東方永久録   作:ゆったり

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今日はキツめにしました。


三時 鳥の如く

「まったく……。何処へ行った?」

 

魁は少し声を焦られながら森の中を駆ける。

盲目であるにも関わらず、未開拓の森をもろともしない所は超人といってもいいものだ。

しかし、そんな超人的な感覚も今は何の意味もなさない。

 

「二人とも……何処だ。」

 

事の発端は小さなことだった。

魁はときどき、森へ食料をとりに行くことがある。

そして今日はどういった風の吹き回しか、紫と幽香が取りに行くと言い出してきかなかった。

森には危険な生物や妖怪は生息していないので、これも経験だと承諾した魁。

だが、それは間違いであったことに気がつく。

最近、大和の神々が地方の神々の地を戦を仕掛け奪い取っていた。

神でも領主でもなかった魁にとってはどうでもよい事だったため無視し続けていたが、それが災いする。

なんと、家で休んでいた魁の下に敗走した神が略奪のため襲い掛かってきたのだ。

それだけならまだいい、さらに敗残兵狩りでもするのか大和の神も部下の神を引き連れてやって来たではないか。

何時もならノコノコやってきたところを軽くあしらったであろうが、あの幼く脆弱な二人が外出してしまっている今、そんなことはやっていられない。

大和の神々にとって妖怪も土着神もたいした違いなどない、滅ぼすべき敵なのだから。

 

「ちぃッ。」

 

刹那、森を駆け回る魁の進行を阻むかのように矢が放たれる。

魁を狙ったものではなかったが、かえって魁の心を乱し苛立たせていた。

 

「何者だ、ここは神々の戦場である。下郎め、身の程を弁えろ。」

 

「すまないな……。生憎、私は急いでいるのだ。君を相手にお喋りをしていられるほど暇ではない。」

 

名も知らぬ神の傲慢な態度、何時もなら説教の一つや二つを言ってやるところだが、そんなことをするのも惜しい。

無視をすればかえって相手を刺激するのではと思い軽く返事をしたようだが、それが名もなき神には気に入らなかった。

この盲瞽が!! と熱り立った声で力いっぱい弓を引き、走り去る魁の背中めがけて放つ。

一直線に魁へと放たれた矢、だがしかし、魁の身体に突き刺さる直前に矢はパッと姿を消してしまう。

神は驚きのあまり声を上げようとするが彼の声を押さえつけるかのように、先ほど彼が射た矢が己の肩を貫いていた。

突然の出来事と激しい痛みにより唸りながら仰向けに倒れミミズのようにのたうちまわる。

 

「言ったはずだ、君を相手に喋っている暇はないと。」

 

「げ、下郎がぁぁぁ!! 戯けたこと―――ぐわぁぁぁ!!」

 

何時の間にか走り去ったはずの魁が地面に転がる神を見下ろしていた。

魁を見た神は激昂したが、魁は臆することなく何処からともなく取り出した剣で彼の腹を突き刺し、地面に貼り付ける。

だが、そう簡単にくたばる神ではなく、手足をバタつかせ必死に剣を抜き取ろうとした。

魁は黙って見つめるようなことはせず再び剣を取り出し、駄々っ子のように暴れる手足を次々と貫き、固定。

とどめに五月蝿く悲鳴をあげるあんぐりと開いた大口へ剣を刺し彼を完全に黙らせた。

 

「神の標本といったところか。……身の程を弁えるのは君だ。相手を間違えたな。」

 

「―――ッ!! 貴様、一体そこで何をやっている!?」

 

せっかく邪魔者を始末できたと思った矢先、別の神が魁を発見した。

この神は先ほどの彼とは違い傲慢でも高飛車でもない神であり、何もなければ魁に襲い掛かってくることはない。

しかし、仲間に危害を加えるような危険な者には話は別だ。

 

「すまないが、私は急いでいるのだ。君の話を聞いている時間などない。」

 

不幸なことだ。

もし、彼がこのまま魁に遭遇することがなければ、善神として多くの人間に崇められたはず。

しかし、不幸にもこの残党狩りに参戦してしまい、不幸にも魁に遭遇してしまい、不幸にも彼に刃をむけてしまった。

この三つの不幸が彼の運命を大きく変えてしまうこととなる。

 

 

 

 

―――――――――――――――

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―――

 

 

 

 

「イサム……助けて…。」

 

切り倒された大木の穴の中から細く弱々しい声が聞こえる。

紫と幽香はそのくりぬかれた穴の中で怯え震えていた。

森でキノコなどの食料を採取していた所を突然、神に襲われた二人。

咄嗟に紫が能力である“境界を操る程度の能力”を使いスキマと呼ばれる空間に逃げ込まなければ、忽ち殺されていただろう。

しかし、幼い紫にその強力な力を完全に使いこなせる技量などあるはずもなく、ほんの少し離れた場所へ移動できただけであった。

妖力も底をつき、身を潜めることしか出来ない二人。

希望があるとするのなら、魁を異変に気づき神々よりもさきに自分達を発見してくれることだが、その可能性はとても低いものであるのど本人達も理解していた。

しかし、彼女達は決して諦めるようなことはしない。

魁が自分達を助けに来ると信じて疑うことはしなかった。

 

「だいたい、こんなことになったのはイサムのせいよ。安全だなんて言ってたくせに、こんな目にあうなんて。」

 

「そうよね。あたちのスキマがなかったら二人とも死んでたわよ。それより……。」

 

「なによ?」

 

「イサム……助けて…。なーんて言ってたくせに、よくもまあ、そんなに強気でいられるわね。」

 

「なんですってーー!!」

 

