なんとなくロリスミっぽいあの空の下で神楽舞いそうなのとガチ勢の話   作:銀鈴

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ロリスミスと運命がなんとなく遭遇する話

 ー10名の人類種の侵入を確認ー

 ー共通情報領域にアクセス成功ー

 ー情報:蒐集開始ー

 ー情報:蒐集完了ー

 ーロケーション設定:無人島ー

 ー安全性設定:ナシよりのアリー

 ー世界性質設定開始ー

 ー人類種の生存:多分できるんじゃない?ー

 ー魔法資源の活用:ドンドンどうぞー

 ー化学資源の活用:使えるものならー

 ー言語設定:面倒くさいから共通ねー

 ー難易度:ベリーイージー、ところによりハードー

 ーオブジェクト配置開始ー

 ー仮想生命体の誕生開始ー

 ー侵入者の配置:完了ー

 ー世界設定:完了ー

 ー泡沫世界:開闢しますー

 

 

「さて、渡界(とかい)は無事に成功っと。ロイド、ティア、ちゃんといる?」

「少し頭を覗かれた気がするけど、まあ問題は無いと思う」

「問題なし。頭を覗かれたのも世界を構築する情報としてだから、マスターは心配する必要はない」

 

 イオリ、ロイド、ティアの3人が降り立ったそこは、特に何も特筆すべきものがない山の中腹にあるガレ場だった。少しバランスを崩すと転げ落ちてしまいそうな切り立った斜面で、眼下にはお誂え向きにキャンプが出来そうな川辺が。上を見れば早い流れで雲が動く、綺麗な青空が広がっていた。

 

「みたいだね。でも、この世界にも魔獣に類する生き物はいるみたいだね」

「らしいな。勝手に戦ってもいい相手かは分からないが……少なくとも、安全を確保する必要はあるか」

「半径5km内に、私たちの世界での魔獣に相当する反応は大小合わせて283。マスター、2泊3日でも生活するなら、魔獣避けを設置した拠点が必要」

 

 軽く探査の魔法を走らせ、3人はゆっくりとガレ場を楽しそうな会話をしつつ降りいく。本来ならそうするよりも安全で手軽な手段もあるが、あくまでコレは旅行。その場にあるものを使い楽しんでこそだと、普段通り3人は考えていた。

 

「軽く探知した感じ文明が見当たらない以上、野宿になるだろうが……まあ下の川辺がいいか?」

「かな? 水と食料、あと山菜とかも取れそうだしね!」

「マスター、その前に先ずは可食性かどうかを調べる」

 

 そうして斜面を降り、辿り着いたお誂え向きなキャンプ地。言い換えれば『たとえ戦闘が起きようと十全に動くことのできる場所』に着いた瞬間、3人全員が己の得物を手に取った。

 

 ロイドの手には、2分割された槍の穂先に持ち手をつけたような奇怪な双剣が。

 イオリの手には、まるで生きているような存在感を放つメカメカしい大鎌が。

 ティアの手には、二体の蛇が絡み合った先に広げた翼の意匠がある長杖が。

 

 もれなく全て、いつかの世界では魔剣と呼ばれることになる兵器の雛型。それを何も存在しないように見える虚空に向けて、イオリは言い放った。

 

「さっきから、ずっと隠れて私達に着いてきてるそこの人。言葉が通じてるなら、出てきて欲しい」

「戦力比も3対1だ、俺たちも無駄に戦いたくはない。投降してくれ」

 

 イオリとロイドがそう勧告し、ティアは何かに気づいたように虚空を見つめる。武器を向けている以上実質的には脅しであり、降伏勧告も決裂を前提とした形而上の物でしかない。そう、形而上の物でしかなかったのたが……

 

「やっぱり、キャスター相手に隠れ続けるのは無理でしたか」

「当然、大マスター。相手は私の本体に生前のマスター達、勝てる道理がない」

 

 姿を隠していたその人物は、あっさりと両手を上げて(ホールドアップで)現れた。

 その人物の姿は、狼の獣耳と尻尾がないことを除けばイオリそのもの。眩い銀髪に紅蒼2色の瞳、銃として変形させた大鎌を腰に吊った幼女に見える女性。そしてその傍らに浮かぶ、虹髪に女性とは左右逆のオッドアイを持つ手のひらサイズの少女という2人組。

 ロイドという存在は欠けているが、イオリ達の鏡写のような存在がそこに居た。

 

「私たちのドッペルゲンガー……では、ないみたいだけど。あなた達は、ナニ?」

 

 大鎌を構え直し、視線を鋭くしてイオリが問いかける。その様子を見てほんの少し悲しそうに目を伏せ、しかしそれをすぐに覆い隠すように女性は頭を下げた。

 

()()()()()()、私の名前は銀城 愛鈴(あいり)。まどろっこしい話は嫌いだと思うので端的に言うと、貴方のデミ……いや、擬似?サーヴァントです。イオリ・キリノさん」

「ふむふむ、私の擬似鯖……えっ、擬似鯖? 私の? 私死んだら英霊になるの!?」

「詳しくは私と情報を共有すれば良い。できるでしょ、本体(わたし)

「無論できるよ、分体(わたし)

 

 寂しそうな笑みを浮かべて愛鈴がそう言った途端、剣呑な空気は霧散した。そもそも敵意がないのは見て取れるし、白沢 蒼矢(イオリ・キリノ)は地球からの転生者だ。それも、今も昔も変わらずサブカル文化にどっぷりと使っている所謂オタクタイプの。

