なんとなくロリスミっぽいあの空の下で神楽舞いそうなのとガチ勢の話   作:銀鈴

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Q.どんな竜?
A.サイズがラヴィエンテの色違いアマツ


終わりの日

『──……?』

 

 各々が持つ最大火力を誇る必殺撃。その全てをモロに受けて、世界の"核"は無傷だった。かなりの焦付きや多少の掠った様な傷はあるものの、全く痛痒になっていない。もっと正確に言うのであれば、アヤメの砲撃とモロハの斬撃以外、一切のダメージが与えられていなかった。

 それを目撃した時点で、絶賛爆散し血煙と化しているユキ除く全員の意識は一致した。『これはまともに戦ってはいけない相手だ』と。

 

「あちゃあ……アヤメのお陰で、小神くらいなら滅する火力はあったと思うんだけど。効いてないっぽい? ティアー!」

「情報が不足してる。所感でいい?」

「当然」

「多分、同格以上の神格か、直接の加護でもないと攻撃が通らない。その上で、世界を壊せる威力がないとダメージにはならない。かな?」

「となると、俺は援護に回った方が良さそうだな」

「かな。ロイドはそういう感じでお願い」

 

 キョトンとした様子で固まる世界の"核"たる竜を前に、のんびりと原因を探るアヤメとティア、そしてロイドのロリスミ組。そんな4人を尻目に、他の6人は迅速に動いていた。

 効果が薄かったと見るや、奥義の無茶な連発で震える手を庇いながらモロハは後退。エウリもそれに続く様にして、モロハの腕に回復をかけながら下がって行く。

 アヤメとアインも同様で、聖剣の起動は維持したまま固まっていると危ないと判断し箒に乗って上空へ。出方を見る体勢に移行する。

 一方その頃、ユキは全身が血煙と化し弾け飛んだ後に再生した衝撃を受け、ビクンビクンと陸揚げされたマグロの様に痙攣していた。その様は正に感度3000倍、ユキを介抱している2人以外には全くの需要がない地獄だった。

 

「うーん……よし、決めた。愛鈴、ティア、アヤメ、アイン! ちょっとこの竜に魔法掛けるから、抵抗抜くの手伝って!」

「はいはーい!」

「当然」

「了解!」

「認識した!」

 

 四者四様の返事が返ってきたのを確認する間も無く、イオリを中心に数百万を数える魔法陣が展開された。この場における最高の魔法使いとして、超越者の域に達している技巧を以って、世界自体を蝕まんとする呪が編まれていく。

 

『──ッ!』

 

 流石にそれは自身に危害が及ぶと判断して、"核"竜は動きを再開させた。自身が穿孔した次元の穴から顔だけを出しているチンアナゴ=スタイルから、全身を引き摺り出して行く。

 

「おおー、これはこれは。随分と綺麗なお姿で」

 

 イオリが感嘆しながら見上げる先、姿を現したのはこの泡沫世界そのものの様な竜だった。色彩を占領する色は青と緑。巌の様な鱗と甲殻を全身に纏い、そこから伸びる樹々によって羽衣のような、或いは霊峰の様な姿を誇っている。同時に空を浮かぶ原理として、その総身には海を思わせる青い水と、打ち寄せる波による白い飛沫が常に散り続けている。

 

『Grrr……』

 

 空へ浮かび上がった600mを超える巨体。陽の光を遮る世界の化身が、眼科の羽虫たちをその眼に捕らえた。肉体を得たせいか段々と竜の思考はボヤけているが、それでも目の前の羽虫が排除すべき敵だとはまだ覚えていた。

 よってまずはお返しといこう。そう思い核竜は、巨大な肺腑に大気を溜め込んでいく。そう、名前は知らないがあの黒い竜が使っていた技だ、アレを自分も使ってみたい。

 

「エウリ!」

「モロハこそ、あわせてくださいね!」

 

