なんとなくロリスミっぽいあの空の下で神楽舞いそうなのとガチ勢の話   作:銀鈴

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ここだけ現代組なのでシリアス


ヒロインズとリアル危機に陥ったので全力でネタを捨て去ります

「……痛た。あの後結局、何が起きて……?」

 

 思わずそんなことを呟き目を覚ました瞬間、自分たちが異常事態に巻き込まれたことを自覚した。

 

 まず第一に、見慣れたHPMPの表示が視界に存在しない。

 第二に、UPOでは感じるはずのない痛みが感じ取れた。

 第三に、覚えている最後の光景が明らかに異常な黒球に飲み込まれたシーンであること。

 そして最後に、UPO内部よりも五感の全てが鮮明なこと。

 

 以上4つのことから、最低でも何か異常事態に陥っていると判断。諸々の事情の考察は全て後回しにして、無理矢理に頭を叩き起こしながら仰向けで倒れていたらしい状態から起き上がる。

 

「沙織と空さんは……居た」

 

 その時点で、自分が幸村 友樹の姿ではなくUPOのユキの身体であることを把握。物は試しと空間認識能力を全開にしたところ、こちらもゲーム内とまるで何も変わらずに機能した。

 お陰で同じく黒球に巻き込まれた2人が、自分のすぐ隣に倒れていること。同様にゲーム内の姿のままなこと。そして間違いなく息はしていることを確認できた。

 

「何が何だか、まるで全然分からないけど……!」

 

 やれることを1から全部潰していく。

 

 まずは現状確認。周囲を空間認識能力全開で探知しつつ、"もしも"を警戒して肉眼でも確認する。確認できるのは木、木、木、そして生い茂った葉の向こうから覗く青空。敵mob、或いは原生生物の反応はなし。

 

 次に状態確認。沙織と空さんは取り敢えず呼吸はしているけど、頭を強く打っている可能性もあるから現状ノータッチ。次に一旦放っておいた、なぜゲームの能力がそのまま使える点について。

 

「メニュー……は、開くと」

 

 まるで現実のような視界なのに、普段通りメニュー画面を開こうとすれば、間違いなく普段と同じ感覚でメニュー画面は展開された。《ステータス》《アイテム》《フレンド》《マップ》《ギルド》《オプション》《ログアウト》という並びやフォントも普段通り。ネット回線がオフラインなことと、肝心要の《ログアウト》の部分が灰色に変色して反応しないことを除けば、だが。

 

「次に魔法とスキルの使用感覚は──同じか。けど万が一もあるし、易々と使うのはやめておこう」

 

 紋章は普段通り発動できたし、【戦術工兵】のスキルも特に問題なく使用できた。PS(パッシヴスキル)はこれで普段通り働いていること、AS(アクティブスキル)も普段通りに使用できることは確認した。

 

「ならまずは空間認識能力、拡大」

 

 何かがあってからでは遅く、自分が傷付いたり不具を背負うならまだしも2人がそうなってはまずい。だからこそ、一旦自分への副作用などは考えないことにして、空間認識能力の探知範囲を拡大する。

 軽い頭痛で治る程度まで範囲を拡大すれば、それなりの数動いている何かを検知できた。探知できた大半は四足歩行の生物で、間違いなく野生動物。昆虫程度ならまだしも、クマやイノシシがいるのはとても不味い。

 

「本当なら、魔導書とか呪いの装備を使いたいけど……やめておくほうが無難かな」

 

 何が起こるか分からない。何せクトゥルフ神話の魔導書の群れと、死界なんてものと関係のある装備だ。少なくとも、現実に近いと思われる現状使ってはいけない。あれらに頼るのは最終手段、本当に追い詰められた時だけでいいと心に刻んでおく。

 

「あと手取り早くここがリアルかどうかを確認するには……」

 