 であればこそ、凡そ全ての事情をそれだけで察することが出来た。同時に勿論自前の鑑定スキルを通しているが、それ以上に力量がどれくらいのものであるかも理解する。そうして改めて情報防御を突破すれば、目の前の女性の奥底に眠る自分の意識のようなものまで感じ取れる。向こうの隣にはティアらしき人物もいて、こちらのティアと指先を合わせて情報を交換もしている。敵意も魔力も感じられない。

 

「そういうことなら、まあいいかな? ロイドも武器降ろしていいよ」

「なんでさ……はぁ、後でちゃんと説明してくれよ?」

「とーぜん!」

 

 そしてそこまで情報が揃えば、一先ず敵ではないと判断するには十分だった。どこかで聞き覚えのある台詞を呟きながら、イオリやティアに続いてロイドも武器を降ろした。

 

「こんな状態じゃ落ち着いて話もできないし……愛鈴ちゃん、だっけ? 私の擬似鯖なら、魔物避けを作る知識はあるよね」

「はい、それくらいなら当然。キャスターですし。でもそろそろ私、20代も後半に差し掛かるので"ちゃん"付けはちょっと……」

「えっ、私も24だけど……歳上?」

「歳上ですね。1年とちょっとですが」

「うそ……全然見えない」

「それを貴方が言いますか? イオリさんの影響で、私もこんなちんまい姿なんですが」

 

 傍目から見れば、双子のような銀の幼女が2人(実際にはほぼ同一人物のようなものだが)隣に並んで歩いており、虹の幼女2人(こちらは完全に同位体)が並び、その中央に薄緑髪の青年が歩いているという不思議な光景。そこには既に柔らかな空気が流れており、平和な空間が生まれていた。

 

 

 霊脈的にも都合が良かったお陰で、鮮やかな手際で行われた陣地作成。魔物の近寄ることのない安全地帯となったこの川辺には、瞬く間に数日を過ごすに十分な建築物が完成していた。

 

「つまり、過去の英雄の影みたいな存在を呼び出し殺し合って、万能の願望器である聖杯を獲得するための儀式。それに愛鈴さんは巻き込まれて、偶々イオリを呼び出して、色々あって融合した……ってことで、合ってるか?」

「結果だけ纏めれば、そんな感じになりますね」

 

 川辺の近くにあった森の一角を遠慮なく伐採し、魔法を使い地固め。土台も魔法で強化しつつ、伐採した木を魔法で乾燥・整形、ものの十数分で完成したログハウス。思ったより余った木材によって、かなり広めに作られた家の内部で、ロイドが頭を捻っていた。

 対面する場所に座り、自前の湯呑みからお茶を飲むのは一仕事終えた愛鈴。サーヴァントとしての力をティアの顕現だけに絞ったお陰で、既に髪は白に、目は黒のモノトーンカラーに戻っている。

 

「これでも何個も異世界を旅した身だし、イオリの世界にあるアニメも見てはいるが……正直なところ、当事者となると落ち着かないな」

「そうは言っても、基本的に別人ですよ。私と戦ってくれたキャスターと、ここにいるイオリさんと、融合した私と。現に、イオリさんはもう一つの世界(アナザーワールド)で大喜びで炉に火を入れてますけど、私は行ってないでしょう?」

「そう言われると、確かにまるで別人だ」

 

 中から奇声のような歓声と金属音が響いてくる、半開きの半透明の銀の門という、接続詞を多用しなければ表現できない謎の物体。それを温かい眼差しで見つめながら、苦笑するようにしてロイドは言った。

 

「人の奥さんにこういうのは失礼だと思うが、それでも愛鈴さんの細かい仕草がイオリに似ていてな。どうにもまだ、別人だと割り切れそうにない」

「そういうものなんですかね? でもそんな風に口説かれても靡きませんよ、私にも大切な人がいるんですから」

 

 そう言って、自分の左手薬指に嵌められた指環を撫でた。それはロイドとイオリが嵌めているものとは違い、ごく普通のありふれた、地球産の金属でのみ作られているただの指環。しかし何よりも大切な人との繋がりを示す、唯一無二でもあった。

 

「口説く? まさか」

「ですよね。イオリさんがいるのにそんなことをしたら、多分取り返しがつかないことになるでしょうし」

「違いない」

 

 そう言っている間、実際に門の内側から聞こえる音が止んでいたのだから笑えない。冗談であると判別できていてこれなのだから、億が一本心でそんなことを言おうものなら、何が起こるかは想像に難くない。

 

「そういえば、さっき経緯を説明するときにイオリの記憶を夢に見るって言っていた気するが、今でもそういうことはあるのか?」

「それなりの頻度では見ますね。融合したイオリさんがリリィなせいか、8歳くらいの冒険のことが大半ですが」

「……愛鈴さんから見て、あの冒険は楽しかったか?」

「ええ、とても」

「なら、よかった」

 

 言い淀むことなく返答した愛鈴に、満足そうにロイドが頷いた。自分たちの旅の記憶、それを他人に見られるのは少し恥ずかしいが……それでも、"良かった"という言葉は何者にも変え難いものだった。

 

「だがそれにしても、俺とイオリの娘……か。出来れば会ってみたい……じゃないか。いつかは授かることも、あるんだろうな」

「だからと言って、この世界でおっ始めないで下さいよ? 私たち以外にも、飛ばされて来た人がいるかも知れませんし。それに気まずいですから。色々と」

「善処はする……が、俺があそこに引き摺り込またら、察して欲しい」

 

 言って、ロイドが門を指差した。もう一つの世界(アナザーワールド)の内部は、実際イオリが扉を完全に閉めれば2人の世界だ。そうされたら、黙って目を閉じ顔を背けるのが一番なのだった。

 

「そうしておきます。一応外から、消音と消臭の魔法もかけておくので」

「……助かる」

 

 それはそれは、重い返事だった。

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