 あからさまな予備動作を見て、当然黙っていないのはモロハとエウリだ。モロハには黄泉帰りの代価にディラルヴォーラとの再戦が控えている以上、未だ完成には至らずともかの竜の全てにメタを張らなければならない。何せかつてと違い、神の小細工(チート)は生存最低限しか使用できないのだから。

 そんな2人の事情をおおよそ把握しながらも、やりたいという欲求に従い大気の吸引を核竜は完了させる。自身の頭部を覆い尽くす様に、遮音と吸音の魔術結界が展開されているが知ったことか。全力でぶちかませば、これを破れることは知っているのだ。

 

「それじゃあ破られるから、ちょっとお助けするね!」

「なら、私は最適化を」

『────ッ!!! ………?』

 

 発せられれば衝撃波で全種が破裂する爆咆哮は、モロハとエウリの混合魔術すら突破する筈だった。しかし片手間にイオリが行った術式強化とアヤメが片手間に行った術式最適化により、ディラルヴォーラ10体分はあろう咆哮は結界内に完全に閉じ込められた。

 そんな状態が珍しいのか楽しいのか、核竜は何度も何度も咆哮を繰り返す。しかし竜にとっては遊びでも、それは人にとっては災害そのもの。強化最適化が為されたはずの結界はミシミシと軋み悲鳴をあげ、今にも崩れそうな気配を漂わせている。

 

『Gru……』

 

 そして遂に、5度目の咆哮が終わると同時に結界は砕け散った。舞い散る光のかけらを残念そうに目で追いながら、核竜は頭を振った。楽しかったが、そうじゃない。これはロックじゃない。もっとボルテージをあげていかねば、と。

 邪魔な奴らを全員散らす。そのためには範囲攻撃が有効だと、全員の記憶は一致していた。であれば自分が今撃つことのできる最大範囲の攻撃、それを撃てば目の前の鬱陶しい連中は消えてくれるはずだ。核竜がそんな判断の元動き出す直前──

 

「よし治った! まだ1乙……だけど、不味い気しかしない」

 

 抜刀術の反動で血煙→肉塊→退魔忍を経由して復活したユキが立ち上がった。目の前で思い人が爆発四散する光景を見たせいで、軽くセナと藜にトラウマが刻まれはしたが、まあそこまで問題はないだろう。

 それに、そんなことを言っていられない事情も迫っていた。核竜の周囲、無数に出現した岩や氷、水、風、雷、炎に光といった、色とりどりの欠片たち。欠片と言ってもユキを3人縦に並べてなお飲み込むサイズの物体が、正にこちらに向けて墜落を始めんとしていた。

 

「処理能力は……足りないか、致し方なし」

 

 核竜が楽しそうに笑っているのを見て、瞬時にことの趣旨をユキも把握する。コレの討伐は不可能だ。ならば、楽しんで満足してもらうしかないと。

 神とは本来、争うものではない。神は祀り、鎮めるものであり、拝跪し、畏れ、敬うもの。当然そんな物と相対すれば、自分だけではなく沙織や空、それどころか下手をすればこの場の全員が危険に晒される。故に、この世界に来てすぐ使わないと封じた力を一切の躊躇いなく解放した。

 

「変・身!!」

 

 序でに邪魔な両腕をホールドされている体制から逃げ出す為に、ユキは禁忌のワードを高らかに謳い上げる。眩く輝く白の閃光。自分を存在ごと書き換えられる激痛がユキに走り、生々しい肉と骨の変形する音を響かせる。

 しかし本来なら即座に正気を失う様なそれも、血煙爆散高速再生と感度3000倍を経験した後ならばなんのその。平気で耐え切って、ユキはしらゆきちゃんフォームへと進化した。

 

「魔法少女!?」

「爆破系美少女配信者らしいです! あとコレは(おれ)が引き受けます!」

 

 哀れユッキーは、黄泉帰りの際に異世界の電波を受信してしまっていた。イオリの声だけでなく受信した電波に、こうなりゃ自棄だとタロットスキルのバフも合わせ、ユキは完全なるフル装備と己のフルスペックまで跳ね上げる。

