閃の刃は大正の世を切り拓く   作:ロシアよ永遠に

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童磨の口調ってむずっこい。
素で煽りの呼吸使ってるんだもん。


第26話『上弦の弐』

「ごふ………!」

 

口いっぱいに広がる鉄の味。

その口元から決して少なくない量の赤い血が滴り落ちる。

 

「花の呼吸…!いいね、初めて見るけど、実に面白い呼吸だ!」

 

膝をつき血を吐く鬼殺隊…花柱たる胡蝶カナエに相対し、しかし余裕と言わんばかりにニコニコと称賛の拍手を送るのは、頭から血をかぶったかのような髪。そしてその虹色の虹彩に浮かぶは、上弦の弐。

 

「次はどうするのかな?どんな剣技を見せてくれるんだい?」

 

(ぐ………呼吸が…全集中が…!)

 

まるで喘息か何かにかかったかのように、上手く呼吸が出来ないでいることに、カナエの背に嫌な汗が吹き出てくる。特に胸に攻撃を食らったわけでもない。むしろ直撃は受けていない。にもかかわらず、呼吸が苦しくなってきていた。鍛えた肺により、辛うじて生きる上での最低限の呼吸は出来る。しかし、鬼殺隊として生命線である全集中が出来ないことが途轍もなく大きい。

未だ立ち上がれずにいるカナエ。

 

「あれ〜?もしかして、もう終わりなのかな?もう少し楽しめると思って期待してたのに。」

 

「まだ…よ!」

 

相手は上弦の弐。

単身で勝てる見込みはほぼ無いに等しいことはわかっていた。

だがそれでもカナエは諦めない。

大切な家族が、帰りを待っているのだ。

 

「へぇ?」

 

「帰るべき場所が…!妹達が…!私を待ってるの!ここで…死ねない!」

 

「わぁ!妹がいるんだね!

そうだ!君を食べても寂しくならないように、妹達も後で食べてあげよう!そうすればずっと一緒に居られるからね!そうだ、そうしよう!名案だと思わないかい?」

 

今何と言った?

妹達を食べる?

しのぶを?

カナヲを?

アオイを?

食べると言ったか?

自分のみならず、家族にも手を伸ばすと?

 

「させるものですか…!私の家族に!指一本でも触れさせない!」

 

肺がどうなろうと知ったことか!

刺し違えてでも、コイツはここで頸を斬る!

しのぶに死ぬほど怒られるだろうが、死んでもコイツだけは!

心臓の鼓動が早くなる。

身体が燃えるように熱くなる。

怒りが、家族への思いが、カナエを限界以上に奮い立たせる。

 

「いい!実にいいよ!さぁ!もっともっと俺に君の全力を見せてくれ!それを俺は全身全霊で受け止めてあげるよ!」

 

「花の呼吸 伍の型 徒の芍薬」

 

距離を詰める。

だが今までの踏み込みの速度。それを塗り替えるほどのものだった。火事場の力なのか否か、それを冷静に分析する余裕など、カナエに有りはしなかった。

一意専心

ただ目の前の鬼の頸を断つ。

その思いとともに、神速の九連撃が童磨に降り注ぐ。

 

「血鬼術 枯園垂り」

 

童磨の持つ鉄扇。その軌道から生まれる氷の斬撃でカナエの連撃を捌いていく。

しかし…

 

「へぇ…?」

 

今までカナエから受けてきた斬撃を元に、彼女の速度に合わせての捌きだった。

だが、斬撃の何発かは童磨の枯園垂りの防御が間に合わず、彼の肩や脇腹を切り裂く。

 

「底力ってやつなのかな?さっきよりも速いね!」

 

「花の呼吸 肆ノ型 紅花衣」

 

徒の芍薬の振り抜けをそのままに、身体のねじれを次の型に繋げていく。その身体の回転を斬撃に乗せ、まるで流れるような斬撃が放たれる。

その一撃は、鉄扇を持つ童磨の右腕を肘から泣き別れにした。

 

「おおっ!」

 

負傷にも関わらず、苦悶の声も、表情もない。ただただ歓喜の声を上げ、顔からは笑みを絶やさない。

 

「花の呼吸 参の型 乱れ雪月花」

 

右の防御がなくなったことで好機と踏む。

高速の切り下ろし、そして切り上げ。まるで剣豪が用いた燕返しの如き連撃が、童磨の肩から切り込み、そして腹部から頭頂部へと切り抜ける。

 

「あれ?ややもすれば負けちゃうの?」

 

「はぁっ!!」

 

切り抜けた刃を返し、三撃目の切り抜けを放つ。

狙うは頸だ。

この渾身の一撃で仕留める。

その軌道は寸分違わず、童磨の頸へと引き寄せられていく。

切り落とす!

