閃の刃は大正の世を切り拓く   作:ロシアよ永遠に

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凛の口調がどんどん女の子っぽく成ってきている理由としては、

・千代の教育の賜物

・女性としての精神に、リィンとしての精神が染まってきている

という物になります。


第5話『鬼狩り』

「ヒャッハー!!」

 

「新鮮な肉だァ!」

 

(藤の花の)長いトンネルを抜けると世紀末であった。

人外化した肌の色に、鋭く尖った犬歯と爪、見るからにイってしまっている目。

これが鬼だった。

 

「しかも女だァ!女は俺が頂くぜェ!若ェ女の肉は柔らかくて旨ぇんだ!」

 

「ちっ…!じゃぁ俺はお面の奴2人を貰うぜ…文句はねぇな?」

 

「何を私達が食われる前提で話してるんだか。」

 

「全くだ。」

 

既に勝ちの未来しか見ていない鬼2人に、凛は思わず溜息を零す。

彼女が想像していた鬼は、前世では暴走した自身のように、禍々しく、そして殺気立ったものだったのだが、目の前の鬼は、餌を目の前にしたケダモノのようだった。

 

「女ァ!俺様がペロリと頂いちまうぜェ!」

 

「全集中 閃の呼吸 伍ノ型 残月」

 

飛びかかってきた鬼を半身ずらして避けながら、腰撓めに構えた刀を一閃して抜き放つ。

ザン…と言う斬り裂かれる音と共に、地を転がっていく鬼の頭部と胴体。何が起きたのか、首を切られた事実しかわからないままで、女好き(仮定)の鬼はまるで灰のように粉々になって消え失せた。

 

「全集中 水の呼吸 壱ノ型 水面斬り」

 

もう片方の鬼も、義勇の一閃によって敢えなく灰と化した。

実に危なげなく、そして余裕の勝利。

 

「…やるな。」

 

「そっちこそ。見事な一閃だね。」

 

「…俺の出る幕はなかったか。」

 

男らしさを求める錆兎は、自分こそ最前線に立たねばと思う矢先、女子と弟弟子に先を越されてしまったことに少々苦笑いを浮かべる。

 

「だが、存外何とかなる。これぐらいの鬼ばかりなのか?」

 

「いや…油断はしない方がいい。」

 

すこしだけ心に余裕が生まれた義勇の言葉に、凛は釘を刺す。

さっきからぞわぞわと、この藤襲山に漂う空気に交じった異質なもの…それが凛に警笛を鳴らしている。

 

「何となく…何となくだけど……嫌な予感がするから2人とも、気を引き締めて行こう。油断なく、ね。」

 

「そう、だな。俺達は初めて鬼と戦うんだ。努々油断しちゃならない。」

 

特に労せずして鬼を討てた事による慢心を取り除き、今一度気を引き締める3人。

いつ、何処から襲われるのかわからない。その時間が一週間も続く。

その恐怖心が、3人の神経を研ぎ澄ませていく。

 

「凛、義勇。1つ考えがある。」

 

「………?」

 

「ここは3手に別れ、各々で鬼を討伐しながら、他の参加者を援護する、と言うのはどうだろうか?」

 

錆兎はいう。

3人だけで固まっているよりも、より多くの参加者を助けることで、互いを援護し、より大人数の生存性を高める、と言うものだ。

 

「でもそれだと、一人一人の危険も上がるんじゃ…。」

 

「怖いのか?」

 

ここで義勇である。

 

「怖いのなら、下がっていろ。」

 

「(ブチッ)怖いわけ…ない!」

 

煽りと受け取った凛は、声高らかに義勇の言葉を突っぱねる。

ちなみに…

義勇としては『戦えないなら下がっていろ。死なないことが大前提だ。』と思っていたのだが、案の定である。

 

「それだけの大声が出せるなら問題ないな。」

 

「問題ないもなにも、元からそんなものない!」

 