 そうして顕現するは爆破の天使。真っ白な脚を絡みつく呪いの黒腕に絡め取られ、自分の中にある大切な何かが擦り減るのを自認しつつ、天使の白翼を広げたユキがその両手に大筒と対物狙撃銃(あくまで杖)を核竜に向けて構えた。さらに展開する簡易ポーチとアイテム射出装置、それは紛うことなきフルバーストの体勢だった。

 

「セナと藜さんは(おれ)の後ろに、万が一の時は取りこぼしをお願いします! 絶対にあの竜に攻撃しちゃ駄目ですからね!」

 

 2人が動けないことも把握しながら、時間が惜しいと要点だけを言って空間認識能力を限界を超えて解放した。瞬間、脳を蝕む激痛と噴き出す鼻血を代償に、数万を超える致命の隕石をロックオンする。

 

 瞬間ユキの行動を察知して核竜の視線がユキを射止め、世界が捻れ歪み塗り潰された。これまで過ごしてきた無人島が、一瞬にして塗り替わる。大地は海底へ、大気は水へ、空は光の届かぬ深海へ。ユキ達は行かなかったが、存在はしていた泡沫世界の深海がこの場に顕現し──

 

「天候征服【草原】【快晴】」

 

 しかし即座に、ユキが再度世界を塗り潰した。

 光の届かぬ静謐と圧力の空間で溢れる深海から、快晴の天空と穏やかな風が吹き抜ける草原へ。なんだか天使の輪っかが熱を持っている気がするが、一旦無視して地に足を着け瞬時にユキは流星群を再度ロックオン。その異常事態に、核竜はパチクリと目を瞬かせ、まあ面白いしいいかと隕石落下(メテオ・フォール)を敢行する。

 

「ちょせぇ、くはないですが。ザイルさんよりはショボいですね」

 

 対するユキも、両手の砲を正確に乱射しながら爆竹を射出する。至極冷静に解き放たれた鉄と火薬の暴威は、ユキが脳内で弾き出した緻密な計算の通り流星を砕き弾いて、紋章でその補助すら行い軌道をずらしていく。

 自分の火力では、自爆以外で星は砕けない。そう自覚しているからこそ、どうせなら面白おかしく身を守ろうとぶっ飛んだ考えをユキは実行していた。

 

「Jackpot」

 

 そうして僅か数秒で緻密な計算の流星がズラされて行き、最後の1つが弾かれた瞬間だった。ユキの仕掛けが動き出す。弾かれた最初の流星が隣の流星に激突する。激突された流星に、その流星が次の流星に、そして次の、次の次の次の次の次の次のと、この場の全員に当たる可能性が高い星を弾き続ける。

 結果として生まれたのは、星と星とがぶつかり砕け合う大連鎖。この場ににゃしいがいれば、75爆裂点を出すような炸裂する星の大瀑布(スターマイン)。致死の暴力は、逆転のオーロラが彩るメテオシャワーへと変貌していた。

 

『──!』

 

 これが堪らないのは核竜である。自身のはなった攻撃が、全て綺麗な花火に変えられたのだ。繰り返すが核竜は誕生したばかり、謂わば赤子のようなもの。そんな相手に輝くものを見せればどうなるか?

 

『GRrr!』

 

 当然、もっと見たいと繰り返す。

 今度の流星は数が倍。そして、その全てがユキに向けて照準されていた。当たり前のようにしくじれば、自分だけでなくセナや藜も死ぬことになる。復活できる自分はまだいいが、2人はどうなる。そう考えるだけで、ユキのリミッターは再び壊れて本体を動かし始めた。

 

「いいでしょう。オーダーはどうやら時間稼ぎ、それに(おれ)だけを狙ってくれるならやりやすい」

 

 鼻血を舐め取り、血涙を拭い、再度ユキの全火力が空へと向けられる。そうして全く同じ手順で流星雨を撃退しつつ、叫んだ。

 

「……こんな大味の攻撃で(おれ)を殺したいなら、あと10倍はもってこい!」

 

 来た。

 

「ぴえん」

 

 ユキは泣いた。

 

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