人生強くてNEW GAMEした僕だけど、会社やめました。   作:毎日グラノラ

5 / 5
こつこつ書いているもののなかなか時間が取れず話が進みません。
明日からまた仕事なので大急ぎでかき上げました。
よろしくお願いします。

チートや前世の知識は控えめでお送りしております。


第4話 

休日が終わり月曜日を迎える。

勤め人にとって休日の終わりとは楽園からの追放にも等しいほど苦しいものである。

翌日に休日を控える日は夕方ごろから万能感に満ちあふれ、自分自身が無敵なのではないかと勘違いするほど心が軽くなる。

しかしその一方で休みの終わりが近づくと途端に心がしなびてくる。

僕も前世では日曜日の某テレビアニメのエンディングテーマが、背後に迫る仕事の足音のように聞こえ、そのアニメから距離をおいていたこともある。

一時期は「寝なければ明日にならないんじゃないか」なんて精神論の極みのようなあほなことを考えたものだ。

 

そんな僕だが今の仕事についてからはやりたかったことがそのまま仕事であるため、仕事にいくのは比較的楽しみであり苦痛にはなっていない。

しかも今日の昼は八神と遠山から「渡したゲーム」の感想を聞くことができるのだ。

昨日の夕方、八神と遠山から「もらったゲームについての感想を話したい」という旨のメッセ―ジが3人のグループチャットに書き込まれた。

そこで、昼食の時間にご飯でも食べながら話そうと提案したところ両名とも了承したのだ。

二人とも朝一番にでも話したかったようだったけれど、朝だと始業前でばたばたするため昼一番ということで落ち着いた。

二人からどんな感想がでてくるのか楽しみで昨日はそわそわしてしまったほどだ。

まずは午前中の仕事をしっかりとこなして昼休みを待とう。

 

入社してからの日々は目が回るような忙しさであるものの、日々の充実感からかその忙しさが不思議と心地よかった。

まだまだ新しい環境に緊張感はあるけれど、先輩の顔と名前が一致するようになってきたことで以前よりは楽な気持ちで作業に入れるようになってきた。

今は仕事といってもまだまだ研修扱いのようなもので、背景班の女性リーダーがその都度指示をだすのでそれにあわせて作業を進めていく。

ちなみにこの女性リーダーは先日のコンペにも参加していたが、ご存じの通りで残念ながら採用にはいたらなかった。

彼女の作品はどの作品にしても非常にレベルが高く、もし八神がコンペに参加していなかったら採用されていたのはリーダーだったと思う。

コンペ翌日は彼女の表情にも陰りが見え、落ち込んでいたように見えたが、今では気持ちを切り替えたのかさばさばとした態度で自分の持ち分である作業に集中しているように見える。

そんなリーダー監督のもと、今までは2D背景を描いていたが、数日前から3Dモデリングを任されるようになった。日々マニュアルを片手にPCとにらめっこである。

 

実は僕は今までレプリカゲームを作るうえで、本格的な3Dゲームを作成したことがなかった。

個人で製作できるような簡単なものならともかく、本格的な3Dモデリングができるだけの環境をしっかり整えることがどうしても厳しかったからだ。

また、3Dでの製作となると物理的に作業時間が増えるので自分一人の力ではおいつかず、2Dのゲームを中心にせざるを得なかったのだ。

そういった意味では、設備の整った環境で先輩の指示のもの、改めて基礎から学ぶことができるのは本当にありがたかった。

持ち前のチート能力のおかげで、すでに僕の頭のなかでは3Dで構成される名作ゲーム達がどのような作業工程を経て製作されたのか、ざっくりと理解できるようになったのだ。

おそらくこれで環境と時間さえあればグラフィックという分野においては作れないものはないと思う。

ちなみに今日の午前にリーダーからの課題として作成を依頼されたのは、「ストーリー序盤に訪れる村の家屋」というものだ。

町や村の風景というのは非常に奥が深い。町のいでたちは民俗学とでもいうのか、その土地柄や歴史、気候、宗教と様々な背景や要素によって異なる様相を呈することになるからだ。

例えば、日本国内の豪雪地帯であっても、合掌造りのような構造をとっている地域もあれば、平屋根のような形状をなっている地域もある。

その土地の風土や背景を顧みず、自分の勝手なイメージだけで考えて作ってしまうとゲームの設定や舞台から浮いてしまうものが出来上がってしまう可能性もある。

ゲームのイメージとして中世ヨーロッパ風の町並みを求められているのに、三国時代の中国のような風景を作ってしまっては背景として成り立たないのだ。

先輩からは研修みたいなものだからざっくりとりあえず作りたいように作ってみてとだけ指示をされた。

おそらくはあえて僕の自主性や作品制作上での理解度を試すような指示をしたのだろう。

ゲーム資料を拝借して資料一式を一読してから作業へと移った。

直接の作業に入る前にスケッチブックにラフ画として自分のイメージする風景を落とし込む。その後作業にとりかかる。

実は背景という作業は僕にとってかなり得意な部類にはいる、キャラクターや物語をゼロから生み出すのとは違って、物語の背景を前提に作成するものなのでイメージとしておこしやすいのだ。