 考え事を纏めるために口にしながら、チラリと横たわる2人に目を向ける。探知でもまだ眠っていることは明らか。なら、やることは1つだ。

 アイテム欄の奥底から、素材アイテムの《鉄片》を取り出した。昔は投擲して、今は爆弾の調合に重宝しているこのアイテムだが、単体で使った場合ダメージを与えた相手に【出血】の状態異常を与えるアイテムでもある。

 

「ふー……せーのッ!」

 

 だからこそ、アイテム欄の肥やしになっていた布アイテムを猿轡にして、自分が絶対に声を上げられない状態に。そして毒性があるかも知れないが、使う必要が高いだろうHP・MP・状態異常回復のポーション3種を用意。更に自分の状態変化を逐一把握できるように、メニュー画面を《ステータス》部分で開いたままにする。この時点で、ゲームではできなかった挙動が可能なことを把握。

 そして、一度心を落ち着け覚悟を決めるために深呼吸。猿轡を噛み締めながら、(利き)手で握りしめた鉄片を左手の甲に向けて突き刺さした。

 

「ッ──!!」

 

 果たして、鉄片は肉を貫く嫌な感覚も共に左手の甲に突き刺さった。表示されるステータスには【出血】が加わり、HPもダメージ分減少。そして当然のように、傷口は焼けるような激痛を発し、ポタリポタリと血が流れ落ちていく。

 猿轡のお陰で、何とか悲鳴は上げなかった。本当なら状態異常の終了時間の30秒まで耐えたいけど、流石にそれは無理そうなので諦める。鉄片をアイテム欄に収納し、ポーションを手に取り蓋を開ける。そのまままずは、傷口に振り掛けた。

 

「……なるほど、コレは使っちゃダメか」

 

 使ったというのに消滅しないポーション。うじゅるうじゅると、気持ち悪い音を立てて肉が盛り上がり塞がった傷。どこか頭に広がる陶酔感のような、万能感のような、中毒性の高そうな感覚。

 それら全てから、ポーションは禁止とそう決定する。状態異常に関しては、きっちり30秒で消失した。その間、ずっと傷口が蠢いていたといえば、ポーションがろくでもない物であることは間違いないだろう。

 

「なら紋章は?」

 

 さっき使ったのと同じ鉄片を取り出し、今度は軽く左手の甲を傷つける。その傷口が血を流し始めたことを確認して、今度はリジェネ系の紋章を展開した。すると今度は、じんわりと温かい感覚で、傷口がゆっくりと塞がっていく。頭の中の感覚も晴れていく……成る程、こっちならまだマシそうだ。

 

「次に現在地の確認」

 

 まあ失敗しても重症で済むだろうと、まずはステルスを展開。次に頭上に《加速》の紋章を多重展開して、意を決してそこに突っ込んだ。瞬間、全身に襲いかかる殺人的な加速。視界が暗くなり色調を失い、同時に視野も狭くなっていく。そんなジャンプの頂点で《減退》し、展開した《障壁》の上に立つ。

 

「ッ、セーフ。生きてる」

 

 そうして《望遠》の紋章を展開しながら、ぐるりと周囲を見渡す。見えるものは、自分たちが今いる森、草木一つない山、並に削られた海岸線。そして山の方で動く数名の人。つまり、単純に言い表すならば、ここは絶海の孤島だった。

 しかし同時に、ステルスをしている筈なのに何かに目を付けられた様な気がした。なんとなく、やばい。そんな勘を頼りに、障壁から飛び降りて森の中に着地する。

 

「……うわぁ」

 

 何とか《減退》で着地を無傷に済ませて上を見上げれば、そこは地獄だった。見渡す限りの爆炎が、空を焼いていた。あの時飛び降りなければ、間違いなく巻き込まれていただろう。

 

「よし、最低限は把握した」

 

