少年とかつての整合騎士   作:水瀬 葵

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リアルの方が忙しくなり、暫く更新を止めてしまいます。誠に申し訳ございません。

また再開できた時はよろしくお願いします!

(*^ω^*)


第八話 死との接触

「今日はここでおしまい!五階層までのモンスターの知識はちゃんと頭に入れた?」

 

「はい!ばっちりです」

 

「うん。偉い偉い」

 

「こ、子供扱いしないで下さい……」

 

 僕が柔らかな手を避けるように動くと、エイナさんは、ふふっと笑った。

 

 最近エイナさんが僕の一歳上ということが判明した。大して変わらないのにこの扱い……解せない。

 

「あ、今日も迷宮に入るんだ?」

 

「あ……そうですね」

 

「そっか。気をつけるんだよ?」

 

「はい!」

 

 エイナさんに見送られて部屋から出て、一人迷宮へと向かう。

 

 実は今日、イーディスさんに「迷宮はお休みね!」と言われているが、我慢できずに内緒で装備を持ってきているのだ。

 

 ユージオさんから教わって戦い方も少しは理解したし、ステータスも上がったので一人で戦えると思う。

 

(よしっ、ゴブリンとの再戦だ)

 

 気合を入れて迷宮に足を踏み入れた。

 

 

__________

 

 

「リクが全然帰ってこないのだわ!」

 

「エレちゃん!リクまだ帰ってきてないの!?」

 

 子どもの帰りを待っていたのだが、あまりの遅さに女神はついに限界を迎える。

 

 不機嫌そうなエレシュキガルの言葉を聞いて、買い出しから帰ってきたイーディスは驚いた。

 

「どこかに寄り道してるのではないですか?」

 

「あの子はそんな不良じゃないわ!」

 

「いや、寄り道だけで不良認定もおかしいわよ?」

 

 主神につっこみながらもイーディスは内心嫌な予感がしていた。

 

 (まさか……いやでも……)

 

「アリス、ちょっとリクの部屋見てこよ」

 

「え、部屋ですか?」

 

「うん」

 

 イーディスはある物を確かめに部屋に急ぐ。それがもし無ければ行き先は一つに絞れる。

 

「ごめん。入るよ」

 

 イーディス、アリス、そしてエレシュキガルの順で中に入る。周りを見渡した所でイーディスの予感は確信に変わった。

 

「リクの剣がないです!!防具も……」

 

「え!?……それって……」

 

「ばかっ……」

 

 リクの装備がない……ということは行き先は迷宮。

 よくない事が頭を過ぎる。

 

「イーディス!アリス!」

 

「うん!」

 

「連れ戻します!」

 

 二人は急いで剣を取りに行き、最低限の身支度を済ませる。そして後輩の無事を祈りながら、迷宮のある塔へと走り出した。

 

__________

 

 僕はひたすら前へと進む。腰には皮製の袋を取り付けていて、そこには単体のゴブリンを狩った時に得た魔石が六つ、そしてコボルドの魔石が三つ入っていた。あまりモンスターと遭遇しなかった為、順調に進むことが出来た。

 

「ここ……どこだろ」

 

 壁はさっきまでとうって変わって薄緑色の石の性質のものだった。どうやら知らぬうちに下へ下へと行ってしまったらしい。

 

(三、いや、四階層かな……?)

 

 曖昧な記憶をたぐり寄せ、現在自分が位置する階層を探り当てる。

 

 この階層は流石にやばいなと思い、進むのをやめて上へと進行方向を変えた。

 

 これ以上は帰れなくなる。流石に命の危険を冒してまで先に行こうとは思わなかった。

 

 その時、壁がビキリビキリと音を立てた。

 

 エイナさんから昨日こんな話を聞いた。

 迷宮で怪物を倒しても倒しても減らない理由。

 イレギュラーが起こる原因。

 

 迷宮は生きている。そして、迷宮はモンスターを生み出すのだ。予兆もなく、突然、不意に。

 

「嘘……でしょ」

 

 生み出されたのはコボルド三匹。僕を囲むように姿を現した。

 不意に心臓が冷たい何かで撫でられたような感覚に陥る。

 

(まずい……複数の敵とはやった事がない‼︎)

 

 ここまで相手にしてきた怪物は全て一対一だった。

 

 まだ剣二本を同時に扱うことは難しい。扱えたとしても、相手は三体。捌ききれない。

 

 冷や汗を浮かべながら僕が頭で必死に対抗策を考えている間に、二体のコボルドが同時に襲いかかってくる。

 

「「ガァゥウウウウウウ!!」」

 

「くっ!!」

 

 どうにか最初に迫り来る攻撃を寸前で避け、それに続く二体目の鋭い爪の薙ぎを黒色の剣で受け止める。剣を持つ右手に重みが伝わる。

 

 背後からは三体目のコボルドが襲い掛かってくる。

 

 腰にあるもう一つの銀光の剣を左手で引き抜き、弾こうとするも力が足りないのか逆に弾き返される。

 

 そのまま攻撃を左腕に食らい、鋭利な爪に皮膚を肉ごと抉られる。

 

「があっ!?」

 

 痛みを我慢して後退するも三体同時の追撃が迫ってくる。

 

 休む間を与えてはくれない。無理矢理息を整えて態勢を立て直す。

 

