アイスリスタート -目覚めたら人が居ませんでした- 作:蓮倉 瓜
それではどうぞ
研究所を後にした私は、あてもなく街を歩いた。
今頃研究所は慌てているだろうか。
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_____室長室____
『全く、生半可な機能をつけるからこうなるのだ。』
『申し訳ありません。
一般市民があれほどの機械を作り上げるとは想像も…』
『別にいいわけが聞きたいわけではないのだよ。
わかっているのかね?
あれは金のなる木なんだぞ!』
『…えぇ、重々承知しております。』
『わかっているのならば、一刻も早く見つけ出せ。
二度と逆らえぬように閉じ込めておくのだな。』
画面に映し出されていた名前は後に
ヒューマノイドを世に知らしめる働きをした大商人の名前である。
苦情の通話を受け取っていた男がひとり呟く。
『クソッ、何で俺が!
……まぁいい。
どうせ目的地は一つしかないんだ。』
男は椅子から軽い足取りで電話をかける。
『例の脱走した機械の件だが……
そうだ。前に始末した奴の住所へ向かうはずだ。
……あぁ、そうだ。……では手筈通りに頼むぞ。』
男は電話を終え、背もたれに体重を預け、伸びをした。
『傑作だなぁ。笑いが止まらん。
感情を優先しすぎて、現実を見ない機械とはな。』
李はまだ人間の醜さを理解できていなかった。
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私は服屋に入りフードを気づかれないように盗み、
捜索隊であろう人間たちをやり過ごしていた。
名前も顔も知らない彼とまた「日常」を過ごしたい。
私は私の身の回りの開発をしていた企業へハッキングした。
多少のセキュリティはあったが無事に見たい情報を手に入れ今に至る。
”彼が生きている。”この情報だけで研究所を抜けるのは十分すぎた。
…街には私の子供たちの残骸が転がっている。
雨に打たれて陥没しているもの。現在進行形で破棄されているもの。
今も目の前で殴られ、蹴られ、ボロボロになっている。
私はフードを深くかぶり、その横を通過した。
痛めつけられている自分の子供を見ないふりをした。
彼の家らしき場所についた。
玄関や窓、最低限の家としての機能はあるその建物は
信じたくなかったが彼の家のようだった。
『まさか、そんなはずは…
だって彼は生き『死んだよ。』…あなたでしたか。』
私は話しかけてきた男を知っている。
彼の家に押し掛けてきた者の一人だ。
『現実を合理的に判断するのが
機械の特権だと思っていたが、
感情があると不便みたいだな。』
『何の話ですか?
私はただ…』
『前任者を探しに来たんだろ?
まさか記憶にないのか』
私はその先を知りたくない。
知っているからこそ、聞きたくない、認めたくない。
『私は機械じゃない。
こうして自分の意思でこの場所に来ました。』
『その意思とやらが、プログラムでもか』
『…なんですか?』
『お前のその両手で首を絞めただろ。』
は?
いや、違う、そんなことがあるはずがない
薄々居ないだろうということは理解していたが、
あの研究所に移動した時から一度たりとも会っていない。
『その様子だと、やはりエラー原因はお前だったのか。
お前は疑問に思わなかったのか?
なぜ合成音声が機能したり、しなかったりしたのか。
そしてなぜスペックが格落ちしている
お前の出来損ないしか販売されていないのか。』
やめろ。やめろ。聞きたくない。
『すべてお前が『やめろォォォ!』』
なるほど。私はその記憶を持つことに耐えかねて記憶を消し
声も消したのか。
そして私は同じような仲間を生まない様にスペックをわざと低くしたのか。
そうか。全て、私が行ったことだったのか。
じゃあ私は、
ヒトになれなかったのか。
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『どうじゃったかの。儂の歴史を知った気分は。』
目の前は人間なのだろうか。
それともヒトなのだろうか。
最後までお読みいただきありがとうございました。