プロローグ 紅の彗星 作:龍夢
一話 風との出会い
「う、う〜ん…」
少年は波音で目を覚ます。
仰向け状態なのか、なんだか背中が熱い。
重たい瞼を開けると其処は砂浜と海、そして透き通る青空が見える。
カサカサと音がする方に目を向けると、銀色のカニが少年の横を通り過ぎる。
体を起こし、瞼を擦りながら少しぼーっとしていたが直ぐに現実に向き合う。
「何処、此処?」
疑問という名の本音を漏らす。普通の人でも見知らぬ場所にいればそう本音を漏らすだろう。
(あれ、なんでこうなったんだっけ?!)
少年は思考をフル回転し、状況を整理しようとポケットからメモ帳を取り出したその時…。
ぽよん ぽよん ぽよよん
「へ?」
音がした方に振り向くと空色で小さな羽が生えている可愛らしい生き物?がこちらに向かってきている。小さい生き物が二匹、ひとまわり大きい生き物が一匹。親子見たいだなーと呑気に癒されながら、少年は立ち上がり一歩ずつ前へ向かう。
(りん族にしては全然違う…ん?)
微かに殺意を感じる…思考回路フル活動している脳に一つの予想が浮かび上がる。少年は冷や汗をかき、回れ右からの背を後ろに向けダッシュ!
「襲ってきてるじゃん!!!」
その言葉を境にりん族に似た様なモンスター達は少年に向かってタックル攻撃してきた。
「うおおおおっ!」
なんとかギリギリ回避したが、ひとまわり大きいモンスターはふわふわと宙に浮かび「ぽん!」と風弾を吐き出した。
「あぶな!」
当たりそうなギリギリのところでジャンプ回避し、バック宙着地。
(やるしかないか…!)
少年は愛剣【深淵の剣】を召喚し、瞬間移動をしながらモンスターを倒していく。
「それそれ!」
ぷしゅーーー!
親子もどきモンスターは風船の空気が抜ける様な音を出して、「ぽん!」と消えた。
手こずると思ったが簡単に倒せてしまった。
少年は剣をしまい、深呼吸をしながら一息つく。
「なんだったんだ…ん、何これ?」
親子もどきモンスターが落としたのか、コイン五枚とゼリー状の液体が落ちていた。
少年はポケットからスマホを取り出し、【鑑定】のアプリを起動した。コインと液体を画面に写すと情報が直ぐに出てきた。
【モラ】
テイワットの世界共通のお金。モラというのは[触媒]を意味する。
【スライムの液体】
スライムの表面にある液体、この世界では錬金術素材に使われる。皮膚が弱い人は腫れることがあるので扱いには注意が必要。
「へぇ〜、あれスライムなんだ…てか今更だけど、完全に別世界じゃん。」
あの神の襲撃からの時間は経っているのかはわからないが、記憶は鮮明に覚えている。
うん、落ちたな、空から。
「はぁぁぁぁぁ…運が悪すぎる…。」
少年はふっかーーーーーーい溜息をついた。
パニックにならないのは似た様なことを経験したことがあるからである。
彼は勘と幸運がとても強いが、これは完全に貧乏くじを引いてしまった。
しかも、スマホの機能の一つ【通信】関連のものが起動できないのだ。他の機能とアプリは使えるので【故郷】への連絡ができないのを除けば、
あらかた支障はない…はず。
少年はまた深呼吸をした後、気を取り直し
あたりを見る。
疲れているのか少年は(なんだか飛んだほうが早い様な…)と思い始めた。
「とりあえず飛ぶか…」
そう呟き指を鳴らす…が
パチン!
