アイスリスタート -目覚めたら人が居ませんでした- 作:蓮倉 瓜
ーーある日、僕は、大学を辞めた。ーー
元から僕は四年制の大学じゃなくて、短大に入りたかった。
短大に入りたかったけれど、両親の涙ながらの説得により、大学の指定校をしぶしぶ取得し進学。
でも半年前に必修の癖に、落単する講義の沼にはまり
晴れて(?)大学を辞める事になり、バイトの日々である。
僕は四人暮らしで、兄は早々に家を離れ、今は3人暮らしだ。
母は、僕に大学を勧めた事もあってかこの現状を受け止めてくれてはいる。
父は、現在は就職しているものの家族に何も相談もなしに仕事を辞めた前科があるため強くは言い出せない。
わかっている…。
僕が家族からどう思われているか…
これまで重ねた日々や奨学金が僕と僕のその家族を苦しめている…。
そして半年たった今日。
僕は懸賞ハガキで引き当てた『オーロラ絶景の旅 3人分セット』を元に、今まで出来なかった親孝行とやらを
実行している最中だ。
この旅行は、オーロラを見ると言うタイトル通りのもので
母がいつか見てみたいと言っていたのもオーロラだった。
ーー船内、展望デッキーー
『ねぇ、愛人? そう思い詰めなくていいのよ?』
と母が言う
『思い詰めてなんていないよ。今はこの旅行を楽しもうよ』
……僕は、表情をコントロールできているだろうか。
この旅行でさえ、父を誘うか最後まで悩んでいたし、
現状、思い詰めて居ない方がおかしい。
人を愛するとかいて、まなと と読む自分の名前を
恨むようになっていたのはいつからだろう…
でも、今日から…この旅行で変えるんだ…
自分自身を…周りの環境を…!
『ごめん、寒くなってきたから、先に部屋に戻ってる
お母さんはお父さんと話したい事もあるだろうし
ゆっくりしてね』
母は父と僕が大学に入学する前から離婚したがっていた。
そんな意味でも、この旅行を経て何か変わるのではないかと
僕は考えていた。
…でも、そんな日は永遠に訪れなかった。
展望デッキから自分の部屋に戻り
冷えた体と心を温める様にお風呂に入った。
どうしても母と話すと罪悪感を持ってしまう…
母や父の老後や介護…様々な課題が僕を苦しめるだろう。
…このようなことを考えている時点で人を愛してはいないのだ…
誤魔化すように僕の体より一回り大きい浴槽に潜った。
ドォォォォン!!
潜っていた浴槽ごと激しく揺れた。
僕が後で調べた所、近くの氷山の大きな一角が海に落ち
船体が激しく揺らされ、揺らされた事により船体の下に流氷が滑り込んだらしい。
これにより僕は、一度死んだのだ。
ーー250年後ーー
『心臓の鼓動を確認。生命活動における、臓器異常なし。被験体086の蘇生に成功しました。』
無機質な電子音が告げる。
この体は長年の氷漬けから解放され、人間として再起可能であると。
『楽しみだなぁ!
やっと人間の友達ができそう!』
そう言った彼女の瞳は、これ以上なく輝いていた。
『……ここは…?…僕は…確か浴槽で…頭を打って…』
『やっと起きたの? 寝坊だよ?
人を待たせるのはお勧めしないなー!』
目が覚めると僕の目の前には海外の子だろうか…
女子高生くらいの少女がいた。
『寝坊? それはごめんね…ここはどこなの?
確か僕は船の中で…』
『あぁ、そうね。ここは地球よ。
あなたがお風呂でも寝るくらい寝坊助なお陰で均等に凍って損傷とか受けずに済んだの』
『…他の生存者は?』
『…居ないわよ』
僕はがっかりしている気持ちよりも、
スッキリした気持ちの方が強い事に気づいた。
やはり僕は人を愛する事は出来ないみたいだ。
『あと…ここは地球のどこなの?
日本語が通じるって事は日本なはずだけど』
『うーん…あなたの寝てる間に色々と事情が変わったのよね。
まぁ具体的に言うとノルウェーのあった場所。』
『事情?日本語が公用語にでもなったの?あと他にも聞きたいことあるけど…
それより先に、お医者さんとかは?他に人は居ないの?』
『居ないわよ。だってこの地球に人はもう住んでいないもの。』
お読みいただきありがとうございました
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