

 

これしか無いと、そう意を決した最後の手段。それが奴を取り込んだ先の自爆。自身諸共滅すること。それが唯一にして最後の手段だからこそ踏み切った。

 

『全く…総てを一身に受けて犠牲とするとは…誰の子だ。』

 

「あんたの子だからな。血は争えないってことだろ?」

 

『フフフ…言うようになったな、息子よ。』

 

振り向かずとも解る。

この低くも艶めかしい声。

威厳と共に優しさと、そして呆れを含むそれは、以前のような威圧と冷酷さを滲ませる物とは打って変わったものだった。

 

「…ここは何処なんだ?死後の世界か何か…なのか?」

 

『死後の世界…まぁ私が居ればそう捉えるのも無理はないか。強いて言えば…ここは現世と常世の狭間だ。』

 

彼は言う。

死にゆく身体と魂、それらが等しく通る場であると。

 

『故に私もこうしてお前とゆっくり語らう事が出来る。…そう踏んでいたのだがな。』

 

「???」

 

『どうやらそれは叶わぬ望みのようだ。』

 

彼の指差す先。

闇の中で薄らと光るその先に、ソイツは居た。

 

黒い球体。

そのかしこに気味の悪い目玉を浮かべ、更には数多のうねうねとした触手を弱々しく蠢かせている。

 

『よもや彼奴までここを通るとは思わなかった。』

 

父と、そして自身が、命を賭して滅さんとしたそれが、今なお目の前で生きている。

それを見逃すほど、彼は甘くはない。

 

「イシュメルガ…!」

 

『ヒィ…!』

 

何とも情けない声だった。

まるで怯える小動物の様に震えた声で後退る其奴は、もはや黒の騎神としての威厳は微塵も感じなかった。

 

「今…トドメを刺す…!」

 

腰に携えた太刀に手をかけ、

 

一閃。

 

風切り音と共にその刃を抜き放つ。

 

「…消えた?」

 

確かに切ったはず。

だが手応えはない。

まるで霧が散ったかのように、奴はその姿形を消していた。

 

『ふむ……少し厄介な事になったものだ。』

 

「…厄介?」

 

『うむ……息子よ。先程私は、ここは等しく死にゆく身体と魂が常世と現世を行き交う世界と言ったのを覚えているか?』

 

「あぁ。確かにそう言っていた。」

 

『言い換えるなら、ここは遍く世界を繋ぐ…いわば根のような物なのだ。あらゆる魂がここに集う…つまり。』

 

「逆にあらゆる世界に行くことも出来る…ってことか。」

 

つまりイシュメルガはその理を知ってか知らずか用いて、何処かの世界に落ち延びたと言うことなのだろう。

 

『うむ……だがこれで我等の護るべき世界から奴は去った。我等の目的もこれで果たされたと思うべきではないか?』

 

「…何を言っているんだ?」

 

『我等がこれ以上黒に縛られる必要はなかろう?死してなお、奴に囚われるなどとは…』

 

「いや、それは違うよ、親父。」

 

父の案を遮るように、彼は言葉を一閃する。

 

「イシュメルガは確かに居なくなった。でもそれは俺達の世界の問題を、他の世界に押し付けただけじゃないのか?俺達の世界の禍根を、別の世界で蔓延らせるなんて、俺は…耐えられないよ。」

 

『フフフ…そうか。お前も…其方が本心か。試すようなことを言って悪かったな、息子よ。』

 

父の案はやはりブラフだったようだ。

 

「どうせ親父のことだ、俺が行かないように誘導して、自分自身で決着つけに行ってたんだろ?」

 

『フフフ…お見通しか。』

 

「あんたの息子だからな。」

 

そんな他愛のない親子のやり取りが、何処か堪らなく温かい。義父と語り合うのとはまた違う、どこかホワホワした感覚に見舞われる。

 

『ならば征け、我が息子よ。我等の世界の悪鬼を、その刃で払うと良い!』

 

「あぁ、ちょっと行って来る。」

 

目を閉じ、そして心を研ぎ澄ませる。

自身の中に残る黒の一部。

それと同類の気配を辿り、その向かう先の1つの世界を探し当てていく。

 

「…見えた!」

 

僅かに見える、黒の残滓。

 

自身が辿るべき道。

 

「じゃ、親父。元気でな。」

 

『あぁ。…気を付けるのだぞ、リィン。』

 

そうしてリィンは、黒のイシュメルガを追い、とある世界へと足を踏み入れる。

 

 

 

 

 

 

 

それがよもや…

 

 

よもや…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フフフ…リィン…いや、凛。また会うことになったな。」

 

「ばぶ?」

 

よもやよもや、父であるギリアス・オズボーンに抱かれた赤子になっていようとは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リィンが向かった世界…そこで凛と呼ばれる赤ん坊に成り果てた理由がわからなかった。

とにもかくにも赤ん坊の身体で何を成すことも叶わないため、最早為すがままの人生…。

母の乳を飲み、

泣きもしないのに父と母にあやされ、

トイレにも行けないから、我慢の限界を迎えておむつを成されるがままに換えられる…

正直に言おう。

リィンの魂その物が成人した男性であったが故に、この生活は正に生き地獄だった。

今日も今日とて母の背に揺られ、子守歌を聴かされている。

 

(……でも…こんな赤ん坊時代を…カーシャ母さんと…過ごしてたんだな。)

 

前世の実母をリィンはあまり覚えていない。

物心付いた頃に自身と共に猟兵に襲われ、命を落としていたからだ。

だがこうして赤ん坊として母の愛に触れることで、その面影を思い浮かべていた。

 

(…なんか…悪くない、のかもな。)

 

「フフフ…バブみというものだな、凛よ。」

 

そんな自身を茶化してくるこの親父は、大きくなったら絶対殴るとリィン改め、凛は固く心に誓った。

 

 

 

 

 

 

そんなバブみに包まれて、1年の歳月が流れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…で、どういうことなのか、せつめいしてくれるんだろ?」

 

ようやく話せるようになった凛は、母が居ない間を狙ってギリアス…もとい、この世界では譲治郎という名前の父に尋ねた。

 

「うむ、赤ん坊が堅苦しい言葉を話すのを見ると、珍妙な光景だな。」

 

ぶん殴る理由がもう一つ増えた。

 

「まず1つ。お前が赤ん坊に退化した理由。…厳密には退化したワケではない。」

 

譲治郎は続ける。

イシュメルガと共に自爆したことで、リィン・シュバルツァーとしての肉体が滅んでしまったため、その魂の拠り所として、未だ魂を持たぬ胎児へと宿り、この世に生を受けたのだと。

 

「で?なんでおやじがいるんだよ?」

 

「うむ、息子が心配でな、追ってきたのだ。…最も、お前が産まれる25年前にだがな。」

 

だからと言って、再び彼の子として生を受けることになろうとは、つくづく因果という物は恐ろしいものである。

 

「だからって…なんでおんなのこになって…」

 

「ふむ…こればかりは運が悪かったとしか言えぬな。だが、フフフ…中々愛らしいぞ、息子…いや、娘よ。」

 

もうこの親父はいつかボッコボコにしてやると、凛は強い決意を胸に秘めた。

 

それから、凛はこの世界について譲治郎から説明を受けた。

 

ここは日本という国で、世は明治29年であること。

そして前世に居た魔獣や魔物に代わるように、この世には『鬼』と呼ばれる人成らざる者が蔓延る世界であることを。




譲治郎…ギリアス・オズボーンの転生者。名前の由来は中の人。

好評なら続きます。
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