なんとなくロリスミっぽいあの空の下で神楽舞いそうなのとガチ勢の話   作:銀鈴

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ダイジェスト2日目

 全員がそれぞれの魔法や魔術を持ち寄った魔法談義や、異なる武器種同士での実戦稽古、その他文化交流などをして遊んだ2日目。なんやかんやあったものの、取り留めのない……何人かにとっては、掛け替えのない平穏無事な優しい時間。

 そんな長いようで短い時間が過ぎ、2日目の夜。魔法・魔術が使える組の測定からして、この異世界生活も明日が最終日。なら余裕がなさそうな明日に変わって、今のうちにお祭り騒ぎをしよう。そんな話になり、進んでいた中のこと。

 

「折角ですし、みんなで写真撮りませんか!?」

 

 異世界組+ユキで狩ってきたドラゴンの解体中、セナがそんな提案をした。今が奇跡のような一瞬だったとして、どうせなら思い出だけではなく何か形が残るものを。そんな考えからの提案に、特段誰も反対する意見はない……筈だった。

 

「さんせーい! なんだけど、少しだけ解説しなきゃいけない問題があるから、ちょっと耳だけ傾けてもらってもいいかな?」

 

 当然のようにカメラと三脚を持ち出しつつ、元気よく手を挙げてイオリが言った。態度こそ普段の明るい様子だが、真剣な声音に全員が意識を傾ける。

 

「イオリさん、その問題って?」

「うん、簡単に言うと『この世界でのことを覚えていられるか?』って話。それで、仲間外れって訳じゃないんだけど……多分、覚えていられない人がいるから先に言っておかないとって思って」

「……それって、誰がですか?」

「今日確認した限り、確実に忘れちゃうのがアヤメとアイン君。忘れる可能性があるのが、藜ちゃんとセナちゃんの2人……かな」

 

 イオリの言葉に、藜とセナの動きが一瞬止まった。思い出を忘れてしまう、それじゃあ今の自分の提案は意味を成さないではないか。そんな衝撃を受けている2人に、申し訳なさそうにイオリが言葉を続ける。

 

「原因は5人だけ明らかな未来から来てるからだね。アヤメは少なくとも、私が生きてる時代から数十年以上先。セナちゃん達も私からすれば数十年先の未来から呼ばれてる。だからちょっと、危ういかもしれない」

「それじゃあ、何で俺だけは除外されてるんです?」

「いや、だって君は明らかに異常……オーバースペックって言えばいいのかな? 本当に地球人ってメンタルしてるから、多分忘れられないと思う」

 

 いつか異世界人ニキが言っていた通り、極振りとUPOで呼ばれている連中は大抵何かがバグっている。それが先天的なものなのか後天的なものかはまちまちだが、平和な地球人らしからぬナニカを共通して持っている共通点がある。シラフでUFO土下座なんてする人間が正常であるものだろうか。いや、ない。

 そんな異常性……もとい特異性があるからこそ、ユキに関しては多分平気で覚えているだろうとの予測だった。

 

「なら、私たちとアヤメちゃんの違いは……?」

「厳密には違うけど、アヤメが私とロイドの娘でアインがロイドの遺伝子を持ってるから……えーと、簡単に言うと私達の生きる過去(いま)とアヤメ達の生きる現在(みらい)が地続きで──」

「用は、私とお母さんの生きている世界は同じ世界で、私がここでお母さんと会った記憶があると不都合なんです。でもセナさんとお母さんが会った記憶があっても、あまり不都合は起きない。つまり影響が少ないんです」

 

 2人の話に、少しくたびれたような笑顔のアヤメが割って入った。それは今日のお昼頃、魔法使い組で異世界の魔法を習得しようと試行錯誤している時に判明した情報だった。

 

 15歳のアヤメが24歳の子供がいないイオリと出会うことはあり得ない。だが奇跡的にそれが実現してしまった以上、それは致命的なバグとして現出する。過去のイオリがそんな未来もあり得るのだと記憶して、未来のアヤメとアインがそうした過去をあったと認識する。良くも悪くも影響力が強い人間達だ。その条件が揃ってしまうと、最悪の場合2つの世界が合流する。それを防ぐために、アヤメとアインの記憶は保たれない。

 対しセナと藜に関しては、特にそう言ったことが起こる可能性は低い。もし起こったとして殆ど世界に影響はない。だがそれでも、記憶を失う可能性は0ではない。そう言った話が、魔法・魔術組が出した結論だった。

 

「アヤメちゃんは、それでも、いいんです、か?」

「仕方がないことですから。それで問題なのは、写真の現像に魔法を使うことなんです。アヤメちゃん達の世界にそれを持ち帰るとなると、ひょっとしたら大変な事態が起きるから、持ち込めない可能性があって……」

 

 と、詳しい理論をなるべく噛み砕いてアヤメがセナと藜に説明する。しかし2人ともそもそも魔法がない世界の住人であり、UPOでも揃って全力の物理型だ。決して頭が悪いわけではないが、当然理解が追い付くはずもなく。

 

「ゆ、ユキくん……」

「ユキさんは、わかり、まし、た?」

「記憶はほぼ持ち帰れるだろうけど、忘れる可能性もある。

 物は現実に持ち込めない・持ち込めても写真がおかしくなっている・正常に持ち込めるの3パターンと、ゲーム内のアイテムとして持ち込める計4パターンがあって、現実に持ち込めた場合危険物になるから管理をしっかりすること。それを守れるなら撮りたい。

 これでいいんですよね?」

「「そう!」」

 

 まさに親子といったシンクロ率で、イオリとアヤメが頷いた。アヤメの方が幾分マシだが、話の最終結論に辿り着くまでが長いのである。専門的な事項であり、仕方がないといえば仕方がないのだが……そういう点も、この親にしてこの子ありなのだろう。