 まず結論として、ここはゲームの中じゃない。

 いくらUPOでもコンプラ的に再現できない部分が、あまりにも現実そのまま過ぎる。流れた血が地面に染み込んだままなのがいい証拠だ。よって信じ難い話だけど、一昔前に流行った『ゲーム内から異世界転移』の可能性が濃厚と見た。本当に信じられない話だけど。あと炎を吐くヤバい生物がいる。

 

「あとは……沙織、起きて沙織」

「んぅ……とーくん? おはよぉ、えへへ」

 

 取り敢えず起こすために肩を揺すると、蕩けたようなだらしない表情でそんなことを呟いていた。そして寝惚け眼のまま、しなだれかかってきた。仕方がないと受け止めれば、ぐりぐりとマーキングでもするかのように頭を擦り付けられる。

 

「血の、におい?」

 

 現状、まだ危険は迫ってないからされるがままにして、取り敢えず目を覚ましてもらおうと考えていたその時だった。スン、と耳元で鼻が鳴らされ、一気に目を覚ましたようなセナがこちらを押し倒してきた。ああ、うん。ちゃんと沙織もUPOのステータスのままらしい。良かった。

 

「怪我! とーくん、今度は誰にやられ……あれ、ユキ君? え、HPMPがない……森? ここ、どこ? また誘拐?」

「おはようセナ。俺は無事だから大丈夫。そして落ち着いてくれたら、話さなきゃいけないことが沢山ある。主に、今の俺たち3人の現状について」

「え、あ、うん……」

 

 不安気に揺れる沙織の目を真っ直ぐに見つめてそう言えば、割とすぐに沙織は落ち着いてくれた。そうなれば話は早い物で、かくかくしかじかツーカーで大体の認識は共有することができた。

 

「それで。ユキ君の話を纏めると、今私たちがいる場所は多分異世界か何かで、ゲームっぽい機能はそのまま使えるけど傷とか痛みとかは現実準拠で、危険かも知れない生物も沢山居るってこと?」

「大体は。今は半径100mくらいまで探知範囲を広げてるから、大まかな形までしか分からないけど」

 

 現に今も、さっき出した血の匂いに惹かれてか、空を焼いた炎に怯えてか。最初の探知時よりも四足歩行の生物が集まってきている。下水道でしか使い道のなかった《消臭》の紋章のお陰でまだ猶予はあるけど、早めの行動をするほうが良いだろう。

 

「……分かった。藜ちゃんはどうする?」

「沙織と違ってメインの攻撃手段が近接しかないし、出来る限り眠ってもらっておいた方がいいと思う。もしHPが0になったらなんて、考えたくないし」

「そだね。それじゃあ一先ずの方針は『山の方の人に会ってみる』でいいのかな?」

「もしかしたら、帰る手がかりを知ってるかも知れないからね。最悪俺がリスポンすればいいだけだから、そこまで心配しなくてもいいし」

 

 文字通り死ぬ程痛いだろうけど、沙織と空さんの為なら我慢する。例え確実にヤバいクトゥルフ魔導書や【常世ノ呪イ】に呪い装備を使っても、2人が元の世界に帰るまではそうすると決めた。

 

「あ、でも空さんを背負うのはお願いしていい? ユキとしての能力だと、やっぱり人一人抱えて動くのはキツそうで」

「うん……ごめんね、とーくん。こんなことしか出来なくて」

「大丈夫大丈夫。きっと何とか出来るから」

 

 やはり不安そうな沙織を安心させるために、笑顔を作って言う。そう、きっと何とかなる。して見せる。それがほぼ無限残機なんて切り札のある俺が出来る、唯一のことなのだから。

 

「さて、山を目指して出発!」

「出発、だね!」

 

 そうして俺たちは、メニュー画面のマップを頼りに山を目指して歩き出した。それそれにステルスを使い、匂いも消して、偽りなく逃げ出す様に。




セナか藜と一緒にデスゲームとかに放り込まれた場合の、覚悟ガンギマリユッキーです(実は本編の時点で大体こんなもん)
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