ただその一心でカナエは、その刃を振り抜いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「残念だけど、

 

特別な時間はこれでおしまいだ。」

 

パキン

 

そんな乾いた音が響いた。

 

「流石に今のは、ちょっとだけ俺もやられるかと思ったよ!いやぁ、ほんとに残念!惜しかったね!」

 

振り上げられた左手。

その手に持つ鉄扇。

それが首を狙っていたカナエの日輪刀。その刀身を叩き折ったのだ。

 

終わった。

終わってしまった。

 

「でもよくやったね!えらいよ!その君の頑張りに敬意を評して、必ず君の妹達を食べてあげると約束するよ!」

 

もはや戦う力は残されていない。

ボロボロの肺を酷使し、無我夢中となることで堪えていた痛みが、まるで鉄砲水の如くカナエの体に襲いかかった。

手足を限界以上に振るったことで、全身の筋肉と骨が悲鳴を上げている。

加えて折れた日輪刀。

 

(ごめんなさい…しのぶ。カナヲを、よろしくね。)

 

「じゃ、いただきま〜…。」

 

座り込むカナエに伸びる童磨の手。

しかし、

 

「閃の呼吸 参ノ型 業炎撃」

 

「なんと!?」

 

延ばした左手…否、左腕全てが一刀のもとに斬り飛ばされた。

新手に童磨は背後へと飛び、カナエから距離を取る。

 

「無事ですか?カナエさん!」

 

「凜…ちゃん………?」

 

妹とは行かずとも、妹に等しい少女が、自身を助け来てくれたこと。それがカナエにとって信じ難い事だった。

 

「どうして…?」

 

「任務の帰りです。異様な気配に釣られてみればここに。」

 

口からおびただしい量の血を吐くカナエ。

彼女の実力は確かなものだ。

その彼女を追い詰める鬼とは。

 

「柱をここまで…。上弦は、伊達じゃないか。」

 

「へぇ!また新しい女の子だ!今日は吉日だね!」

 

童磨に至っては、新手が現れたことに驚異を感じるどころか、餌が増えたかのように歓喜している。その異常性に凜の頬に冷や汗が走る。

 

「逃げ…て、凜ちゃん……!相手は…上弦…!」

 

「上弦だからと死ぬのが嫌で逃げたら、次は委員長に殺されます。そんなのゴメンですから。」

 

「ん〜?鬼ごっこでもいいんだけどね?まぁいいや。次は君が俺と戦ってくれるのかい?」

 

「もちろん。さぁ、始めようか?」

 

「へぇ?」

 

不敵な笑みを浮かべる凛に興味が湧いたのか。

目を細めながら両腕を再生させ、鉄扇を手元に戻す。

 

「楽しませてもらえそうだ…!」

 

カナエとはまた違う強さと気配に、童磨は冷気をまとう。

初めて見せた童磨の構え。

即ち、凜を獲物として認識したということ。

 

「全集中…!」

 

対し凜も、一息に全身の細胞を活性化させ、刀を下段に構える。

自身の、前世から変わらぬ八葉一刀流の構え。観の眼で神経を研ぎ澄ませ、童磨の一挙手一投足を見逃さない。

 

「閃の呼吸 暁葉凜!参る!」

 

今までの鬼とは違う、鬼の最上位に至る存在との戦い。

前世の達人の域に至る面々と同等に近しいと思われる上弦の弐である童磨。

そんな奴との火蓋は、互いの踏み込みで切って落とされた。




花の呼吸 参ノ型 乱れ雪月花
元ネタは言わずもがな、某ロマンでシングなゲームからです。
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