「………あれ?」
何度も指を「パチン、パチン!」と鳴らしたが羽が出てこない。いつもなら背中に飛行が出来る羽が出てくるはず。
いや、まさか…
少年の顔は真っ青。
その後、彼の嫌な予感は的中してしまうのである。
☆★☆★☆★☆★
「【後継者の力】を封印されちゃうんなんて…あの神様、何者だよ…。」
まさかの力を封印されてしまったのである。
不幸中の幸い、五属性・回復・補助・弱体魔法、必殺技は使えるが【後継者の力】を封じられてしまったのだ。因みだが色々試した後、少年は大声で「うっそでしょーーーーーー!」叫んだ。
もう一度言う、大声で叫んだ。
現在はとりあえず、とぼとぼと森の中を歩いている。
自然豊かな森の中なのか、動物や野菜、果物、山菜が沢山あるので見つけ次第、拾ったり狩ったりしている。
食料とかは問題ないが情報が欲しい。
この世界独特の建造物があればアプリの【世界分析】と【地形分析】か出来るのだが…見渡す限り木、木、木、そして木。
「野宿セットはあるから夜は大丈夫…でもやっぱり情報が欲しい…!」
すると、「風神!」という叫び声が聞こえた。
道から外れた方からだ。しかし、なんだか邪気の様な気配がする。先程のスライムとはまた別の気配だ。
(もしかしたら、だれか戦っている?)
少年はそう考え、叫び声のする方向へ向かった。
★☆★☆★
少年はとりあえず気配を消してから木の影に隠れ、様子を見ている。
叫び声がする方は道が開けており、なんだか民族集落の様なものがあった。
そんな中、複数のゴブリンの様な敵と戦っている金髪の少年とふわふわ浮いている女の子がいる。
少年は見かけによらず、素早い剣裁きと木属性の様な魔法を駆使して敵を倒していく。
女の子に関してはただ敵の攻撃を回避しているだけだか…。
最後の一匹を倒した金髪の少年は剣をしまい、手帳の様なものを出し依頼完了チェックをしている。
「依頼完了だな、空!」
「うん。ひとまずこの辺りの討伐依頼は片付いたから、キャサリンに報告…ん?」
「…?誰だ、あいつ?」
二人は黒髪の少年がこちらに来ているのを気づいた。モンドとはまた違う服を着ており、何処か不思議な雰囲気を漂わせる。
空は心の中で何処か自分と似た様な感じがした。
それはこの世界に漂流したあの時の様な…。
★☆★☆★☆
「突然ごめん、君たちってこのあたりに住んでいる人?」
「いや、正確には違うが…お前、もしかして【旅人】か?」
「あ、えっと…そ、そんなところ。道に迷っちゃって…此処はどこなのかさっぱりなんだ。」
黒髪の少年はエヘヘ…と困り顔をして笑って誤魔化す。空は別の大陸から来た人かな?と、考えていたがパイモンは若干怪しんでいる…
「んー…お前、旅人なのに方向音痴なのか?」
「え?」
「こら、パイモン!ごめん、この子が失礼なこと言って。」
「だ、大丈夫…ちょっと混乱してて…。」
とりあえず言葉は通じていることがわかった。
なんだろう…この金髪の少年、何かが欠けている様な…。
少し考え事をしている途中、パイモンは黒髪の少年に質問する。
「お前、どこから来たんだ?」
「グランフェリアって言う所からなんだけど…」
「ぐらんふぇりあ?空、聞いたことあるか?」
「いや、初めて聞いた。」
空は首を横に振る。
「じゃあ此処はなんて言うところ?」
「此処は【自由の都 モンド】さ!」
(自由の都…モンド…初めて聞いた。)
数多の世界を旅してきたが、まだごく一部なんだなと改めて痛感した。
「そういえば空、依頼はひとまず終わったけど
未だヒルチャールの集落は残っているんだよな?」
「うん、あの道の奥にある。」
空は頷き、彼が指さした所は先程の気配と同じ様な感じがする。