恐怖を拭い去るためか、会話を始めた二人。

何時ものように喧嘩に発展しているが、今はそのおかげで恐怖を忘れることができている。

だが、静かな森の中で声を荒げ口喧嘩などしようものなら目立ってしょうがないだろう。

話し込んでいた二人は複数の足音に背筋を凍らせ、息を潜めた。

 

「なあ、何か聞こえないか?」

 

「気のせいだろ。それより、撤退命令が出ているぞ。なんでも、化け物が現れたとか。」

 

「なんだそりゃ、馬鹿みたいだな。」

 

「そうは言うがなお前達、その化け物にもう十八人も殺られてるようだぞ。空耳は聞こえるのに仲間の声は聞こえんのか? 頭んなかに語りかけてくるだろーが。」

 

「んなこたぁ知らねぇよ。お前が聞いてりゃいいだろ。」

 

何事もなく、三人の神がその場を通り過ぎる。

声が遠ざかっていく程に二人の胸の鼓動は小さくなり、ニヘラと互いの顔を見て微笑む。

話を聞くとどうやら神がこの森から出て行くようなので、もう心配することはない。

すっかり安心した二人はまたお喋りをはじめようとするが……。

 

「めっけ」

 

過ぎ去ったと思った三人は穴の入り口から二人を除きこんだ。

あまりのショックに二人は悲鳴をあげるが当然、何もおこらない。

二人はたちまち引きずり出され、囲まれてしまった。

 

「妖怪だなぁ。ちょっと最近、イラついてるし殺っちゃおーぜ。」

 

「いや、待てよ。見たところ結構いい女だ。溜まってるだろ? まだ幼いが捌け口にはちょうどいいだろ。」

 

「あー、いいわそれ。ヤッて殺れるなんて一石二鳥じゃん。んじゃ、緑の方は俺が頂き。」

 

三人は直ぐに二人を殺そうとはしなかった。

力ずくで二人の服を引っぺがし、地面に組み伏せると己の服まで脱ぎだす。

いかに神といえど、その光景は下衆そのものだ。

抵抗するが大きな声で怒鳴られ萎縮してしまい動くことができなくなってしまう。

三人が己の欲望を剥き出しにし、二人に覆いかぶさろうとしたその時。

 

―――触るな

 

冷たく、それでいて鋭い一言。

声が響き終える前に三人は吹き飛ばされていた。

魁は軽やかに舞い上がり、まだ起き上がっていない一人の頭に着地するのと同時に踏み潰す。

その威力はすさまじく、大地を激しく揺さぶり残り二人の体制を大きく崩した。

再び中に舞い上がった魁は二人目の目標の前に着地、足払いを跳ね避け後方宙返りをしながら目標の腹部を踏みつける。

先ほどのような威力はないが、彼の胴体をきっちりと二分し絶命させるのには十分な威力であった。

三人目は戦況を見極め逃げ出したところであったが、見逃すほど今の魁は生易しくなどない。

すぐさま退路に回りこむと、彼の脇腹を蹴り飛ばした。

手加減された一撃だったが彼は何メートルも距離を飛ばされ、太い木の幹に衝突。

幹を背もたれにしながらフラフラと立ち上がり、前方を確認すると、魁はすでに彼の胸を蹴り破っていた。

 

「三人とも、これで腐ったガスも抜けるだろう。」

 

呼吸する暇さえ与えない一瞬の戦闘。

紫と幽香は魁のまるで鳥のように優雅で軽やかな戦闘に見惚れていた。

魁は二人が無事であることを確認すると、駆け足で向かう。

 

「すまない、大丈夫だったか? これを着るといい。」

 

魁は返り血一つ浴びていない上着と肌着、それぞれを二人に着せぎゅっと抱きしめる。

一瞬恐怖を忘れていた二人であったが、魁の匂いと温もりを感じ取るや否や大粒の涙を零し泣き出した。

怖かった、気持ち悪かったとオンオンと泣きながら魁にしがみついて離れない。

 

「すまなかった、本当にすまなかった。怖い思いをさせてしまったな。」

 

その後、自分から離れようとしない二人を抱え、小屋へと戻る。

道中で魁に襲い掛かるような敵は存在せず、何事もなく帰宅した。

紫と幽香は一切言葉を発することはなく、夕食のときも就寝する際にも黙ったままだ。

幼い彼女達にはよっぽどショッキングな出来事だったのだろう。

どうやって慰めるべきかと魁は模索していると、部屋の戸を叩く音が聞こえ戸を開ける。

すると、そこには二人が枕を抱え今日は一緒に寝たいと言って来た。

魁にとっては寝るにはまだ早いが二人の頼みを断るわけにはいかず、床に就くことにする。

 

「……今日はありがとう。」

 

「謝るべきは私だよ幽香。紫も、本当にすまない。」

 

「でも、イサムが来てくれなきゃ……。」

 

「私は当然のことをしたまでさ。君達二人は私にとって掛替えのない存在なのだからな。」

 

「掛替えのない存在?」

 

「そう。言葉にするのなら“娘”だ。私は君達二人を本当の娘のように思っている。」

 

「じゃあ、あたち達にとってイサムは“お父さん”なの?」

 

「さあ、どうかな? それは君達自身で考えることさ。」

 

そうと答えたい魁であったが、無理やり彼女達に自分が父親であると意識させたくはなかったのか、曖昧に答える。

だが、彼女達の答えなど既に決まっているのか、クスクスと笑った。

幽香は魁の右手、紫は左手を力強く握り答える。

 

『お休み、お父さん!!』




皆さんどうも私です。

これからもひっそりとがんばりたいです。

ああ、受験が……。
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