人生強くてNEW GAMEした僕だけど、会社やめました。   作:毎日グラノラ

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なかなか話がすすまないためもう少し書いてから投稿するか迷いましたが、きりがよかったためここまでで投稿します。
よろしくお願いします。


第2話 そして勤労者へ・・・

「おーい、八神、遠山ー。作業のきりがいいなら昼ごはん外に食べにいかね?」

時刻は昼の12時を迎え、適度な空腹感におなかが「グゥ~」と音をたて、栄養補給をいまかいまかと催促する。

入社して2週間がすぎ、僕ら同期三人は少しずつ仕事にも慣れ、こうして外にランチを食べにいくことも増えてきた。

「いいよー、今日は私もリンもごはん持ってきてないからちょうどいいや。」

「間薙さんってもう結構な頻度で外に食べにいてるわよね?どこかおすすめないかしら。」

「そうだなー、この時間ならあそこの店なんてどうだろ。」

前世から僕の仕事の楽しみの一つに、職場周辺の飲食店の開拓がある。

始めて入る店の雰囲気や料理の味に想像を膨らませ、にわくわくしている時間が好きだからだ。

今日はそんな店の中でもワンコインでボリュームのある洋食を食べられる店に二人を案内することにした。

 

入社してからはあっという間に時間は過ぎ去った。ゲームの製作スキルについてはそれなりに自信があった僕だけど、

それでも毎日学ぶことや関連チームとの調整が入ることで忙しさに目が回りそうになる。

個人で自由に作るゲームと、企業として売り上げや世間の目を意識して製作するゲームでは根本的に考え方が変わってくるのだ。

前者はいわば自分が満足できるゲームを吊り上げることができれば十分だけれど、後者でデベロッパーや取引先等、直接の作業にあたる製作スタッフ以外の思惑か複雑にからんでくる。

大勢で一つのものを作り出すということの難しさを2週間という短い時間ながら否応なし考えさせられる日々だった。

 

僕ら3人は時にはこうして一緒にお昼をを一緒したり、仕事の後に食事へいき、お互いの仕事に進み具合や、悩みがあれば相談する程度には仲良くなっていた。

入社当日に再開したときは、まさかあの日話をした3人がそろって内定をもらっているとは誰も思ってもいなかったため、

会社のエントランスでばったり出くわしたときは何かの縁のようなものを感じたものだ。

 

「それで、八神と遠山は2週間後のコンペ応募するんだっけ?仕上がりはどんなもんなの?」

「うーん、なかなかこれだってデザインはできていないけど、それでも方向性は決まったし、いいものができると思うよ。いや、せっかくのチャンスだしいいものをつくる。」

「私は少しずつ勧めてはいるんだけど、それでもまだ提出できるほどのクオリティにはなっていないわね」

イーグルジャンプは入社前のイメージの通り、比較的自由な社風のようで、入社して間もない僕たちのような一年目社員でも最新作のキャラコンペに参加することができるようなのだ。

事実、イーグルジャンプ最新作である「プロジェクトFS」という新規IPのコンペには八神と遠山は参加を予定している。

 

入社直後のオリエンテーションののちに、二人が配属されたのはキャラ班で、僕は同じグラフィックチームの中でも背景班配置となった。

各々が、採用試験の際に提出した課題の出来から、適材適所で配属を振り分けられたらしい。

僕の場合、後から聞いた話によると、どこでもそれなりに対応できそうだったのでその時人のいなかった背景班に放り込まれたということだった。

「レンさんは今回コンペ本当に参加しないの?あれだけ絵が描けるんだからせっかくなら参加すればいーじゃん」

八神がいうように、今回僕はコンペには参加しないことにしている。

時間をみつけて描けば今からでも締め切りには間に合うだろう。

でも、僕はまずは今自分に与えらえた背景という仕事をしっかりとこなし、成果を上げたいと思ったのだ。

長い人生、まだまだこれからいくらでもチャンスはある。これからに向けてしっかりと足場を固める時間も必要不可欠だ。

 

ちなみに、八神と遠山は18歳入社で23入社の僕とは5つ年齢が離れている。自己紹介でそのことが分かってからは二人は僕のことを「さん」付けでよぶようになった。

最初は苗字で呼ばれていたものの、新人歓迎会で打ち解けてからは八神からは名前で呼ばれるようになった。遠山はどこか遠慮しているようで今でも「さん」付けで僕を呼ぶ。

一方僕はというと、ちょっとした気恥ずかしかから女性である二人のことを名前で呼ぶことができず、苗字を呼び捨てしている。

前世からずっとゲームばかりしていて女性経験が浅く、女性との会話なんて業務上でしかをすることがなかった僕にいきなり名前呼びはハードルが高すぎる。

「まぁ確かに今からでも間に合うかもしれないけど、僕はまずは背景っていう仕事をがんばってみたいんだよ。それに、もし二人のどっちかがキャラデザとして採用されたら、二人のキャラが歩く舞台を作ることになるかもしれないんだぜ?それって責任重大だしわくわくするじゃん」

