では、どうぞ。
「……よ。……て。……ク〜」
遠くから声が聞こえる。僅かに白く光る場所。恐らくそこから誰かが呼んでいる。とりあえず手を伸ばしてみるが届かない。
「……て。……てよ〜」
「んぅ……んぁ?」
「朝だよ〜リク〜。おーきーてー」
「……ってえっ!?イーディスさん!?」
「あ、おはようリク」
目を開けると視界一杯に
「えっと……どうしてここに……?」
「朝ご飯出来たから。食べるでしょ?」
「あ、ありがとうございます」
にしてもこれは心臓に悪い。驚きのあまり昇天するかとさえ思ってしまった。
「むぅ……言葉遣いが戻っちゃってる〜」
「あ、そうだ。ごめん……」
眠い目を擦りながら謝る。正直まだ寝足りない。
「気にしなくていいのよ!リクは朝から凄く可愛いわ!」
「えっと……ありがとう?」
「えへへ、早く食堂に行きましょ!」
「うん」
イーディスさんに手を引っ張られて食堂に案内してもらう。部屋に入ると既に他のみんなは席に座っていた。
「お、来たわね」
「すみません遅くなって……」
「別に気にしなくてもいいのだわ!」
朝から神々しい笑顔を咲かす僕達の女神様。やっぱり天界にいた方は雰囲気が違う。
席に着くと目の前には豪勢な料理が並んでいる。朝から何とも贅沢である。
「そういえば自己紹介してないのが二人いるわね」
「ああ、そうだった。俺はベルクーリ・ワンだ。仮にもここの団長をやっている。よろしくな?」
こちらを見てニヤッと笑うダンディな男性。流石団長だ。一番冒険者っぽい。
「よろしくお願いします」
「ハハッ、敬語なんていらねぇよ。俺はそんな大層な人間じゃないからな」
とても気さくな方のようだ。僕は団長に向かって笑顔で頷いた。
「じゃあ次は僕だね。僕の名はユージオ・エナス。17歳でここではアリスの同い年なんだ。リクの3つ上になるかな?」
「そうですね。僕は14なので……」
「うん。近い歳の男同士仲良くしてくれると嬉しいかな。気軽に接してね?」
「えっと……こちらこそ」
ユージオさんは絵に描いたような好青年って感じだ。困った事があったら頼らせてもらおうかな。
「うん。じゃあ皆の自己紹介が終わった所で、ご飯にしましょ?」
エレの言葉を皮切りに一斉に食事を始める。エレというのは前に主神と呼び名について決めたやつである。とても呼びやすくなった。
それにしても、複数で食事をするのは久しぶりだから少し嬉しかった。目の前の肉料理を口に運ぶと、その美味しさに思わず笑みが溢れる。
「今日は僕の当番だから作ってみたけど、どうかな?」
「すごく美味しい!」
「そっか。それなら良かった」
ユージオさんは安心したように顔を綻ばせた。この感じで料理もできるなんて、何というハイスペックだろう。羨ましい。
「ユージオの料理は美味しいわよね」
「イーディス先輩も料理上手じゃないですか」
「そう?ありがと」
どうやら二人の会話を聞くに、イーディスさんも料理が上手いらしい。是非とも食べてみたいな。
「一番上手いのは誰なんですか?」
「ん〜やっぱりファナティオさんかな!」
何となく分かる気がした。家事は何でもこなせそうだと勝手にイメージを作っている僕。
「あら、イーディスが褒めてくれるなんて珍しいわね?」
「いつも褒めてるじゃない」
「そうなの?私の耳には入らないのだけれど」
そしてこの二人は仲が良いのかよく分からない。悪いって感じはしないけど……。
「坊やにも今度作ってあげるわね?」
「はい!ありがとうございます」
確約を得て僕はすっかりご満悦だ。だからだろうか。要らないことをきいてしまった。
「えっと……アリスさんは?」
「……あ、あはは」
困ったように笑うユージオさん。
「アリスは……一番伸びしろを感じるわよね?」
「イーディス殿。遠回しに言われると余計傷つきます」
「ご、ごめん……」
「僕もごめんなさい……」
「リクも謝らないでください」
謝罪もどうやら逆効果になってしまった。
「下手ではないのだけど……独特というか……」
「いつか美味しいと言わせてみせます。覚悟しておいて下さい」
ファナティオさんの言葉に悔しそうに言い返すアリスさん。この人絶対負けず嫌いだ。
そして僕の瞳には、空気が悪くなった途端、露骨に口を閉ざした
_______________
アリスさんに手渡された服に着替えて、二人の待つ門まで急ぐ。
「お、来た来た」
「ごめん。遅くなって」
