インフィニット・ストラトス―IB―   作:アメリカ兎

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終幕

 ――夜のIS学園。いつものように学園の復興作業を終えて生徒達は寮へと戻ってきた。

 織斑一夏は一人、部屋に戻る。

 篠ノ之箒も、凰鈴音も自室へ。

 シャルロット・デュノアとラウラ・ボーデヴィッヒも同じ部屋へ。

 そして。

 セシリア・オルコットは一人、部屋へと戻ってくる。

 窓際、天蓋付きのベッド。壁紙も照明も何もかも自分に合わせた部屋は無人で迎え入れてくれた。

 ベッドへ倒れこみ、そのまま深く息を吐く。

「まったく、もう。いつになったら帰ってきますの……?」

 荷物の片付けの話もチラホラと出ている。だがセシリアはそれを断固拒否した。一夏達も背中を押してくれている。

 それも、自分たちが進学するまでのことだ。

「戻ってくると言っておきながらもう、もう!」

 ばふばふと枕を叩きながらセシリアは八つ当たりしていた。

「そうですわ。今日は公式生放送配信の日……」

 お気に入りの動画サイトで見つけ、今では毎週欠かさず見ている。見逃すわけにはいかないセシリアは急いでシャワールームでその日の疲れを洗い落とした。

 どれほど焦っていても、時間が迫っていても身だしなみには一切の手は抜かない。それこそが貴族の立ち振る舞い、淑女の務めだ。

 準備は万端。パソコンを点けて紅茶を淹れて画面と睨めっこする。

「……あら?」

 一通の通知アイコン。メールの着信に気づき、クリック。

 どうせ企業からの通達か何かだろうと思って読んだら放置しようかと思っていた。

『差出人:ルナリア・ポードレット』

『件名:寒いから開けてー』

『本文:遅くなってごめんなさい』

「ルナリア、さん? 日付は……?」

 受信漏れだろうと思って再度更新ボタンを押す。最新の着信から降順に並べ替えられた。

 その一番上へ一通のメールはあった。

 カーテンを開けても、ベランダには誰もいない。鍵を開けて冷たい夜風を入れても待ち人は来なかった。

 それもそうだ。IS学園の警備システムは低下しているとは言っても侵入者がいれば問題なく反応する。そもそもこんな時間に鳴らない事の方がおかしいのだ。

 セシリアは肩を落として夜空を眺める。そうしているとまたメールの着信音。今度は誰かと思い、再びパソコンへ。

『差出人:ルナリア・ポードレット』

『件名:通れない』

『本文:ちょっとだけ部屋で待ってて』

「私が邪魔でしたの?」

 バサリ――外套を広げる音と共に。

 その少女は帰ってきた。ISを解除すると、右目を閉ざして髪はクシャクシャに伸ばしたまま体を震わせて入ってくる。しっかり戸締りしてひと呼吸。

「……もう。遅すぎですわ。約束したのならいつまでに戻ってくると明確にしてくださいませ」

 うんうんと頷きながら話を聞いている。

「でも――おかえりなさい、ルナリアさん。相変わらず身だしなみは無頓着ですのね? これからみっちり叩き込んで差し上げますわ」

 胸の喜びで一杯だったが、それではしたない女と思われるのは頂けない。

 優雅に、かついつもの抑揚を崩さずセシリアは微笑んだ。

「…………」

 それに、ルナリアは片手を挙げて答えようとして――止まる。

「……? なんですの、手招きして?」

 耳を寄せてセシリアの耳に投げられたのは……

 おかえりに答える言葉。

 か細くて、消え入りそうな小さな声で――

 

 ルナリアは、そっと囁いた。

 誰にも届かなかった声を、聴かせるために。

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