今回のコンペが出来レースでもなければ二人にもチャンスがある以上、そんな未来を期待せずにはいられない。

「そういわれちゃうと、こっちもこれ以上なにも言えないじゃん…。でもこの間の歓迎会で描いてたキャラクターの絵なんかすごくうまかったじゃん。勝てないかもって思っちゃったもん」

「私もあの絵見た時はこの先この業界でやっていけるのかちょっと自信なくしちゃったわ。ポップなイラストでシンプルなのにすごく可愛いし、今にも動き出しそうで…。だからこそ参加しないのがもったいないわよねぇ」

二人は僕がコンペに参加しないことに対して残念そうにしてくれている。普通の人間なら厳しい競争のライバルが減ることに喜びこそすれ残念に思うことなんかないだろう。

二人の性格の良さをしみじみと感じ、ますます二人を応援したくなった。

「まぁあのデザインの場合は僕のオリジナルであってそうじゃないようなもんだからな。コンペに参加する時はちゃんと考えて、来るべきときに挑戦するよ。」

「んん?なんかよくわからないけどまぁいっか。その変わり、もし私たちの案が採用されたらその時は最高な背景よろしくね」

八神は僕の発言にどこかひっかかったような顔をしていたけど、気にしないことにしてくれたみたいだった。

「私もコウちゃんに負けないようにがんばるわ!間薙さんも応援していてね」

二人は直近の目指すべき目標が明確になったことでより一層仕事へのモチベーションを上げたようだった。

僕も二人と話をしていると二人のやる気にひっぱられて、今日の午後からの背景のモデリング作業に対する気持ちが高まるのであった。

 

幸いなことに、二人を連れて行った洋食やの評判も上々で、店のファンを増やすことができたのは僕も満足だ。

自分の好きな事を布教して喜んでもらえた時の達成感はなにものにもかえられないな。

二人との雑談によって、気持ちをリフレッシュできた僕は、午後からもモチベーション高く仕事に励むことができたのだった。

 

 

 

それから2週間後のこと、ついにコンペ当日がやってきた。この2週間の二人のがんばりは陰から見てきたし、結果が楽しみになる。

二人のデザインは製作途上のものをいくつか見せてもらったけど、二人とも普通にレベルが高い。

完成品はコンペ本番を楽しみにするため見ていないないけど、どちらもワンチャンあるんじゃないかと考えている。

 

定刻を迎えるとコンペ会場はしんと静まり返り、葉月さんの今回のコンペについての説明が会議室に響く

会場に集まった参加者はいずれも緊張した表情をしており、二人の応援に来ただけの僕もピリッとした雰囲気を感じ背筋が伸びる。

葉月さんというのは僕たちが面接待ちをしている時間に声をかけてくれた眼鏡姿の女性で、このイーグルジャンプでAD(アートディレクター)を務める。

面接の前に声をかけてくれたのを、僕たち三人は緊張をほぐすために声をかけてくれたのだと思っていたけれど、実際には目的はそれだけではなかったらしい。

雑談をすることで、気を抜いている素の状態での人間性やゲームへの思いの確認のための選考の一部であったらしく、我が社では採用試験の恒例になっているらしい。

入社日にその説明を聞いたときは3人そろって冷や汗をかいたものだ。本当に変なことをいわなくてよかった。

 

「今回はたくさんの応募ありがとう。最新作である『プロジェクトFS』は自社IPの中でもそれなりの規模の作品になる計画なんだ。

だから今回の募集は前例にとらわれないよう、勤続年数や経験なんかの縛りはあえて設けず、ベテランから新人まで参加できるようにしたんだ。。

新たな風を吹かせてくれるみんなの作品楽しみにしているよ。じゃあ前置きはこのへんにして、はじめようか。」

葉月さんの挨拶が終わると、各々が提出したキャラクターのイラストが一枚ずつプロジェクターに映し出されていく。どの作品も非常に出来がよく、コンペ自体の水準が高いものであることが一目にわかる。

流れとしては、映し出される一つ一つの作品に対して葉月さんがアドバイスや感想を言っては次の作品に移っていくという次第だ。

いくつかの作品についての品評がおわり、次の作品に画面がきりかわったタイミングで葉月さんの表情がほんの少し真面目なものへと変わった。。

「これ描いたのだれ?」

今まで参加者の名前は伏せて進んでいたのにも関わらずここにきて直接応募者の特定が行われたのだ。

会場が誰だ誰だとざわつく。

「あ…!私です」

聞き覚えのある声に目を向けるとその正体は八神だった。

八神は周りの視線に顔を赤らめながらも左手を上げていた。

「先月入社した八神コウ…か。うん、決めた。八神くんに新作のキャラクターデザインを担当してもらうよ。」

「っ……はい!」

一瞬戸惑ったような、それでいて力強い返事をした八神はどこか誇らしい表情をしていた。。

こうして波乱の結末となったコンペは葉月さんの大胆な決断の下、幕を引いたのだった。




ここまでお読みいただきありがとうございました。
次回は、会話にでてきた新人歓迎会の話か、コンペの打ち上げの話かどちらかの話にする予定です。

しかし、話が全然すすまない。はやく本題にはいらなければ…。
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