「ムフフ…。」

 

義勇が何やらニヤけている。

凛の気迫が頼もしいとでも思っているのだろうが、見る側からしてみれば、正直ドン引きの笑い方である。

 

「では…一週間後にここで会おう!」

 

錆兎の声を皮切りに、3人は散開する。

そうだ、ここで戦っているのは、将来共に戦う(ともがら)なのだ。彼らを助けずしてどうするのか。

怖いはずなのに、自身らの生存性を高めるよりも、他の隊員候補を助けることを考え付く錆兎の勇気には、熟々尊敬するべき物だ。

彼のような人間が、きっと鬼殺隊の団結力を高めていくのだろう。

 

「じゃ……錆兎の期待に応えないと、ね!」

 

早速目の前に鬼が居た。見るに、候補者が一人襲われている。腰が抜けたのか、木の幹を背にして座り込み、威嚇のつもりなのか日輪刀を鬼に対して突き出している。

このままでは彼の身がどうなるのかは、火を見るより明らかだ。

だが距離がある。

鬼が振り下ろさんとしている腕が、彼を引き裂くまでに間合いを詰めることは叶わない。

ならば…!

 

「全集中 閃の呼吸 陸ノ型 緋空斬!」

 

鞘から神速の抜刀と同時に、生まれた斬波を横一線に飛ばす。

抜き放たれたその真空の刃は、一直線に鬼に迫り、その頸を両断する。

 

「ほへ?」

 

間の抜けた声がした。

今自分は追い詰めた獲物を前にしていた。

最後の威嚇とばかりに刀を突き付けていて、そんな小動物のような奴を絶命させんとしていた。

そんな矢先、自身の視界が宙を舞った。

否、

頸が宙を舞った。

それを理解したのは、目の前に紺の袴を靡かせて迫る、剣鬼の姿。

鬼が最期に目にしたのは、その光景だった。

 

「斬ッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ふぅ。」

 

間一髪。

距離をとった状態で攻撃出来る緋空斬が無ければ間に合わなかった。

しかも、日輪刀を直接敵に当てることが出来ないので、緋空斬で鬼の頸を切っても、奴らに対して致命傷を与えることが出来ない。精々出来て牽制程度だろう。

チン…と鍔と鞘口とが奏でる音を鳴らしながら、凛は型の扱いを改めて考え直す。

実戦だからこそ、型の有り様を考察できる。またとない貴重な機会だ。

ともあれ、

咄嗟の緋空斬で助けられた命があるのもまた事実。

 

「その…大丈夫ですか?」

 

腰を抜かした隊員候補に、凛はそっと手を差し伸べる。

一瞬、何が起こったのかわからないのか、彼はポカンと凛を見詰める。

何せ先程まで死が目の前に迫ってきていたのだから、こうなるのも致し方ないだろう。

 

「えっと…。」

 

「あ、あぁ!大丈夫!大丈夫だとも!」

 

凛の手を取ることもなく、機敏な動きで立ち上がる少年。どうやら抜けていた腰も問題ないらしい。

 

「そう。怪我とかはない?」

 

「大丈夫!ちょっとビックリして、腰を抜かしてただけさ。もうこんな醜態をさらしはしない。」

 

さっきまでマジビビりだったにも拘わらず、随分と頼もしい言葉が出て来るものだと凛は思いながらも、腰の抜けたままでないだけマシかと一先ず安堵する。

 

「大丈夫なら良いよ。じゃ、私は行くから…お互い一週間、頑張って生き残ろう。」

 

そう言い残して去って行く凛。

風のように鬼を斬り、そして風のように去って行く。

そんな姿は彼の目には何処までも焼き付いていた。

 

「…可憐だ。」

 

そんな言葉を掻き消すかのように、彼の黒くさらさらとしたキューティクルヘアを風が撫でていた。




最後の彼…一体何田さんなんだ…
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