閃の刃は大正の世を切り拓く   作:ロシアよ永遠に

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第25話『柱合会議』

日本某所 産屋敷邸

山間部の豊かな自然に囲まれたこの日本家屋は、鬼殺隊を束ねる当主たる産屋敷耀哉の邸宅だ。鬼殺隊の精神的支柱であり、隊士から御館様と呼ばれ慕われている。また、その立場故に鬼…ひいては鬼舞辻無惨から狙われる命だ。そんな理由から、この屋敷の場所は鬼殺隊内でも秘匿事項であり、隊士でも柱を除き、一部の人間しか知り得ない。

 

「おはよう、皆。今日は良い天気だね。こんな日に皆の元気な顔が見れて、私は嬉しく思うよ。」

 

その縁側

そこに立つ産屋敷に白石が敷き詰められた庭園で、彼に向かい跪く隊士が数名。

 

「御館様におかれましても御壮健で何よりです。益々の御多幸を切にお祈り申し上げます。」

 

隊士側の口火を切ったのは、炎柱である煉獄愼寿郎。先日、譲治郎とともに任務に赴いた煉獄杏寿郎の実父だ。一時期荒れた時期もあったが、紆余曲折の末にこうして再び柱として任務を全うするようになった。

 

「ありがとう、愼寿郎。………さて、本来なら、みんなの声も聞きたいところだけど、早速本題に入るよ。」

 

終始穏やかで、そして心に安息を与える声の耀哉だが、そこからは一変。明らかに真剣と取れる声色へと変わる。

 

「先日任務に出ていたとある隊士が、上弦の鬼と遭遇したという報告が上がったんだ。」

 

上弦

その言葉に跪いていた柱達の空気が変わった。

鬼舞辻無惨の配下である鬼。その中でもとりわけ強い力を持つのが十二鬼月。そこからさらに篩い分けされ、上弦六名、下弦六名となり、上弦は最上位の鬼の集まりとされる。その遭遇例はほぼ無いに等しく、情報も少ない。

その上弦と遭遇したと、そういったのだ。

 

「ここからは遭遇した隊士に報告を上げてもらうよ。いいかな?」

 

「御意に。」

 

柱の面々が振り返れば、そこに傅くのは譲治郎だった。

実力者の柱達に気取られることなく背後をとられたことに対し、

片や驚き、

片や譲治郎だから仕方ない、

と感じていたりする。

 

「譲治郎…気配を消して背後を取るのは心臓に悪いから止めろとあれほど…」

 

「フフフ………愼寿郎、慣れというものは必要なのだよ。」

 

後者たる愼寿郎は慣れ始めてはいるものの、彼の悪戯心とも言わんばかりの行動に呆れが差していた。

 

「冗談はさておき………私が上弦に遭遇した隊士となる。…もっとも、交えたのは一合だけだがな。その一合でさえ、軽くあしらわれてしまった。」

 

「譲治郎の一撃を軽くあしらう。認めたくないけど、流石は上弦、といったところだね。」

 

「はい、鬼の力に加えて、全集中の呼吸を使うともなれば、遺憾ながら…」

 

「全集中だと!?」

 

譲治郎の報告に声を荒げたのは、愼寿郎だった。

全集中の呼吸

それは鬼殺隊が鬼を滅するために身体能力を向上させて渡り合う手段である。

そして鬼殺隊の多くは鬼を憎む者たちの集まりだ。譲治郎の報告は、そんな彼らの中から鬼に堕ちた人間がいるという事実だ。

 

「ボソボソとした声だったが、確かに聞こえた。『月の呼吸』と。」

 

「月の呼吸…?」

 

「あぁ。私の最大奥義を一撃のもとに掻き消した。」

 

その一言に、再び柱はざわめき出す。

譲治郎の実力たるや、柱に匹敵するほどに高いことは周知の事実で、それは彼を知るものなら誰もが理解しているところだ。

その彼の奥義を一撃でともなれば、相手の呼吸使いの実力は計り知れぬものだということ。

 

「生きた心地がしなかった。認めたくはないが、流石は上弦の壱と言うところだろうな。」

 

もはや何に驚くべきなのか、むしろ、驚くべきところの連続で、誰しもが唖然とするしかなかった。

 

「そうか…上弦の壱とは。我々が思う以上に末恐ろしいもののようだね。」

 

耀哉の憂う声に、柱の誰しもが上弦とは計り知れぬものだと改めて認識させられる。

重苦しい空気に包まれる面々に、耀哉はいつもの穏やかな声で切り出した。

 

「それでも、我々は戦わねば。皆が思う以上に上弦は強い。それは変わらないだろう。

だけどそれ以上に、私のこども(隊士)達は強い。今はまだ及ばなくとも、強くなって、必ず上弦を、そしてその向こうにいる(鬼舞辻無惨)を打ち取れると確信している。私は信じている。だから皆も信じてほしいんだ。私が信じる皆自身を。」

 

「御館様…!」

 

「御館様!!」

 

「ゥヲャカタサムァァァァ!!」

 

改めて感じる耀哉からの信に、柱たちの胸が熱くなる。

自分達が耀哉を信じるように、彼もまた深く信じてくれていること。それが何よりの身に沁みた。

感動の嵐!

 

「…その、感極まっているところ悪いのだが。」

 

柱達の感動に水をさす用におずおずと、譲治郎はもう一軒の報告をするために切り出した。

端々から『空気を読め』と言わんばかりの鋭い視線を向けられるが、ここは我慢だ。

 

「上弦の壱と相見える前に、もう一人、異質な鬼と出会った。」

 

譲治郎は言う。

イシュメルガとの邂逅。

その特徴。

流石に前世からの因縁や、凜達との関係性は省いたが、それでも予期せぬ新たな脅威に、面々は驚かずに入られないでいた。

 

「その…いしゅめるが?というのが、鬼のようでその実どこか異なる存在であったと?」

 

「なんとなく、としか言えぬが。」

 

「なんだ?お前らしからぬな。」

 

言葉を濁す譲治郎に、愼寿郎は眉をひそめる。しかし、嘘を言うような男ではない事は、自身はよく知っている為、それ以上は追求しなかった。

 

「いしゅめるが…鬼舞辻無惨とは違う、嫌な気配だね。しかも上弦の壱がその護衛のように現れたともなれば、鬼達の中でも相当の地位にいるということになる…。」

 

耀哉も思うところはあれど、譲治郎の報告には疑いはしなかった。それほどまでに彼を信用しているという事に他ならない。

 

「引き続き、皆には鬼の討伐。そして鬼舞辻無惨、上弦、新たにいしゅめるがの調査、討伐をお願いするよ。」

 

「「「御意に。」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして

上弦の壱、そして新たにイシュメルガなる存在が鬼殺隊の中で情報が走ることとなった。

 

『カナエの顔が見れなかったのは残念だが…彼女もまた任務に赴いているんだね。人々の安らかな眠りのために…。』

 

「やあやあ初めまして。俺の名前は童磨。いい夜だねぇ。」

 

そんな彼女に迫る驚異に、今はまだ、誰も気付かない。

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