是非読んで下さると嬉しいです。
プロローグ
黒く艶のある髪を真っ直ぐ目上まで伸ばし、淡い紫色をした大きな瞳は空に浮かぶ白い雲を映している。昼間なのに何処か眠そうな雰囲気を纏う少年の名は『リク・セレネ』。
彼は噴水を中心にして円となって並ぶ平たい石に腰掛けて、ある人達をただぼんやりと待っていた。
ほんのりと世界を照らす太陽は人々に快適な温もりを与え、たまに少年の前髪を揺らすそよ風はこれまた絶妙に涼しい。
暫くすると、カツカツと地を叩く靴の音が少年の耳に届いた。それは段々と大きくなって、そしてパタリと止む。
「お待たせしました。リク」
「ごめんねリク〜。退屈してた?」
声に反応してリクが目線を下げると、淡紫色の瞳には、綺麗な金髪を腰まで伸ばした少女と銀髪をひとつに纏めた少女が横に並んで立っている姿が映った。
金髪の少女は柔らかな表情で生真面目な言葉を発し、鷹揚な口調の銀髪の少女は満面の笑みで手を振っている。
さっきまでつまらない表情をしていたリクも、二人の姿を確認して口元を綻ばせた。
「うん。ちょっと退屈してた」
「もう〜リクは正直ね。私はそういうとこ好きだけど!」
銀髪の彼女は笑いながら少年の頭に手を置く。少年は子供扱いされることに何処か不満気で、けれどその手を払い除けることはしない。
「ほら行きますよ? リク、イーディス殿」
「あ、待ってよアリス〜」
そんな二人を横目に先行するアリスと呼ばれた金髪の少女を追いかけるように、イーディスも足を進める。リクもまた、二人の背中を追いかけた。
「今日のお昼は豊穣の女主人で食べよっか!」
「いいですね」
「あそこ可愛い子多いんだよね〜」
「……そういう理由ですか」
ギルドに向かう道中、リクは横から流れてくるイーディスとアリスの会話をBGMに、いつも通りのんびりと後を追うようにして歩く。
「リクもそれでいいよね?」
「うーん。でもあそこ少し高いよ?」
豊穣の女主人で出される料理の味は間違いないのだが、そのぶん値が張ることはオラリオに来てまだ日が浅いリクも知っていた。
自分の手持ちの少なさを思い出しては、深くため息を吐く。夢をみてこの都市に来たのだが、待っていたのは夢も何もない悲しい悩みであった。
「だいじょーぶよ!リクの分は先輩の私がスマートに出してあげるからね!」
「いやでも、なんだかんだ前も奢ってもらったし、なんか悪いよ……」
「いいのいいの遠慮しないで!リクは可愛いから奢ってあげたいの」
可愛いは正義が座右の銘のイーディスは、こんな感じで総じてリクに甘い。イーディスが隣にいる限り、リクが財布の紐を解く機会は殆どなかった。
「……待ってくださいイーディス殿。今日のリクの分は私が出します」
突然、いつもは大人しく傍観しているアリスが、今回は珍しく割って入った。イーディスも予想外のことに目をパチクリさせる。
「えっ、いきなりどうしたのアリス。ここは一番先輩である私が……」
慌てるイーディスをアリスは片手で制し、
「イーディス殿。そうやってリクの好感度を稼ごうとしてること、もうみんな気づいていますよ」
「ちょっ……アリス⁉︎」
アリスの急な糾弾に驚いたイーディスはすぐさま振り返って、リクに「ち、違うからね?」と弁明する。
「え、えっと……」
「好感度を金で買おうなんて、そんなの絶対に間違っています!」
好感度を金で買うのは間違っているだろうか?なんて問いが出る前にそう豪語するアリス。
「そ、そんなつもりはないよ?」
「声が震えていますよ? イーディス殿」
「あはは……ふ、震えてないよ?全然」
道の真ん中で人目も気にせず言い争う───というか一方的な口喧嘩をする二人を周囲の人は物珍しそうに眺めていた。
これは絶景絶景、と喜ぶ神の声も聞こえるが、あくまで喧嘩の内容が後輩の食事代と知らない神の感想である。神が思っている以上に、争いの種は大したことないものだ。
その頃、何も悪くないのだが喧嘩の原因となってしまったリクは、何も知らずに女性店員からジャガ丸君を購入しているのだった。
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世界の中心───迷宮都市オラリオ。
ヒューマン、ドワーフ、エルフ、パルゥム、アマゾネス、獣人など……
数多の種族によって繁栄しているこの都市には、暇を持て余し、下界に降りてきた神々が多くいる。そして下界の者はその神々に恩恵を授かり、人々はより良い生活を謳歌する。
その代表的な者たちは冒険者であり、神を主軸とした団体───通称、ファミリアを結成して、未知にあふれたダンジョンを探索する。
ある者は英雄を目指して。
ある者は復讐の炎にその身を焦がして。
ある者は一族の繁栄を願って。
そしてある者は、出会いをもとめて。
───ここが今回の物語の舞台。
これは、一つのファミリアが奏でる物語。
プロローグなので、短く終わらせました。
イーディスはアリシゼーション・ブレイディングに出てくるキャラクターですね。凄く良いキャラなので、知らない方は是非Google先生をお使い下さい。
次から本文に入ります。よろしくお願いします。