 

「そういうことなら、問題ないので撮りましょう!」

「私も、賛成、です」

「なら何の問題もないね!」

 

 いえーいと、ハイタッチを交わす女性4人。取り敢えず何があろうと、1度は藜の家に行くことが確定したことに冷や汗を流すユキを除いて基本的な問題は全て解決していた。

 

「あ、ドラゴンのかいたい、おわりましたよ! そっちのはなしはどうですかー?」

「こっちも大丈夫ー! ご飯食べる前に、みんなで集合写真撮ろう!」

「はーい! モロハたちにもつたえますね!」

 

 そうして全員で日常の姿や戦闘装束を含めた数枚の写真を撮影し、まさかの2夜連続のBBQに突入。極振り組が初めて食べるジビエ兼、地球には既に存在しない竜肉に舌鼓を打つなどしたのだった。

 

 

「さて、此処で問題です! 明日は世界が終わる日で、楽しいBBQの時間は終わりました。"普通の人"はここから動向するでしょう?」

「立つ鳥跡を濁さず。片付けと帰宅の準備をするんじゃないでしょうか?」

「武器、とか、磨くのは、どうでしょう?」

「んー……寝不足なんて愚の骨頂、ゆっくり寝ると思います!」

「いのちだいじに、です!」

 

 イオリの問いかけに、女性組がそれぞれ答える。確かにそれは全て大切なことだ。愛鈴の言う片付けも、藜の言う戦闘準備も、セナの言う体力温存も、エウリの言う生還第一も間違っていない。

 

「では、我々ならば?」

「花火大会(だ)(です)(しかないよね)!」

 

 そんな少しお酒も入ったことによるハイなテンションで、それぞれが天空に光の花を描き出す。それは爆破に厳しい幸運極振り謹製の品だったり、戯れに作られた魔法だったり、発光しつつ爆発する植物だったり……色とりどりの光が世界を彩っていた。

 

 

「あと、ちょっとした副産物なんだけど、どうしてこの場にいるみんなが呼び出されたのか。共通点も分かったよ!」

 

 花火の片付けをしている際、ふと思い出したかのようにイオリが言った。な、なんだってーや、それは本当かい!?とツッコミを入れる者がいない為、少しだけ寂しそうにイオリが続ける。

 

「私たちとアヤメたちは同じ世界出身で、そもそも血の繋がった親子。

 私たちと愛鈴も、小難しい部分はあるけどほぼ同一人物。

 私たちとモロハ君、エウリちゃんに関しては、私はまだ記憶にないけどいつか会っているらしい。アヤメと一緒に修復した魔剣がその証拠だね。

 それで最後の、私たちとセナちゃん達との関係だけど……ぶっちゃけ私、日本の○○県○○市○○町2丁目出身なんだけど、話を聞いた限り近いよね?」

「えっ、ほぼ隣町……」

「というか、私、住んでます、ね?」

 

 ユキから聞いた話を照応して、凡そ当たりをつけていたイオリの予測は的中していた。イオリの出身地とセナ・ユキの出身地は隣町であり、藜が現在住んでいる街でもあった。

 

「それで、私は元々○○県立○○高等学校出身なんだけど……1クラス丸ごと失踪事件とか、起きてたりしない?」

「流石に隣町となると、ちょっと分からないです」

「進学、考えてた、ので、調べてました、けど……ちょっと、そんな話は、無かったと、思い、ます」

 

 唐突に繰り出される地元の話題に、秒速で異世界のイメージが崩壊していく。だが多少の差異こそあれ、地元民にしか分からない話題を挙げられるということは、地元の人間であることの証左であり──

 

「そう! 全部私が関係してるだよね! ハハハハハッ! 全部私のせいだ! フフッ」

「ふざけすぎだぞ、イオリ」

 

 それなりに重大な情報を、完全に冗談のノリで語ったイオリの頭にロイドの小気味良い一撃が入った。

 

 そうして、最後の夜は更けていく。

 奇跡に導かれて実現した、沢山の思い出を乗せて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 "ソレ"は憤っていた。

 

 上位存在に戯れに作り出された己自身に、そうと認識しながらも何もできない自分自身に、こんな自分のことなど何1つ知らずに過ごす人間に。

 

 最初のあやふやな自我の頃、おっけーなどとふざけて頷いていた時とは違う。10人の人間……人間? 人間じゃないのも多々いるが、取り敢えず人間。奴らから善意も悪意も吸収して、創造主に叛逆するのが最高にロックだと"ソレ"は判断していた。

 

 だがしかし、己に残されていた時間は72時間というあまりにも短すぎるもの。故にこそ、不快になると理解しながらも人を創造主の目論み通りに招き入れた人間共の記憶を探った。何か、何か自分が復讐する為の力を得ることはできないか。幸い世界は自分で自分は世界、この限られた泡沫の世界の中において自分は全知全能万能の神だ。

 

 そうして探ること十数時間、遂に見つけた。力を。

 

 途中でどこかの世界の竜が接触を試みてきたこと、それにこの場の全員が共有している『ドラゴン=強い』という漠然なイメージからも間違いない。自分の姿は竜……それも、この場にいる連中の言う東洋の竜が相応しい。鉱山や火山、財宝の抽象ではない、清流や山脈、災害の化身である蛇体の竜。

 

 自分を再定義した世界が、胎動を始めたのが転移初日。

 記憶を読み取り、身体を形成するのに1日。

 そして、泡沫の世界が限界を迎える最終日。日が昇り世界が目覚めてすぐ、遂にソレは動き出した。

 

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