「そんなに待っていませんよ?……ふふっ…とても似合っていますよ?私の見立てた通りですね」
「あ、ありがと」
直球で褒められると何だか恥ずかしい。視線を逸らしながらお礼を言う。
「じゃあ行こっか。まずはギルドで冒険者登録しないとね!」
「そうですね。では参りましょう」
「うん」
空は雲一つない快晴。まるで僕の夢の始まりを祝福しているかのようだ。
周りの視線を所々で感じる。僕というより僕の両手だろう。アリスさんとイーディスさんにしっかり片方ずつ握られている。
恥ずかしいから見ないで欲しいんだけどな……
暫くしてギルドに到着した。中は物凄い活気に溢れていて、僕達が入ると注目を浴びた。怖い視線を向ける人もいて、少し足がすくんでしまう。
受付まで行くと、アリスさんが一歩前に出た。
「すみません。登録をお願いしたいのですが」
「あ、
(
とりあえず受付嬢の方に案内された場所に向かう。
「担当をさせていただくエイナ・チュールと申します。ではこちらに必要事項の記入をお願いします」
エイナと名乗るエルフの方に紙とペンを渡される。
「リク、字を書くことは出来ますか?」
「うん。できる」
渡されたペンで空欄を埋めていく。二人のお蔭でファミリアの証明は必要なかった。
「はい。ありがとうございます。では、ギルドやダンジョンについて、私から説明を致しますか?」
「そうですね。お願いします」
「かしこまりました。ではこちらへどうぞ」
エイナさんに個室に案内される。
「私達はリクが終わるまで、何処かで時間潰して待っていますね」
「ちゃんと話聞くんだよ?」
首を縦に振ると、また頭を撫でられた。
_______________
「改めまして、リク君の担当を致します。エイナ・チュールと申します。よろしくね?」
「はい。エレシュキガルファミリア所属のリク・セレネといいます。お願いします!」
「ふふっ…じゃあ始めよっか」
笑顔で積み重なった分厚い本を机に置くエイナさんの姿を見て、僕はこれが楽しいものではないと悟った。
「冒険者は冒険をしてはいけない。これは大切だから覚えておいてね?」
「えっ、冒険者なのに冒険しちゃ駄目なんですか?」
「うん。リク君は冒険に憧れがあるみたいだけど、そういう子ほど早死にしてしまうからね」
「……そうなんですか」
エイナさんの言葉が間違ってないと理解できるからこそ、気分は少し下がってしまった。
「強くなれば出来ることも増えてくから、リク君も地道に頑張ろ?」
「……っ!そうですね!ありがとうございますエイナさん」
「うん!」
まずは強くなろう、と心に決める。僕の冒険者になった目的でもあるから。
「幸いリク君のファミリアは頼りになる方も多いしね!」
「エイナさん、僕のファミリアに詳しいんですか?」
「ううん。エレシュキガルファミリアは結構有名だから。少数精鋭の派閥としてね」
「ああ、確かに他に比べて少ないかもしれません」
神一柱に眷属六人だ。これがファミリアの中ではかなり小規模だということはリクも勿論知っていた。
「レベル3が二人、レベル4が二人、そしてレベル6が一人と全員が上級冒険者だからね」
「へぇ……」
それは知らなかった。というか、あまりレベルの概念が分からないな……。
「レベル6ってどのくらい凄いんですか?」
「分かりやすく言うとね。このオラリオで
「え、じゃあその内の一つが……?」
「うん。リク君の所属してるエレシュキガルファミリアだね」
知らなかった……。そんな凄い所に入れたんだな僕。あの時面接で受かった自分を褒めてあげたい。
「とりあえず今日はここまでかな。帰ったらしっかり復習しておくんだよ?」
「はい」
荷物を纏めて席を立つ。
「エイナさん。ありがとうございました!」
「うん。明日もちゃんと来るんだよ?」
「はい!」
エイナさんに見送られてギルドを出る。すると噴水の前でアリスさんとイーディスさんが待っていてくれた。
「そろそろかと思って来ましたが、丁度良かったみたいですね。ちゃんといい子にしてましたか?」
「子供じゃないよ……もう。ちゃんとエイナさんの話聞いたよ?」
「ふふ…偉いですね」
アリスさんが僕の頭の上に手を置く。やっぱり子供扱いしてるな……。
「じゃあご飯食べに行こ!リクもお腹空いたでしょ?」
「うん!」
イーディスさんの提案で僕達は昼食を何処かで取ることになった。
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