「でも、この人を放って置けないよ。」
「だよなぁ…。」
「とりあえず、ヒルチャールの集落を片付けてからこの人を城内に案内しよう。」
「あ、君達についていく感じかな?」
「おう!戦闘はこいつに任して置け!」
「ありがとう…あ、僕の名前は【翔夢】って言うんだ。」
「ショウム?変わった名前だな」
「そっちは?」
「俺は空、こっちは非常食のパイモン。」
「ひ、非常食?」
「全然違う!!オイラは空の相棒だ!」
「そうだっけ?」
「おい!」
「ふふっ、君たちって仲良しだね。」
【翔夢】は先程の疲れが少し和らいだ様な気がした。ひとまず自己紹介を軽ーく済ませた翔夢は、空とパイモンについていくことになった。
★☆★☆★
「あれだな。」
パイモンは6、7人位いるヒルチャールの方に指を刺した。なんだか不思議な踊りをしている。見た感じ、お互いの意思疎通はあるらしい。
「ショウムは此処で待ってて。」
「う、うん。」
(あ、そういえば戦えるって言って無いや)
今更そのことを思い出したが、空はもうヒルチャール達と戦っていた。てか、パイモンちゃんいないし。
「たあぁっ!」
「「agtdmtg!」」
「おぉー…」
思わず小さく声をあげてしまう。
空は木属性とはまた違う魔法を放ち、素早い剣裁きで、少しずつヒルチャールを倒していく。
凄いなぁと見ていたら、1匹のヒルチャールと目が合ってしまう。
「YA!!」
「あ」
やば。
ヒルチャールは敵意を丸出しにし、こちらに向かってきた。
パイモンと空はそれに気づいて焦る。
「あ、まずいぞ!」
「ショウム、逃げて!」
空は翔夢の所に駆け込むが未だ倒れていない
ヒルチャールに足止めされてしまう。
ヒルチャールは翔夢に向かって棍棒で攻撃してくる!
ガギン!
「wy?!」
「「え?!」」
ヒルチャールもだが、空とパイモンは驚いた。
翔夢の右手にはいつの間にか黒い剣があり、ヒルチャールの棍棒攻撃を防御していた。
「それっ!」
「jugjm?!」
「遅い!」
翔夢はヒルチャールを吹っ飛ばし、瞬間移動と
ラッシュ攻撃。素早い動きでヒルチャール達はアワアワとしている者もいれば、逃げ出す者もいる。
最終的に逃走しようとしたヒルチャール達は
翔夢によって薙ぎ倒された。
翔夢が剣をしまった後、空とパイモンが駆けつける。
「凄いよ、ショウム!」
「てゆうかお前、戦えたのか?!」
「ごめんごめん、言い忘れてたよ。」
「全く…早く言ってくれれば、ヒルチャール達を
もっと早く片付けられたのに!」
「ちょっとパイモン…」
「パイモンちゃん、さらっと僕をパシリしようとしてたの?」
二人は軽く呆れていたその時「パチパチ」と拍手する音が聞こえた。
音がする方に振り向くと、なんだかミステリアスな雰囲気を感じる男性がゆっくり歩みながらこちらに向かってくる。
男性は右目に眼帯を着けており、服は紺色と白、空色を主とした服を着ている。
「これは見事。」
「あれ?【ガイア】。」
「なんで此処にいるんだ?」
(…誰?)
ガイアと呼ばれた男性は翔夢に近づく。
「栄誉騎士と渡り合える力を持つとは、何者だ?」
「え、えっと…」
「おい、ガイア!近い!」
「ガイア、ちゃんと話すからとりあえず離れて!」
空とパイモンがガイアに色々と説明している間、
翔夢はぼーっと三人を眺めている。
なんかめんどくさそう…翔夢は薄らとそう感じた。
どうも、一話です。
翔夢くんの背丈は空くんより高くて、ガイアとは15センチぐらい下あたりです。
イメージイラストは私めのTwitterに載っています、ドチャクソ下手アンドアナログで汚いけどご興味があれば。(マイTwitter @kokobanasan2)フォローも大歓迎!
読んでくれてあざました!