あとはそこに今まで自分が学んできた自分の知識や経験をはめ込んでいけば必然的に町並は完成される。

作業は順調にすすんでおり、ぼちぼちの出来の家屋が完成した。

 

「間薙くんー?作業の進捗どんな感じー?」

課題の進み具合がきになったのか、リーダーが僕のデスク上のモニターを背後から覗き込む。

リーダーは普段はざっくりしているものの面倒見がよく、僕が困っていないかを定期的に声かけして確認してくれる。

一つ一つの作業に時間をかけて丁寧に進めたので結構いい仕上がりになっていると思う。

あとはスキルを使って量産すればそう時間をかけることなく村ができあがるだろう。

 

「っ!?これ、今の時間だけでここまですすんだの?間薙くんって3D経験あったっけ?」

先輩は僕がここまで作業をできると思っていなかったようで、驚いた顔をしてそういった。

面接以外では八神と遠山以外にはゲーム製作経験について話したことはないし、驚くのも無理もないのかもしれない。

「いえ、かじった程度にはやったことありますけど、ちゃんと取り組むのは始めてですよ。今も参考書通りに進めてるだけです」

「かじった程度っていっても新人が普通ここまでのもの作れないよ!」

「ありがとうございます。でもまだまだ素人のようなものなので今後もご指導のほどよろしくお願いします。」

そういうと僕は脇に立てかけていたスケッチブックをとりだし、自身がイメージする村の風景をリーダーに見せ、背景の方向性ついて間違いないか確認をした。

「い、いいんじゃないかな。その調子でつくれるだけ作ってみてよ。」

「わかりました。ならこのラフような感じで村全体作成していきますね。もし何かリテイクや仕様変更があれば教えてください。」

「え…えぇ。その時は連絡するわ…。それにしても八神さんにしても君にしても本当に優秀ね…。じゃあ私、席に戻るから…。」

先輩はこの後もなにか予定があるのか、足早にに僕のデスクから立ち去った。

せっかくだったのでもっとアドバイスや指示をもらいたかったのだが、忙しいなら仕方がない。

僕も本日予定している作業工程を少しでも前に進めるために机に目を向けるのであった。

 

 

ちなみにその日昼食を食べながら聞いた二人からのゲームの感想は概ね好評だった。

そしてその場で一つの約束をした。それは()()()()()()()()()()()()()()()()()ということ。

その場での会話については今後機会があればまた話したいと思う。

 

 

 

 

その夜。まもなく終電を迎える時間なのにも関わらず、一つのデスクに光がともっていた。

そこには、PC内に保存されている背景データ一つ一つ確認している女性が一人。

「なによこれ…。新人がこんな無駄のない3D作れるってどいう言うことよ…。おかしいじゃない…」

彼女が確認していたのは本日間薙が完成させた背景データで、その仕上がりをつぶさに確認していた。

始めは荒を探してどこかしらにケチをつけ、リテイクという名の指導すればいいと安易に考えていたものの、確認すればするほど新人がつくったとは思えない文句の付け所のない仕上がりであることがわかり、彼女は焦燥感のような嫉妬に刈られていた。

つい先日も、自信をもってコンペに参加したところ、まさかのまさか、入社一か月の新人にキャラデザの座を奪われたのだ。

彼女のプライドは完全に打ち砕かれ、平常心を取り繕っても後輩に対する劣等感をぬぐうことはできず、今でも手が空いてしまうとコンペの悔しさを思い出す。

それと重なるタイミングで、自分の専門分野である背景において、まったく警戒もしていなかった新人が思いもよらぬ伏兵として浮上してきたのだ。

コンペの結果に落胆した気持ちを引きずっていたため適格な指示をする気もわかず、「適当につくってみてほしい」と投げやりいったところ、出来上がったのは想像を遥かに上回る町並みだった。

何の変哲もない村の風景なのにもかかわらず、その情緒あふれる作りに目を奪われ、ひきつけられてしまう。

このゲームの「この村はこうあるべきだ」という姿が出来上がった3Dデータには確かにあった。

自分が新人のころに「適当に作れ」と指示されていたら、決してここまでのものはできていなかっただろう。

それを3Dを学びたての人間が参考書片手に作った作品がここまでのものであるとはリーダーにとって無視できるものではなかった。

「八神にしても間薙にしても優秀すぎるわね…。本当にいやになるくらい…」

彼女の作業音を残して静まり返った誰もいない事務所に、そんな一言がやけに響いたのだった。




あったかもしれないこんな会話
コ「あれって、本当にレンさんがつくったの?まだ全部はできてないけどどの作品も面白かった!それこそ同期が作ったなんて聞いたら嫉妬しちゃいそうなくらい」
リ「私もミニゲーム含めていくつかのゲームをやったんだけど、お休みが一瞬で過ぎ去ったくらいのめりこんじゃったわ…。熱中して夜更かししちゃったもの」
主「グラフィックだけじゃなくて、シナリオからBGMまで一人でつくった」
ふたり「「えぇっ…!?」」



ここまで読んでいただきありがとうございました。
感想、評価ともどんなものであってもかまいませんので、お時間ありましたらよろしくお願いします。。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。