「あぁああああああ!!」

 

 不意に自分のスピードが上がる。僕の中で何か起きているのだろうか。

 

 声を張り上げながら双剣を構えて突撃。やけくそだったが幸運にも二体を巻き込んで転倒する。

 

 突撃に巻き込まれなかったコボルドの腕から伸びる爪が目の前に迫る。

顔を傾けてどうにか軽い切り傷に留め、そのまま喉仏を剣先で抉る。

 

 そのまま倒れている二体のコボルドが起き上がる前にトドメをさそうと双剣を振り上げたその瞬間。

 

 後ろから恐怖ともいえる音が聞こえた。

 ダンジョンは非情で狡猾で残酷。そう思わせるに充分な事態。

 

 コボルドの鳴き声。振り返ると新たに二体。

 容赦なくこちらに突っ込んできた。

 

 (避けないと……)

 

 頭で分かっていても、身体が重い……動かない。徐々に死へのカウントダウンが迫ってくる。

 

 (駄目だ……間に合わない……)

 

 諦念が芽生えたその瞬間……

 目の前の敵が二つ、一瞬で灰と化した。続け様に後ろのコボルドも絶命する。

 

「……えっ」

 

 地面に二つの影が写り、その姿を確かめようと血に染まった顔で見上げる。

 二人の少女の持つ、赤い瞳と青い瞳が僕のことを見下ろしていた。

 

 安堵したような……悲しそうな……そんな瞳で。

 

「イーディスさん……アリスさん……」

 

 先輩達の姿に安心し泣きそうになるが、堪えて顔を背ける。

 

 僕は二人との約束を破った。

 自分の命を危険に晒して二人に迷惑をかけた。

 

 なんて愚かなことをしてしまったのだろう。少し成長したくらいで強くなった気でいた。ちょっと教わっただけで全部分かった気になっていた。

 

 きっと二人にも見限られた……。

 

 罪悪感に浸る僕の正面でイーディスさんが石の床に膝をつける。そのまま、両腕が優しく僕の身体を包み込んだ。

 

「───えっ?」

 

「……馬鹿。ほんとに馬鹿っ!」

 

 端正な口元から出てくる罵倒の言葉、それでも優しさや温かさが感じられる。

 

 更に温かさが増す。気づけばアリスさんの細く白い腕も僕を抱きしめていた。

 

「……心配……しましたよ」

 

 二人の言葉を聞いた途端、僕の瞳から雫が溢れ落ちた。ひたすらに頬を濡らし、そのままイーディスさんとアリスさんの服を変色させていく。

 

「……ごめ……んなさい……」

 

 自然と言葉が溢れる。呼吸が上手くできなくて、途切れ途切れではあるけれど。

 

「こんなに傷ついちゃってさ……全くもう」

 

「……イーディス殿のエリクサーの出番じゃないですか」

 

「ふふっ…確かにそうね」

 

 二人の顔も僕と同じくらい濡れていて、冗談を言うその綺麗な笑顔もいつもより悲しく見えた。

 

 エリクサーを口に含むと、身体中の大小様々な傷が全て癒えていく。痛みもほとんど感じなくなる。

 

 それでも、内側の痛みだけは取り除くことは出来なかった。

 

 

__________

 

「本当に……すみませんでした!」

 

 団長の部屋にはファミリアの団員全員が揃っていた。僕はそこで深く頭を下げる。

 

「いや……なんだ?お前さんが無事で良かったよ。うちの女神様から聞かされて心配してたんだぜ?」

 

「これからは二度とこんな事はしないと誓いなさい?坊や。貴方が元気でいることが、私達の何よりの願いなのだから」

 

「はい。……もうしません。絶対に」

 

 僕の誓いの言葉を聞いて、団長と副団長は安心したように笑みを浮かべる。

 

「エレもそれでいいか?」

 

「……まぁ、もうしないって言うのなら、許してあげなくもないのだわ……」

 

 部屋の隅で若干むくれてる主神の姿が視界に入る。帰ってきてすぐに割としっかり怒られた。

 

「あぁ……あとリク。今後についてなんだが」

 

「……今後?」

 

 少し言いにくそうな団長に、少し警戒感が募る。

 

 まぁ悪い事をしたのだから、何かしら罰はあるのかもしれない。甘んじて受け入れよう。

 

「ああ。元々リクの迷宮探索をイーディスとアリスが一ヶ月面倒見るって約束だったんだがな。二人の主張で二ヶ月に延長になった」

 

「え?」

 

 二ヶ月……一ヶ月というのも初耳だが倍に延びた。

 二ヶ月も二人に面倒をかけるのは申し訳ないし、それはどうなんだろう。

 

「そこまでしなくても……」と言おうと思って二人を見たが、二人が全く同じ笑みを浮かべているのが怖くて言えなかった。

 

 主神やファナティオさんも当然とばかりに頷く。最後の頼みの綱としてユージオさんに視線を向ける。

 

「こればかりは仕方ないかな……」

 

 僕の保護者同伴の延長が決まった瞬間だった。

 

 




リク・セレネ

【レベル1】

力 :I 32 → I 78
耐久:I 28 → I 80
器用:I 42 → I 79
敏捷:I 44 → I 89
魔力:I  0 → I  0

【魔法】

【スキル】

○英雄兆候

・良成長

・窮地でのステータス高補正
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